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人狼物語 三日月国


169 舞姫ゲンチアナの花咲み

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   そうして永い永い逢瀬が終われば
   彼女がその場から立ち去るその時まで
   サルコシパラは微笑み続けていただろう。**





   途端、サルコシパラの背中から
   まるでその身を食い破るように

            大きな竜胆が咲いた。






   「ぐっ…ぁ…うあああっ…!」



   自分が自分でなくなっていくような
   恐怖を感じれば、頭の中はウユニとの
   思い出に満ち溢れていく。

   その度に背中の竜胆は羽化する蛹のごとく
   大きな成長を遂げいき、腕先や身体の節々には
   色とりどりの薔薇が咲き誇り。


        そして左目に咲いたのは、勿忘草だった。






   サルコシパラは血液のように
   花弁を身体から散らしながら
   丘の橋に生えていた木にもたれかかる。

   しかし花咲みが留まることはなく、
   やがてサルコシパラはその身体を
   自分から咲いた花々に包ませて

   遠くなる意識の中、蒼空を仰いだ。





   苦悩の日も、健やかなる日も
   蒼空はいつだって壮大で青い。

   蒼空を見上げたまま
   サルコシパラは小さく笑い独り呟くと
   そのまま意識を手放して。
   
   いつも被っていた仮面が
   滑り落ちるように地面に投げ出される。





   彼女が戻ってきた頃には
   そこにはサルコシパラの姿はなく
   あるのは木にもたれかかるように
   咲いた竜胆や薔薇と


            たった一輪の、勿忘草**





   目に映るのは、
   木にもたれかかるように咲いた竜胆や薔薇。
   最愛の人の姿は、そこには、なかった。

   貴方がいなくて、
   さっきはなかったはずの花が咲いている。
   その意味なんて、一つしかなくて。


 




「いやああああああっ!」



 



   縋るように駆け寄って何度見ても
   貴方の姿は、ない。
   足に力が入らなくなって
   がくり、とその場に座り込んでしまった。


   
   なんでなんでなんで、
   どうして、さっきはなにもさいてなかったのに
   
             どうして―――――。


 


  

   脳裏によみがえるのはさっきまでの貴方の姿。
   泣きじゃくる私を優しく撫でてくれて。
   私から初めて言葉で伝えた愛情を返すように
   誓うように、口づけを交わして―――――。

  

           
そっか、わたし、が……。
 


 




    
私が、貴方を殺したのね。



  



   貴方が私を思ってついた嘘は、
   私を救いはしなかった。


           生半可な言葉では語れない
           絶望へと、私を誘うだけで。


        



   自身の病が悪化したことを悟った時だって
   貴方に病が感染ったことを知った時だって
   確かに絶望を味わったはずなのに。

   絶望には底なんてない、と。
   私は、思い知ってしまう。


         
知りたくもなかった、そんなこと。


   

 

   貴方に向かって何を言ったのか、
   もう、わからなくなるくらいに
   何度もなんども言葉にならない音をこぼして
   涙を流し続けて。


   手に持ったままだった手紙のことを 
   ようやく思い出したときには
   もうずいぶん長い時間が流れていて。
   震える手で、中身を取り出した。


 



   綴られていたのは、
   貴方が静かに固めていた
覚悟

   私への、
想い。


   そして、今の私には、
   あまりに酷な願いだった。


 



   貴方を失った私は
   今、死にたくて死にたくて仕方ないのに。


   好きなだけ生き抜けと言われたって
   隣にあなたがいない日々を過ごすと考えただけで
   辛くて、辛くて、幸せなんて見いだせないのに。


   貴方の命を奪った罪悪感が
   この身を蝕んでいるのに、それでも
   耐えて生きろ、と貴方は言うの……?


   ぽたっ、と手紙が涙にぬれていく。
   濡れる度に文字が滲んで、
   それでもあふれる涙は止まらない。


  


   
   風に吹かれて、何かが転がるような音が
   微かに聞こえてそちらに目をやれば
   貴方がいつも付けていた仮面を見つけた。

   
   
「……どうして、って聞けなかった。」



   仮面を拾い上げて、
   泣き腫らして酷い顔を貴方から隠すように
   それを身に着けると、貴方の方を見て。

  



   たった一輪、咲いていた勿忘草を


                 ―――――手折った。


 




   
私を忘れないで。


         
貴方が遺した想いをこの手に。**



 



   そのあとの記憶はおぼろげで
   どう家に帰ったのかすら、曖昧だった。
   思い出そうとしても、思い出せない。

  
   貴方がいない家に戻って
   私が割ってしまった花瓶の破片を見て。
   貴方が薔薇を可愛がっていた姿を思い出せば
   また、涙があふれていく。
   この先ずっと、こんな思いを抱えていくなんて
   到底耐えられない。


   貴方の言葉に背いて、死んでしまおう、と。
   破片を手に取り、腕を切ろうとして―――――。


 




    
「―――――。」



 



   誰かの声を、聴いた気がした。
   貴方の声だと最初は思って、辺りを見て。

   勿論、貴方がいるはずもなく。
   幻聴だったのかと、がっかりした。


   でも、貴方に引き止められたような気がしたから。
   その日は気絶するように眠った。


  



   次の日も、その次の日も。
   私は何もする気力も起きなくて
   ただただ、死ぬ方法ばかり考えていた。


   
家にいれば、貴方との思い出ばかり蘇って

   
そのたびに何度も泣いて

   心の痛みを誤魔化すように、
   自分の身体を傷つけ続けた。


   何かを食べても味がしないと気づいて
   食事も疎かになっていって。

   
それでも私は死なないように、生きていた。


   
死ねなかった原因は二つ。

  
  



   一つ目は、貴方が遺した手紙。
   
W数十年後にW
の一言は
   今、死んでも貴方にあえないんじゃないか、
   私にそう思わせたし、

   私が貴方の宝だという一言は
   この命を投げ捨てるのは、
   貴方の宝を投げ捨てるのと同じだと、
   私に思わせたから。

   死のうと体に傷をつけても
   躊躇うような傷で終わったのはそのせい。


          今まで散々貴方の気持ちを
          蔑ろにしてきたから。
          罪滅ぼしにもならないけれど
          それでも、……。


  



   二つ目は……
   あの日にきいた声。
   誰の声か分からない、貴方に似た声。
   その声を、何度か聞いたから。

  
   どうしてかしら。
   誰か分からないはずなのに

   
おしい、と思うの。



   引き止められるように、
   
誰かに生かされるかのように、
私は生きて。

   痛みから目を背けたくて、こう思うようになった。

  



   幾度も季節は巡って。

   一組の男女が夫婦になった日。
   祝福の鐘の音が鳴り響く。

   
   それを嬉しそうに、
眩しそうに

   見つめていた隻眼の女性がいた。

   彼女は柔らかく微笑むと、
   
夫婦に気づかれないように

   そっとその場を後にした。

  



   女性が向かったのは、街を見下ろせる丘。
   来るまでに着替えて来たのか、
   白いドレスを身にまとって
   白い薔薇の花束を手にした彼女は
   周りに花々が咲き誇る
   木の根元に
寄り添うように
腰を下ろして。

  



    「この身も、魂も。
     全て朽ち果てるその時まで……

        私は、貴方を愛しているわ。」


   



       誓いを風へと乗せた女性は、
            眠るように、目を閉じた。

  

 




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