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【人】 田臥 志麻[仕事として接してくれている女性スタッフたちは 例え可笑しいと思っていても プロだから態度に出すことはないだろう。 Ω性の男性であっても大半は揃えてタキシードを着る。 披露宴の時に自身も対外的に着るみたいに。 LGBTやトランスジェンダーの問題は今や、 公言しても蔑まれることは少なくなってきているが、 志麻が消極的なのはそういった根本的な問題以前に、 骨格が細いとはいえ女性的な丸みのない成人男性である 自身が可愛いものを着ても似合わないのでは、 と、誰よりも自分自身が思ってしまうからだった。] (61) 2023/08/31(Thu) 21:28:04 |
【人】 田臥 志麻[威優の可愛いを切っ掛けに視線が上向けば、 接してくれる女性スタッフたちの表情も良く見えた。 話を親身に聞いてくれる様子は決して嘲笑うものではない。 そう気づいたら、随分と気持ちが楽になった。 最初から拘っていたのは自身だけだったかも知れない。 そう思えば、少しずつ相談に前向きになれた。 二人で一から作っていくウェディング。 ドレスから小物、式場、時期まで。 たった二人だけで挙げるために。 話が進んでいくにつれて一生に一度のものが、 最高になると確信していく。 リボンのアプローチも一度じゃなくて、 正式な発表の場でも「お揃い」に拘れるように。] そうしたい。 挙式の気持ちを持って披露宴に挑めるなら、 緊張しないで済みそう。 [もう一つの予定が組み込まれるからには、 素材選びはまた慎重になりハードルが上がりそうだ。] (62) 2023/08/31(Thu) 21:29:57 |
【人】 田臥 志麻[「愛情」が意味として含まれる花々達の中に 「かわいらしさ」と「信じ合う心」が含まれる。 自身が選んだピンクに、彼の好みを足せば 「恋の誓い」が生まれた。 互いに初めての恋を知った二人によく似合う。] 知ってる? 星座の中で一番輝く星って"α星"って言うんだって。 南十字星には二つもあるらしいよ。 [十字架の前で愛を誓った後、見られるであろう 夜空の十字に思いを馳せる。 その中には、威優と同じ意味を持つ星がある。 自身の中でもたった一つだけ、 誰よりも輝く一番星が────すぐ傍に。*] (63) 2023/08/31(Thu) 21:30:31 |
【人】 田臥 志麻[威優が居なければ相談もまともにできないまま、 既製品でいいと言っていたかもしれない。 「志麻さま」と呼ばれ続ける中で、 たった一度だけ「ご新婦様」と言いかけた スタッフが恐縮して名前に呼び替えた。 「大丈夫です、呼びやすい方で。」 と、照れくさいながらもそう答えられるくらいには 余裕も生まれて、打ち解けていく。] 無理。 リボン見たら絶対ニヤけちゃうもん。 その時は一緒に笑って。 [どんな思い出になっても 威優となら良い思い出になることは間違いないから。 挙式も、披露宴も、笑顔で迎えられたら良い。] (68) 2023/09/01(Fri) 1:46:26 |
【人】 田臥 志麻[街灯が綺麗に並ぶ中を手を繋いで歩く帰り道。 海の近くのように星は見えないけれど、 その代わりに冬のライトアップが美しい。] Ω星はないんだ。 オメガ星雲ってΩの形をしたやつならあるけど。 星雲は星じゃなくて、塵やガスの集まり。 ああ、でも恒星の光を反射するんだよ。 [冬の空気に冷えていた手が彼の手で暖かくなる。 自身の星はなくとも、一番星の。 彼の光を受けて、光ることなら出来るだろうか。] (69) 2023/09/01(Fri) 1:46:35 |
【人】 田臥 志麻── 来たる挙式当日 ── [初めての海外に戸惑いながらも、 現地の天気は心を映し出すように晴れやかで。 一人前の食事の量の多さに感動しながら、眠った翌日。 最終調節のためになんどか試着を重ねた 完成されたドレスをお披露目するときがきた。 ウェディングドレスを着るのなら、 素っぴんとは行かない。 ドレスに見合うようにメイクを施されて。 ベイスメイクはもちろんのこと、 薄いのチークにマスカラ、色づいたピンクのリップ。 鏡の中の白いドレスにメイクをした人物は まるで自分じゃない、ドラマの中の人みたいだ。 憧れていた『お嫁さん』の形になっている。 想像していたよりも遥かに美しく、 立派なドレスを纏っていた。 メイクを施された後も、 鏡の前から離れられずに入れば、ノックが響く。] (70) 2023/09/01(Fri) 1:47:00 |
【人】 田臥 志麻どうぞ。 [威優かと思い、促して扉の先を見てみれば。 威優と共に、父の姿がそこにあった。 みるみる志麻の目が見開かれていく。] ……と、うさん……、? え、なんで。 ……えっ、…… [二人だけと聞いていたからその姿を見たときは、 本当に驚いて、咄嗟に声も出なくて。 説明を求めるために父と現れた威優を見つめる。] (71) 2023/09/01(Fri) 1:47:17 |
【人】 田臥 志麻[彼の前では穏やかな父がにこやかに笑顔を浮かべて、 綺麗だね、と感極まったように呟くから。] そ、それは威優の言うやつだろ……!? [嬉しいけど、…… 嬉しいけど! 混乱と照れ臭さと嬉しさでつい親子の素が出てしまう。 だって二人きりだって!言ったから! その台詞は威優から先に聞きたかった。 その父から母と弟も一緒に来ていることを伝えられ、 更に困惑を広げながらも、 最終的には威優の方へと眉尻を下げて。] こ、こんなの……聞いてない……、 [と、気恥ずかしさを浮かべながらも。 複雑な表情を浮かべて、花嫁とは思えぬ動揺を見せた。**] (72) 2023/09/01(Fri) 1:48:17 |
【人】 田臥 志麻[エステもマッサージも綺麗になる為の準備。 一人で受けるのではなく、二人で施術を受けたから、 気分も楽ですっかり気持ちも解れていた。 その時も威優は全くいつも通りに話していたのに 裏でこんな下準備をしていたとは驚かされた。 「連れてきてくれてありがとう、威優くん」 なんて、嬉しそうに感謝を伝える父。 父の傍らに立った威優が、 期待していた言葉を口にする。 (しかもさらっと奥さんって言った!)] …………〜〜〜〜〜ッ、 あー、もうっ……! 二人共ありがとっ! [ヴェールを下ろした後では 乱雑に髪を掻き乱すこともできない。 頬に触れるのもメイクを崩してしまいそうで。 二人の視線から逸らすみたいに顎を逸らして 上を向く天に投げかけるみたいにお礼を告げた。 そうしないと瞳がまた潤んでしまいそうだったから。] (77) 2023/09/01(Fri) 21:35:51 |
【人】 田臥 志麻[バージンロードの意味は威優の口から語られるまで 調べたことはなくて、初耳だった。 ドラマや映画ではそのシーンを何度も見てきたけど。 父親役の人と腕を組んで、 新婦が新郎の元まで送り届けられる意味。 それは、家族のバトンを受け渡す意味があるのだろう。 ────家族から新しい家族へ。 そのバトンをちゃんと受け取りたいと 考えてくれた威優と、役目を担ってくれる父に。 堪えていた涙腺がまた瓦解しそうになってしまって。 唇を噛み締めて二人の話を聞き、 彼らの言葉が途切れた後、 自身の返事を待つように少し沈黙が、落ちた。] (78) 2023/09/01(Fri) 21:36:35 |
【人】 田臥 志麻[今日は笑っていたいから。 深く、息を吐きだして感情が落ち着くのを待つ。 それから、二人を見て。] ……威優のところまで、 父さんが、エスコートしてくれる? [頷く代わりに目尻に皺を作ってみせれば、 やっぱり、少しだけメイクが崩れてしまった。] (79) 2023/09/01(Fri) 21:36:51 |
【人】 田臥 志麻母さんも、莉久も呼んで。 ……うちの家族が来るなら、 威優のお義母さんも呼べばよかったな。 [最後は威優にそう言って笑った。 赤く燃えていた空が夜空に変わっていく。 青と緑に囲まれた中で白いチャペルが一層映える。 立ち上がると威優と拘った トレーンの刺繍が綺麗に床に広がった。*] (80) 2023/09/01(Fri) 21:37:23 |
【人】 田臥 志麻[二人だけの挙式にしたいと言ったのは、自身の方。 威優もその意図を汲み取ってくれていた。 人に見られるのが恥ずかしいというところから 始まった挙式への準備。 二人で作り上げてきた計画は ウェディングドレスの素材から式場、 どれもこれも拘って選んできたものだった。 威優が「可愛い」と言ってくれたことは、 己を卑下していた自己肯定にも繋がる。 当初からの計画が二人で、だっただけに。 家族には見せることはないと思っていたけれど。 いざ目の前に家族が現れたなら、 見て居て欲しいという想いに繋がっていく。 苦労や心配をかけてきた自身が、 自ら選んで番となった人と手を取り合っていく瞬間を。 小さい頃からの夢であった 「およめさん」になった姿を──。] (86) 2023/09/01(Fri) 23:16:10 |
【人】 田臥 志麻わかった。 威優とオレが一番気に入ったやつを送ろう。 [長男の門出の涙につられて涙腺が緩んだ 父の背中を撫でて微笑む。 威優と父を送り出したら、 母と莉久が入れ替わりでやってきた。 メイクを直してもらいつつ鏡越しに莉久と視線が合えば、 父と全く同じセリフを口にしたので また笑ってフェイスパウダーがよれそうになった。 フラワーボーイなんて出来るのか?と揶揄えば、 威優から聞いたのだろう役目を誇らしげに語る。 「威優さんの元に辿り着くまでしっかり護るよ」 庇護の対象だった弟からそんな言葉が出てくるのが感慨深い。] (87) 2023/09/01(Fri) 23:16:51 |
【人】 田臥 志麻[元の唇がほんのりと色づくくらいのピンクのリップ。 最後に仕上げてもらえば、鏡に映るのは最高の自分。 祭壇で待つ彼の隣に立っても恥じない姿で、 胸を張っていられるようになりたい。 母が目の前に立ち、ヴェールを両手に取った。 「志麻、夢が叶って良かったわね」 レース越しに見える母が口にしたその言葉に、 覚えていたのかと僅かに目を見開いた。] ……もう、メイクを直したばかりなのに。 [外で待つ威優と父を、 更に少し、待たせることになってしまっただろう。] (88) 2023/09/01(Fri) 23:17:41 |
【人】 田臥 志麻[荘厳な音と共に扉が開けば、 真っ直ぐ続いていく真っ赤なアイルランナー。 莉久が散らしていく「清め」の花が絨毯に落ちる。 隣に立つ父と目線を合わせ、 腕を添えて、一歩、一歩、進んでいく。 人生を歩んできたみたいに。 十字架に近づけば母の姿が見える。 また、震えそうになる唇を引き結んだ。 愛している家族に見守られながら、 愛しい番の元へ、導かれて。 祭壇の前、白いタキシードに身を包む威優と目が合う。] (89) 2023/09/01(Fri) 23:17:53 |
【人】 田臥 志麻[自身の人生の数だけの歩幅を歩む。 十九歩、二十歩、 ──まだ藻掻いていた時期。 二十一歩、二十ニ歩、──妥協を知った。 二十三歩、 ──全てを諦めたようとした。 威優が少し立ち位置を変える。 そして──、] (93) 2023/09/02(Sat) 1:53:51 |
【人】 田臥 志麻[少しだけ足を止めて、目を見合わせて微笑む。 レースの手袋に包まれた手を彼の腕に添えて。 二十五歩、二十六歩、その先も。 これからの人生のように、威優と並んで歩いて。 たった三人しかいない参列者。 静謐な空気の中で、儀式が行われていく。 威優が誓いを立てれば、自身の名前を呼ばれた。] "Will you love him, comfort, hornor and keep him so long as you both shall live?" (94) 2023/09/02(Sat) 1:55:10 |
【人】 田臥 志麻[同じ方向を向いて、同じ言葉を並べて。 神に誓いを立てる。 十字架の奥に海から顔を出す月が見える。 いつかの日にも見た丸い形をした満月が 太陽の代わりに、細やかな明るさを齎していく。 神父の言葉が終わり、彼と向かい合う。 威優の手がヴェールを持ち上げれば、 倣って視線を上げ、愛おしい翠緑の瞳を見つめた。 少し、潤んでいただろうか。 気づきはしたけれど、自身も同じくらい。 それ以上に、視界が滲んでいたから笑うだけに留める。] (97) 2023/09/02(Sat) 21:12:48 |
【人】 田臥 志麻オレも、──愛してる。 [何度もつっかえた言葉を、 今はもう澱みなく伝えられる。 距離が狭まっていくのに、そっと瞼を下ろして。 誓いのキスを交わす。] (98) 2023/09/02(Sat) 21:13:14 |
【人】 田臥 志麻[月が海から完全に顔を出して、空に浮かぶ頃。 教会を出て、ガーデンを歩く。 夜でも写真が撮れるように照明が点いている。 家族との記念写真を威優に促され、] ……うん、そうだな。 せっかくだし。 [頷いて両親と弟に声をかけた。 三人とも笑顔で喜んでくれた。 ブーケを手にしたままアーチの下に立つと、 傍らに母が、その隣に父が。 そして、自身を挟んで反対側に弟が立つ。 プロのカメラマンが撮ろうとする前に、 莉久がスマホでも撮りたい!と新郎である 威優にお願いしに行ったことには、 こらっ!と兄の顔をして叱った。] (99) 2023/09/02(Sat) 21:14:04 |
【人】 田臥 志麻[少し気恥ずかしい、一生に一度の記念写真。 何枚か納めた後は、家族の代わりに威優が喚ばれる。 スマホを威優から受け取った莉久が、 ちゃっかりカメラマンの横を陣取り、 自身もカメラマン気取りでレンズを構える。 「ほらもっと、威優さんの傍に寄って。 新婚らしく、ほっぺにちゅうとかする? 大丈夫、ここ海外だから!」 ポーズまで指定してくるはしゃぎっぷりに、 呆れながらも、誓いのキスとは違う写真用は 些か嬉しさよりも、照れ臭さのほうが前に立つ。] (100) 2023/09/02(Sat) 21:14:17 |
【人】 田臥 志麻……ごめん、莉久が浮かれてる。 [隣に立つ威優を見上げつつ、 指定通りに隣の距離を詰めながら、 何とも言えない表情を浮かべて眉根を寄せる。 「せっかくだからリングも見せて!」 更にもう一つ、注文がついた。] お前ね……プロの人に任せなさいよ。 [言いながらも注文に答えるように、 左手を胸元に持ち上げながら。*] (101) 2023/09/02(Sat) 21:17:38 |
【人】 田臥 志麻[撮影会は弟の注文のお陰で賑やかになった。 お姫様抱っこは自宅でもされているが、 人前で、しかも家族の前とあっては さすがに照れが勝ってしまう。 けれど、腕の中で暴れたらドレスを汚してしまいそうで、 莉久を睨みつけながら渋々大人しくした一場面もあった。 翌日からは家族は観光に回るという。 ガイドも威優が手配してくれていたらしく それならば、と安心もした。] (105) 2023/09/02(Sat) 22:17:38 |
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