【人】 エン[目の前に出されたたまごやきは焼きたてで、ほわほわと湯気がたっててたまごやき特有の美味しそうな匂いもしていて。リクエストしたのはたまごやきだけだけどごはんと他にもついてきた。料理するなら本来は関係ないはずの錬金部屋を覗きにいってたけど、まぁいつものこと。最初は抵抗があったけれど作ってもらっている身だし、食べてみると案外いける。だから腹壊すものは入れるなよ、とだけ注意して原料は見ないことにしてる] ……いただきます。 [小さく手を合わせて、ちいさい声。作ってくれた人に対する感謝の言葉だってクルスで教わったから、未だに続けている習慣。 最初に手を伸ばすのはやっぱりたまごやき。俺は好きなものは最後に残すタイプだけど、最初の一口は好きなものから入りたい。よく混ぜて作ったたまごやきは綺麗な黄色。くるくると器用に巻かれて、ちょっとだけ焦げ目のついたそれをお箸で小さく切り分けて口に運ぶと、程よく甘くて俺好みの柔らかさだ。 よく味わおうとゆっくりしっかり噛んでいたら、無意識に笑みを浮かべていたらしい。正面に座るハチヤがにこにここっち見てたから、慌てて顔を引き締めて味噌マンドラゴラを口にしよう] (140) 2021/04/02(Fri) 3:35:46 |
【人】 エン[一度たまごやきを頼んだら、違うのが出てきたことがあった。ふわふわしていてこれはこれで美味しかった。文句はない。美味かったし。 ただ俺にとってたまごやきはだしまき卵って決まってる。一度ノアさんが作ってくれたのがだし巻き卵で、清次郎さんの好物なんだって教えてくれた。ノアさんと清次郎さんは結婚して50年はたってる筈だけど、清次郎さんの話をこっそり教えてくれるノアさんはとても幸せそうで。幸せのおすそ分けというか。俺にとって甘いたまごやきはしあわせ味、なのである] ……あー。 [マンドラ味噌をごくりと飲み込んで、俺は言葉を探す。美味い、とかはできるだけ口に出すようにしてるけど俺は本来口下手だし自覚もある。だからどう言っていいのか分からない。そのままなんか甘く煮られた根っこっぽいのとマンドラゴラを一口ずつ。 この沈黙をいつものことと取られたか、なんか言いたいことがあると取られたか。どちらにしてもどう言っていいのか分からなかったから、今日も何も言えなかったのである*] (141) 2021/04/02(Fri) 3:39:19 |
【人】 エン[ いつだったか、結構前だった気がする。ハチヤが料理に使いたいからコカトリスの卵が手に入らないかな、と言い出した。俺は普通の卵でいいと思うのだけど、料理をするのはハチヤである。けどそんなルートは知らない、だから知ってる人に聞いたのだ。簡単な事情と一緒に手紙に書いて。 けどたぶん、聞いた相手を間違えた。すぐさまどういうことかという手紙が届き、また返事を書き。結果その相手、アルフィーさんからコカトリスの卵、バジリスクの卵、ダチョウの卵の食べ比べセットが届いて俺は頭を抱えた。毒や石化するといけないからってアルフィーさん特性万能薬までついてた。そこまでしてこの卵を食べる意味が分からない、けどアルフィーさんからハチヤへってことだから、俺はそのままハチヤに渡した。 この後度々アルフィーさんからハチヤに食材???が届く。大量の蛇かと思ったらゴルゴンだったり。殴ったのか。殴り殺したのか、アルフィーさん。あなた魔法治療師ですよね?毎回丁寧に万能薬までついてくる。この人はこれで教科書に名前が載るほど優秀なので、授業で名前が出てくるたびにどんな人?と聞かれてどういっていいのか悩む。 心配になって清次郎さんに手紙で聞いてみたら、アンジュにいいとこ見せちゃうぞー!って連れ出してはフレヤさんに大目玉くらっているらしい。何をやってるんだ…まぁ、楽しそうで何よりである。 そんなわけでクルスの家でハチヤの名前は知れているし、家長であるアルフィーさんはハチヤに興味を持っている。だからアルフィーさんに、今度の長期休みに帰る時にはハチヤを連れて帰ってもいいかと聞いてみたところ……思った以上の熱意で、いいよ!!という返事がきた。寮の部屋にハチヤ一人置いていくのも気になることだし。なので最近ハチヤにどう切り出そうかとそんなことばかりを考えているのだが、未だに誘えていない。幸い長期休暇はまだ先だ、それまでに誘えるといいな、とは思っている**] (168) 2021/04/02(Fri) 21:56:00 |
【人】 エン[パーティ会場。 ハチヤはまっすぐドアから会場の隅っこに向かったから、しばらくはそこに混じることにした。そもそもパーティは苦手だ、人が多いのも嫌いだしうるさいし話しかけてくるやつはいるし。なんとか会話をしてみると、たいていすぐにクルスの話になり、クルスの誰かに会いたいとかいう話になる。そうでなければ孤児から大富豪に養子に入ったという妬みと嫌味だったり、ろくな目にはあわない。 ハチヤの所属する錬金術上級クラスはなんというか。趣味人の集まり?とでもいうのか、知らない俺が混じっていてもあまり気にしない。そしてワイワイ楽しそうによく分からないものを作っては見せ合っている──一言で言ってしまうと変人の集まりだと思う。 ハチヤの後ろからこっそりその様子を眺め、ひそかに気になってた治療薬の味を改良すると言ってハンバーグ味やドリア味をつけている先輩の成果をこっそり見せてもらったり。いや近づいていると思うけどその味をつける意味が分からない。 ハチヤの後ろに隠れつつ、興味のあるものをひと通り見せてもらったら適当に距離を取る。居心地は悪くないが、俺は部外者なので邪魔をしすぎるのも気が引けた……のだが] (169) 2021/04/02(Fri) 21:57:31 |
【人】 エン……いらないって言ってるだろ。 [やっぱり離れなければよかった。ほとんど顔も知らない女生徒が皿を押し付けてくる、やけに甘ったるいにおいのするプチケーキなんて食べる訳がない。断っても断ってもちっとも諦める気配もなくぐいぐいくる、このタイプは特に苦手だ。 この親睦会は学園からの料理も並ぶけれど、生徒が持ち寄りの料理も並んでいる。料理だけではなく一芸だったり研究レポートだったりと皆思い思いに提出するのだけれど、彼女が手にしているケーキは彼女のお手製というからますます食べる気がなくなる。エン君のために作ったから一つだけでも、というけどちっとも嬉しくない。ガチで迷惑そうな顔をしてる自覚があるけどちっとも気付かないのはわざとなのだろうか?一口サイズのケーキをフォークにさして、はいあーんとか。いい加減にしてほしい。 俺はそのクッソ迷惑な態度にうんざりしていたから、そのにおいが『何』のにおいであるか、を考えてなんていなかったのだ*] (170) 2021/04/02(Fri) 22:00:30 |
【人】 エン[何か問題でも起きたのか、周りが騒がしい気がする。そりゃパーティだから賑やかではあるのだが、こう、落ち着きがないような。妙に真剣な顔で周りを見回しながら走ってる、あれは錬金術クラスの連中じゃないだろうか、たしか見かけた顔な気がする] ……。 [ということは、ハチヤも駆り出されているのだろうか。なら手伝うかな、などと最早目の前の女生徒をいないものと見なして立ち去ろうとしていたのだ。もちろん空中のプチケーキはそのままで。ちっともケーキを口にしようとしない俺に彼女は作り笑いを引きつらせ、手を俺の口の方へと動かそうと──した、その軌道が無理やりに変えられた] (177) 2021/04/02(Fri) 23:33:02 |
【人】 エン えっ。え、ハチヤ [ハチヤが目の前の女の手を掴んで、フォークの先のプチケーキを自分の口に押し込むのが見えた。 こいつは誰が作ったのか分からない、どんな過程で作られたのかが分からない料理を食べられない。だから寮の食堂も使えなくて、自炊を余儀なくされている。そんなやつが。驚いて動けないでいると、ハチヤが女生徒の手に持った皿を奪うのが見えた。その顔色がどんどん悪くなっていくのに気付いて、とっさに体を支える] お前、 [その言葉はハチヤと女生徒、どちらに向けたものだったのか自分でもよく分からない。ハチヤがなんで気付いたのかは知らないが、コイツが俺に何かを盛ろうとした、のだろう。そしてその場合、混ぜられたのはろくでもないもの] (178) 2021/04/02(Fri) 23:34:37 |
【人】 エン[ 『あー!! ハチヤが女子からあーんされてる!! おま!お前だけは裏切らないって思ってたのに!!ずるい!!!』 そんな能天気な声が響いてイラっとした。おまけに取り囲まれて、さっさとハチヤを休ませてやりたい俺は最高に怒鳴りつけてやりたい気分だったのだけど、声が能天気なくせに早くあっちいけとハンドサインしてくるやつらの顔は真剣だった。だからハチヤの体を支えて、こっそりと会場を後にする。俺たちが出てきた後も引き続き会場のなかは賑やかで、取り囲んだあいつらが気を利かせてくれたんだと分かる。錬金術上級クラス、連携取れすぎじゃね? 会場を出てすぐのところにいた先生からメモを受け取り、盛られたろくでもないものの実情を知る。ほんとうにろくでもなかった。 とりあえずハチヤを部屋に運んでやらないといけない。こいつ意識あるのだろうか。どっちにしても立ち上がれそうにもないし、俺は落ちこぼれとはいえクリムゾン。人一人運ぶくらい、簡単なことだ** ] (179) 2021/04/02(Fri) 23:36:18 |
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