162 【身内】奇矯の森【R18G】
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そう、こうやったんだよ。僕は当然知ってる。
でもアベルの時よりは上手くできてる、かも?あんまり手が痺れない。
頭の骨がなかったらもっと短く終わらせられたかな。
……どうだろう。感情的に見えるかな。
なんで?なんで?なんで?なんで?何で殴って?
だって、おかしい、ちがうよね、お話したじゃん。
一人ずつ、話していこうって。
俺達が疑われたら、話を聞いてもらえないかもしれないから。
少しだけ、黙っていようって。
そんな、なんで、おかしいよ。
なんで?なんで?殺すの?どうして?
大事な家族、大事な家族だよ。クロ、ノル、俺の大好きな人達。
やだ、やだよ、ノル、なんで、どうして。
まってよ、やめてよ、クロ、やだ、死なないで。
やだ、いや、お願いだよ。
俺の幸せ、きえないで。
| ユングフラウは、何かが割れる大きな音を聞きつけて、駆け出した。 (a8) 2022/07/21(Thu) 0:25:31 |
| 物が割れる音に動悸がして、脳裏に過ぎるのは割れた酒瓶。 無惨にひしゃげた旦那様の姿。 転げるように走って、もう心の声が聞こえないように、引き篭ってるとか言ってられなくて。 それで、大広間まで駆け込んで。 目にした光景は、一番、いちばん見たくなかったもので。 〔 ▙ ▜▓▗ _何…… 〕 (12) 2022/07/21(Thu) 0:55:07 |
僕は何を泣いてるんだろう?
馬鹿みたい。
やろうと思ってこうしたんだけど。 ?
| >>14 ノル 〔 ▙ ▜▓▗ _ ノール、なんで……なんでこんなことになってんの……ッ!〕 何故か、なんて。わかってしまった。 だって、皆を守りたくて嘘を認めたけど、 手紙を託した貴方は、貴方には、嘘をあげられなくって。 いや、そもそも、浅知恵に過ぎなかったのかもしれない。 きっと、 を引いたのは 僕 だ。 〔 ▙ ▜▓▗ _ ぁ……あ…………〕 やめて、なんて言えない。だって、全て、貴方に託したのだ。 だから、貴方の凶気は、凶行は、己のものでもある。 失敗の責任の決着を自分の手でとることも出来なくて。 暴力を、貴方に負わせてしまった。 制止しないことで加担している卑怯者は、へたり、と床に座り込んだ。 (15) 2022/07/21(Thu) 1:53:53 |
| ユングフラウは、〔⿻▫_ ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい〕 (a14) 2022/07/21(Thu) 1:58:34 |
| 〔 ▙ ▜▓▗ _ あ…………〕 どこまでも現実的な、思考が。 この場所を去ることも出来ず、へたりこんでいた。 目をそらすことも出来なくて、耳を塞ぐことはもっとできなくて。 こくり、ひとつ、頷く。 せめて、せめて、少しでも安心して欲しくて。 そんなことを願う権利は、ないかも、しれないけど。 (16) 2022/07/21(Thu) 2:20:07 |
| (19) 2022/07/21(Thu) 2:45:21 |
| ユングフラウは、茫然と、抜け殻のように、座り込んでいる。 ノイズすら、無く。 (a17) 2022/07/21(Thu) 2:47:20 |
| 大広間が静まり返って、随分な時間が経って。 ふら、と亡霊のように立ち上がる。 〔 ▙ ▜▓▗ _ クロ……兄…………〕 ふら、ふら、と近寄って、ぺしゃ、と貴方のすぐ側、血溜まりの中にまた座り込んで。 〔 ▙ ▜▓▗ _ クロ兄……こんな、顔、だったんだね…………。〕 袖口で、顕になった顔に付着した血液を何度もなんども拭う。 〔 ▙ ▜▓▗ _ 運……ばなきゃ……〕 このまま、ここに、寝かせたままでいる訳にはいかないと。 いつだって現実的に、目の前のやることを見据えていた貴方のように、抱き上げて移動させようとする。 だって、今ここにいる子たちの中で、貴方の次に力があるのは僕だから。 (26) 2022/07/21(Thu) 11:55:48 |
| ユングフラウは、多分、座り込んだのは、結晶の散らかっていた場所。今は綺麗に片付いている。 (a25) 2022/07/21(Thu) 12:31:33 |
| ユングフラウは、拭ったのは、塵のように細かい破片だったかもしれない。 (a26) 2022/07/21(Thu) 12:32:12 |
| >>27 リーディエ 何も言い返せなくて、ただ俯く。だって、全てその通りだから。 制止することもなく、自分の手を汚すことも無く、何も しなかった 自分が一番浅ましい。 謝罪すら、赦されることではないと思うのに、また声が零れ落ちる。 クロをそっと横抱きにしたまま、貴方を見送ろうとして。 その方角が庭であることに気がつく。 〔 ▙ ▜▓▗ _ 待って…………っ!〕 貴方が足を止めなかったとしても、来るなと言われたとしても、勝手についていく。 その歩調に合わせながら、抱きかかえたクロと一緒に。 (28) 2022/07/21(Thu) 15:20:06 |
フィラメントを殺し終わってから。
手を洗ってナイフを洗って、服もすぐ洗って別のに着替えて、太ももの怪我も隠すように手当てして、物置に来ている。
箱と箱の隙間に埋まるように座って、待ってる。この夜に話ができるのを。
青年が来るのは。
まってからそう時間も経ってないうちだろう。
いつもより少し低い高度で浮かぶ青年は、
貴方の姿を見つければ、近づいて。
「……………………。」
口を、閉じて、開けて、閉じて。
結局、何も発せないまま。
見上げる。来てくれるって思ってた。
来ないとも思ってたけど。
嬉しい。
「嘘に決まってるよね」
あれ?違う。もうちょっとベリ兄が悲しくならないように言うつもりだったのに。
「どうしてお父さんのこと話して大丈夫と思うの?なんともなくて、分かってもらえるって思うの」
そうじゃなくて……、
「……一応フィーにも話したけど分かってもらえなかったよ、刺されたし」
嘘をついた。話してない。話せるわけない。話して耐えられるわけないこんなの。
「だからもうフィーも死んじゃった」
続けた言葉で、この夜何があったのか。何が既に起こってしまったのか。分かるだろう。
青年が、ここに来たのは。
一つは、貴方とお話をするため。
一つは、貴方を心配したため。
なんであんなことをしたのかは、わからなくても。
それをしたことで、貴方が苦しんでいるのではないかと。
泣いていやしないかと心配した、僅かばかりの兄としての。
だけど。
「………なんで………。」
貴方は当然のように言う。
軽い悪戯みたいに言う。
フィラメントも死んじゃった。
「……何で死ななきゃいけないの…………」
「なんで、殺さなきゃいけないの…………」
「ノル……置いていかないでよ…………」
「俺まだ、昔の幸せから抜け出せないよ………」
あったはずの日々が崩れていくことに耐えられない。
ねぇ、どうしたらこの息苦しさから解放されるの?
貴方の冷たい言葉で、いよいよ心の拠り所を失くした青年は。
何かに縋るように、貴方に両手を伸ばした。
「……おいてけないよ、おいてけるなら……」
僕も左手を伸ばしかけて、途中で止めてしまう。
……触っていいの?握っていいの?だって。
宙で静止したまま。
「……ベリ兄は大丈夫だよ、またみんなに会って仲良くできるよ、死んじゃったあとでも」
「だって、ベリ兄は、できないよね……?」
揺れる瞳が君を見ている。
君はまだ何も悪くない。悪くないままのほうが、いいのかも。
「あと……何日で、お父さんの友達がみんなを迎えに来るかな」
ぼくだけでできる?できるなら大丈夫。大丈夫。大丈夫。
でもできなかったらどうしよう。
できなかったら困るから君にもお願いする予定だったのに、今どうしても口に出したくない。
「……そと、ぼくたちが人間扱いしてもらえるとこ、ないよ?」
我慢して言おうとして遠回りに、君の夢を砕くような言葉が出てしまう。
貴方が葛藤して止めた分の距離まで。
青年は藻掻くように近づいて、貴方の手を取り、
そして抱きしめる。強く、強く抱きしめる。
例え貴方が何人殺したって、
貴方が大切な家族であることに、変わりはないんだよ。
「そこに、君がいなかったら………意味がない。」
「誰か一人だけ……取り残されちゃうなんて、駄目なんだ……」
元々、困ってる子を見ては、あの子と一緒にいなさいと言って、
そうして仲良くする家族を、一人にこにこ見守っていたような青年だ。
誰かが一人でいるのは、耐えられない。
貴方だけが苦しみを背負うなんて……許せない。
「…………うん。」
最後の言葉に、小さく頷く。
青年は10年前、9歳の頃にここに来た。…9歳まで、外にいた。
物心がついて、思考が出来て、物の善悪が分かるほどの年まで、
ずっと外で過ごしてきたから………わかる。
外に出るのは、ここで死ぬより辛い事だと。
目を逸らしていただけだ。まだ幸せになれる。まだ平気って。
…家族が死んじゃった以上、もう生きて幸せにはなれないんだ。
息苦しい。
「できるよ。」
皆を"救う"ためなら。
「うん……うん、誰かひとりになったらだめ……」
強く引き寄せてくれるから、それに甘えて、擦り寄って暖かさを感じる。こんなに近くにいさせてくれること。
それだけでも十分なのに。
外れた方に君を引きずり下ろしてしまうのまで許してくれる。
「ベリ兄……ベリ兄、ごめんね。僕も頑張るね」
僕がもっと大きくて頼り甲斐があったらな。やらなくていいよって言って、押し付けずに済んだのに。優しい君は僕よりずっとずっとずっと苦しい思いをする。
「みんな、
たすけようね」
抱きしめて、撫でる。
貴方に甘えてしまった分がたくさんある。
返さないといけないよね、俺も。
この世界に、俺達の幸せはなかったけれど。
死の向こう側には、きっと。
あるんだ、あるはずなんだ。あるんだよ。ねぇ。
そう思わなければもう、耐えられない。
今の状況も、これからやることも。
きっと青年の心は、もう壊れたのかもしれない。
「謝らないで、ノル。」
「頑張ってくれて、ありがとう。」
「大好きだよ、俺の家族。」
ねぇ、今日も一緒に寝ようか、なんて。
貴方を抱きしめる青年は、穏やかに微笑んでいて。
───ぽたぽた、涙が零れていた。
「一人にしないからね」
囁くように言って、ぎゅっと抱きしめ返す。君の手が心地良い。
アベルにはこんなふうに甘えたことはなくて、やり方もわからなかった。甘え方はきっと、君に教えてもらった。
「ぼくも……ぼく、ベリ兄と家族になれてよかった。
……一緒に寝よ。どこにも飛んでいかないように、ちゃんと押さえてるから」
透明な右手の袖で、押さえるように涙を拭い。
死んでもずっと一緒にいようねって、嬉しそうに、叶うかもわからない慰めをずっと口にしていた。
| ユングフラウは、夜が明けたら、畑にいる。皆の生きる糧を託されたから。 (a42) 2022/07/23(Sat) 13:33:06 |
「…………」
一度眠り、きっといくらか落ち着いた後。
それでも君に、この話をするのは気が引けるのだけれども。
「……次、どうしようか」
誰を、どちらが。
もう君を騙して勝手にやるような段階ではないから、話さなければいけない。
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