12:26:17

人狼物語 三日月国


179 【突発R18】向日葵の花枯れる頃【ソロ可】

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【人】 楯山 一利


ならば何処なのかって、
そんなのもやっぱり見当がつかなくて
それにもう、体力も限界だ……。

俺はふらつきながら、道の端で足を止める。
走り過ぎて疲れて呼吸が荒いせいもあるが
焦燥感と不安に圧し潰されそうだ。

「亜由美………。」


会えない想い人アイツの名を呼んだ。
それは、自分でも分かるくらい
誰の耳にも届かない程に、
か細くて弱々しいものだった。
(49) 2022/10/23(Sun) 1:50:25

【人】 楯山 一利


最後に名前を呼んだのは、いつだったっけ……。

ガキの頃は「亜由美お姉ちゃん」だった。
アイツを意識し出してからは、そう呼ぶのを止めた。

かと言って、「亜由美ちゃん」はしっくり来ないし
「亜由美」の方が良いとは思いつつも
羞恥心に負けて、滅多に名前を呼ぶ事もなくなって
「お前」呼ばわりする方が、多かったように思う。

だから、思い出せなかったんだ……。

でも……
もしも、また会えたなら
ちゃんと、名前を呼びたい。

              
亜由美───…。


そして「好きだ」と……
しっかり、伝えたい。
(50) 2022/10/23(Sun) 1:52:43

【人】 楯山 一利


あの時、もっとちゃんと話せていたら……。
あの時、素直になっていれば……。

あの時、謝っていれば……。>>0:24>>0:25

今になって、色々と後悔している。
もう何もかも手遅れなんじゃないか、って
そんな嫌な想像しか出来なかった。

でも、どんな形であれアイツの姿を見るまで
まだ諦めちゃダメなんだ……。

連絡はないだろうか。
淡い期待を胸に、スマホをポッケから取り出す。
だが、画面を開いて見えたのは
アイツからの通知ではなくて
意外にも、好敵手からのチャット。>>37>>38
(51) 2022/10/23(Sun) 2:11:46

【人】 楯山 一利


『急にゴメン。
 高山さんから伝言頼まれちゃって。』

"高山さん"という名前。
あまりピンと来なくて。
ダンサーの誰かだっけ?なんて考えてたら

『ああ、カズさんが普段から
 智恵さんって呼んでる人ね。』

「智恵さんって、カフェの店員の…?」

あれ?なんで知ってるんだ?
と、疑問を口にするんだけども
向こうは要件を早々に済ませたいらしく
それには応えないまま、話を続けた。
未だこの時点でも、この人が
あのカフェでバイトしてるとは気付けなかった。
(52) 2022/10/23(Sun) 3:33:50

【人】 楯山 一利


『"もしものことがありそうなら
 大人でも警察でも頼れ"、ってさ。』

「えっ?智恵さんが……?」

急いで店を後にしちゃったから、
智恵さんが、そこまで気に掛けてくれていた
とは知らなくて驚いた反応を示した。

…同時に、俺は一人で何とかしようと
突っ走り過ぎていたことにも気付かされた。
少しだけ、冷静になる。

「…分かった。
 ありがとうございます。
 って、伝えといてくれる?
 
 俺、智恵さんの連絡先知らないからさ。
 悪いんだけど…宜しく。」

好敵手といえど、そこまで親しい訳ではないから
こんな風に伝書鳩扱いするのは
ちょっと気が引けるんだけど…。
というか、二人はどういう繋がりなんだ?
まさか、この人もあのカフェの常連だった?
なんて想像するけど、そこまで訊ける余裕はなく。
(53) 2022/10/23(Sun) 3:34:23

【人】 楯山 一利


俺の頼みに、向こうは快く応じてくれた。

『ああ、良いよ。

 それより、本当にだいじょーぶ?
 あの子って…大会の時に紹介してくれた
 隣人の子だろ?』

そう。半年前のブレイクダンス大会で
チームメンバやこの人にも紹介したんだった。>>L3
この人にまで変な心配を掛けさせて情けなくも思うが
否定したところで、無意味だから
素直に「うん…。」と頷いた。

『実はさ……。
 これ、高山さんにも話してないんだけど

 俺、昨日会ったんだよ。あの子に。』

「……は? え?」

なんでこの人と、アイツが?
会ったってどういうことなんだ?と
混乱しているのを他所に、向こうは話を続ける。
(54) 2022/10/23(Sun) 3:35:29

【人】 楯山 一利


『カズさんに内緒にしてくれって
 口止めされちゃって……。
 だから、連絡しなかったんだ。

 でも、高山さんに伝言頼まれちゃったし
 なんか様子も尋常じゃなかったしさ。
 黙り続けるのも、無理だなぁって。
 …ごめん!』

ちょっと、何を言っているのか
理解が追い付かなかった。

そもそも、なんでアイツが
この人と会ったんだ?
俺のチームメイトではないし……
って、ああ。そうか。
アイツはこの界隈の事をよく知らないんだ。
だから、あの場に居たこの人の顔を憶えてて……?

それで、ストリートダンサー
一人一人を訪ね回って、探し出して……?
(55) 2022/10/23(Sun) 3:36:30

【人】 楯山 一利


『あの人たちとの付き合い
 考え直した方がいいんじゃない?』>>L5

あの日、アイツが俺に送って来た内容は>>L5
ブレイクダンスのことも、ダンサーたちの事も
否定するような言い方だった。

昨日の喧嘩別れだって、
俺がブレイクダンスしているのも
ダンサーたちとの付き合いを続けてるのも
気に入らないから口を出して来た。
ってのが理由だし。

だからきっとアイツは……
この人に文句を言いに行ったんだろう。

…いつもの如く。
姉気取りの、お節介を焼きに。
(56) 2022/10/23(Sun) 3:36:57

【人】 楯山 一利


「もしかしてアイツ……。
 気ぃ悪くするような事言ってた?
 それだったらごめん。本当に……。

 アイツ、ブレイクダンスにあんまり
 良い印象持ってないみたいでさ。
 なんにも知らない奴だから……。」

そんな想像だけで、相手に詫びを入れる。
でも、向こうからは意外な言葉が返って来た。

『あ〜。違う違う。寧ろ逆!

 丁度、道端でダンスの練習してたところでさ。
 カズさんがいつもどんな風に過ごしてるのか
 教えて欲しい、って言われたんだよ。

 でも俺たち、バトルぐらいしか会わないじゃない?
 だから普段のカズさんなんて知らないけど
 多分、俺らと同じように
 練習頑張ってると思いますよーって
 ダンスの練習風景、見て貰ってたんだよ。』
(57) 2022/10/23(Sun) 3:38:16

【人】 楯山 一利


俺は、その話を聞いて
頭を強くぶつけたような衝撃を受けた。

……アイツが?
あんな喧嘩別れをした後で?

ブレイクダンスを……。
俺の事を、知ろうとしてくれた……?

アイツがそんな行動をするなんて
半ば信じられなかった。

『何があったか分かんないけど……。
 早く、会えるといいね。』

そう言い残して、『じゃあ、バイト中だから』と
好敵手の彼は電話を切った。
(58) 2022/10/23(Sun) 3:39:18

【人】 楯山 一利


電話で聞いた話が、上手く整理出来ないでいた。
…いや、受け入れるのが困難というべきか。
まさか、って気持ちが大き過ぎて。
俺はその場に立ち尽くしていた。

でもこの人がこんなウソついても
なんのメリットもないだろうし…。
多分、本当の事なんだろう。

ただ、今日会えなかった事と
連絡が取れないことが、まだ結びつかない。

昨日ブレイクダンスについて聞いて
実際に練習風景を見てみたけど
やっぱり、認められなかったってこと?

……分からない。
兎に角、アイツと話をしなければ。
(59) 2022/10/23(Sun) 3:40:49

【人】 楯山 一利


再びアイツを探しに回ろうとしたところで
智恵さんからの伝言を思い出す。>>37

警察……は、まだ気が早いかな。
その前に、まずは親だ。
さっきはお袋さんに変な心配かけさせたくなくて
なんでもないって電話切っちゃったけど
連絡があったかどうかぐらいは
聞いておけばよかった…。
そんな発想にすら至らない程
俺の頭は冷静なんかじゃなかったから
智恵さんと伝言をしてくれた好敵手に感謝した。

『あらカズくん。
 まだあの子と一緒じゃないの?

 そういえば、1時間くらい前に
 "今日はちょっと遅くなる"って
 連絡が入ってたわよ。』

…良かった。
と思うのと同時に、アイツが俺の連絡を
意図的に無視してたってのも分かって
ちょっとしょげる…。
やっぱり、会いたくないって思われたんだろうか。
でも理由は依然として分からずだ。
(60) 2022/10/23(Sun) 4:02:26

【人】 楯山 一利


『あの子も大人だし、
 あんまり煩く言うつもりはないけど
 遅くなり過ぎるのは心配だから…ね。

 カズくん、宜しくね。』

お袋さんとの電話を切った後、
俺はふぅ…と安堵にも似た溜息を吐いた。
直近の安否確認ができて、少し不安が取れた。

あとは何処に居るか……だな。

また昨日と同じ目的で動いているなら
全く見当違いなところばかり探していたかも…。

かと言って、ダンサーたちの練習場所を
一つ一つ探し回るのは、つらいものもある。
(気候や状況によって変わることが多いから)
(61) 2022/10/23(Sun) 4:02:52

【人】 楯山 一利


とりあえず、手近なところから探そう…。

歩き出していたら、少し先に公園が見えて来た。
それは昨日、友紀さんと一緒に飲んだ公園だった。

昨日はダンサーたちの姿はなかったが
今日はもしかしたら……?

目的通りに動いていないとしても
未だここは見ていない所だし
一応、様子を見てみるか…。

俺は、その公園に真っ直ぐ向かう。
(62) 2022/10/23(Sun) 4:04:26

【人】 楯山 一利

─公園─


…もう、日が暮れて来ていた。
カラスの鳴き声が聞こえてくる。

昨日のような子連れの家族は居ない。>>1:76
もう帰った後なのかもしれない。
ダンサーたちもいないようだ。

かと言って、人っ子一人いない訳ではく
東屋の下や二人掛けのベンチ。
それから、ブランコに人影があるのが見えた。

夕陽が逆光になっていて、見えにくかったけど
俺は、すぐに気付いた。
アイツの姿……見間違いなんかじゃない。
(63) 2022/10/23(Sun) 4:58:23

【人】 楯山 一利


「亜由美───!」


急いで走り寄る。
俺の声が聞こえて、俺の姿を捉えたのか
向こうは一瞬身体をビクつかせて、俺の名を呼んだ。

『か、カズ……!?』

どうして此処に?
そう驚いたような顔をしてるのが
分かるくらいの距離まで、近寄った時。

今まで募らせていた不安とか
鬱憤とか、苛立ちとか、怒りとか
心配とか、見つかった嬉しさとか
…好きな気持ちとか。
全部の感情が、一瞬にして
訳が分からないくらいグチャグチャになって。
(64) 2022/10/23(Sun) 4:58:46

【人】 楯山 一利


「お前……ふざけんなよ!
 連絡ぐらい寄こせっつーの!」

拳を震わせながら怒鳴っちまった。
ああ、本当に俺ってバカだ…。
会えたら名前を呼んで、好きだと伝えたいって
思っていた筈なのに……。
またこうやって、強く言っちまうんだ。

でも、こうやってまた会えたことは嬉しかった。
何にもなくて、無事で本当に良かった。

「どんだけ心配、したか……。
 分かってんのかよ。」


ああ、もっと他に言い方はないのか。
こんな時でも天邪鬼を発揮する自分に嫌気がさす。

ちゃんと伝えなきゃ、意味がない。
そう教えてくれた人の言葉を思い出し
冷静になれと、一息吐いて。
(65) 2022/10/23(Sun) 4:59:46

【人】 楯山 一利


「……亜由美が。
 無事で、良かった。」

素直な言葉を伝えた後って、とんでもなく恥ずかしい。
でもその気持ちに嘘はないんだ。

俺は、彼女を抱き締めた。
きっとガキの頃以来。
でも今は、あの頃とは違う。

好きな人にやっと会えた。
無事で居てくれた。その安心感と嬉しさ。
愛おしい気持ちを伝えるような抱擁。

伝わったかどうかは分からないが
彼女は俺を拒むことなく受け入れてくれた。
(66) 2022/10/23(Sun) 5:00:23

【人】 楯山 一利


『カズ……。ごめんなさい。

 合わせる顔がないって、思っちゃったの。』

逆に、彼女の方から謝って来た。
涙声になっていたのもあって、俺はビックリする。

「なんで……?
 昨日、俺が酷い事言ったから?」

『ううん。違う。
 ……私が酷いことを言ってた。
 
 なんにも、知らなかった癖にね。』

彼女は、ぽつぽつと自分の心境を語り始めた。

最後に喧嘩した時、俺から言われた言葉>>0:23
聞いた瞬間は悔しいとか悲しいとか
そういう気持ちでいっぱいだったけど
別れた後、少し冷静になってから
どうしてそう言って来たのか考え直したらしい。
(67) 2022/10/23(Sun) 5:21:07

【人】 楯山 一利


彼女は、一度も俺に歩み寄ろうとしなかった。
今になってやっと、それに気付いた。

その癖、俺の為と思って
ブレイクダンスやダンサーたちを
否定するようなことを言って。>>L5
俺の事を傷付けてしまっていた。

今までそんなことにも気付かずに
ずっとお姉さんぶって口を出して
お節介を焼いてしまっていた。

でもそれは全部、独り善がりだったんだと。

気付いてから、謝ろうとしたけれど
もう半年以上前のことだし……
今更。と言われるのも怖かった。
かと言って、何もしないままも気持ちが悪く
(68) 2022/10/23(Sun) 5:29:57

【人】 楯山 一利


…そんな時、あの大会で紹介して貰った
あの人たちを思い出して>>L3
本当に、今更ではあるけれど
少しでも歩み寄ってみた方が良い。と
普段の俺がどんな様子なのか知るためにも
(俺に知られるのは気まずいからコッソリと)
一人で、ダンサーたちを尋ね回ったんだとか。

それでようやく見つけたのが、あの人。>>54

話を聞いて、ブレイクダンスの
練習風景を見せて貰って>>57
やっぱり……と
自分の過ちを再認識したのだとか。

そして俺からの「会えない?」と連絡が来た時>>2:*0
『わかった』と返事はしたものの>>2:*5
もう俺と合わせる顔がないな…と
強く思い始めていたらしい。
(69) 2022/10/23(Sun) 5:31:55

【人】 楯山 一利


いよいよ今日になって
会うのも怖気づいているし。
もう俺から連絡が来ても反応しないで
このままフェードアウトを決め込もう。
と思っていたのだとか。

(まぁ親同士付き合いあるし、家も隣同士だから
 すぐに全部ってわけにはいかないけれど
 近いうちに独立しようとも考えていたのだとか)


「……………。」

俺は、最後まで黙って
彼女の懺悔にも似た告白を聞き届けた。
(70) 2022/10/23(Sun) 5:33:42

【人】 楯山 一利


話を聞いて、やっと色々と腑に落ちたのだが。
それでもやっぱり、いきなり無視は酷過ぎる……。
せめて会いたくないって連絡くれよ。
余計な心配掛けさせやがって…。と
恨み言を言ってやりたくもなったんだけど

「……確かにさ。
 何も知らない癖に!って
 ムカついたこともいっぱいあったよ。

 でも、考えてみたら
 俺だって……。
 何にも伝えられてなかったんだ。」

ブレイクダンスへの熱意も。
お前への、気持ちも───。

お互いちゃんと言葉に出来なかった故に
起きてしまった、"すれ違い"。

言葉にして伝えるだけでよかった。
…簡単なことだったのに。
それさえも出来なかった。
(71) 2022/10/23(Sun) 5:54:50

【人】 楯山 一利


「もっとちゃんと、真剣にダンスやってる
 って、俺も伝えるべきだったんだ。
 
 ……だから、俺もゴメン。」

もう二度と、そんな過ちは
繰り返したくないから。
素直な気持ちを言葉に乗せて
しっかりと、彼女に謝った。
(72) 2022/10/23(Sun) 6:02:14

【人】 楯山 一利


そうして、お互い謝ることが出来てから
少し微笑み合えるようにもなった。

今度は、俺の気持ちを伝えるんだ……。

「……あのさ。
 さっき言ってたことだけど。>>70
 もう勝手に……消えようとすんなよ。

 俺、お前と離れるのは……イヤだから。」

『うん…分かった。
 もう、そういう事はしないよ。

 でも……どうして?』

俺は真剣な表情で、彼女の瞳を見据える。
彼女は、そんな俺を見つめ返す。
本当に分からないのだろうか。
…それとも、俺の言葉を待っているんだろうか。
表情だけでは分からなかった。

だが、いずれにせよ
俺のすることに変わりはない。
(73) 2022/10/23(Sun) 6:30:42

【人】 楯山 一利


「"好き"───なんだよ。
 ……亜由美のこと。

 姉ちゃんとしてじゃなくて。
 一人の、"女の子"として。」

俺の告白を聞いて、彼女は目を見開いた。
お前にとって予想外の言葉だったのか、
それとも別の意味だったのかは
読み取ることはできなかったから。

「亜由美は……?
 俺の事、どう思ってんの?」

やっぱり"弟"みたいな存在なのか。
少しは異性として見てくれてるのか。
お前が俺に抱いている気持ちを知りたくて、
でも不安も隠せないまま訊ねた。*
(74) 2022/10/23(Sun) 6:32:34

【人】 室生 悠仁

 

  某日、パンプキンタルトの美味しかった店にて。
  俺は一人、まだこの店で食べたことのないメニューを
  注文するため、カウンター席に座っていた。

  時間は前と同じように休日の少しピークから外れた頃。
  人が多いのもそこまで気にならないほうだが
  今日は静かに食べたい気分だった>>12

  デザートだけでなく、きちんとした食事を摂るため
  昼食を食べることなく来店したものだから
  俺の胃袋は空腹に鳴き声を上げている。

  泣いた子どもをあやすように、腹をひと撫ですれば
  SNSを見て既に決めていた本日の昼食予定のメニュー
  ジャック・オー・ランタン≠、
  やって来た店員に注文するのだった。
 
(75) 2022/10/23(Sun) 9:40:19

【人】 室生 悠仁

 

  先日、俺は愛しの彼に告白して振られた。

  とはいっても、当初は振られたといえるような
  はっきりとした言葉を貰えていなかった。
  彼の態度として俺がそう察知していただけで
  曖昧なまま話が進んでしまっていた。

  だからあのあと、きっぱりと気持ちに
  蹴りをつけるため、改めて言葉にしてもらうことした。


   「 この先、未来を考えても
     俺の方を向かないというのなら

     きちんと振ってくれ。 」


  涙で濡れた声で言うには少し恥ずかしかったが
  泣いてすっきりしたのか、淀みなく声を発せたと思う。
 
(76) 2022/10/23(Sun) 9:40:32

【人】 室生 悠仁

 
 

『 お前の想いには応えられない ───。 』  



  彼の声を思い出していた頃に、
  ジャック・オー・ランタン と名付けられた
  季節限定ハロウィンメニューが届く>>2:*1

  黄金色に光る卵の上では赤いカボチャのランタンが
  楽しそうに目を光らせて笑っている。
  もしかしたら時によって表情を変えていたり
  することもあるのかもしれない。

  そのお茶目さにくすりと笑みを浮かべて
  けれど写真を撮ることもなく
  スプーンを柔肌に差し込んでいく。

  抉られた黄色の皮膚からはきのこたっぷりの
  炒められた赤色のご飯が覗いた。
 
(77) 2022/10/23(Sun) 9:40:44

【人】 室生 悠仁

 
 
  ─── 写真を送る相手はもういない。
  とはいえ、別に彼との縁が切れたわけでもない。
  SMSを頻繁に送り合うことこそなくなったが
  きっと連絡すれば返事は返ってくるだろう。

  それでも、未だ燻った想いがもう外に出ることはない。
  子どもの頃から続いた長く重い片想いは
  やっと手放される機会を得たのだから。

  想定していたより穏やかに進んだ物事を終えると
  舞台の幕は下ろされ、客もいないそこには
  ただ一人の男が残ることとなった。

  再び同じ舞台で幕があがることは永遠にない。
  いつかこの傷口が痂になり、塞がったとしても
  前の形に戻ることはあり得ず、傷跡は残り続けるからだ。
  
(78) 2022/10/23(Sun) 9:41:00