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【人】 水面 禎光七瀬の胸を貫こうとした刃は止めた。 間一髪で間に合ったのだ、と安堵していたのかもしれない。 僕の血に塗れなかった刃先。 そこに七瀬の喉が突き刺さり、刃の全てが赤く染まった。 (2) 2023/05/15(Mon) 23:22:57 |
【人】 水面 禎光でも、ここに或る現実は 死を決めた七瀬と、死から救ったつもりになっていた僕。 キミの『 ごめんなさい 』にも 『 大好き 』にも 瀬名を託す言葉にも 僕は、なにも上手く返せないまま 喉元を裂いた返り血で頬が染まる。 (4) 2023/05/15(Mon) 23:23:02 |
【人】 水面 禎光「 …………ァ、 アァ 」 ナイフから手を離しても、 命を奪う使命を帯びたソレは 七瀬の喉元から離れない。 崩れ落ちていく彼女を 僕は空いた両手で慌てて支え、ゆっくりと床に寝かせる。 そして瀬名が七瀬に駆けよれば、 少しだけ冷静さを取り戻した。 (5) 2023/05/15(Mon) 23:23:05 |
【人】 水面 禎光「 瀬名 …… ナイフを抜いちゃ …… ………… !? 」 こんな痛ましい姿だ。 ナイフを抜いてやりたい気持ちは分かる、などと。 少しでも生き長らえさせようとする僕の感情と ナイフを抜いた瀬名とのソレは大きく異なっていた。 (7) 2023/05/15(Mon) 23:23:12 |
【人】 水面 禎光僕は、ナイフを突き立てた瀬名の手を そっと包み込むように自分の手を当てがい、 そのまま力を加え、更に押し込んでいく。 "瀬名のこと、よろしくお願いしますね" ─── それが七瀬の最後の願いだったから。 七瀬、約束するよ これから先、僕は瀬名を決して少数派にはしない (9) 2023/05/15(Mon) 23:23:19 |
【人】 水面 禎光やがて、七瀬から灯が消え去れば ・・・ かつて双子だったと 世界が認めたかのように ──── ナイフが消え 手に負った傷が消え そして、七瀬が消えた それは、僕の心の中からも ** (11) 2023/05/15(Mon) 23:23:27 |
【人】 水面 禎光「 ………瀬名 ? そろそろ、おきて 」 ソファーで座ったまま寝息を立てている瀬名の肩を 僕は、ぽんぽんと軽く叩いた。 此処は、彼女の祖父母がかつて暮らしていた家。 定期的な清掃や空気の入れ替えを僕も手伝っているのだけど 瀬名はどうやら途中で眠ってしまったらしい。 いつしか雨の上がった空は 薄紅に染まっていた。 窓から斜めに差し込む夕暮れの光は ソファーと瀬名をゆりかごのように柔らかく包んで。 (23) 2023/05/17(Wed) 21:32:19 |
【人】 水面 禎光部屋の古時計 ────分針が真上を指し、 仕込まれたオルゴールが流れ始める。 何故だか心を揺さぶられるその旋律は ──── Ave Maria ** (24) 2023/05/17(Wed) 21:32:28 |
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