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【人】 水の魔騎士 ユスターシューー長い夢を見ていたような。 ユスターシュは二度記憶を失った。しかしそれを取り戻した。 大切な人。それは亡くなった姉と、愛する姫君の事であった。 今のユスターシュの胸を占めているのは、チアキローズへの想いだ。ずっと奥底に封印されていたからこそーーそれは強く激しく、胸を焦がしている。 だが、そんなユスターシュとは入れ違うようにチアキローズは姫としての記憶を失ってしまったようだ。 まさに、皮肉。 伸ばした手と手が後一ミリで触れ合う、というタイミングでまた離れてしまうが如く。 ユスターシュが記憶を思い出せなかった間は、チアキローズに苦しい想いをさせた。 刃すら向け、命を狙いーー乱暴に身体を重ねることまでしてしまった。 それでもユスターシュを信じていてくれた彼女の事を思うなら。 今度はユスターシュが、信じて待つ番なのかもしれない……。 <cc></cc> (5) 2023/10/27(Fri) 23:25:25 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュチアキローズこと千秋はシャワーを浴びたのであろう、茶色の髪が少ししっとりとしていた。 衣服もきちんと着替えている。 応接間にて対面するか。 彼女は橋本彩綾と話していたはず。どんな説明を受けたかわからないが、それでもーー。 ユスターシュこと譲の気持ちは決まっていた。 想いは覚悟、決意だから。 名を呼ばれ、ゆっくり彼女に近付く。 (6) 2023/10/27(Fri) 23:25:52 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ 「姫宮さん……チアキローズ姫。」 どちらも彼女の名である。 それを唇に乗せるだけで、今は愛しさに溢れた。 不安は、胸に独りで抱けば辛いだけ。しかし信頼する者に打ち明ければ違う。 分かち合い、想いを確かめる事が出来れば。 譲は微笑み、背の低い彼女の前に片膝をつく。そして左手を取ると甲に恭しく唇をあてた。 (7) 2023/10/27(Fri) 23:26:42 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュこの胸に彼女を抱くことが出来る誉れ、歓び。 先行きには不安はあれど、それ以上の幸福は今は望むまい。 譲は彼女の細身をしっかりと支え、広い胸板にて受け止めた。 彼女の溢す涙すら、一滴足りも逃さぬように。 傍に寄り添う。 「チアキローズ……千秋。 貴女の想いさえあれば、俺は。 他の全ては贅沢に思えるが。 どうか生涯俺の傍にいて欲しい。 ーー妻となって欲しい。 それが俺の願いだ。」 問題はそれを国に帰り叶えるのか、此方の世界にて叶えるのか、かもしれない。* (21) 2023/10/28(Sat) 15:51:16 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュチアキローズとユスターシュ。 千秋と譲。 どちらの世界においても共に生きていく。共に寄り添って歩むと約束を胸に刻んだ。 彼女はプロポーズを快く受け入れてくれる。 艶やかな睫毛が伏せられ、ピンクの唇が譲を待っていた。 「チアキローズ。貴女を必ず幸せにする。」 身を屈めて触れ合わせる誓い。 それは婚儀の場でなくとも神聖なもの。 二人はこうして、多くの苦難を乗り越えたのちーー婚約者としてではなく、互いを選び結ばれたのであった……。** (28) 2023/10/29(Sun) 16:25:58 |
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