>>50続き

　「前に進む、か。……ラナーは強いな」

闘うだけでは得られない強さだと思った。
何ていうのかな……ああそう、これが、愛ってやつなのかな。
ラナーの口癖だったから何となく結び付いた。

闘争と復讐だけだった俺の心は
いつしか君達の存在で満たされていた。

　「君とサーリフなら、きっと善い天使になる。
　　半身になってまで俺達のために
　　こんな迷ってくれたんだからな。

　　……再会できたらいいな。
　　いや、きっとする。待ってるんだもんな。

　　俺はどんなに時間がかかっても、"生"き続けるから……
　　だからきっと、また会おうぜ」

■ドラマシーン(フリー分)　絆取得
■相手：アルバリ
■場　所：酒場※任意可

成否判定：(4)(5)^2d6

『──約束、な！』

屈託なく笑うファルーサの目に映る自分は
もしかして、物凄く頼りなく見えているのだろうか
とナディルは思う。

ファルーサが望むと望まざるとに関わらず、
一度でもナディルが『願いを叶えた』人間は
聖杯のジンラグヴァ・シトゥラの契約者となる。
例え一度叶えた願いを取り消したとしても
この縁が消えることは無い。

思えば、幼くして色々な人の願いを叶えていた頃
ナディルの『契約者』は母だったのだろう。

ナディルが本来のナディルの姿を保てていたのは
生まれてから、母が亡くなったあと
最初に願いを叶えた契約者が亡くなるまでの間で
それ以来、ナディルは自分の姿を忘れてしまった。
　

姿が変わることを面白いと思いつつ
あまりに頻繁に変わることにも辟易していて、
だからナディルがファルーサに「死ぬな」と願うのは
今の姿が割と気に入っているというだけの話だ。

もちろんファルーサ自身を気に入っている
（そうでなければ契約しない）のもあるが、
ファルーサの周りの人間をよく知る前に
ファルーサが死んだ場合、
ナディルは自分がどんな姿になるのか
そしてそれが誰なのか
なにもわからないままで変わってしまうのだ。

はっきり言って結構面倒臭い。
ファルーサはなにか良いように解釈したようだが
実態はこんなものである。

けれどもそれがナディルの『願い』であることは
確かにそうで、これまでナディルに対して
「お前の望みを叶える」と宣った契約者は
母の他にはファルーサただひとりだった。

>>30　

　──おい。

[俺が無様を晒した相手は、天使じゃなくて同じ罪人のこの男だった。隣には片翼の"彼女"がいる。相変わらず生き生きとして、何処だろうと構わず、燃える星のよう。太陽みてぇだな。

今の俺じゃ、敵いはしないと知ってる。そんな風に、他人をジャッジしはじめている俺は、ああ、自分以外が見え始めているんだ。]


　……別に、用はないけど……


[うん、だけどやっぱり場を作るのは下手なまんまだ。まだ半径50センチ、自分に触れてくる人間にようやく興味があるくらいで、けれど──手首の鎖──強制的に繋がれた心は、いつしか導く糸に、なっている。地上に戻ったなら、少しは周囲が違って見えるだろうか。]


　…………ありがとな。

　オマエと殺り合えるくらい、俺は強くなる
　『相棒』が、居なくなっても……生きてぇって
　──今は、思う。


[自分の事は、他人から教われると知った。
空っぽじゃなくて、固く身を守っているのかもしれない。流した何かが溜まって、俺になると良い。言葉になんねぇ色んな感情、オマエから知ったものは多いよ。]


　──ありがとな！！

■ドラマシーン　絆取得
■相手：アルバリ
■場　所：商業区※任意可

成否判定：(2)(3)^2d6

>>56アルバリとの絆取得　

アルバリ。


[名前を呼ぶ。
ああ…ほら、また迷子みたいな顔してるのね。
でも、あたしはあんたが前を向こうとしてるって、知ってる。>>55
────だから]





[掌を上にして、まっすぐに突き出した。
滅茶苦茶なことを言っている自覚くらいあるわ。でも]


確かに、それを持っていた方が、あんたは強いわ。
しかも手放したら、あんたは金剛石の寵愛キラートリックを失うでしょうね。

それ以前に、あんたの大切な相棒である事、知ってるわ。

────でも、フォーマルハウトは。


あんたが、
あんたのままで生ききる為の、
枷になるでしょう。

片翼だろうと、天使よ。
少しの間、押さえ込むくらい訳ないわ。

あたしが半分背負ってあげる。
あたしは、あんたが愛刀フォーマルハウト無しでも歩けるって、信じてるわ。

アルバリに呼び止められた。

　「お、アルバリじゃん。どした」

別に用はないなら、なんで呼び止めた、
なんて言えばもう口聞いてくれなさそうだったから待った。

ああ、あのときの話か。
アルバリは答えを出したんだな。
"ありがとな"、だってさ。

　「俺なんもしてねえよ。
　　ちょっと小突いただけさ」
　　
なあ気づいてるか。
もう逃げねえ……そう、お前は"闘う者"の目をしてる。
もう"狩られる者"じゃねえんだ。

　「おう！今度俺と戦う時は
　　────無様で強くてかっけえところ、見せてくれや！」

俺にとってアルバリは、互いに生きていく戦友ともなのだ。

どこにいても、解るものです。
自分天使を呼ぶ声というのは。

耳に優しい歌と共に。
柔らかい雨を受けながら、呼び手――ナディルに近づきました。
"森"の中、穏やかに眠るナディルの顔を覗き込みます。
ずっと見ていたいですね……と思ったら、うぅん、と、むずがるような声があがりました。

「おはようございます」

そっと声をかけると、ナディルは飛び起きて後ずさりました。
そんなに驚かなくても良いじゃありませんか。
無意識とはいえ、私をここに呼んだのはキミの心なのですから。

呼んでいない、との抗議は聞き流して。
座りなおしたナディルと再び顔を突き合わせる姿勢をとります。


「さて、ナディル。お説教の時間です」

笑顔で言うと、ナディルは「今度は何を言い出すんだこの奇人は」という顔をしました。

「あのですね。
　私はキミの一番だと言ったのに。
　キミは全然こちらに構ってくれないどころか
　浮気を繰り返していますよ。
　随分と私の知らない顔をするようになった。
　私は嫉妬していますよ」

ナディルは、やる気がなさそうに「知るか」と言います。

……ま、そうですね。
私も少しふざけただけで、こんなのは本気の台詞じゃありません。
怒ったふりを解除して、肩の力を抜きました。

しと、しとと、雨音が、世界を分けて。
まるで煉獄で2人きりになったようだと思いませんか、ナディル。
改めて見ると、ナディルの表情は、初めて会ったときと随分変わっています。
それもそうですね。
だって……

キミはこれまで地上にいた時に、1回でも問われましたか？
キミ自身の願いを。
キミが本当は誰なのかを。
ジンではなくナディルを求めた契約者が1人でもいましたか？


ナディルについて、ファルーサが問い、アルバリが暴きました。
死神でも、願い事のための道具でも、空の器でも……神の子でも、ジンでも人でもない、奥の奥で息を殺していた"ナディル"を。

私の"神の目"を煩わしそうに避けていた不自由なナディルはもうおらず、いま彼は、母上と共に永いこと失っていた幸福を手にしています。
……気付いているでしょうか？

この美しいナディルに何を言っても野暮な気がして、何回も何かを言いかけて言葉を飲み込むことを繰り返しました。
結局、長い沈黙の後に言えたのはこんなことでした。


「私はキミを導きたい。
　キミが正体を失ってしまうような地上へではなく
　キミがキミを取り戻し、キミのままでいられる煉獄へ。

」

■ドラマシーン　絆取得
■相手：シャフリヤール
■場　所：神殿※任意可

成否判定：(1)(2)^2d6

■ドラマシーン　絆取得
■相手：アルバリ
■場　所：神殿※任意可

成否判定：(5)(2)^2d6

■ドラマシーン　絆取得
■相手：ラナー
■場　所：酒場※任意可

成否判定：(4)(5)^2d6

■サービス(A)バカ>>#1
�@：状況(2)^1d6
�A：結果(6)^1d6

※必要なら
相手：ファルーサ
アイテム：自分の魅力

テラーダイス取得判定：(6)(2)^2d6

神殿の前から立ち去ろうとしているシャフリヤールに近づきます。

「珍しいですね、こんなところに来るなんて」
「天使か。
　……来たくて来たわけではない。
　歩いたことのない方角に足を向けたら
　たまたまあの建物が目に入ってしまっただけだ」

シャフリヤールは、うんざりした口調で言いました。
その"うんざり"は、私ではなく神殿に向けられているようでした。
少し興味がわきます。

「神殿……神が、お嫌いですか？」

シャフリヤールは、数秒ののちに、言いました。

「哀れだとは思う」
「哀れ……？　神が？」
「あのように群がる者たちに、慈悲を乞われたり、奇跡を祈られたり、恵みを願われたりするだけの存在だろう。それはひどく、退屈だ」
「ああ……」

彼の言葉が、なんとなく理解できました。
それは、かつて地上にいた頃の自分へ向けた言葉でもあるのではないでしょうか。

地上では動かなかったキミの心が、煉獄においてはたくさん動きましたね。
ねえ、少しは楽しかったのではないですか。

苦痛さえ麻痺していた不感の心が、死後に揺れて。
痛みさえ、哀しみさえ……そして、寄せられる損得なしの友愛は、霞んでいたキミの"心"の存在を知らしめる"実感"だったのではないですか。


キミにとって地上は呪いの地。
キミを欲しがる幾多の手が、キミから歓びも悲しみも奪い取っていく。
地位も、権力も、美貌も、乞われ、群がられ、キミはそれを振り払おうとするたびに色を失っていく。

ここではそんなことは起きません。


……私がキミを愛することをキミが煙たがるというのなら
慕っています、という言葉を受け入れてくれませんでしょうか。
キミを思っています。


これから、"彼女"のことに向き合ってみるのもいい。
そう、ほんの少しでも、楽しみを探してみるのもいい。

つまり、言いたいのは、キミの居場所は地上にはない。
ただ、ここだ、ということです。

「シャフリヤール。
　これからも私と、皆さんと、ここ煉獄にいましょう。
　きっと、二度と"退屈"ではありませんよ」

■ドラマシーン　絆取得
■相手：サーリフ
■場　所：神殿※任意可

成否判定：(1)(4)^2d6

>>58>>57　


　……用心棒、をさせられたときも思ったんだけど。
　アンタの姿はどこか懐かしいよな。
　『懐かしい』って、思える……


[当然、生きて会ったことも無いんだが。何故かな。かつてこういう存在に出会っていた様な、無いはずの記憶に付随した感情　フィクションが、湧き上がってくる。]


　……俺に生まれた場所はあるけど、
　それを故郷と思ったことは、無いね。


[あの時の他愛ないアンタの話。今なぜか思い出した。]


　故郷っていうのは、心が帰りたがる場所の事
　だよな、たぶん。

　──アンタからは、そういう匂いがするね。


[煉獄に落ちて長いこと、口をきかなくなった相棒を。
そっと、その手に。]