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人狼物語 三日月国


168 【飛び入り歓迎】Hospital of Delusion ー妄執の病院ー【R-18RP】

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視点:人

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【人】 空虚 タチバナ

― 院内廊下 ―


[病院すべてを覆い尽くす黒が、
 腰まで伸びた髪の先へ縋るように絡みついてくる。
 身体の延長線上みたいに闇を引きずる姿は、
 さながら黒いヴェールを纏っているようだった。]

  ……。

[しかし白いパジャマは胸元に穴こそ開いてはいるが、
 それ以外は至って普通の質素なもの。
 神聖なヴェールには似つかわしくなく、
 色の名残さえ匂わせない。

 積み重ねた負の感情が表情を陰鬱にし、
 逃れられない怨霊の性が死の匂いを甘く漂わせた。]
(21) 2022/08/13(Sat) 13:05:13

【人】 空虚 タチバナ

[唯一の痕跡は腹の中に残っている。
 元より遅かった歩みを更に緩め、
 真白い手が下腹部をゆったりと撫でた。

 注がれた瞬間、死ぬことが約束されている
 意味を成さない命のはじまりが、たっぷりと。]

  ん……。

[まだ快感の切れ端が残っていたのか、
 鼻にかかった声を漏らし、身を震わせた。
 この身にそれを刻んだ男は、
 今頃ベッドで眠っているだろう。]
(22) 2022/08/13(Sat) 13:05:31

【人】 空虚 タチバナ

[夢を見ているようだった>>2
 その表情は満たされたようにも見えたし、
 どこか寂しそうにも思えた。

 自身を空っぽだと評し、
 何事にも希薄さを覗かせていた彼が見る夢は
 空虚を埋めるに足るものだっただろうか。

 無防備な首を絞めて殺すことは簡単だった。
 けれど、彼に与えたのは耳元の囁きだけで
 種≠セけを残して闇に溶ける。

 夢の果て、彼の零した願望が耳にこびりついている。
 何かを堪えるように震える瞼を閉じた。]
(23) 2022/08/13(Sat) 13:05:47

【人】 空虚 タチバナ

[己の感情を思い出す。
 自身の存在理由を確かめる。

 たとえ望んだものではなかったとしても、
 自分が得た唯一のもの。
 生きている間には手に入らなかった、たった一つの。

 悲しみが、怒りが、憎しみが、恨みが
 黒く、黒く……渦巻く感情が、
 怨霊わたし怨霊わたしたらしめているのだと。


 生まれてはいけなかった。
 死ななければならなかった。
 だから私は両親アイツらを――]
(24) 2022/08/13(Sat) 13:06:16

【人】 空虚 タチバナ

 


[――悲鳴が聞こえて>>1:121、 
血の匂いがした>>1:129。]
(25) 2022/08/13(Sat) 13:07:01

【人】 空虚 タチバナ

 
  あれ……?

[今のは何だろう。よく思い出せない。
 私は正しいこと≠したはずだ。
 必要ないものを片づけ……いやでも、それは同じ、]

  ……あたま、…………いたい。

[途切れた快感がいつもの痛みを取り戻した。
 足取りがぶれて、よろよろと蛇行しながら進む。

 きっと、どこかで何かが混じっただけだ。
 ただそれだけ。これは私のものじゃない。

 どれだけ言い聞かせても、否定しても、
 喉の奥が狭くなったような気がして。
 必要ないはずの息が苦しくなった。
 目頭が痺れを訴え、熱を帯びた。ねえ、どうして。]
(26) 2022/08/13(Sat) 13:08:20

【人】 空虚 タチバナ

 
[頭が痛い。息が苦しい。
 闇を引きずる女から、地を這う呻き声が広がる。]*
 
(27) 2022/08/13(Sat) 13:08:57
空虚 タチバナは、メモを貼った。
(a6) 2022/08/13(Sat) 13:17:16

【人】 空虚 タチバナ

[かれん、と。私の名前を呼ぶ声が聞こえる。

 母ではない。
 彼女が娘の名を呼ぶことなんて滅多になかった。
 他人がいる時だけ取り繕うように紡ぐ響きは、
 何かが切れてしまうより前から他人事のようだった。

 私だけを見て、私だけに注がれる名は、
 彼が抱いた欲に満ちていた。
 欲するままに与え合い奪い合って、
 教えてもらった彼の名前ごと口づけられて、
 交わした熱い吐息にどろどろに溶けてしまうような。

 ――夢のようだった。
 あの時だけは、たとえどんなに愚かだったとしても、
 本物になれたような気がしたから。

 私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
 何度も思い返そうとする頭の中で、
 思い出の彼が私の名前を呼んでいる。]
(32) 2022/08/13(Sat) 17:24:01

【人】 空虚 タチバナ

[過ぎてしまったもしも程、愚かなものはない。

 母の元に生まれたのが私じゃなかったら、
 あの子たちの誰かだったのなら、彼だったら、
 運命のあの日、救いがあったなら>>L0

 一人で抜け出せなかった地獄から連れ出してくれて、
 一緒に暮らして、家族から守ってくれて、
 家事を失敗しても怒られず、二人並んで笑い合って、
 誰にも言えなかったことを打ち明けて>>L2

 叱責≠ノ怯えなくていい、二人きりの生活なんて。]
(33) 2022/08/13(Sat) 17:24:20

【人】 空虚 タチバナ

[本当はもう少し生きてみたかった>>1:114
 誰も助けてくれない、誰も許してくれないと
 長い時間をかけて理解したはずなのに、
 甘えた私の心がもしもを手放せなかった。

 生きている限り、いつか報われるんじゃないかって。

 それがたとえ限りなくゼロに近い可能性でも、
 望まれずとも、生まれることすらなくとも、
 命は命だろうに。心は心だろうに。

 やがて絶望し、私のすべてがそれを否定しても、
 正しさが遂行されるその瞬間まで、
 私の心には欠片がひとつ突き刺さったままだった。]
(34) 2022/08/13(Sat) 17:24:35

【人】 空虚 タチバナ

[過ぎてしまったもしも程、愚かなものはない。
 じゃあ、これから起きるかもしれないもしもなら?

 もし、私という存在が彼の欲に塗りつぶされたら。
 私の知らない幸せを注がれ、満たされてしまったら。
 もし、彼の知らないことを教えてしまったら。
 無抵抗の首に手をかけ、未練なく殺してしまったら。

 むすぶが消えてしまうんじゃないかと、
 それが……どうしようもなく怖ろしい。

 しかし彼>>31はこちらへ躊躇なく踏み込んでくる。
 怖くないのだろうか。
 やり直しも後戻りもきかないのに、
 どうしてそんなに強いんだろう。]
(35) 2022/08/13(Sat) 17:25:19

【人】 空虚 タチバナ


[空っぽだって言ったくせに、
 私の持っていないものをたくさん抱えた彼が、
 生者の輝きを持つ彼が、憎くて、羨ましくて。
 独り占めしそうになるくらいおいしそうで、
 どちらかが消え、触れられなくなるのが怖ろしくて。

 ――だから、殺してやらないことにした。]
 
(36) 2022/08/13(Sat) 17:25:45

【人】 空虚 タチバナ

[己が画策せずとも、異界化したここから
 容易に逃れることなどできはしない。
 けれど、異界化が終わったのなら。
 彼が望むなら外に出ることだってできるだろう。
 何も阻みはしない。>>1: *57

 快楽が途絶えれば痛みが生まれ、
 彼の理性を試そうとするだろうけれど。
 抜け出しさえすれば、痕跡すら消えてなくなる。
 彼がもう死に触れすぎてしまった事実に
 気づくことは未だない>> *3。
(37) 2022/08/13(Sat) 17:26:34

【人】 空虚 タチバナ

[だから、逃げてしまえばいい。
 ひとときの夢ころしてくれていいと、欲に溺れて生を投げ出さず、
 どこかで幸せに生きてくれたなら。

 だって――
  生きていたら、いつか報われるはずでしょう?

 思いが怨霊のそれから逸脱し始めていることに
 女はまだ気づかない。
 自分に価値などないから、己を省みる時はなく。
 矛盾から目を逸らすように頭の痛みに呻く。]

  ぅ……。

[折角逃げられたんだから、幸運を逃してはいけない。

 あなたに駆け寄ってくれる人がいた>>1:110
 あなたを呼んで探してくれる人がいた>>1:13

 彼らとの関係も、どんな理由があるのかも知らない。
 それでも心配してくれる誰かがいる。]
(38) 2022/08/13(Sat) 17:27:24

【人】 空虚 タチバナ

[この場に溜まる怪異は、あらゆる手段を用いて
 求める者を手に入れようとする。そういうモノだ。
 生者の延長線にいたとして、境界は存在する。
 だから、]

  ぅ……ぁ゛… ァ……。

幸運ただしさを逃してはいけない。
 もし、次にその姿を捉えることがあったなら、

 今度はもう、手放すことはできないだろうから。]**
(39) 2022/08/13(Sat) 17:28:38
空虚 タチバナは、メモを貼った。
(a9) 2022/08/13(Sat) 17:33:02

【人】 空虚 タチバナ

[痛くて、苦しくて、どうにかなりそうだった。
 生者を死へ誘う程の強く暗い感情が、
 今日ばかりは自分すら傷つけるように荒れ狂う。

 生者の目を多く見てしまったから?
 注いだ痛みを他人事だと思えなかったから?
 それとも異界化の影響だろうか。
 彼女の口にした救いは、生者だけに与えられるのか。

 いや、一度両手に抱えてしまったからだろうか。
 少しでも、欲しいと思ってしまった命を。]
(63) 2022/08/13(Sat) 22:35:25

【人】 空虚 タチバナ


  ……どうして、ここにいるの。

[耐えきれない感覚によろめき、蹲っていたせいか、
 結>>43が近づいていることに気づかなかった。
 髪の隙間から瞳を覗かせ、ずろりと相手を見る。

 尋ねた声は背中と同じく、か細く震えていた。
 彼に肩を支えられるまま手を引かれ、立ち上がる。
 得た質量を支えきれず、
 彼へよりかかるように身体が傾いだ。]

  ぁ……、

[あたたかい。
 死んだ者にはないぬくもりが触れた場所から広がる。
 決して熱が移る訳ではないけれど、
 己を苛んでいた痛みが和らいだ気がして
 身を離そうとした意思も忘れ、身を任せる。

 彼は、寄り添うことを許してくれるだろうか。
 拒まれない限りはそのままの体勢で、
 彼の言葉と心音に耳を傾けるつもりだ。]
(64) 2022/08/13(Sat) 22:35:48

【人】 空虚 タチバナ

[彼の提案はそう長くなかった。
 けれど私より雄弁で、私よりずっとまっすぐだった。

 人の言葉をなぞる悪戯にはじとりと視線を向けたが、
 おぞましさよりも拗ねたような色が宿る。
 最初からこちらを怖れもしなかった彼にとっては、
 何の牽制にもならないだろう。]

  なんで……、

[また彼に理由を尋ねようとして、口を噤んだ。
 「あなたには他にも幸せがあるのに」なんて、
 傲慢にも過ぎる言葉だったからだ。

 私の地獄が世間にとって甘えであるように、
 私の思う彼の幸せも、彼には空虚なんだろう。

 それを贅沢だとは思わない。
 正しい選択ではないのかもしれないけれど、
 正しさが幸福を保証しないことは
 ずっと前から分かっていたのだから。]
(65) 2022/08/13(Sat) 22:36:10

【人】 空虚 タチバナ

[彼が私の名前を呼ぶ。
 そう長く離れていた訳でもないのに、
 頭の中で繰り返していた声>>32よりも鮮明な響きが
 澱んだ何かを流してくれるようだった。
 髪の先に縋っていた闇>>21がほどけていく。]

  ……結、むすぶ、 むすぶ?

[存在を確かめるように空いている方の手を伸ばす。
 色に浸る時よりもぎこちない、頬を撫でる仕草。
 寄りかかっていた身体を少しだけ起こして、
 彼の目が見える位置に顔を上げる。]

  ……ぁ、…… っ、 わたし で、
   …………わたしで、 いい ……の?

[もし心臓が残っていたら、
 鼓動の激しさに破裂していたかもしれない。
 無価値の真実を植えつけられた女には、
 求めた者が自分を欲してくれるなんて未来が
 訪れるとはどうしても信じられなかった。

 緊張に口の中が渇いて、何度も生唾を飲み込む。
 今にも「そんな訳ない」と返って来やしないかと
 いいや彼に限ってそんなはずはないと、
 正反対の感情に心がバラバラになる。]
(66) 2022/08/13(Sat) 22:37:02

【人】 空虚 タチバナ

[でも、私を知りたいと言ってくれた。
 手を離そうとしたのに、また見つけてくれた。

 期待するのは怖くて、信じるのは恐ろしくて、
 喪ってしまうのはきっと耐えられない。

 言葉で返事をするより先に、
 闇の拘束を解いた身体が彼に抱き着こうと跳ねる。]
(67) 2022/08/13(Sat) 22:37:15

【人】 空虚 タチバナ

[生者と死者の間には大きな隔たりがあり、
 お互いの望みを阻む理由も気づいている>>44
 この場所で生き続けるのは決して楽ではないだろう。
 けれど、不可能ではない>>0:69

 時を司る強い力はないけれど、
 もう二度と離してはあげられないから。

 諦めて、一緒に地獄こうふくへ沈んでもらおう。
 少しでも多く未練を育んで、彼の好まない絶望で
 死んでも私から離れられないように。

 私の選んだまことはここにある。
 結が取ってくれた手を、己の意思で握り返した。]*
(68) 2022/08/13(Sat) 22:39:31

【人】 空虚 タチバナ

― 選択の先/院内廊下→ ―


  ……出たいの?

[廃病院に似合わないデートという単語に面食らう。
 それから彼の外を望むような様子に、
 じとりとした視線を向けた。]

  ダメ。結は私の傍を離れちゃダメ。

[繋いだ手を引き寄せ、
 引き連れた闇が紐のように細く伸び、
 二人の腕の周囲にぐるぐると巻きついた。

 まだ恐る恐るといった域を出ないが、
 これまでよりずっと露骨に彼への執着を示す。]
(69) 2022/08/13(Sat) 22:39:52

【人】 空虚 タチバナ


  ……少なくとも今は絶対に出られないよ。
  外とは別世界だから。

[結局は正直に答えてしまうのだけど。
 彼がお腹が空いたというのなら、
 購買部や食堂の話をするつもり。]

  あ……料理、したこと ない。

[監視で母の時間を奪う手伝いは許されていなかった。
 だからきっと上手にできない。
 代わりに食器はすごく綺麗に洗うはずだ。
 まるで生きた人間みたいに手が荒れてしまったら
 ハンドクリームを塗ってくれたら嬉しい。

 もしかしたら、愚かだと切り捨てた過去の夢が、
 未来へ形を変えて蘇ることもあるかもしれない。]
(70) 2022/08/13(Sat) 22:40:35

【人】 空虚 タチバナ


  何……食べたい?
  食べ物の味、もう忘れちゃった。

[結に手を引かれるまま病棟の廊下を歩く。

 引きずる闇こそ離れたが、
 黒い髪に紛れて細い闇が揺らめいている。
 むしろ彼の片腕は解こうとしない限り捕らえたまま。
 さながら捕食でもされているような有様だろう。

 他の獲物にちょっかいを出す怪異は多くないはず。
 けれどもし彼に手を出そうとするのなら、
 威嚇くらいはするかもしれません。ね。]*
(71) 2022/08/13(Sat) 22:41:27
空虚 タチバナは、メモを貼った。
(a14) 2022/08/13(Sat) 22:46:23

【人】 空虚 タチバナ

― →購買 ―


[結と己を捕らえた影は痛みこそないが、
 身じろぎを封じる程の圧迫感を与える。
 触れ合った腕、服越しでも彼の体温を感じた。

 どれだけ触れ合っても同じ温度にはなれずとも、
 彼の生きたぬくもりが何度も滲んで溶けていく>>79

 長らく感じていなかった、
 あるいは初めて感じる心地よさだった。
 肌を重ねる鮮烈な快感とは違う穏やかさが、
 永久に己を苛み続ける痛みから遠ざけてくれる。

 今この瞬間は、頭痛が心を乱すことも
 混じった誰かの情景が全身を傷つけることもない。

 だから彼が噴き出して懸念が杞憂だと分かっても、
 片手の不便を訴えられるまでは
 拘束が緩まることはなかっただろう。]
(92) 2022/08/14(Sun) 1:55:22

【人】 空虚 タチバナ

[道中、結の語る展望は、
 生者らしく陽光の下を歩くような光景だった。
 当たり前のようにここを離れることを口にする彼。
 想像もしなかった内容に死を湛えた目を見開く。]

  どう……かな。

[命ある彼はどこへ行っても息ができるだろうけれど、
 本来ここに在るべきでない自身は
 この病院に渦巻く怨念や邪気によって力を得た身だ。
 もちろん、己の感情ありきではあるけれど、
 ここを離れても今の質量を保てるとは思えない。

 ――それに、強い力を持つ彼女>>0:1
 彼女が寄りそう彼>>0:0が逃がしてくれるかどうか。
 死者との交流をあまりしてこなかった自身には
 どうにも判断がつかなかった。

 つくづく、何もかも違う存在なのだと実感する。
 捕らえたままの腕の先、繋いだ手を強く握った。]
(93) 2022/08/14(Sun) 1:55:42

【人】 空虚 タチバナ


  そうだな……うん。
  …………結となら、いいよ。

[自分のために生きたままの結をここに閉じ込めたら、
 病気を患っているという彼>>1:2の余命を待たずに
 その命を取りこぼしてしまうかもしれない。
 もしくは精神の方がやられてしまうかも。

 彼の全部が欲しいけれど、
 好まない苦痛を与えたいとは思わなくなっていた。

 だから事実も感情も偽らず、口を閉ざさず、
 ありのままの想いを彼に告げよう。

 痛くないように、少しずつ。
 私を分け与えると約束したのだから。]
(94) 2022/08/14(Sun) 1:55:58

【人】 空虚 タチバナ


  だから……離れるのだけ、やだ。

[どこにもいかないで。一緒にいて。
 やがて新鮮な気持ちがなくなっても飽きないで。
 ずっとずっと、死ぬまで、死んでも、
 私以外を選んではいけない。

 だって、あなたは私だけの獲物ひとだから。

 いつかはこの感情のすべてを彼に明かすのだろう。
 しかし、今はこわごわ様子を伺いながら
 距離を縮めて甘えるだけだ。]
(95) 2022/08/14(Sun) 1:56:19

【人】 空虚 タチバナ

[普段精神病棟ばかりを彷徨い歩いているが、
 さすがに食堂や購買といった目立つ場所は分かる。
 結を案内しながら、彼の話>>82に耳を傾けた。]

  んー……もうよく覚えてないけど、
  ナポリタンは子どもの頃食べてたな。冷凍のね。

[仕事が忙しい母だったが、
 自身が台所に立つことは許されなかった。
 必然的に出来合いの物が食卓に並ぶ機会も増える。
 冷凍食品のナポリタンはメニューのひとつだった。

 なお、女自身に自覚はないが、
 死して既に20年近く経っている。
 つまり女の死と彼の生がほぼ同時期な訳で、
 話の内容によっては時代の齟齬が生まれたかも。
 ところどころ記憶が曖昧なので、
 そう起きることではなかったはずだ。
]*
(96) 2022/08/14(Sun) 1:56:52

【人】 空虚 タチバナ

― 特別個室病棟 ―


[特別個室病棟は病室エリアの上階にあった。
 お金持ちという存在は高い場所が好きなのだろうか。
 当時であれば階下の景色を見下ろせただろうが、
 異界化した今は満足に外を見ることも叶わない。]

  わぁ。

[ある程度整った部屋を見たのは久しぶりだった。
 通常個室より上等なベッドは他より形を保ち、
 食事のとれそうなテーブルや椅子も並んでいる。
 洗面台や専用のシャワールームもあったか。

 理由は分からないが、
 生活に必要な最低限のライフラインは
 なぜか今も機能していた。

 さすがに電子レンジまであったかは定かではない。
 故に、購買部にも冷凍の商品は少ないかもしれない。
 運搬のために離した両手には、
 結の腹を満たすための食事が抱えられている。]
(97) 2022/08/14(Sun) 1:57:19