21:00:46

人狼物語 三日月国


179 【突発R18】向日葵の花枯れる頃【ソロ可】

情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:人


月が姿を変え、新たな一日が始まった。村人は集まり、互いの姿を確認する。
ぶんまるが無残な姿で発見された。

伝承は真実だった。異形の刃を持つ魔物“人狼”は、確かに存在するのだ。

もはや村人たちに猶予は無い。早く人狼を見つけ出し、処刑しなければ。罪のない者を処刑してしまう事もあるだろうが、それも村のためにはやむを得ない……。

現在の生存者は、霧ヶ峰 友紀、高峰 誠一郎、高山 智恵、古寺 貴菜、楯山 一利、室生 悠仁の6名

天のお告げ(村建て人)は、メモを貼った。
2022/10/16(Sun) 23:32:08

【人】 霧ヶ峰 友紀

 
─公園─
 
「なるほど、フリーターさん…。」
 
 
>>1:145フリーターが絶対的に悪いわけじゃ無い。
けど、それなら幼馴染さんが心配する気持ちも分かるってもんだ。
ダンスに対する真剣度が伝わってなければ尚更だろう。
昔からお姉さん的に動いていたなら尚更で。
>>1:146そのダンスに関する気持ちも伝わって。
そうか、真剣にやってるなら。
でも、真剣にやっててもどんなに努力しても報われない夢はある。
才能だとか幸運だとかコネだとか。純粋に努力した時間だとか。
夢はいつか叶うさ、ハハッ! とは言えない。
それが分かるから、幼馴染さんもやっぱり心配にはなるんだろう。
 
(0) 2022/10/17(Mon) 0:11:53

【人】 霧ヶ峰 友紀

 
「うーん…取り敢えず、心配させないためには
 定職に着くのがおすすめだと思います。
 けど、ダンスを真剣に頑張りたくて
 その時間を取りたいなら
 せめて、資格でも取っておくとか?
 そんな安全牌用意するのは逃げ、かと思われても
 就職に関する国家資格取っておけば強いですから。
 嫌じゃなければ介護士さんとか。
 受験資格分かんないですけど保育士さんとか。
 手に職あると、ギリギリまで頑張ったその後でも
 就職しやすいからそれまで頑張りたいとか言いやすいし
 実際、人手が足りない業界で資格持ちなら
 就職しやすいでしょうし。」
 
 
実際、これは私も親に言われたことがある。
少しでもあの人に近い世界に行きたくて、声優になりたいと憧れた時に言われた。
看護師か保育士か調理師の資格取って、夢破れても職を得やすいようにしなさいって。
結局声優の道には進まずに、他に見つけたやりたいことを続けてるけど。
その時の親の言い分は今言ったそれそのまま。
将来の道を他にも用意した上で、ギリギリまで夢を追いかけられるように。
親にも少しばかり安心をあげられるしね。
だから少しばかり、そんなアドバイス。
自分で思ってる以上に、自分の未来のことを案じてくれる人はいるみたいだから。
 
(1) 2022/10/17(Mon) 0:12:11

【人】 霧ヶ峰 友紀

 
それにしても、幼馴染という関係はやっぱり難しいみたい。
でも、今更、という言葉には首を捻る。
だって彼はまだ伝えてもいない。
変化が怖いのは分かる。
壊れてしまったら嫌だという気持ちも。
拒絶されることはなかったファンのくせに大泣きしてる自分が言うのも何だけどね。
 
 
「伝えなかったらいつまでも"弟"のままかも。
 よく漫画や小説であるじゃ無いですか。
 実は両想いで、お互いに相手のことを
 兄弟みたいと思われてる、と思い込んでて。
 結婚式の直前直後に本心を知ってうわー!みたいな。
 まあ現実、そんなに上手くいくとも限りませんけど
 真剣に伝えて、それでも茶化されてしまうようなら
 …そこで初めて、終わり、ですかねえ…。」
 
 
真剣な空気は伝わるもの。
それを茶化して誤魔化して遠ざけてしまうような人は、真剣な恋の相手に相応しく無い気がした。
だって実際には血はつながっていない。
幼馴染、弟分ぽいというだけ。
それなのにもし曖昧にされてしまうのなら諦めたほうが良い。
真剣に返して貰えたなら、それがどんな答えであっても向き合うべきだ。まずはそこからだ。
でもそれがとても怖いのも分かる。
うーん。少し唸って。
 
(2) 2022/10/17(Mon) 0:12:34

【人】 霧ヶ峰 友紀

 
「…カズさん。」
 
 
まだ、私たちはテーブル挟んで向かい合わせだったかな。
それならちょっと移動して隣に座る。
そしてコホン。咳払い。
カズさんの両肩に両手を置いて、その顔を真正面から見つめた。
頭を抱え込んだままなら、見てたのは旋毛かもだけど。
 
(3) 2022/10/17(Mon) 0:12:51

【人】 霧ヶ峰 友紀

 
「カズさんはカッコイイですよ〜!
 私と一つしか違わないのに大人っぽいし!優しいし!
 急に涙目でお酒誘ってもこうして付き合ってくれて
 初対面なのに良い人! ありがたや!
 陽キャかなと思いきや繊細ハートの持ち主で!
 私のことも凄く励ましてくれる気遣い屋さん!
 ダンスも頑張ってて真剣にやってて
 フリーターなら無限の可能性!
 絶対大丈夫なんて無責任なことは言えないけど
 こんなに良い男のカズさんなんですから
 もっと自信持って良いと思うんですよ!
 
 もしダメだったその時には
 私、こうしてまた話聞きますから。」

 
 
顔が赤い。いや〜、素面じゃこんなこと真っ向から言えない気がする!
お酒の力万歳!
でもね、言ってることは本当にそう思う。
カズさんは良い人だよ、良い男だわ。
だからもっと自信持って良いと思うんだよね。
だから私は大真面目に言い切って、スマホを取り出すと「らいん交換しましょ〜!」ってスマホをぶんぶん。
当たって砕け散ったら骨は拾ってやろうというウエメセ精神もある。
まあやや声大きいのは酔ってるせいだね!
 
(4) 2022/10/17(Mon) 0:13:12

【人】 霧ヶ峰 友紀

 
「…自信。持ってください。」
 
 
ね。
きっとカズさんが思ってるより、カズさんはもっと良い男だから。**
 
(5) 2022/10/17(Mon) 0:13:32
高山 智恵は、メモを貼った。
(a0) 2022/10/17(Mon) 7:52:23

【人】 高山 智恵

 昨日の夜もさ、そうだったんだ。

 カフェのドアに“ closed ”を掛けて、バイトの子たちと店内を掃除して片付けて、売り上げを整理して、SNSを更新して、帰る時にスマホの電源を入れて――。
 チャットの通知が1件来ているのが目に入って。
 ……もう一度スマホの画面を落として、歩いて家路に着く。

 アパートの一室に帰って鍵を掛けて、スニーカーとコートを脱いで鞄をハンガーラックに掛けて、手洗いうがいして、冷蔵庫の中身を思い出しながらカーペットの上に座り込んで。
 それから漸く、新着通知の内容を確かめる。
(6) 2022/10/17(Mon) 8:24:41

【人】 高山 智恵


 チャットに送られてきていたのは、全くもって可愛らしくないワイルドな顔の野良猫の写真。
 
(7) 2022/10/17(Mon) 8:27:11

【人】 高山 智恵

 ……野良猫? 野良猫だよね? うん。首輪もついてないし、右耳もサクラカットされてたし――ってことは地域猫ってやつなのかも。
 ともあれテレビのCMに出てくるいかにもキュートな猫イメージとは程遠い、歴戦の猛者という風貌の猫の写真。
 “ 彼女 ”はこういう写真を、今でもSNSチャットを通じて私に送ってくる。

 彼女とのチャット履歴には、いかにも「チャット」「トーク」らしいテキストの遣り取りは殆ど投稿されていない。
 彼女が何かしらの写真を送って、たまにその後にスタンプや絵文字、単語一語程度のテキストが添えられてくる。
 それに対して私もスタンプを返したり、或いは短文で感想を伝えたり……という日常が続いている。

 彼女からの写真のセレクトは、新作だったり考案中だったりするメニューのそれらもあるけれど――。
 さっき言ったような可愛げのない猫とか、多分身近で見つけたんだろう鳥だとか虫だとか、っていうのも多い。
 ちなみに私は特に虫が好きって訳じゃないし大学で専攻したとかいう訳でもないけれど、別に苦手でもない。彼女はそれを知っているから虫の写真をわざわざ私に送ってくる、という訳だ。
(8) 2022/10/17(Mon) 8:42:58

【人】 高山 智恵

 そんな、彼女が彼女なりに見つけて送ってきた“ 素敵なもの ”の写真を、私は今でも受け取って見ている――見てしまう。
 彼女が彼女の“ 素敵 ”を進んで私に差し出すのを――その“ 素敵 ”が私に理解不能なものであっても――私は無視することができない。
 中には他の人には拒絶すらされかねない、つまり他に送る相手の宛てがないものもある、というのもあって、なおのこと放っておけないままでいる。

 こうして、私は彼女との繋がりを自分から絶てないでいる。
 自らの目標にあまりにも真摯で、それでいてひどく無邪気で……必ずしも誰からも愛され理解される訳じゃない彼女から、離れられずにいる。
(9) 2022/10/17(Mon) 9:17:33

【人】 高山 智恵


 私の中にあるのが、ただ。
 何の見返りもなく、ただ見つめ続けるだけで満たされるだけの想いだったなら、どんなにか、良かっただろう。
 
(10) 2022/10/17(Mon) 9:17:50

【人】 高山 智恵

 ……こういう私だから、なのかな? 別に関係ないかな?
 私には、ただひとりの相手を献身的に「推す」ということが、よく判らない。
 その結果、音楽サブスクのプレイリストには特定のアーティストを登録することなく、とりあえずざっと聞いて気に入った曲ばかりが「お気に入りLiked Songs」という形で追加され続けている。
 ちなみに私がハートマークを押した曲の最新は知る人ぞ知る海外のシンガーソングライターの最新曲だ。**
(11) 2022/10/17(Mon) 9:21:36
高山 智恵は、メモを貼った。
(a1) 2022/10/17(Mon) 9:38:01

【人】 古寺 貴菜

最近薄々感づいてきているが、自分の一番ダメなところは人間に興味がないことだろう。
そんなことを二番目の男へメッセージを返しながら思う。

色々とアドバイスするのは自分をよく見せたいという人間らしい感情の他に、自分の一言で事態がどう動くのかを見たいためなのではないか?

『お前の奥さんがどんな人物か知らん』
『奥さんの実家なり友人なりに連絡してみろks』

一瞬、そんな思考実験めいた発想に至りそうになるが、そこまで人間味を失ってはいないはずだと自戒する。

人間に興味がないから内面に踏み込まないし、こちらの内面に踏み込んでも来ないから相手に興味を持てない。

……恋愛以前に人間としてどうかと思うタイプの人間だな。
うん。
(12) 2022/10/17(Mon) 10:47:56

【人】 古寺 貴菜

『お前警官だろ?探してくれよ』

馬鹿の返信に思わず遠い目になった。
確かにそう、確かに警官だ。だが失せ人探しは探偵の仕事だ。

『お前マジでks』

警察を動かすなら然るべき手順を踏んでもらわないと困る。
仮に届を出したとしても、今回のような成人が自らの意思で家を出た場合、まあまず受理されないだろうが……。

『とにかく自分が何をしたのか反省するところから始めろ』

男を見る目がないというかなんというか……、自分が知っている頃のバカはもうちょっとマシではなかったか?
いや……何かしらのフィルターでマシに見えていただけかもしれない。
なにか、こう……どっと疲れが押し寄せてきた。**
(13) 2022/10/17(Mon) 11:03:28
古寺 貴菜は、メモを貼った。
(a2) 2022/10/17(Mon) 11:07:14

【人】 室生 悠仁

  

  後輩とは学校を卒業してからも交流を続けていた。
  とはいって、人とやり取りすること自体が
  まず少ない俺より、彼との方が
  仲が良いように見えたものだが。
  明るい彼と暗い、と言うほどでもないが
  明るくはない俺とでは、接しやすさが違うのだろう。

  それでも、良く懐いてくれる様子に悪い気はしなかった。
  彼と後輩が接する姿にほんの少し焼けるものはありつつも
  許容する程度には、懐に入れていた。
 
(14) 2022/10/17(Mon) 13:32:44

【人】 室生 悠仁

 

  半年ほど前、ブレイクダンスの大会があった。
  幼少期から趣味でやっている後輩から
  出場するから見に来てくれとチケットを貰い
  彼と二人で観に行くこととなる。
 
  そこまで大きな大会ではなかったらしいが
  今まで何度か誘われて見に行った中では
  大きい方に見えた。

  チーム戦だったか、個人戦だったか。
  いつかぶりに見たダンスは迫力があり
  技など深く知らずとも、見ているだけで楽しめた。
 
(15) 2022/10/17(Mon) 13:32:55

【人】 室生 悠仁

 

  学生の頃は少年、と言っていい体躯だった後輩は
  高校も後半、遅い成長期でぐんぐんと背が伸びていき
  今や立派な体をした大人になっている。

  それでも、顔に散ったそばかすが
  背の高さによる迫力より愛嬌を齎しているから
  あまり怖がられることはないらしい。

  服装は少しイケイケというか、あまり落ち着かない
  世にいうパリピだとかDQNだとかのようだが>>1:4

  人に迷惑をかけないならそれで。
  好きな格好を遠慮なくしたら良いと思う。
  
  なにより後輩に似合っている。
  後輩の祖母も褒めてくれているらしかった。
 
(16) 2022/10/17(Mon) 13:33:07

【人】 室生 悠仁

  

  ダンス大会中、来ていいと言ってもらったので
  楽屋裏に軽く挨拶に向かった。
  差し入れにクッキーやサブレの入ったお菓子を渡すと
  甘いものが好きな後輩は大喜びをしていた。

  激しく動くだろうからカロリーのあるものをと思ったが
  食事制限もするという>>1:33後輩に良かったのかは
  よくわからなかった。
  しかし、喜んでいたからにはとりあえず良かったのだろう。

  多めに持っていったから、他にも出場するものや
  出場しない、応援に来ただけのものにも
  分けてあげたりもするかもしれない。

  その時には、尊敬する先輩から貰ったとか
  言っているかもだが、俺には関与し得ない話だ。
 
(17) 2022/10/17(Mon) 13:33:16

【人】 室生 悠仁

 

  さて、見に来たからにはと後輩の優勝を願っていたが
  大会では残念ながら違うものが優勝したようだ。
  後輩は悔しそうにしていたが、満足そうにもしていた。
  壁が高いほうが燃え上がるタイプらしい。
  
  その日は参加者同士で飲み会があったようだから
  改めて話したのは後日。

  ダンス大会のことと、ダンスチームでのことと
  あとは日常についてを三人で飲みながら話していた。
 
(18) 2022/10/17(Mon) 13:33:31

【人】 室生 悠仁

  

  
   『 お二人ってあれから恋人とかできたんすか?』


  酔いも回ってきたのなら、話題にはそういうものも
  上がってくるものだろうか。
  相変わらず敬語には慣れていないらしい後輩の言葉に
  酔っていた頭も少しの理性を取り戻す。

  とはいえ、元から酒には強いほうだ。
  あまり深く酔っていたわけでもない。
  なにより、酔って完全に理性を手放せば
  隣りにいる彼になにをするともわからないから。
 
(19) 2022/10/17(Mon) 13:33:41

【人】 室生 悠仁

 

  いつものように、興味がないと>>1:9俺は嘯くけれど。
  彼は俺と違って興味ありありなようで。
  嘆くように聞いてくれよ! なんて軽く叫んでは
  後輩に対して管を巻く。

  この間も素敵な女性を見つけたけど
  興味を持たれなかったとか
  付き合うことが出来ても長く続かないとか
  俺は一生独身で、誰かと共に生きれないだとか。

  ぐちぐち零していても、優しい後輩は親身に
  うんうん、と頷いてくれる。
  単純に酔ってるからノリで
  頷いてるところもあるだろうが。
 
(20) 2022/10/17(Mon) 13:34:07

【人】 室生 悠仁

 


   『 うーん、それなら……悠仁先輩と結婚するとか
     どうすかね! 』


  自分から矛先が逸れていたことで穏やかに
  彼らの様子を眺めていれば、突然冷水を浴びせられた。

  何故、そこで、俺?

  驚愕を表に出さないように咄嗟に表情を引き締めたが
  よく考えれば普通に驚いていい内容な気もする。
  いや、どちらかというと呆れたほうがいいのか。

  落ち着けるように酒の入ったグラスに口をつけても
  動揺した心が静まることはない。
  彼は、どういう反応をするのか。
  俺の関心はそこばかりに集まっている。
 
(21) 2022/10/17(Mon) 13:34:26

【人】 室生 悠仁

 

  冗談を言って乗るのか。真面目に返すのか。
  ありえないと零すのか、それとも。
  様々な思考が酔った頭の中を滑っていく。

  生唾を、出来るだけ音を立てないように飲み込みながら。
  さあ、彼の答えは。そんな気持ちで彼の顔へと目を向ける。
  赤い顔をして若干潤んだ目をした彼は、目の毒に思った。



   『 それはな ───  』
 
 
(22) 2022/10/17(Mon) 13:34:45

【人】 室生 悠仁

 

  ・
  ・
  ・


  酔いに酔った彼に肩を貸して帰路へとつく。
  飲んでいた居酒屋からは彼の家より我が家のほうが近い。

  半分寝ているのだろう、かけられた体重は重く
  連れて帰るのも一苦労だ。
  後輩が手伝おうかとも言っていたが、
  後輩の高い身長を考えると肩を貸すのは難しいだろうから
  断って現在こうなっている。
  

  月が明るい。今日は満月か、それにほど近いようだ。
  丸く輝く光を引き立てるように
  星々はきらきらと灯っている。
  足元も見やすく、転ぶようなことにはならないだろう。
 
(23) 2022/10/17(Mon) 13:35:31

【人】 室生 悠仁

 

  歩きながら、先程の酒場でのことを思い出していた。
  彼は酒に弱いというほどではないが特別強くもない。
  途中からへらへらと笑っては様々な話をしていた。

  後輩と飲むのが久々、ということも理由の一つか。
  俺がいることもあり、羽目を外しても良いというように
  いつもより多く酒を飲んでいた気がする。

  だからこそ、今まで口にしたことのないようなことも
  口からついて出たのだろう。

  そういう話題に今までならなかったこともないのに。
  避けていた、とは思いたくないが。
 
(24) 2022/10/17(Mon) 13:35:44

【人】 室生 悠仁

 


   『 ─── 悠仁は、そういうのじゃないから。 』


  耳に入ってきた言葉を、理解するのに数瞬。
  ぱちぱちと瞬いた目を少しして
  ……だろうなというように曖昧に伏せた。
  
  酒を飲む。苦い。
  甘めのものを頼んだはずだったのに
  どうしようもなく苦く感じる。

  それなのに、不思議と飲む手が止まらない。
  今は苦いものを飲みたい気分だったから
  丁度よかったのだろう。
 
(25) 2022/10/17(Mon) 13:36:02

【人】 室生 悠仁

 

  こんなやつこっちから願い下げだ、と
  そう言葉にすれば、笑いが生まれた。
  またまた、とかひでーとか、そんな身内特有のノリで
  この場の時間が流れていく。

  悲しくなんてない。辛くなんてない。
  すべてわかっていたことだった。


  最初からわかっていたこと、なのに。
  胸が軋むように痛むのは、何故なのだろうな。
**
 
(26) 2022/10/17(Mon) 13:36:20
室生 悠仁は、メモを貼った。
(a3) 2022/10/17(Mon) 13:39:17

【人】 楯山 一利


定職に就いた方が、親もアイツも
安心はするんだろうけど
今はダンスの方を頑張りたい。
こういうのって、身体がまだ動く
若い時にしか出来ないことだとも思うし。
好きなことやる時間を犠牲にしてまで
定職に就かないといけないほど
今は、別に切羽詰まってるワケでもない。

あの時、もっとダンスやっとくんだった。
って後悔だけは、したくなかった。

ただ、友紀さんの言い分も
一理あるなとは思うので。>>1
(27) 2022/10/17(Mon) 14:26:15

【人】 楯山 一利


「俺、頭良くないんで
 受験はせずに就職しようと思って
 高3の下半期は就活してたんすよね。
 でも、ちょうど氷河期に入っちゃって……。
 なんかそれで、モチベも下がって
 色々諦めちゃってましたね。

 …資格取るの考えてみようかな。
 アドバイス、ありがとうございます。」

定職まではまだ考えられないけど
資格だけは取って置いても良いかなと思った。
果たして、バカな俺が勉強しても
国家資格なんて取れるのか不安はあるが。

仲間の誰かでいたっけ……?
今度聞いてみよう。
(28) 2022/10/17(Mon) 14:26:55

【人】 楯山 一利


『伝えなかったらいつまでも"弟"のまま』>>2
それは……嫌だった。
この"姉弟"みたいな関係は脱したい。
でも、それ以下の関係にはなりたくない。
だったら何も言わない方が良いんじゃないか。
って、逃げた考えが過ってるのも否めない。

友紀さんの例え話には「まさか…」って
半信半疑の気持ちのがあったんだけど
本当にそう言う事が、あり得るのかもなぁと。

だって、俺も伝えてないけど
アイツの本心だって、聞いた事もないんだから。

「そうっすね……。
 俺もアイツの姉としての義務感
 みてぇな言葉だけを
 そのまま鵜呑みにしてるだけで。
 アイツの本当の気持ちなんて
 聞いた事もなかったんですよね……。

 もう後戻りできなくなった段階で
 実は…って展開。
 もしかしたら、ゼロじゃないのかも。」
(29) 2022/10/17(Mon) 14:27:59

【人】 楯山 一利


ガキの頃から近い距離に居るせいで
お互いのこと全部知っているような気になってた。
でも、年齢を重ねれば重ねる程
知らないことも増えてくんだろうか。

アイツは、俺の話をちゃんと聞いてくれるのか?
アイツは、俺の問いにちゃんと答えてくれるのか?
…分からない。悪い方にしか想像できない
全然自信が持てなかった。

いつの間にか友紀さんが隣に座っていた。
悩み葛藤し、考え込んでしまっていた俺は
両肩に手が置かれて、初めてそれに気が付く。>>3

「……友紀さん。」

俯きがちだった俺は
鬱々とした表情で、友紀さんを見返す。
小さな咳払いの後に出て来た
友紀さんからの激励の言葉の数々に>>4
ちょっと度肝を抜かれて、目を見開いた。
(30) 2022/10/17(Mon) 14:29:46

【人】 楯山 一利


まさか友紀さんから
こんなに元気な声が出るとは思わず。
最初は自分とは真逆のタイプで
暗い人なのかな…って思っちゃってたけど
実は、根はとても明るい人なのかも?


真っ赤な顔をしているのは、酒のせいなのか
言葉にした後での恥ずかしさからか
それは俺には判断付かなかったけど。

人の事を良い所を褒める時も、
結構勇気いるもんだよな。

こんなに褒めて貰えた事なんてなかったから
ちょっと照れ臭かったけど。
『自信。持って』と背中を押されたことも
スッゲー嬉しかったから。>>5
(31) 2022/10/17(Mon) 14:31:32

【人】 楯山 一利


「ハハッ……。
 俺も友紀さんに、励まされちゃいましたね。

 ありがとう、ございます。
 めちゃくちゃ嬉しいっす。

 ちょっと、自信つきました。」

自分の良い所なんて分からないものだけど
こうやって言葉にされると、
気付かされる事があるもんなんだと。

これが……
"伝えること"の大切さ、なのかなぁって。

「……こんなに褒めて貰った後で
 行動に移せないのは、男が廃りますよね。

 分かりました。
 俺、アイツにちゃんと伝えてみます。」

さっき喧嘩…って、もうどんくらい経ったか
まだ半日も経っていないと思うが
時間が経てば経つほど、溝も深まりそうだし

俺も、酒の力と友紀さんからのエールを借りて
アイツに気持ちを伝えることを、決心する。
(32) 2022/10/17(Mon) 14:32:00

【人】 楯山 一利


「もしダメだったら……
 また話聞いてやってください。

 勿論、俺も友紀さんの話は
 いつでも聞きますんで。
 気軽に連絡くれたら嬉しいです。」

俺もポッケからスマホを取り出して、
友紀さんとのライン交換に快く応じる。

一緒に飲んで語り合ったこの縁は
これからも、大事にしたいと思った。*
(33) 2022/10/17(Mon) 14:32:21
霧ヶ峰 友紀は、メモを貼った。
(a4) 2022/10/17(Mon) 15:03:50

楯山 一利は、メモを貼った。
(a5) 2022/10/17(Mon) 15:04:03

楯山 一利は、メモを貼った。
(a6) 2022/10/17(Mon) 15:04:20

楯山 一利は、メモを貼った。
(a7) 2022/10/17(Mon) 15:06:41

【人】 高山 智恵

 失恋の傷心の客が(お初さんも常連さんも)立て続けに来店したあの日の、明くる日。
 朝がまた訪れれば、昨日と変わらずカフェへと――。
 いや、昨日と変わらず、じゃないか。今日来るバイトの顔ぶれも、お客様の顔ぶれだって、当たり前のように昨日とは違うんだから。

 開店前の店内清掃に食材の買い出し、ピークタイムに備えてのランチメニューの仕込み、SNS告知などなど……。
 一通りの準備を終えた後、お昼ご飯時より少し早い時間に、ドアプレートをひっくり返して“ open ”を通りに知らせる。

 昨日と同じ明日なんて、ない。
 私の心だって昨日とは違う――と、いいんだけれど。*
(34) 2022/10/17(Mon) 18:37:21
高山 智恵は、メモを貼った。
(a8) 2022/10/17(Mon) 20:01:55

【人】 霧ヶ峰 友紀

 
─公園─
 
まあ国家資格は難しい。
でも、保育士とか介護士は人手が足りないから簡単になってる部分があるとか無いとか聞く。
地域限定とか、スクーリングで取れるよ!とか。
まあ私はそれらの資格結局取ろうとしてないから詳しく無いけど。

うん…それはそれで別件いろいろあってだね。
まあそれは今は良いや。
 
でも、私はカズさんを励ました。
実際良い人だと思うんだよね、カズさん。
幼馴染さんがカズさんを男として見るかどうかはご本人じゃ無いからわからないけど、自信喪失する要素がむしろよく分からない。
私みたいな陰の者じゃなさそうだし。
実際多分予想としては幼馴染さん以外には告白とかされてそう。
でもさっきの話から誠実な人だから、付き合わないか、付き合ったとしても幼馴染の影がちらついて進展なしで終わってそうな気がする。
ナニソレ進展無しでツラいやつや〜!
そのうち俺様キャラに「俺にしとけよ」って強引にキスされてうがむぐいかんこれだとBL。いやだってカズさんこれだとヒロイン位置じゃない?少女漫画だと「俺にしとけよ」「なにするのやめて!」「おもしれー女」かーらーのー幼馴染がそのことを知って嫉妬してくるやつなんか美味しいですねハイ。いや待て違うカズさん男。

 
(35) 2022/10/17(Mon) 22:35:59

【人】 霧ヶ峰 友紀

 
応援の甲斐あってか、カズさんは元気になってくれたみたい。
よかった、と良いに任せてラインを交換した。
そのあたりでお開きかな、良い感じに飲んだし食べた。残ったものをまとめて、ゴミはゴミでまとめてあとで分別する予定。
 
 
「ダメじゃなくても教えてくださいね。
 そうしたら惚気をきっちり聞く覚悟はあります。」
 
 
そう、それも言っておかなくちゃね。
だからその後は軽く片付けて、笑顔で別れられたと思う。**
 
(36) 2022/10/17(Mon) 22:36:22

【置】 霧ヶ峰 友紀

 
P.S.飲酒して帰ってきたらお母さんにラーメンにする?お茶漬けにする?それともアイスクリーム?って聞かれたよ。
酔っ払った時に美味しいもの三選らしい。**
 
(L0) 2022/10/17(Mon) 22:37:17
公開: 2022/10/17(Mon) 22:40:00

【人】 高峰 誠一郎

食べるものも、着るものの傾向も、出かけたい場所すら。
すっかりあいつに支配されている。

やっぱり俺はあいつに何かしらの執着は抱いたままなのだと再認識したのは真っ新なノートをまるまるあいつとあいつの結婚相手についてほぼ一冊書き散らした後だった。
単なる幼馴染ではない。
何か別の、存在。

あいつの俺に向けた表情は対幼馴染用だったんだろうか。
だから簡単に置いていけるのだろうか。
(37) 2022/10/17(Mon) 22:40:50

【人】 高峰 誠一郎

諦めたいのに諦められない。
あいつの一等明るい顔だとか、一等柔らかい声だとか。
そういったものはもうとっくに結婚相手の物になってしまったのだろう。
(38) 2022/10/17(Mon) 22:43:37

【人】 高峰 誠一郎

そもそもの始まりというか、あいつと俺のすれ違いは高校に入る前に始まっていた。
てっきり地元の高校に行くかと思っていたのに、あいつは違う地方の全寮制の男子校に行くと知った時は驚いた。

—黙っていたことがショックだった。

何故教えてくれなかったのかと聞いた。
……完全に真っ新な場所に行って、真っ新な人に会いたい。
だったか。
つまり地元から逃げたい、ということ。
(39) 2022/10/17(Mon) 22:46:49

【人】 高峰 誠一郎

あいつは確かにお袋さんが亡くなってから様子が変だった。
グランプリだって獲ったことがある腕前なのにピアノを弾かなくなったし、その後部活にも入らないでふらふらしている時間が増えた。
彼女ができた的な話があっても保って半年くらい。
……楽しそうにしている様子を、見られなくなっていた。

俺は俺で部活で忙しくてあまり構ってやれていなかった。
幼馴染だし、もう中学生だし、で、そんなにベタベタする時期は越しただろうと思っていた節はある。

そう、思っていたのに。
いざあいつが離れると言えば俺は「行くな」と思った。
天邪鬼、理不尽もいいところ。

それでも俺は。
あいつに望まずにはいられなかったんだ。
—そのまま、何かを求めていれば良いんだって。
(40) 2022/10/17(Mon) 22:52:17

【人】 高峰 誠一郎

恵まれたあいつが羨ましい。
愛されているあいつが憎らしい。
悩むあいつが美しい。
……俺を求めるあいつの全てが愛おしい。

ノートに並んだ字を見ているとそんな歪んだ感情を直視する羽目になる。

こうなったのはあいつの所為なのか、俺の本性なのか。
分からない。
(41) 2022/10/17(Mon) 22:56:38

【人】 高峰 誠一郎

結局気まずいまま俺とあいつは初めて別の学校に所属した。
居なくなった視界の端に映るブロンドを思い出す回数も減っていく。
共学の高校で勉強、部活、異性との淡い恋愛未満のやり取り。
充実していたと思う。
あいつの様子を知る機会は年賀状で垣間見るくらいだった。
(42) 2022/10/17(Mon) 23:01:55

【人】 高峰 誠一郎

それから数年後……俺を暗闇のどん底に叩き落とす結婚式の招待状が届いた。
普通の大学を卒業していたなら新卒から2,3年経った頃合い。
そんなこと—結婚を微塵も考えていなかった俺は驚いたし。

並ぶ名前を何度も見返した。
(43) 2022/10/17(Mon) 23:05:18

【人】 高峰 誠一郎

「…………………………………………………………」

どう見たって、何度見たって、男同士だった。


だが。
おおいに納得できてしまうのがあいつだ。

ブロンドのショートカットに似合う丸くて大きな青っぽい目はお袋さんからの遺伝だと言っていた。(髪は今の俺みたいに染めた物ではないのは良く知っている)
小さな頃から雰囲気が丸く、柔く、近所で噂のお人形のように可愛い男の子、だったのである。
そのうえ性格もどちらかと言えば穏やかながらおしゃべりな方、こちらの様子の観察に長けている……身もふたもない言い方をすれば女子みたいなやつだった。
(44) 2022/10/17(Mon) 23:11:32

【人】 高峰 誠一郎

そんなあいつが、結婚。

納得できると同時に
「また置いていかれた」
と、真っ先に考えたのは記憶に新しい。

どうして。
俺じゃないんだ。
というより。
何故一言も言わずに結婚なんかするんだよ。

また理不尽だ。
互いの仲をツーカーじゃなくしたのは俺なのに。
あいつの方から取り戻してくれるなんて甘えてしまったのだ。

真っ新な土地で真っ新な人と出会って、あいつが変わっていくとも知らずに。

全面的に馬鹿なのは俺なのにあいつにぐだぐだ絡みたくなる。
(45) 2022/10/17(Mon) 23:16:57

【人】 高峰 誠一郎

そんなに今の結婚相手は良いのだろうか?
そいつはお前のこと、どれだけ知っているんだ?

お前、俺に『すき』って言ったの忘れちゃったのか?**
(46) 2022/10/17(Mon) 23:21:07
高峰 誠一郎は、メモを貼った。
(a9) 2022/10/17(Mon) 23:24:14

【人】 楯山 一利

─飲み会の後─


人は何処でどうやって繋がり、
どんな縁が出来るか分からないものだ。

行動範囲が決まっていると、
そこに集まる人たちとしか交流を持つことは出来ない。

ひょんなことから、友紀さんと知り合って
一緒に杯を交わして、互いの話をして
友紀さんの気持ちに共感したり、励ましたり
俺も沢山励まして貰って、色々と教えて貰って>>35

スッゲー、楽しかったなぁ…。

ふと、「一つしか違わない」>>4
って言ってたのを思い出して
友紀さんとは同年代だったのか、って
今更ながらに気付いた。
雰囲気大人っぽいし、色々知ってるから
もっと年上なのかと思ってたんだけど…
いや、俺がガキ臭いままなだけか。
(47) 2022/10/17(Mon) 23:50:13

【人】 楯山 一利


また近いうちに、会えたら良いなぁ…。

まさか明日行く予定のいつものカフェで
友紀さんが働いてる>>*なんて事は知らないから
呑気にそう思うのだけど。
バッティングするかどうかも分からないし。


酔いが回って、ふわふわとした心地。
余韻に浸りながら、俺は帰路に着いていた。

アイツからも、返事が来たし。
もう家に帰っても良いかって感じだった。
(48) 2022/10/17(Mon) 23:51:44

【人】 楯山 一利


明日は……どうなるんだろう。

ただ、こうやって一人になった後で
時間が経てば経つほど
緊張とか不安とかが徐々に募って来て
また要らん心配事を考えちまっている…。

でも、一度言ったことは曲げたくないし
友紀さんのエールだって、無碍にしたくない。

「……よし。」

俺はスマホを取り出して、
友紀さんとのトーク画面を開いた。
(49) 2022/10/17(Mon) 23:53:21

【人】 楯山 一利

─翌日:カフェ─


俺は、いつものカフェに来ていた。

今は学生たちでごった返す時間帯ではなく>>0:19
ピークが過ぎ去った頃合いだったかな。
かと言って、静か過ぎず
そこそこ客が入ってて、ザワッとしている状態。
敢えてその時間帯を狙って来ていた。

混んでれば席が空いていないかもしれない。
声も通りにくいから、会話が成り立たなさそうだし
かと言って、静かすぎれば
他の客や店員に会話が丸聞こえになっちまう。
それは流石に、恥ずかしかったし……。

だったら他所へ行けって?
いや、今の心理状態的に二人きりとか無理……。
(50) 2022/10/18(Tue) 0:30:30

【人】 楯山 一利


俺は二人掛け用の席に座って、
緊張しながらアイツが来るのを待った。
いつものように、カロリーを気にして
ノンシュガーのコーヒーを頼もうかと思ったが

今朝、カフェのSNSをチェックしてたら、
今はハロウィンシーズンってこともあり
期間中の目新しいメニューが色々用意されてたから
ちょっとその誘惑に負けちゃって
今日は“黒猫のホットココア”を注文。>>*

あんまり甘くないみたいだし、
砂糖抜いて貰えば大丈夫っしょ。と。
それにこの緊張を解したい。
ココアのような優しい飲み物を口にすれば、
多少はマシになるんじゃないかって……

はい、プラシーボー。
(51) 2022/10/18(Tue) 0:31:40

【人】 楯山 一利


(……ハァ。緊張する。)

溜息は、露骨に出てしまう。

なんて言い出そう。なんて切り出そう?

まずは、昨日の事を謝るんだ。
それから…ブレイクダンスの事話して
そんで、最後に俺の気持ち伝えて……

と、頭の中でシミュレートを始めるが
結局それが上手く行った試しはないんだ。
だってアイツの顔を見たら
頭の中、全部空っぽになっちまう。
姉気取りされて弟扱いされて、カッとなって
心にもない事を言っちまうのが常だ。

でも今日は……そうならないように
自制心を持って接しなきゃ。

自信を喪失させないように
友紀さんの励ましの言葉を思い返し>>4>>5
ギュッと、拳を握った。**
(52) 2022/10/18(Tue) 0:37:11
楯山 一利は、メモを貼った。
(a10) 2022/10/18(Tue) 0:46:54

【人】 高山 智恵

 ああ、昨日と違う今日という日は――ピークタイムが忙しなく騒がしいという点においては同じだ!
 まあバイト欠勤が無かった分、昨日程ヤバくはなかったんだけれども。


「はい、デミオムはそっち――(3)1n3番テーブルに(1)1d4個、(4)4n6番に(1)1d2個、カウンター(1)1n3(5)4n5番のお客様!
 ペペロンチーノ(5)2n5番、エビピラフ1.5倍(3)3n8番!
 〜〜〜〜そのモンブランは食後! そのココアは食事と一緒にお出しする!」


 店長加わるキッチン班がものすごい勢いで仕上げていくものの配膳先を、ホールスタッフに伝えていく。
 今はとてもじゃないけれど、1テーブルに1店員が対応、という丁寧な形で捌ける現場ではない。
 講義にレポートに研究、他のバイト、ステージ向けの練習――そういったものを抱えながら働くバイトの子たちあって捌くことのできる、この盛況ぶりだ。
(53) 2022/10/18(Tue) 7:57:52

【人】 室生 悠仁

 

  あの言葉を聞いたのは>>25、もう半年ほど前になる。
  半年もの間、俺は結論を出さずにずるずると
  傍にいることを許してくれる彼の隣りに居続けた。

  共にいる時間、楽しいことも
  嬉しいこともたくさんあった。
  彼といると全てがきらきらと輝いて見える。
  このままでいいんじゃないかと思えてしまう。

  それでも、このままではいけないと。
  そう心の片隅で囁く自分も確かに在ったのだ。

  繰り返す自問自答。
  その行為にも疲れてきた頃、覗き見たSNSで
  前に彼と共に行ったカフェがハロウィンに関する
  季節限定メニューを出していることを知り>>*1

  気分転換にと、今度は一人で。
  足を運ぶことにしたのだ。
 
(54) 2022/10/18(Tue) 8:44:33

【人】 室生 悠仁

 
  
  扉に設置されたベルを鳴らしながら店へと入る。
  少しばかり意気消沈しているから
  俺の顔は俯きがちで、悪いと言われる目つきも
  今は真っ直ぐと前は向いてない。

  一人だから、カウンター席に案内されるだろうか。
  休日のご飯時から少しずれた時間。
  平日は学生が多いようだが、休日は遠くへ
  出かけるからか、今のところそう客は多くないようだ。

  席に着き、注文したのはパンプキンタルト。
  既に軽食は食べていたから、今は疲れを癒やしてくれる
  甘いものが食べたい気分だった。
  ここの店長の拘りと言うからには
  美味しいのだろう、という信用があった。
 
(55) 2022/10/18(Tue) 8:44:44

【人】 室生 悠仁

 

  注文が届くのを待っている間は隙間になる。
  その暇を突くように、悩み事が再び頭の中を占領して
  もくもくと煙の如く思考を蝕んでいく。

  
  ─── 彼への想いは不毛だ。
  叶うわけでもなく、それでいて自分の意志で
  捨て去ることも出来やせず。

  何度も考えた。きっと、離れるのが一番いい。
  それが俺のためでもあるし、仲の良いと思っている
  俺から、彼が裏切られないための方法でもある。



  同じことばかりを、飽きもせず思考する。
  きっと、決着が着くまでこのままなのだろう。
  我ながら女々しいと、自嘲しそうになるのを
  外だからと口元を引き締めて耐えた。
 
(56) 2022/10/18(Tue) 8:45:11

【人】 室生 悠仁

 

  そうしていると、やがて頼んだものが運ばれてきた。
  美味しそうなトッピングがされている
  店長拘りのパンプキンタルト。

  美味しいものを食べる時は気持ちをシェアするため
  写真を撮ることもあったが、今日ばかりは
  そんなことをせず、フォークを手に取った。

  見せる相手なんて彼しかいない。
  けれど、今は、今この時は見せたくない。
  写真を載せることで、自分の気持ちまで
  バレてしまいそうだと、そう思ったから。
 
(57) 2022/10/18(Tue) 8:45:20

【人】 室生 悠仁

 

  しかし食べてみて違和感に気づいた。

  確かにパンプキンタルトは美味しい。
  かぼちゃの風味が雑味なく、それでいて
  しっかりと生かされている。
  拘りと言われる所以がわかるものだ。

  それなのにどことなく味気なく感じ、
  何故だろうと疑問に思いながらまた口に含んだ。
  食べることは好きなはずなのにあまり心が踊らない。
  一体何が違うというのだろう。

  その理由に、タルトの量が半分となった辺り
  もしかして、という発想とともに行き着いた。
 
(58) 2022/10/18(Tue) 8:45:29

【人】 室生 悠仁

 

  もしかして。もしかしなくとも。
  ……彼がいないからだ。

  美味しいものを食べる時は大抵傍に彼がいた。
  いない時だって、彼が食べたらきっと喜ぶと
  そんなことばかり考えていたように思う。

  思わずフォークを置いて頭に手をやった。
  俺はそこまで彼に依存していたのか。
  彼がいないと食事も満足に美味しいと
  感じられないほどに。

  人に寄りかかりすぎな自分に羞恥心を抱く。
  それでいて、恐怖心も。
  このまま彼と離れてどうなるかわからない。
  最初から道がわからなかったのに
  更に真っ暗になってしまった心地だ。
 
(59) 2022/10/18(Tue) 8:45:42

【人】 室生 悠仁

 

  パンプキンタルトは途中だが、店員を呼ぶと
  メニューにある黒猫のホットココアを頼んだ。

  とにかく、今は気持ちを落ち着けたい。
  美味しいものを食べて休まらずとも
  温かい飲み物になら心も静まるだろうと。

  届けられたカップを手に取る。
  挟んだ手が温められてほっと息をついた。
  飲んでみると意外と甘いだけでなく
  心地よいほどの苦味もあるように感じた。

  砂糖より純ココアが多く配合されているのだろう。
  ぬくもりが食道を通ると少し頭がすっきりした。
  温かいものはそれだけで、心を落ち着けるらしい。
 
(60) 2022/10/18(Tue) 8:45:54

【人】 室生 悠仁

 

  抜けた気をそのままに、思考を一度逸らすため
  なんとなく周りを見渡してみた。

  学生らしい若い者の姿。
  世間話をする年配の者の姿。
  どうやらこのカフェは地域の人に
  しっかりと愛されているらしい。

  目線を動かしていると、店員も視界に入る。
  彼女は確か、前に彼が口説いていた人だ。

  残念ながら脈がなさそうだったから>>1:72諦めたと
  言っていたから、あれから話に上ることはなかったが
  変わらずにここで働いているらしい。

  今の今まで気づかなかった辺り、俺は随分と
  自分の思考に閉じこもっていたようである。
 
(61) 2022/10/18(Tue) 8:46:26

【人】 室生 悠仁

 

  そう、彼は女性が好きだ。
  将来女性と結婚して、子を成して、
  きっと立派な父親になる。

  まだ25歳、すぐに来る未来ではないけれど
  それは恐らく、そう遠い情景ではないもの。

  その時、俺のようなものがいていいものか。
  考えたところで、……結論は一つしか出ない。
 

        彼の傍に、俺の居場所なんてないんだ。

 
(62) 2022/10/18(Tue) 8:48:38

【人】 室生 悠仁

 

  すぅ、と息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
  心は、─── 決まった。

  ホットココアを一度脇に置いて、
  パンプキンタルトに再びフォークを入れる。

  甘いだけではないかぼちゃの香りが
  口の中に広がれば、眦を僅かに緩めた。

  この味気ない味に慣れなければいけない。
  これからは一人で生きて行くのだから。
  

  甘くて、ほんのりと苦いホットココアの
  黒猫が背中を押すようにこちらを見ていた。**
 
(63) 2022/10/18(Tue) 8:49:46
室生 悠仁は、メモを貼った。
(a11) 2022/10/18(Tue) 8:51:16

【人】 高山 智恵

 ――こうして怒涛のランチタイムは過ぎていく――

 一段落つく時間帯に、バイトの子たちも休憩を挟んだり、或いはシフト上がりとして退店したりする。
 私も少しだけ休憩を挟んでから、少しだけ落ち着いた店内のカウンターに戻っていく。
 ……落ち着いたって言っても、ピークタイムを越えた後にだって、ザワつく程度には賑わう時間帯ってあるんだけれどね>>50
 ほら、またお客様がひとり、うちのドアを潜ってきた>>50


「いらっしゃいませ!
 こちらのお席へご案内しますね」


 ひとりだけの・・・・・・客をここで敢えて二人掛けの席へ案内したのは、この客が前々からもうひとりの子と一緒にうちのカフェをよく利用していた>>*0から。3年くらい前からのご来店だったかな?
 うん、丁度他のテーブル席もそこそこ程度空いてる時だから、お一人様がわざわざ二人席に案内される程度、そんなに周囲も気にしないだろう。良かった良かった。
(64) 2022/10/18(Tue) 9:14:02

【人】 高山 智恵



「“黒猫のホットココア”ですね? かしこまりました。
 実はこれ、私の発案メニューなんですよ。嬉しいですね」


 ……という、別になくてもいい一言をオーダーを聞いた時>>51に挟めるのも、相手がすっかり“ 馴染みの客 ”という意識があったから。
 いつもならノンシュガーのコーヒーを頼んでくるところを、わざわざ季節限定のメニューを頼んできてくれた、という嬉しさも実際あったからね!
(65) 2022/10/18(Tue) 9:15:06

【人】 高山 智恵

 で、何度も来てくれている“ いつもの ”お客様だからかな――。
 なんとなくだけれどこの子、いつもとは違う感じだ、って私にも思えたんだ。
 いかにも溜息ついてるなーっていう(実際の溜息の音>>52まで聞こえてきた訳じゃないけれど)、そんな感じ。

 まあ今はそんなことより、注文の品をお届けしないと、だけれどね。
(66) 2022/10/18(Tue) 9:15:29

【人】 高山 智恵

 ホットのアールグレイやコーヒーと違って、ホットココアはカウンターではなく厨房で作る。
 ココア粉と辛口のチョコレートシロップ、牛乳を入れた鍋。それを火にかけて、中身をかき混ぜていく。沸騰するギリギリくらいの温度まで温めてから、黒猫模様の描かれたマグに一杯を注いでいく。

 こうして、甘ったるさの無いワイルドな野良猫をちょっぴりイメージした、ビターな“ 黒猫のホットココア ”の出来上がり。
 砂糖抜きのオーダーだった分、ただでさえ微かな甘みはさらに削がれている。そんな苛烈な苦味を、けれどもミルクの滑らかさと温度が和らげてもいる……そんな風味になっている筈だ。


「お待たせいたしました。
 また何かあれば、お声がけくださいね」


 いつもの状況だったらここで「お連れ様がいらした時にまたお伺いしますね」とお声がけするところなんだけれど――今日はこの前までとは少し違うものを感じたので、ちょっと言い方を変えた。
 この言い方の変化、却ってお客様を気にしている感出ちゃってるかも……とは後から気付いたんだけれど、まあ、いいか!
 うん、変に口出しする気は勿論ないけれど(今の賑わい具合だと、多分話の内容も意識しないと聞き拾えないけれど)、見守ってはいるよ、という意識の表れだと思っておくれ。
(67) 2022/10/18(Tue) 9:16:43

【人】 高山 智恵


 ……しかし本当にどうしたんだろうね、この子。
 ダンス続けられないトラブルでもあったとか? まあ、先入観はやめておこうね。*
 
(68) 2022/10/18(Tue) 9:17:02
高山 智恵は、メモを貼った。
(a12) 2022/10/18(Tue) 9:30:14

【人】 高山 智恵

 さて、ついでだからこんな小話もしちゃおうかな。

 うちのカフェのバイト面子の中には、アートとかバンドとかラップとかダンスとか>>1:140――学業とは別方向に励んで夢を追ってる子たちもいる(アートの子は芸大行ってるとかって話だから、学業といえば学業か)。
 で、ダンス――アイドルのダンスでも社交ダンスでもコンテンポラリーでも日舞でもなく、ブレイキンで夢を追ってる子の話だ。
 あ、ちなみにその子も、ついでにラッパーの子も、二人揃ってオフでは派手目だしちょっと粋がってる節もあるみたいだけれど、勤務態度は非常に真面目なのでよろしくね。
(なので、本当は大会の応援>>17>>18とか行ってあげたいんだけれど、そういう時に限ってアレコレあって……)

 その子のシフトはピークタイムメインだったり午後のちょっと混む時間帯だったりで曜日によって違うんだけれど、基本的にはいつでもテキパキと動いてくれるし、ホールスタッフとして申し分ない社交性の持ち主でもある。
 なんだけれど、いつだったかな、ちょーーーっと顔色の優れない時があったんだよね。
 「大丈夫?」ってその時ちょっと聞いたら、返事は「大丈夫」の即答だったんだけれど……少し考える素振りをしてから、「すみません」って言い直して。結局その日、暫く彼を裏方に引っ込ませることにしたんだ。
 “ 何かあったら無理しない ”っていうのは、セクハラの件>>1:65に限らず新人に対して肝に銘じておいて貰う事項だ。だから彼も私も、一度決めたこの判断に惑うことはなかった。
(69) 2022/10/18(Tue) 11:48:35

【人】 高山 智恵

 で、その子が次に出勤してきた日の開店前に、ふっと「あの時どうしたの?」って聞いたんだ。そしたら――…


『いや、その、スミマセン……
 アイツ――知り合いがいたもんで、その……』

 「は、……そういうこと!?」


 別に体調不良でもなく、本気でヤバいことをしてきた相手がいたって訳でもなかった。
 単に、知り合いにここでバイトしてるの知られるのが滅茶苦茶恥ずかしかった
ってだけの話だった。この時バイト初めて日が浅かったってこともあって、その知り合いがこのカフェによく来てるってことをこの時まで知らなかったらしい。
 いくら無理しないって言ってもさー!ってうっかり怒りそうになったけれど、まあ、人に知られたくないものは知られたくないっていうのは私自身、よく理解できるからね……。

 ちなみにその“ 知り合い ”っていうのは……同じくブレイキンのダンサーなんだけれど、一緒のチームで共闘する方じゃなくて、大会で対戦する方のダンサー、とのことらしい。
 そりゃ普段張り合う間柄になってるんだろう好敵手に、このギラギラの欠片もないめちゃくちゃ爽やかな好青年カフェ店員っぷりを見られるのは……ね……。
(70) 2022/10/18(Tue) 11:53:38

【人】 高山 智恵

 結局、それでもうちでのバイトは続けるってその子が言うものだから(お金の問題とかあったんだろう)、特に辞めることもなく今でも元気にやっている。
 例の“ 知り合い ”とうっかり同じ時間帯に店に居ても、初回程の動揺を表に出さない程度には堂々と、そして爽やかな佇まいでお客様と接しているよ。たくましくなったね。


 ……さて、そのバイトの子の“ 知り合い ”は、うちのお馴染みさんのあの子>>1:124なのか否か、って?
 そうだねー、まあ、それについてはまた気が向いた時に。**
(71) 2022/10/18(Tue) 11:57:55
高山 智恵は、メモを貼った。
(a13) 2022/10/18(Tue) 12:13:56

高山 智恵は、メモを貼った。
(a14) 2022/10/18(Tue) 12:17:36

高山 智恵は、メモを貼った。
(a15) 2022/10/18(Tue) 12:25:56

【人】 古寺 貴菜

バカからの返信はなかったのでどうなったか気がかりではあるが、そんな事よりも早く帰って横になりたかった。
手早く駅弁を二つ平らげ、鞄の中身をいつもの鞄に移す作業をしているとき、あることに気が付く。

ペンがない。

式場を出るときクロークの引取りでサインをするときに使ってしまったところまでは覚えている。
その次に鞄を開けたのがカフェ、そして本屋、エキナカ……。
……財布を取り出すときに落としてしまったのだろうか?
カフェにペンの落し物がないか確認の電話をしようと思ったが、もうすでに閉店している。

しかたがない、幸いなことに明日は非番だ。
明日オープン時間以降に電話をかけることにし、今日はもう寝るか。
(72) 2022/10/18(Tue) 14:06:49

【人】 古寺 貴菜

――翌日/カフェ――

……というわけで電話で確認したところ、

ペンの忘れ物が二件あったのでどちらかがそうである可能性が高いので来てくれ

といわれ、今まさに、ペンが来るのを待っているのであった。**
(73) 2022/10/18(Tue) 14:09:10

【人】 霧ヶ峰 友紀

 
─一方その頃─
 
みんな、知ってるか。
後二週間もすればハロウィーンなんだ。
 
と言うことは。
11月がきてしまうと言うことで。
と言うことは。

お店としてはクリスマスが今年もやってくる〜ってなもんで。

 
(74) 2022/10/18(Tue) 16:00:03

【人】 霧ヶ峰 友紀

 
>>64怒涛のランチタイムは私も入ってたけど。
>>50ピークが過ぎた頃に私は店長から指示されてバックヤードに足を運んでいた。
奥からクリスマスツリーを出してくるのだ。
勿論、今すぐ飾るものじゃない。
でも、埃とかカビとか色褪せとか、電球切れとか正常に点灯するかとかのチェックが要る。
そのために余裕を持って出しておいての指示だった。
こう言う地味な作業、嫌いじゃない。
だから黙々と引き摺り出して状態をチェック。
飾りの中に、あの人の演じたもののモチーフが混ざっていたりして、時間差でぐわ〜!と内心密やかにダメージを受けたりしつつ。

まあ概ね大丈夫そうだろうと店長に伝えて、軽く布をかけておく。
ダメージを受ける飾りはそっと捨てといた。
去年はこれを見る度に仕事のテンション上がってたんだけどね〜。
 
(75) 2022/10/18(Tue) 16:00:24

【人】 霧ヶ峰 友紀

 
「忘れ物? あ〜、確かこれだよ〜。」
 
 
>>73なお、表に出たところで忘れ物の件について他の子に聞かれたから、まとめられてるところを教えてあげた。
箱を出して、言われたものを取る。
 
 
「此方ですか? どうぞご確認お願いします。」
 
 
にこー! 営業スマイルだ!**
 
(76) 2022/10/18(Tue) 16:01:29

【人】 高山 智恵

 さて、ちょっと気に掛かっていたバイトの子――霧ヶ峰さんのことなのだけれど。
 今日のシフトにはちゃんと無事に来てくれて(少なくともこの時は、無事なように見えた)ピークタイムの戦力になってくれたものだったよ>>75
 その後は、店長指示でバックヤードに行ったのだけれど。
(クリスマス向けの準備は早めに行っている。おそらくお客様方が思うより、ね)



( あの子ももしかして……ううん、 )


 余計なこと考える暇もないくらいの怒涛のランチタイムが、この前の「推し」俳優の報道のあれこれを忘れさせてくれてた……なんて(それこそ余計な)考えは一旦脇に置いた。私自身も今はあまり――自分の身に幾らかでも重なることは――考えたくない。ランチタイムを過ぎてもお客様はまだまだ来られるのだからね。

 ところで私、バイトの子の好き嫌いとか趣味とか、仕事に関わる個々の特性とかは、店長からの共有事項も含めてある程度把握している心算だったのだけれど――。
 何か盛大な聞き漏らし事項その他>>*9があったりしない??

 いや、今はそれを気にしている場合でもなかったね。うん。
(77) 2022/10/18(Tue) 17:58:27

【人】 高山 智恵

 さて、今日の開店後に電話での問い合わせがあったっていう話は、私も把握している。
 昨日うちに残されていた忘れ物の片方の件らしい>>73
 で、霧ヶ峰さんが表に出ていた時>>76だったかな――問い合わせ主のお客様の姿をちらっとカウンター越しに遠目に捉えて。
 その人の顔が記憶に新しい顔だったものだから、思わずぱちりと瞬いてしまったものだった。

 そういえば、ちょっと前にもこんな心当たりがあったな――勿論、今来ている人とは別のお客様のことなんだけれどね。
 一期一会かと思えば意外にそうでもなく、かと思えば本当に一期一会になったりする――って、これは接客業に限ったことじゃ、きっと、ないんだろうな。**
(78) 2022/10/18(Tue) 17:59:06

【人】 楯山 一利


この店を訪れるようになったのは
高校を卒業してからで、多分3年近く前になるかな?
アイツと一緒に入店する時は
智恵さん(と、俺は勝手に呼んでる)の
勤務時間と被る事が多かったと思う。

智恵さんは接客も上手くて、
いつもこうやって気さくに話し掛けてくれる。>>65
だから自然と、こっちも他愛のない話とか、
ブレイクダンスをやってる話もした事があっただろう。
そん時のアイツは、あまり良い顔してなかったな…。


幼馴染のアイツも、自分がこの近くの大学生で
『此処のご飯凄く美味しくて大好きなんです〜!』
とか、話したこともあったと思う。
週2〜3回のペースで、よくワンコインランチを
食べに来てるんだぁって話してたっけ。
『ご飯もお茶も美味しいです!』って
いつも来る度に、智恵さんに伝えてたと思う。
(79) 2022/10/18(Tue) 18:51:05

【人】 楯山 一利


確かにワンコインランチも、常設メニューも
どれもこれも美味そうだなぁ…って
SNSをチェックするたびに思ってはいるものの
昼はバイトが入ってカフェ来る機会が少ないし
カロリー気にしてもいるから、
食べられたのはせいぜいペペロンチーノ。
それも、一度だけだったと思う。

ニンニクとコショウがよく効いてて
母ちゃんが作ったのよりメチャクチャ美味かったっけ。

だからきっと他のご飯だって美味しいはず。
俺も、1度で良いから
ハンバーグとかオムライスとか食べてみたいな…。

今はハロウィンの限定メニューもあるし
特にこの“ジャック・オー・ランタン”が…
くっ。オムライス好きには堪らない代物だ。
(80) 2022/10/18(Tue) 18:52:16

【人】 楯山 一利


とはいえ、今はそういう食欲すら湧かない状況。

今日の結果によって、明日の俺だって
どうなるかも分かんないけど……。
いつかは食べてみたい。
その気持ちは大いにあるのだ。
(81) 2022/10/18(Tue) 18:53:18

【人】 楯山 一利


ちなみに、長く通っている店とはいえ
店員全員の顔まで憶えている訳ではなく。

友紀さんがここで働いているとは知らず
初対面と思ったのだって
多分、俺らが入店した時に
バックヤードに居たから>>75とか。
友紀さんのシフトが被っていない時が多かった。
とかだったかも?

だから多分、ダンサーの好敵手がいる。>>69>>70
って事だって知らなかっただろうな。

俺って目の前の事しか見えないタイプだから
智恵さんみたいに話し掛けて貰わないと
気付きにくいってのもあるかも…。

普段と違う雰囲気(爽やかスマイル好青年)だったら
猶更もっと気付きにくいぞ?!
(82) 2022/10/18(Tue) 18:55:08

【人】 楯山 一利


そんなこんなで、いつも二人で利用していたから
来店した俺の顔を見るやいなや
智恵さんはこの2人掛けの席に
案内してくれたんだった。>>64

「どうも……。」

いつもなら、元気に「こんちは!」
って挨拶しながら席に座るんだけど
今日は"いつも"とは状況が違う……。
一人だけお通夜みたいな雰囲気があったかも。
それは智恵さんにも気付かれるほどだったかな。>>66

注文した“黒猫のホットココア”>>65
実は智恵さんの発案メニューらしい。
(83) 2022/10/18(Tue) 18:56:58

【人】 楯山 一利


「えっ!そうなんすか??
 さすがセンス良いっすね〜!
 SNSでチェックして
 こんなんインスタ映え待ったなしじゃん!
 って、思って頼んでみたんすよね。

 うわー!めっちゃ楽しみだなー!!」

って、ウザいくらいハイテンションで
言いたい気持ちにはなったんだけど

ホント今日はそんな気分じゃなくて
申し訳ないくらいテンションダダ下がりでした。
(84) 2022/10/18(Tue) 18:58:07

【人】 楯山 一利


「あ……。そうなんすか?
 カワイイ猫さんですよね。
 つい気になったんで、頼んじゃいました。
 楽しみに……してます。」

と、実際にはこんな風に
ちょっとぎこちない笑顔で応えるのが精一杯。

もしかしたら、いつもと違うものを頼んだ事や
自分が考えたメニューを選んだって事に
嬉しくなって、話に花を咲かせようとしたのかも?
そうとは感じつつも、全然楽しい反応が出来ない
本当スミマセン…って感じだった。
(85) 2022/10/18(Tue) 19:01:32

【人】 楯山 一利


それから少し経って、注文したココアが届く。>>67
黒猫模様のマグカップが可愛らしい。
アイツも喜びそうなビジュアルだなぁ…
なんて考えながら、ちょっとほっこりする。

「あ……ハイ。
 ありがとうございます。」

なんかいつもと違う声の掛けられ方だ。
俺のこの様子を見て、気遣われてるのかも…。
全然違うことを想像されてるとは露知らず。>>68


俺は彼女の優しさと、触れたマグカップの温かさに
心も体もほんのり温まったような気持ち。
早速ココアを飲んだ。

砂糖抜きにして貰っただけに
ココアの苦味が口いっぱいに広がる。
甘ったるさもなく、けれども優しい味わい。
普段頼むコーヒーもスキだけど、これはこれで良い。

また頼みたいな。今度は元気な時に。
常設メニューのココアも
こんな風に美味しいのかな?
それともハロウィン限定で
常設とは違うレシピになってる?

と、ちょっと気になったぐらいには。
(86) 2022/10/18(Tue) 19:04:27

【人】 楯山 一利


ココアの味を堪能しながら、
不安とか鬱々とした気分が緩和されて来た頃。

(つーか、アイツ遅くない?
 なにやってんだろ……。)


待ち合わせた時間から、30分は経過してたかも。
時間には正確な方だし
こんなに遅刻することなんてあったっけ。

…ちょっと心配になった。
スマホを取り出して、画面を開く。
最新のトーク履歴は友紀さんから届いた
スタンプ連打のチャットのみ。>>*7

アイツとのトーク履歴は
カフェの待ち合わせ時間を指定して
『わかった。』と返信が来て、それきりのまま。

何も連絡が入っていないのはおかしい。
いつもなら、前もって連絡くれるはずなのに…。*
(87) 2022/10/18(Tue) 19:08:24

【置】 霧ヶ峰 友紀

 
>>77多分、店長や社員さん、フルタイムパートさんなんかに共有されている私の情報といえば?
 
接客よりは雑用が得意。
逆に汚い系の仕事や力仕事も文句言わずやる。
営業スマイルが貼り付け固定気味。
お客様からナンパされたことはないが、たま〜にセクハラされるけど平気な顔でスルーする。
くらいかな?
 
好きなものとかは、青色が好きとか。
甘いものはものによるとか。
趣味…趣味は晒してないけどバレてんだろうな…隠してないけど晒したくない微妙なきもち。
セクハラは、ほんとにたま〜に。
お持ち帰りの方にナプキンお入れしますか?とか聞いたら
「え?あっびっくりした〜女のアレかと思ったー。」
は?飲食店でそんな事聞くわけねぇだろボケが
と思いながら営業スマイルしてるよね。
おっさんに「胸が大きい」的なのもたま〜に。
脚細いねとは誰も言わない辺り正直者だなあクソが
と思いながら営業スマイルしてるよね。
 
(L1) 2022/10/18(Tue) 19:17:50
公開: 2022/10/18(Tue) 19:20:00

【置】 霧ヶ峰 友紀

 
>>1:65まあ、このカフェは幸いその辺りしっかり対応してくれるから、笑顔できれながらきっちり報告いたしますしあんまり
面倒
しつこいなら社員さんに助けを求めるよね。
それは自分だけじゃなくて他の子の時もそう。
自分で対応しきれるなら良いんだけどね〜。
 
まあ、そんなふうに精神ずぶとい系に思われてるかもしれない。知らんけど!*
 
(L2) 2022/10/18(Tue) 19:18:13
公開: 2022/10/18(Tue) 19:20:00
楯山 一利は、メモを貼った。
(a16) 2022/10/18(Tue) 20:08:17

【人】 古寺 貴菜

しばらく待っていると、昨日の忘れ物の二本のペンを持った店員がやってきた。
どうも、と頭を下げ二本のペンを手に取る。

片や高そうな万年筆。
片や量産品のボールペン。

見間違えるはずもない、唯一恋人と呼べる相手からもらったもの。10年近く使っているのに未だにインクが切れない、異様に書き心地のいいボールペン。

「こっちですね」

万年筆を店員に返し、鞄の内ポケットにペンを入れる。

なお、ボールペンをくれた相手だが、結局大学進学で自然消滅し、友人に「イギリスに渡米する」と言っていたという話を聞いたっきり消息不明だ。
やつは一体アメリカに行ったのだろうか?それともイギリスに行ったのだろうか?
まあなんだ……うん、バカだな。
(88) 2022/10/18(Tue) 21:57:31

【人】 古寺 貴菜

さすがにこれだけで帰るのもアレだろう。
表のランチメニューを思い出し、そのまま注文する。

「Bセットを、ライスは2倍で……。ドリンクはウーロン茶を」

追加注文は……、後でも大丈夫だろう。**
(89) 2022/10/18(Tue) 22:07:32

【人】 室生 悠仁

 

  暑くなったり寒くなったり>>0:38
  そんな寒暖差も落ち着いてきて
  冷える時間帯は冷たさに震える程となった。

  購入してきたきのこ類を鍋へと放り込む。
  鍋ものの細かい作り方など知らないから
  レシピを見ながら作業をしている。


   ( 一人で過ごす時間は気楽でいい。
     気を使うことなく、気をつけることなく
     自由に好きに時を過ごせるのは
     望外の喜びというものだ。

     それでも、きっと。
     彼と過ごした時間が、
     自分の中では一番なのだろうな。 )


  仕事も終わって夜の時間
  夕飯を作りながら思う。
  今日のご飯は、ある意味最後の晩餐と言えよう。
 
(90) 2022/10/19(Wed) 7:56:43

【人】 室生 悠仁

  

  机に置いたスマートフォンが軽快な音を鳴らす。
  短く響いてすぐに消えるのは、電話の着信ではなく
  SMSの通知を表している>>0:39

  ご飯を作る手を止めて端末を手に取った。
  送ってきた相手は、─── 全く、予想通りと言える存在。


   『 仕事今終わったからも少し待ってて。 』


  体力がなく定時で上がる俺と違って
  彼はいつも、少し遅い時間まで仕事があるようだ。
  今日は酒も用意しているから
  毎日遅い時間までご苦労だと労ってやろう。

  反応を考えて、くすりと小さな音を響かせた。
  訪れてくれることが待ち遠しく、
  鍋をかき混ぜて気を逸らす。
 
(91) 2022/10/19(Wed) 7:57:09

【人】 室生 悠仁

 
 
  俺が小さな決意をしている間にも
  彼は変わらない日々を送っていた。
  毎日、というほどではないが、そこそこの頻度で
  彼の中での事件がSMSを通じて送られてくる>>0:40

  その距離が、前より大きく愛おしく感じた。
  もうすぐ失われると知っているからこそ
  惜しむように、メッセージを何度も見返した。

  もっと傍に近づきたかった。
  彼の中で一番になりたかった。
  どうして実現しないのか、何故ずっと共にいられない。
  焦燥感に駆られてしまう時が長く続いた。


  この
想い
は叶うことはない。
  今はそれを、受け止められている。
 
(92) 2022/10/19(Wed) 7:58:05

【人】 室生 悠仁

 

  小学校から、随分と共に在った>>0:41
  虐められていたところを助けられただとか
  幼馴染だとか、そういった
  説得力のある関係でもないのに。

  クラスが同じでも、離れても、ずっと一緒だった。
  それは大人になっても変わらず
  俺たちは隣りにい続けた。

  親友と言うには情の形が違いすぎた。
  友人と言うには情の形が合いすぎた。

  彼にはどのように見えていたのだろう。
  俺には、ずっと歪んで見えていた。



   ( ─── そう思っていることなんて、

               きっとお前は…… )
 
  
(93) 2022/10/19(Wed) 7:58:26

【人】 室生 悠仁

 

  端末に返事を打ち込む>>0:42
  文章の長さを前は気にしていた。
  習慣というものはすぐには変わらないが
  努めて、意識しないで文章を作る。

  否 ───


   『 わかった。 』


  ととと、付け足す音。


   『 わかった、気をつけて。 』


  親指でタップすれば無事送信。
  いつもと違う、気持ちをより乗せたやり取り。
  彼は疑問に思うだろうか、それとも何も思わないで
  今まで俺が気を回しすぎていただけ、という結果に
  なるだろうか。
  
  大切で、大事にしたかった時間。
  それももうすぐ終りを迎える。
 
(94) 2022/10/19(Wed) 7:59:45

【人】 室生 悠仁

 

  ─── やがて、チャイムの音が部屋に響いた。
  鍋の火を消して玄関口へと足を向ける。

  段々と高鳴る心臓を振り切って、ノブを回したら
  少しくたびれた、笑顔の彼が土産とともに現れ
  挨拶の言葉を投げかけてくる。

  招き入れた部屋から香るのは
  酸味のあるトマトの匂い。

  食べたいと言っていた
  トマトを使ったトマト鍋が>>0:43
  本日のメインディッシュだった。**
 
(95) 2022/10/19(Wed) 8:00:27
室生 悠仁は、メモを貼った。
(a17) 2022/10/19(Wed) 8:04:38

高山 智恵は、メモを貼った。
(a18) 2022/10/19(Wed) 8:15:41

室生 悠仁は、メモを貼った。
(a19) 2022/10/19(Wed) 8:18:32

古寺 貴菜は、メモを貼った。
(a20) 2022/10/19(Wed) 9:09:25

【人】 高山 智恵

 10年近く前に、私はこの街で暮らしはじめた。

 詳しいいきさつは省くけれど――そう簡単に他人に話したくなるような話じゃない――私はすぐにでも地元から出たかった。離れたかった。
 勉強がそこまで得意って訳でもないのに、何が何でも都会の大学への現役合格を目指したのは、大学進学を口実にしてさっさと地元を出たかったから。無論、実家ってやつに戻る心算も毛頭なかった。
 そのために受験したのは文学部。偏差値が比較的低く、卒業もそこまで難しくない、という評判を塾やネットで見かけたから――本当にただそれだけの理由だった。就活に有利か不利かなんてことは気にしていられなかったし、ましてや「大学で何を学びたいか」という意識なんて、まるでなかった。

 ……とにかく、「こんな閉ざされた世界地元には居たくない」って気持ちばかりが先走っていた。
 自分がこれから具体的に何をしたいか、どこに向かって生きていたいか――あの時の私は何も考えていなかったし、考えられなかったんだ。
 考えられたのはせいぜい、実家からの仕送りを何時でも絶てるように自力で稼ぎ口を見つけなきゃ、ってことくらい。入学してすぐにバイトを探していたのも、これが背景にある。
(96) 2022/10/19(Wed) 16:58:36

【人】 高山 智恵

 そんな、行き先不明のモラトリアムな人間が文学部なんて場所に身を置いたものだったから。
 文学だけじゃなく、文化人類学とか宗教学とか>>1:74、そういったコースを自然に選んでいたのは、心の拠り所みたいなものを求めていたことの表れだったのかなあ。
 卒論内容は重箱の隅をつつくようなテーマにして、とりま卒業できればいいや的な姑息な纏め方したよね……。


 それでもハロウィーンがスクランブル交差点で仮装するだけのお祭りじゃないってことは知ってるし、クリスマスだって恋人たちの祭典じゃないってことも理解しているくらいには、ちゃんと講義で学んで得たことは身についている……と思いたい。
 まあそれはそれとして、うちのカフェの季節のイベントは大事に行っている。イベントを作って楽しむってこと自体は悪い事じゃないと思うし、それがお店の盛り上がりや売上に繋がるなら上々じゃない?>>1:62
(97) 2022/10/19(Wed) 17:00:05

【人】 高山 智恵

 そういえば去年のクリスマスの時期に、うちの店のツリーを出した際の霧ヶ峰さんのテンションが妙にアガっていた気がしたんだけれど……なんでだっけ?
 理由は誰かから聞いたような気がするんだけれど(霧ヶ峰さん自身だっけ? アート展示頑張ってる子だっけ?)何故かよく思い出せない。なんかあの俳優さん繋がりのモノでもあったのかな……>>75
(98) 2022/10/19(Wed) 17:00:22

【人】 高山 智恵

 閑話休題。
 バイト先は結局、雰囲気の良いこのカフェで即決して>>1:25
 とにかく稼がなきゃって気持ちで、必死に働いていた訳だった。

 私の後に雇用された“ 彼女 ”は違った。
 この時既に専門学校を卒業していた彼女は、初めから「自分のカフェを開く」という目標を抱いた上で、うちの店で働きだした>>1:26>>1:27
 これから先、何をして生きていたいか――それが非常にはっきりしている人だ。
 ついでに、店長をして「彼女は絶対に接客に向かない」>>1:74と言わしめる程の気質の人でもある。あの、張り付け固定気味のテンプレ営業スマイルすら見せなかったからね。

 本当に、彼女と私は違い過ぎていた。
 お客様と店員という関係性だったうちはまだしも、肩を並べる同僚同士という立場になると、いささか近寄りがたいような何かは彼女に対して初めは感じていたし、彼女のほうもそれは同じだったんだろうと思う。
(99) 2022/10/19(Wed) 17:01:15

【人】 高山 智恵


『高山さんはアーサー王伝説に興味がないのに、
 どうしてアーサー王伝説についての講義を受けたんですか?
 高山さんは
です。』


 こんなふうに雑談の中でいきなり面と向かって「変」呼ばわりされたら、今の私なら「そういうところだよ」で済むけれど、初めのうちはカチンときたよ流石に。……まあ、こういうところのある人だったって訳だ。
 まあ、彼女は「好きな分野を学ぶ」ことを当然として生きてきたんだから、当然のように私もアーサー王が好きだからその分野の講義を取った筈だって信じていたんだろう。
 え? この講義選んだ理由? 出欠もレポートも緩くて単位取るのめちゃくちゃ楽だって聞いたからだよ。実際楽に単位取れたし。残念ながら講義内容については「聞いたことはある」レベルの記憶に留まっている。

 ちなみにだけれど、私と彼女は同い年生まれだ。
 年齢差も上下関係もない相手であっても、彼女はこんなふうに私に対して丁寧語で喋る。それどころか、年下の子、小さな子供や赤ちゃん、人だけでなく動物相手にも丁寧語で喋る。
 彼女は接客の適性こそないと判断されても、子供からお年寄りまで誰に対しても分け隔てない態度で接する、そういう資質の人でもあるらしい。そういうところが気に入らなかった人もいたようだけれど、店長は好ましく思っているんだって。
(100) 2022/10/19(Wed) 17:01:51

【人】 高山 智恵

 とにかく彼女は、私にとって理解できないものの塊のような人だった。イラっとすることも多々あった。
 それでも、キッチンに向き合う彼女の真っすぐな背中や、食材や料理をじっと見つめる横顔は、純粋に綺麗だった――そうした一心さだって私にはないものだったから、あの時の私は彼女に妬いてもいたのだと、今になってみれば思う。

 そんな彼女が、ある日バックヤードで唐突に尋ねてきた。
 私が大学3年生になる直前の、まだ春というには冷える頃だった。


『高山さんはカナブンの幼虫は苦手ですか?』


「え? 何いきなり。
 でもなー、そうだなー、……そんな苦手でもないかな?」


 どうも他のバイト面子か知り合いかにいきなりこの話題を出して、蛇蝎の如く嫌われたことがあったらしい。
 私はというと――結局、育った地元が「田舎」ってやつだったからかな――ああ、ああいうやつだなーという心当たりがあって、その上で「苦手でもない」と答えていた。好きという訳でもなかったけれど。
 彼女が私にこの話題を振ったのが、私の出身が「田舎」なんだって意識したからだったのかは分からない(そう意識してなくても急に話題を振り出すところ、あったし……)。
(101) 2022/10/19(Wed) 17:05:17

【人】 高山 智恵

 で、「なんで私に聞いたの?」と問うよりも、彼女の次の行動の方が早かった。


『判りました。じゃあ写真を見せます』


 彼女はすぐに鞄からスマホを取り出して、写真画像の写された画面を私に差し出した。
 それこそこれを聞いているあなたが虫を蛇蝎の如く嫌う人だったらマズいかもしれないので
画像の詳細は省くけれど――写真の中のいきものについて語っている時の彼女の目は、確かに輝いていた。


『――――だるそうな感じで、可愛らしくて面白いです。
 しかも畑の土を豊かにしてくれる益虫だそうです。
 カナブンがいる畑の土で作った野菜とハーブを
 カフェのフードやドリンクに使ってみたいです』


 などなど。などなど。などなど……。
 私はといえば相槌を打ちながら、彼女の話の切れ目を(どうにかなんとか)見つけたところでコメントを挟んでいた。
(102) 2022/10/19(Wed) 17:07:57

【人】 高山 智恵


「いやー知らなかったなー。
 確かに自然派食材?みたいな感じで
 そういう畑の食材仕入れるのもアリアリだよね」


 このコメントは率直に素朴に思ったことそのままだったけれど、あれが「可愛らしくて」「面白い」かと言われれば……私には残念ながらそういう感性のチャンネルはなかった。そして未だにない。
 それでもこの感想と、何より私がきちんとこの話題に向き合っているということが、それだけで彼女にとってはものすごく嬉しかったらしい。
 普段愚直で不愛想な彼女が、確かにこの時、ぱっと無邪気に笑った。


「アリアリですよね!!」


 本当に“ 天使 ”か、或いはうろ覚えの“ 湖の乙女 ”か――そんな笑顔と声色だった。
 思えば、彼女が「カフェを作ること」「料理を作ること」以外に強い関心を示しているのを目の当たりにしたのは、この時が初めてだったな。
(103) 2022/10/19(Wed) 17:10:18

【人】 高山 智恵

 ……もしも私の中で“ 転機 ”と呼べるものがあったとすれば、この時だったのかな。
 今となっては、いつから、何によって彼女を「好きなんだ」と気付いたのかも曖昧だけれども――。

 これから私は、何をして生きていたいか。どこに向かって生きていたいか。
 曖昧にすら描けなかったその絵図は、こうしていつしか、はっきりとした輪郭を形作っていた。
(104) 2022/10/19(Wed) 17:22:54

【人】 高山 智恵


「私 ・、将来は自分のカフェ持ちたいですね。
 なので、売上管理とかマネジメントとかも
 正社員の立場で学んでみたいんですけれど。
 ……まだ社員昇格には早いですかね? 店長」


 店長にしれっとそう申し出た当時は「まだ早い」と即答されてしまったものだったけれど、ね。
 でもこの意思表示には、少しだけ嘘が含まれている。
 正しくは「自分のカフェ」じゃなくて、「自分と彼女のカフェ」だ。

 その嘘を正す夢物語を、店長にも彼女にも、私は言えなかった。
(105) 2022/10/19(Wed) 17:23:35

【人】 高山 智恵


『はい、私はあの ひとのことが好きです。
 ――さんは都心でショコラティエとして頑張っています。
 ――さんは本当に真剣にチョコレートに向き合ってます。
 ――さんは、本当に素敵です。素敵なんです。
 私たちのお店にお客さんとして来てくれて、
 本当に嬉しかったです』

『私は、素敵なあの ひとにちゃんと振り向いてもらいたいです。
 だから、次の新作のガトーショコラも、
 ホットココアも妥協しません』


 だってそれこそ、浮世離れした何かのような目の輝かせ方でこんな言葉を聞かされた後の日に、思い描いてしまった将来の夢>>105でもあったのだから。

 もし私がアーサー王にとってのマーリンになる心算だっていうなら、何の不満もなくこの夢を果たせるのかもしれない。けれども私は、あの コのマーリンとしてだけ在りたい訳じゃない。
 ……ああ、これじゃまるで、私はグィネヴィアにとってのランスロットになりたがってるみたいだ。
(106) 2022/10/19(Wed) 17:39:10

【人】 高山 智恵


 ――本当にあの娘は本当に彼のことが“ 好き ”なの?
   それって、何%くらい本当のことだと思う?



 そんな考えがふっと浮かびもしたけれど。
 彼女は嘘を吐かない。というより、吐けない。あれは本心だ。


 ――彼女の言う“ 好き ”って、どういう定義?
      “ 振り向いて ”もらうって、どういう意図?



 可能性を問う声ばかり、頭の中に響く。
 響きはすれど、それに耳を傾けることなんてできない。
 都合の良い夢ばかり、見ていたくはない。


 ……、そうだよ、今は夢なんて見ている場合じゃない。
 丁度目の前に気掛かりなことひとつ>>85>>87、捌かなきゃいけない仕事はいくつも>>89、あるじゃないか。
(107) 2022/10/19(Wed) 17:43:44

【人】 高山 智恵

 こうして――様々な意味で気を取り直すように――オーダーの声を響かせるお客様>>89の元へ急ぎそうになって、
やめた
。お客様に呼ばれた同僚から仕事を奪ってどうするの私。
 どうやら自分で無自覚だっただけで、今日の私は相当疲れているか気が抜けているかしているらしい。
 まあ、昨日応対したお客様が再来店してきたのを見てつい……っていうのもあったけれども。

 忘れ物のペンの受け取りだけで用件を済ませてもいいところを、わざわざランチメニューまで頼んできてくれるなんて!
 2倍に増えたライス大盛り指定のランチは、今度はAではなくBのほう。
 うんうん、このお客様のこと、ぜひ店長にも“ 彼女 ”にも伝えた……げほん、なんでもない。
 あと今本当に店内でげほんって咳いた訳ではないのでご心配なく。


 それこそ今が相当に空いている時間帯であれば、お客様の時間と話しかけられ耐性が許す範囲で(店員からのお喋りを嫌うお客様だっている)料理の感想や来店の経緯を聞いてみたい気持ちはあるんだけれど、残念ながら今はまだまだそれなりに混んでいる。
 カズが……失礼、あの子たち・・をはじめ、今私が担当している他のお客様方のほうがどうしたって優先される。
 うん、普段相手の子が「カズ」って呼んでたのが多分ちょっと移ってるなこれ。成人に対して「あの子」呼びが失礼か否かはちょっと置いて。
(108) 2022/10/19(Wed) 18:09:40

【人】 高山 智恵

 さて、あの子たち・・とは言ったけれど――。
 実際のところ、もう片方の子のほうは未だ来店していない>>87
 待ち合わせという形故に来店時間がズレることは普通としても、ここまで来ないってことはない――というのは普段のふたりの来店時のことを知っているが故に思うこと。
 彼女、この店は来づらい訳じゃないどころか、週2、3くらいでランチに通ってくれてるくらい気に入ってくれてるんだけれど>>79……。

 スマホを取り出して画面に目を落としている彼の姿は、私もちゃんと捉えている。
 もしこちらで何か手助けすることがあれば手を貸すつもりではいるけれど、お客様当人から声を掛けられない限りは、残念ながら動けない――少なくとも今は。
 あの子の不在が、今ここにいるカズ君の浮かない態度>>81>>83>>85>>86と関係あるのか否かは分からないけれど――。
(109) 2022/10/19(Wed) 18:33:28

【人】 高山 智恵

 ……折角、お馴染みのお客様に「カワイイ猫さん」を楽しみにして貰えたっていうのに。
 その時に
「そうなんですよ!」
っていつものお客様ばりのテンション>>84で返せず、落ち着いた声量で「そうなんですよ」としか言えなかったくらいには、ぎこちない笑顔を前にした私も気掛かりのほうが大きくなってしまって。
 その気掛かりは、他のお客様の応対をしている中でも未だに抱え持ったままだ。

 悪い言い方をすれば、今の私の中の気掛かりはそれだけ・・で済んでいる、ということでもあるのだけれどね。**
(110) 2022/10/19(Wed) 18:33:41
楯山 一利は、メモを貼った。
(a21) 2022/10/19(Wed) 19:12:47

高峰 誠一郎は、メモを貼った。
(a22) 2022/10/19(Wed) 22:25:21