情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新
【人】 棕櫚の主日 コゴマ探索を終え、資料室へと戻る。脱出路は、見つからなかった。 道中で虚空に語り掛ける人影vilを追い払った鉄パイプは血濡れで、されど誰を守ったわけでもない。 手応えとして残るもののないことを、ただただ見下ろして。 何が出来ただろうか、と考える。今、そして、あの場に居て。 「……状況はどうだ。なにか、変わりはあったか?」 いつしか目上への敬語も、脱げるように抜け落ちていた。 最良を選び、加担することができなかったことは、どことなく脱力させる。 ひとりひとり、顔を見るように前に立ち止まり、声をかけるものの。 さして状況にふさわしい言葉が、出てくるわけでもなかった。 (0) 2022/06/12(Sun) 21:43:56 |
【人】 棕櫚の主日 コゴマ――エマの助けを受け、暗澹たる状況は晴れ始めた。 今まで混乱のために見えなかったものも、少しずつ見え始め、 互いに向けられた不安も、ひとつひとつ解消されてきた。 自分たちで協力しあったなら、今度こそ欠けることなく外に出られそうだ。 >>3 伊縫 彼が治療を受けている様子を見て、ほっとしたように歩み寄る。 顔色はまだ悪いかもしれないが、今なら安心できるような、気がする。 以前にもこうして様子を確かめた気がする。その時には、今よりもずいぶんひどい状態だったが。 「……大丈夫か? だいぶん調子がよくなかったようだが。 エマの説明までは、聴こえていたか?」 (4) 2022/06/14(Tue) 18:13:13 |
【人】 棕櫚の主日 コゴマ>>5 伊縫 「……熱っぽかった、ね。まあいい。詮索するのは生産的じゃないからな。 少なくともこれ以上不愉快ななにかに蝕まれるということは、無いらしい。 そんな便利なものをいくらも用意できるなら、騒動のほうも治まるだろう」 果たしてどんな手を使ってそんなものを手に入れたのか、わかったものではない。 そして、同時に彼女がどれほどの労力を賭してそれほどのことをやってのけたのかも。 脱出するまでの短い道をどのように切り抜けるか、必要なものをかき集めつつ。 疑わしいような、恨めしささえあるような目で貴方の顔をじっとにらみつける。 もしくは観察しているのかもしれないが、愛嬌のない表情からは知れるものもない。 「僕はまだだ。退去する前にやるべきことがあるかもしれない。 撤収する前にはどうにかするから、気にしなくて良い」 エマにはきちんと治すつもりであることを説明した上で、今は固辞しておいたらしい。 記憶に関わる力は、これから外で生きていく者には必要となることもあるだろう。 それが誰で、どんなふうにか、なんてのは交友が狭かったぶんわからない話だ。 (6) 2022/06/16(Thu) 0:16:50 |
【人】 棕櫚の主日 コゴマ>> 叶 「……ああ、そうか」 言葉をかわしながらに、思い出したように手を手で打つ。 それから、破損しないようにハンカチにくるんだままにしてあった余剰の薬剤を、 貴方のほうへと押し付けるように寄越した。 手はさっと引き上げられ、返却は許されないらしい。 「僕は誰がこれを必要としているやら、皆目検討もつきませんので。 "約束"をした貴方が、どうするのかは決めてくださいね」 そう言い残し、撤収準備に立ち返る。 それが、掌の上の希望が誰に向けられるべきであるかは。 自分よりも貴方のほうが、知っているはずだと、わかっているのだ。 (7) 2022/06/16(Thu) 0:19:29 |
【人】 棕櫚の主日 コゴマ>>8 >>9 叶 例えばあの時貴方達が敵であることをわかっていなくとも、 今ならわかっているか、と言われたら。 この不安定な力をそこまで意識的に扱えたのだ、なんて確証もないまま、 そうに違いなかったろうと、確信めいて思うことはできなかった。 そして、古後愛施は小さな疑念を過ぎ去った後まで持ち出す人間ではない。 自分以外の人間に、さほど価値を見出していないが故に。 「些事でも助けになったのなら何よりですよ。 僕は自分の周りのことしか、わかりませんので」 貴方の感謝の念の重さに比べれば、返した言葉のなんと軽いことだったろう。 背中越し、或いは横顔から放たれた"どういたしまして"がどれほど価値の在ることやら。 兎角、この出来事を超えて変わった様子のあった貴方に比べたら、 この青年ときたら、最初に偉そうにしていた様子から大きな変わりもなく。 それでも、返る言葉を受け取る腕は、変わらずそこに、あるだけだ。 (11) 2022/06/17(Fri) 4:53:32 |
【人】 棕櫚の主日 コゴマ>>10 伊縫 「結局のところここから離れるまで安心できるわけでもない。 僕は戦うための力というわけでもないけど……まあ、保険だ」 例えばひとたび使うだけで追手を振り払えるようなものだったなら、 もう少しだけ渋る理由もあったかもしれないし、或いは危険視されてしまって、 今よりも早くエマから駄目押しの注射が振る舞われていたかもしれない。 誰かを斃すに向かずとも、何が出来るわけでもない、とは思っていないようだった。 「……何が怖かったら手を握っててやる、だ。 注射が怖いから躊躇しているとでも思っているのか?」 長い前髪の向こうで眉間に皺を寄せて、渋い顔。 貴方の忠告を侮られたとでも思ったのかもしれない。 作業の手を止めて、伸ばした人差し指で額をつついてやろうとしたかもしれない。 けれども少なくとも。貴方の言葉に思うところは、あったのだろう。 まとまった荷物を脇に置いて、貴方の隣に座り込む。 「――でも、そうだな。 ここから出ていくまでの道中が恐ろしいなら。 僕が、お前の手を握っていてやるさ」 手を、差し伸べて。 (12) 2022/06/17(Fri) 5:14:49 |
【人】 棕櫚の主日 コゴマ>>13 >>-38 伊縫 「結局僕は自分の力でどこまで出来るのか、試したわけでもないしな。 ……土壇場までも楽な航行になるかなんてのは、誰にもわからない」 エマに聞かれれば、そんなことはこちらが心配することではないのだと叱られそうだ。 けれども彼女であっても、或いは他の誰であっても。 素直に聞くようには出来ていないのだから、簡単には楽観視してしまえない。 溜息をついて、わざとらしくどこか迷惑がっているような態度を取って。 そのくせあらかた準備を終えて先を征くための用意ができたなら、 叶や深和、彼ら"背負った"人間が戻るまでの短い時間を、待つことにした。 そう長いことではなく、ここに居座るでもなくて。恐らくはちょっと休憩する程度。 身体を休める、なんてことにも満たないくらいの、ほんのちょっとの話。 指先に灯る熱が重ねられるにしろそうでないにしろ、青年はそこに居た。 (16) 2022/06/18(Sat) 20:54:48 |
コゴマは、神の愛とは何のためにあったのだろうと、考える。 (a61) 2022/06/18(Sat) 20:56:35 |
コゴマは、乗せられた掌が違ったなら、掛けられた期待の形が違ったなら、此処にはいなかったのだろう。 (a62) 2022/06/18(Sat) 20:57:16 |
コゴマは、私の全ての労苦と、父の家のすべてのことを忘れさせてくださった者の祝福に祈った。 (a63) 2022/06/18(Sat) 20:58:01 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新