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【人】 埋火 真里花 ふ、ふふ…… [ 兄が浴室へと消えてから、私はまだ畳と戯れていた。 ひとりで笑っている。 家族が見たら変な顔されそうだけど。 いつぞや。 同級生に兄の写真を見せたことがある。 たくさんはなかったから、今よりもっと若いときの。 似てるね、の後にかっこいいね、いいな、と 同級生は言った。でしょ?と笑ったら まりーはブラコンだね?って友人は笑った。 私もそう思う。 けど、 ] (83) 2021/01/11(Mon) 0:05:37 |
【人】 埋火 真里花 かわいくないときがない かぁ [ お兄ちゃんもなかなかにシスコン。 あにばか、だと思う。 ――私は私のことを、平均、平々凡々 と分析している。 同級生が持っているような華やかな顔立ちや ふくよかな胸はないし。 それでも兄には、世界で一番、可愛い生き物 に、見えているらしい。 ] (84) 2021/01/11(Mon) 0:05:52 |
【人】 埋火 真里花 はーい [ 返事をすると、着物姿の中居さんが "お食事をお持ちしました。ご用意して よろしいですか?"とやってきた。 ] わぁいご飯 [ どうぞ、と襖を開けると、二人の中居さんが テキパキと、テーブルの上へ、食事を運んでくれる。 食べきれるかな、って心配になるくらい色とりどりの食事が すべて運ばれると、中居さんはごゆっくりと残して、 帰っていく。食事の片付けのときにお布団を敷いてくれると 言い残して。 ] ………すご えっ すご [ 何から手を付けたらいいかわからない豪華な お夕食に、妹は目移りしまくっています。* ] (103) 2021/01/11(Mon) 15:09:37 |
【人】 埋火 真里花 お兄ちゃん、これなんだろう? お刺身、……おいしい……、 これ何のお肉?……とける、とける〜〜〜〜! [ 気持ちの上では満腹らしい兄に ] ね、これ食べた?おいしいよ [ 茶碗蒸しをスプーンで ] あーんして はやく!おっこちる! [ 口元へ。なんだか本当に、昔にもどったみたいに 私ははしゃいでしまったのだった。* ] (108) 2021/01/11(Mon) 16:03:45 |
【人】 埋火 真里花 おいしぃ〜…… こっちも、……おいしい……… [ つるり、口に滑り込んできた茶碗蒸しも。 小鉢に盛られた山菜も、お刺身も。 お鍋でぐつぐついってるお肉も。 少しずつ、着実に減っていく。 ] ……明日からダイエットだぁ……。* (118) 2021/01/11(Mon) 21:55:02 |
【人】 埋火 真里花 小さなお皿がいっぱいで、可愛い。 [ まぁ女子とは、よくわからないものに 可愛さを見出してしまう生き物で、 どこがと具体的に言えと言われたら きっと困ってしまうけれど。 ] ごま! [ 和え物かなにか、と言った先から、その小鉢に 手を付けて、もぐ、もぐ、ごくん、して味から 正解を引き当てようとしてみる。 尚正解はごまじゃない ] (122) 2021/01/11(Mon) 22:54:12 |
【人】 埋火 真里花[ ねぇ? 目の前にいるこの人、兄なんですけど。 私が欲しいと思うものが、この兄が ぜんぶぜんぶ、くれるんだもの。 兄からしたら、まだまだコドモ な私の目下の心配は 兄と比べてしまって幻滅した結果、 行き遅れたりしないかなぁ、である。 まったくコドモらしからぬ悩みではあるけど。 ] ( べつにきょうみないなぁ。 今は。 ) えぇぇ…… お腹ぷよぷよになったらこまる でも、おいしぃ……止まらない。 [ そうはいいますが、女子には大敵なのです。 贅肉は。見えないように、そっとお腹を擦る。 ……ギリ、ギリ平気。 やば、と思ったら。 妹と一緒にリングフィ○トに勤しむことにしよう。 ] (124) 2021/01/11(Mon) 22:54:48 |
【人】 埋火 真里花 ……お腹いっぱい。 [ 落ち着いたら大きなお風呂に、 そう思っていたけど、それは叶いそうにない。 なぜなら。 お片付けをしてくれた仲居さんが、 敷いていってくれたお布団の誘惑が凄まじいから。 ] だめなやつなの、わかってるけど 許してお兄ちゃん…… [ ふかふかのお布団を前に、 私はまた、悪い子になります。ごろり。 ああああ、幸せ。* ] (125) 2021/01/11(Mon) 22:55:23 |
【人】 埋火 真里花 バンドマン? うーん、…しっくりこないなぁ。 やべーの。 うん、よくわからないけど? 気をつける。 [ わからずとも、気をつけることにする。 お兄ちゃんもそういうことあるの? とはなんとなく、聞けなかった。 少なくとも、大事な人が出来たり、居たら 紹介してくれるかなぁ、とぼんやり思う程度で。 ] (132) 2021/01/11(Mon) 23:45:26 |
【人】 埋火 真里花[ 三割と少し、残ってしまった食事は 申し訳ないけれど片付けてもらった。 おいしいものを だいすきなひととたべる そんな夢みたいな時間は、あっという間に 過ぎ去って。 ] だってぇ…… お兄ちゃんも来てみればわかるよ ふっかふか [ ぽす、ぽす、隣を叩いて兄を呼ぶ。 せっかく可愛くしてもらった髪も、 気に入って選び取った浴衣も、写真に残すことは できないままなのが、少し残念。 ] (133) 2021/01/11(Mon) 23:46:27 |
【人】 埋火 真里花[ 絶対に離してなるものか。 それほどの力はこめていなかっただろう ] ――えっ? [ だから。私の手は、空を切る。 ] ―― コンビニ前 ―― あ、あれっ?えっ? [ 顔を上げた先、家の門から妹が手を降っている。 条件反射で手を振り返しながら ] ………たったまま 夢? [ そうつぶやいた。 ぜんぶ、ぜんぶ、夢だったのかと。 俯きかけて、 ] (143) 2021/01/12(Tue) 0:46:56 |
【人】 埋火 真里花[ しゃらり しゃらり ] ………あ、 [ 顔をあげる。 コンビニの入り口には、私が写っている。 兄が可愛くしてくれた髪型。 挿してくれた簪。 右手には、ちいさなビニール袋。 その中身は、食べきれなかったおまんじゅうと おせんべいが一つずつ。 ] (146) 2021/01/12(Tue) 0:47:30 |
【人】 埋火 真里花 ……っっ!! [ 次の瞬間、私は弾丸になる。 門の前にいた妹に、"寒いからお家はいるよ"と 声をかけて、自分の部屋へ一目散に。 ] ……ある、……ある、 [ 旅行鞄の上には小さなパンフレットと "またのお越しを"そう書かれたメッセージカードが 添えてあった。 やっぱり、夢じゃなかったんだ。 私は慌てて電話を取って、番号を押す。 ] (147) 2021/01/12(Tue) 0:47:41 |
【人】 埋火 真里花『はいもしもし、スズキです』 あっあっあっ 慌てて、て、まちがいました!!!!! [ ごめんなさい上品そうなお声の鈴木さん。 慌てすぎて、押し間違いしました。 大きく深呼吸をして、 今度こそ慎重に番号を押して、 コール音を聞く、何から聞こう。何を言おう 一気にまくし立ててしまいそうな私に届いた声は ] (149) 2021/01/12(Tue) 0:48:08 |
【人】 埋火 真里花―― 年末、空港より ―― ……どっち? [ からりからから。 少し長めの旅行だからとパパが 買ってくれたキャリーバッグを引きつつ スマホの画面をちらちらみながら空港の入り口を うろついて4、5分。迎えに来てくれた兄と ] ……こんにちは [ でかい。 めっちゃでかい。 すごいでかい。 兄の友人。やたらとにこやかな彼が 兄の面倒を見てくれている 支えになってくれている 友人、なのだろうか。 ] 妹の真里花です [ せめて、せめて礼儀正しい妹だと思われたい。 その心を知ってか知らずか、ご友人は、妹の 私にもにこやかに挨拶をしてくれた。 ] (154) 2021/01/12(Tue) 1:40:16 |
【人】 埋火 真里花兄がいつもお世話になっています。 楽しみにしていたんです、会えるの。 話してみたいなって、思っていたから。 あ、お兄ちゃん、ひさしぶり。 [ ごめんねお兄ちゃん。妹は外面を優先しました。 ちょっぴり拗ねていそうな兄の背をつつきつつ、 妹は、友人を値踏みします。失礼。大事なことなので。 やがてふっと、少し大人な顔をして私は言う。 ] (155) 2021/01/12(Tue) 1:40:35 |
【人】 埋火 真里花[ どう答えたとしても次の瞬間、弾丸は飛ぶ。 だいすきな、兄の腕めがけて。 ] どこ連れてってくれると? 真里花ね、お昼ごはんまだだからお腹すいとー。 なんかおいしいもの食べたいな♪ [ するり片手を絡ませて。 ――ご友人を振り返り、早く早くと手招きする。 なにせ今度はたっぷり時間があるのだから、 ゆっくりゆっくり聞かせてもらうとしよう。 かっこいい兄のはなしと、 かっこよくない兄の話を。* ] (156) 2021/01/12(Tue) 1:41:19 |
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