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【見】 郵便切手 フラン【街中】 「………眩しいなぁ。」 目深に被った帽子で目に痛い陽射しを遮って、 石畳の上をリズムよく、けれど荷物の扱いは丁重にして歩く。 野良猫は、今日は日陰で丸くなっていた。 呼び鈴を押して、待ち時間で祭りの喧騒を横目に見る。 三日月島で息をしている人間の数が減ったことになんて、直ぐには気づかない。 或いはずっと。 「こちらへお受け取りのサインをお願いします」 配達員の日々はいつも通りだ。 (@0) 2022/08/14(Sun) 21:49:41 |
【見】 郵便切手 フラン【街中:カフェ】 午前の分の積み荷を捌き切り身軽になった相棒をガレージで休ませている間、自分は昼休憩を、と外へ出ていた。 軽食を出しているカフェで注文を済ませ、窓の側にある席で時間を潰す。 隅が落ち着くのはどこでも同じだ。 「ほうき……川……はしご……?」 スマートフォンの画面の上で指を滑らせながら、綾取りについて調べていた。 子どもの遊び一つとっても奥が深い。 そんな風に感心しながら、休憩の一幕は過ぎていく。 (@1) 2022/08/15(Mon) 18:22:58 |
【見】 郵便切手 フラン【バー:アマラント】 「………あれ」 石階段を降りた先の扉。 業務の終わった後に息抜きがてら訪ねてみたら、 そこに提げられた『CLOSED』の文字と鉢合わせた。 帽子のつばを持ち上げてそれをまじまじと見る。 他の訪問客の有無があった時間かはわからない。 配達員は標識遵守が唯一の取り柄なもので、 扉を開くという発想には至らなかった。 「困ったなぁ……」 青年は肩を落として暫く立ち尽くすのだった。 (@2) 2022/08/16(Tue) 10:11:42 |
【見】 郵便切手 フラン【バー:アマラント】 >>40 コルヴォ 「………? わっ。 こ、こんばんは……」 閉まっていると思い込んでいた──実際、店主は不在なのだが──扉が開いて驚きの声が漏れる。 思い描いていた、意味ありげな笑顔を浮かべる店主とは別人。 数度瞬きをして呆然としていた。 意図して作り出したわけでもない隙の多さは正真正銘、一般人のそれだろう。 「セルフサービスなんですか?」 もう一度『CLOSED』の看板を見たり、 書き置きらしきものを探してみたが見つかる筈もなく。 だが相手の嘘を疑うこともない。 良く言えば素直、悪く言えば騙されやすい青年は男の言葉をそのまま信じたようだ。 「では、その。失礼します……」 他に行きつけの店の心当たりがあるでもなし。 おずおずと店内にあがりこむ。 現状二人しかいないらしいこの場でわざわざ近くに座るのも気が引けたので、男が居座るのとは少し離れた席を選んだ。 カクテルを作れはしないので、ロックで済むようなものを拝借してグラスに注ぐ。 後で代金を払えるようにメニュー表を確認している姿がなんとも滑稽に見えた。 (@3) 2022/08/16(Tue) 14:03:40 |
【見】 郵便切手 フラン【バー:アマラント】 「…………」 時折、腕時計を確認しながらグラスを傾ける。 特に何が起こるでもなくただ表示される数字が規則的に巡るだけ。 新しく酒を注いで、飲んだ杯数を生真面目に記録するのを繰り返していたが、酒に特別強いわけではない配達員は三、四杯でアルコールが回って眠気に代わる。 「明日は……」 酔いとは正反対に回らない思考。 後ろ向きな思いと共に無防備な欠伸が出たりして。 うつらうつらと船を漕ぎ、やがて机に突っ伏して眠りに落ちる。 どこでも睡眠を取れるのは危険を知らない者の特権か。 今日は閉店前に起こす店主もいない。 (@4) 2022/08/16(Tue) 18:03:40 |
【見】 郵便切手 フラン【バー:アマラント】 >>47 コルヴォ 「!!!!!」 声は出なかったものの、その代わりとばかりにテーブルと椅子が盛大にガタガタ音を立てた。 身体が跳ねた拍子にあちこちをぶつけて呻き声があがる。 「冷た……痛い……」 二重の感覚に挟まれて混乱したまま、その出処を探ろうと視線を巡らせて、いつの間にか近くにいた男を見留めて更にもう一度肩が跳ねた。 呆れる色が青年に伝わったかは定かではない。 「お、おはようございま、 いや、あの、 こんばんは……?」咄嗟に起床の挨拶をして、今は夜だったと先程も交わした挨拶を返す。 それから漸くグラスの冷たさが寝ぼけた頭の奥まで届き、 寝入った所を起こされたのだと理解した。 「すみません……」 やっと慌ただしさが落ち着いて姿勢を正す。 荷物を整えて帰る支度に取り掛かり始めるだろう。 (@5) 2022/08/16(Tue) 19:07:58 |
【見】 郵便切手 フラン【バー:アマラント】 >>51 コルヴォ 「えっ。はい……ありがとうございます……?」 ドアへ向かう姿を見送りつつ、 一先ず忠告への礼を伝えるのだった。 強かに打ちつけた場所をさすりながら、示されたカウンター上の帳簿を開く。 一番新しいページを探して、ひとつだけ違う筆跡を見つけた。 先程の人の名前だろうかと単純な考えを巡らせ、 ツケで良いのかなぁ、なんて心配しながらも その一段下に続けて記入する。 「………」 一通りの片付けを済ませて、また時間を確認した。 もう少しバーの周りを歩いてから帰ろうか。 呑気な足音を響かせて、青年は路地を歩き始めた。 (@6) 2022/08/16(Tue) 20:45:27 |
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