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【人】 翠眼 ヴェルデ>>40 マキアート そういう場所があるらしいとは知っている。 けれど行ったことはないから、素直に『ない』と肯定を返そうとして。 謝罪がついてきたから、少年は翠の目を瞬いた。 「べつに、お兄さんが謝ることないでしょ」 「お兄さんとおれとじゃ、見るからに全然違うんだしさ。 だから、なにか違ったってそれは、当然のことだよ」 その差を僻むのは見当違いだし、そんな熱量もない。 スニーカーはややくたびれているけれど、少なくとも今は、汚くはない。 少年は、それでよかった。 つやつやの毛並みの猫のぬいぐるみ。きれいな色の鳥のぬいぐるみ。ころんと丸くデフォルメされたねずみのぬいぐるみ。 ここに並ぶようなきれいなものでなくても。 「お兄さんはイヌが一番好きで、飼ってるイヌを大事にしてて、そういうのはすごく、いいことだろ、たぶん」 「おれは何がかわいいとかあんまりわかんないけど、それだって、全部ヒトシイって言い方してもらったら、そう悪くないように聞こえる」 「好みって言ったら、こういうふわふわのやつじゃなくて、ヘビとか好きな人もいるんだろうな」 ぴ、と指差すのは、にょろりと細長いぬいぐるみ。 他のぬいぐるみたちに負けず劣らずのつぶらな瞳に、赤い舌をちろりと出している。 デフォルメの強いかわいらしいつくりだ。 あなたの言う通り、なにかひとつを好きでいることも、そうでないことも、ただそれだけなら自由なのだ。 (62) 2022/08/14(Sun) 0:05:34 |
【人】 翠眼 ヴェルデ【街中】 大通りを一本外れれば、祭りの喧騒も幾許か遠くなる。 街路に置かれたベンチに腰掛け、少年はゆっくりとページを捲る。 けれどその手にある本は、とてもその年恰好には見合わない絵本だ。 タイトルは『ピノッキオ』——木で作られた人形が、正しい行いや良心といったものを学び、最後には本当の人間の子供になるという童話。 (69) 2022/08/14(Sun) 13:23:17 |
【人】 翠眼 ヴェルデ>>73 マキアート 「ん」と短く首肯する。 少なくとも少年にとっては、気にしていないことで、気にしなくていいことだった。 だのに、はたりとひとつ瞬いたのは、あたたが「無理に同じにならなくてもいい」と言ったときのこと。 翠の目はちらとあなたを見、再度、並ぶぬいぐるみへ。 「ヘビも結構、つぶらな目なんだってね。 虫、虫もそうか、そりゃ好きなヒトもいるよな」 さすがに虫のぬいぐるみは並んでいなかったが。 どこの馬の骨とも知れぬ子供からあなたに提供できるものなど、物珍しさぐらいのもの。 それでも有意義と表してもらえたのなら、すこし、口角を上げて。 「賭け事の……審判をするヒト? ヒトの相手をする仕事だから、話しやすいんだ」 「おれはヴェルデ。 目が翠だから、そういう風に呼ばれた」 (85) 2022/08/14(Sun) 19:57:08 |
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