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【人】 Cucciolo アジダル[ 腐敗した管理形態の代わりに 崩壊した倫理意識を翳しては 跼蹐した一般市民を庇いだて。 そうして今日に至った組織内には 曇った爪先をした人間は一人もいなかった。 大通りを歩む人影も豪奢な装いをするわけでなく、 まして整備の行き届かない路地裏の景観においては 男の服装は浮きに浮いている。 複数の組織が常に対立しあうこの街において 潤沢な資産と資金源を主張する為のオーダーメイドは 牽制の為の鎧であり、威圧の為の銃であった。 犬が犬を食うような趨勢の中、 年齢で、性別で、出自で、国籍で、 些細な切っ掛けでヒトを舐めたがるバター犬どもの 鼻っ面を吹っ飛ばす弾に比べりゃ安いもんだと ことあるごとに嘯いた女の声を知っている。 ] (0) 2020/10/08(Thu) 8:30:27 |
【人】 Cucciolo アジダル[ その肩口を軽率に汚しながら、青年はゆるりと瞬いた。 まだ聞きなれていない背後の声は肯定する色ではなかったが それでも想定の範囲内であった。 小競り合いが頻発し、日々銃声を聞くような街では 家の無い人間など紙幣ほどの価値もない。 気紛れに愛されたり殺されたりするそれらを、 理解し難そうな彼は無価値と思うのだろうか。 猫の子でも扱うような皮肉交じりの口ぶりは 青年の喉を愉快そうに鳴らすには十分で。 ] やだね。 囲うほどの甲斐性も義理もないな。 死ぬまで愛玩するだけの執着もないし、 これが俺に出来る最大限だわ。 [ その割には少し冷えた目で彼を見る。 目敏く示された時計は力でも、安定ではない。 自分に人一人を救うだけの力がないことなど 青年は誰よりもよく知っていた。 ] (1) 2020/10/08(Thu) 8:30:30 |
【人】 Cucciolo アジダル[ 誰よりもよく知っていた。 少し下に向けた視線の汚れた石畳、 そのインクの持ち主の顔も知っていた。 ] というかあれだって人間だ。 生き延びる術なんか生きてりゃ勝手に学ぶでしょ。 それでも生きられないような子供を助けるほど 俺は、……優しかねえさ。 [ 秘密裏の武器輸出の仲介として利用された奴が 取引の終了と共に片付けられたことも知っていた。 受け渡しが完了するまで息をひそめ、 報酬を求めて伸ばされた手が赤く染まるのを 黙って見届けた男は知っていた。 ケツ持たなきゃ手を出しちゃいけねえ法はねえよ? と、そいつは自嘲めいた声を上げる。 光の当たる道では金色の毛虫に黒髪の子供が近寄り 何やら一言二言を交わしている。 一人の手を引いたら芋づる式に繋がってくること等 今更眼前の彼に言うまでもないだろう。 ] (2) 2020/10/08(Thu) 8:30:32 |
【人】 Cucciolo アジダル[ 躊躇なく助けられれば良かっただろう。>>2:31 けれど執着を晒せば弱みとされ、 宝物を知られれば狙われるような状況においては 情の深さだけでは如何ともし難く。 だから、せめて。 数多の救えないものの存在を知った青年は 浅はかな愉悦と酔狂を建前に 不愉快に思うか? お兄さん、と 眉を寄せた笑顔で問うてみた。 ]* (3) 2020/10/08(Thu) 8:30:51 |
【人】 Marguerite シャーリエ[庭で眠ってしまった先の世界で、 久しぶりのお姉さまの顔を見た>>3:40。 お姉さまの捜索はなにも進まないまま、 長く時が過ぎている。 頭を撫でてもらったのもどれくらい前か。 大好きな庭で大好きなお姉さまと夢にまどろむのも、 忘れないでと言われた>>3:39声も久しぶりで、 これが夢だと悟ってしまった] お姉さま。 ……いつも助けてくれてありがとう…… [シャンパンの髪と萌黄の瞳をしたあなたは お姉さまじゃなかったけど、私を支えてくれた。 綺麗な顔を可愛らしく崩して、 会いに来てくれた彼女の手を握った。] (4) 2020/10/08(Thu) 9:03:10 |
【人】 Marguerite シャーリエ[空に浮かぶラッコがポケットに雲を仕舞って太陽が差す。 私が握った手は女性のしなやかな左手ではなく、 固い金属でできた彼の利き腕じゃない方の手。 あの日に繋いだ>>1:D29左手だった] おかえりなさい、リフル [夢なんだと知ったから逆らわなかった。 あの日に置いてきぼりにされた私が笑って、 彼を抱きしめる。ようやく捕まる気になりましたか? ほら、お嬢様と呼ぶ声がする。 今日は教会で祈る日なんだから人が来るのはわかってるんだ。 目が覚めて忘れてしまうまで、このまま居させて……] (5) 2020/10/08(Thu) 9:03:36 |
【人】 志隈[着られてるようなスーツは、 貧困に苦しむ追い剥ぎが鴨にしそうだと印象を持つ。>>0 身なりの良さが報復を恐れて、守る代わりになるのかは知らず。 実力はそれなりにはあるのだろうか。 現在軸でアジダルは生きて目の前にいるのだから、 なんとかはなってるようだ。恐らく。 金持ちだから、貧乏だからどうかとか、 人の価値のあるなしは考えた事が無い。 自分の価値を無意味と思った時、 ]泣き出すほど嫌だったのは覚えてる。 金はあるかと思ったが、足りなそうか。 その辺は割り切ってるんだな。 [やだと明確な答えが返れば、 そこには得信したような顔を向ける。 下手に苦しそうな顔をされても困ったし、 貧しい国の中で自分も全てを助ける方法など思いつきはしない。] (6) 2020/10/08(Thu) 13:22:44 |
【人】 志隈[あれだって人間と言う言い方に、 どの位置に子供を置いているのか思案する。>>2 生き延びる術を学ぶこと、 そうしてかなきゃいけない事はいい。 優しかないと言うが、 自嘲気味に落とされた声は、 青年の優しさを示してはいる。] 少ない施しでもありがたいものだろ。 そうやって、1日でも凌げば、 命をもっと大人になるまで長く繋いでいけるかもしれない。 自分の身銭を切ってまで救えなんて言わないし、 こうしてるだけでも立派なんじゃないか。 [行為自体は不愉快に思わない。 優しさと明るさ、 何処かヒーローの素質を持った青年でもあるだろうか。 引っ掛かったのは別の話。] (7) 2020/10/08(Thu) 13:23:00 |
【人】 志隈ただ─── 精一杯生を全うしてる子供を“可愛い”と言ったあんたに、 人を愛玩動物として扱う気味悪さを感じた。 子供が動物に餌やりをしてるような、な。 [眉を寄せた笑顔に、不愉快なのはそちらだと隠さず告げる。>>3 どれだけ小さくても人には変わりなく、 救えるものは救うべきだと言う善意はあっても、 極論救おうが救うまいがどちらだっていい。 優先順位がある。 全部掴もうとしたって零れてしまうなら選ばなきゃならない。 こんな風に言った所で子供の腹は膨れないし、 意味だってなかった。 あれが本心だったのなら、 精々可愛がって助けてやってくれと思う。 俺が気に食わなかっただけの話。]* (8) 2020/10/08(Thu) 13:23:05 |
【人】 小林 友「この世に悲しいことはたくさんある。 だが、自分の手で死ぬのではなくて 「ここにいたくない」と言うならば どれひとつ、同じ願いを持つ者と お前とを入れ替えてみよう。 元の世界にいる、お前を知っていた人間は 皆お前のことを忘れてしまう。 そうして、お前は新しい世界で 新しい親や友と生きるのだ。 けれど、悲しいことはなくならない。 影のように、お前のうしろをついていく。」 ─────『あの日、月が言ったこと』 (9) 2020/10/08(Thu) 18:57:44 |
【人】 一年生 小林 友 ー 数年後・某大学研究室にて ー 「こら、小林くん。また手指消毒忘れてる」 [同じゼミの柳原が可愛らしく頬をふくらませて 俺の背中を指でつついた。 この『入退出時の手指消毒』の習慣は いつまでたっても慣れなくて ついサボっては、自分より 頭ふたつ背の低い女の子にドヤされるのだ。] 悪い悪い。何年経っても忘れるんだなぁ。 [一旦持ち出そうとした本を脇に置いて 出入口に置かれたスプレーを掌に吹き付ける。 いつまで経っても、俺はこの世界の風習に 完全には馴染めないままでいる。] (10) 2020/10/08(Thu) 18:58:35 |
【人】 一年生 小林 友[─────あの日、月に願いを届けた瞬間 俺の意識は遠のいて…… 気が付けば、病室の一角で 色んな機械に繋がれていた。 慌てて起き上がろうとしたら 病室の前を通りがかった看護士が 飛び上がらんばかりに驚いて叫んだ。 『友くんが動いてる!』って。 後で聞いて分かったことには、 俺という人間は、中学校からの帰り道に トラックに跳ねられて以降、ずっと 目を覚まさぬ植物人間状態だったらしい。 名前も同じ『小林 友』。 父親と母親の顔も同じ。 ご丁寧に、中学校の友達と言って 青柳と佐々木達まで見舞いに来た。] (11) 2020/10/08(Thu) 18:59:00 |
【人】 一年生 小林 友[すんなり飲み込むには、 あまりに大きな変化だった。 リハビリに励みながら何度も事実確認をして どうやら、ここが『コロナ』というウイルスに 脅かされている世界だということは分かった。] …………じゃあ、菜月はここにいるの? [だけれど、俺の周りに 菜月を知っている人が 誰一人としていないことが分かった時は、 俺は、自分の世界を捨てたことを、 ─────少し、悔やんだ。 結局、君に会えないなら もう生きていたって仕方がない。] (12) 2020/10/08(Thu) 18:59:36 |
【人】 一年生 小林 友[でも、俺は結局諦めきれなかった。 リハビリを終わらせて退院したら 青柳達から一年遅れて高校に入り直して 今、大学で近代文学を学んでいる。 研究作家は、小川 未明。 どれだけ研究しても、あの時 俺と菜月に起きた、夢みたいな出来事の 説明なんか付かなかったけれど。] (13) 2020/10/08(Thu) 18:59:51 |
【人】 二年生 早乙女 菜月「エレベーターで、ベースはそんな足の持ち方しちゃだめ! 手でトップの体重のかかりかたを感じて、トップから目を離さない!」 「エレベーターに乗り込むとき、トップはもっと膝の屈伸を使って! スポットはただいるだけじゃないのよ、ちゃんとトップの腰を支えなさい!」 「ダブルテイクの時は、トップの足の高さを合わせて! そのためにはベースが高さを合わせないとダメ! トップ、内股!」 「そんなやり方でエクステンションを続けたら、ベースは肘を壊す!スポットはもっとトップの足首を握って全体を観察しなさい! 何のためのスポットなのよ!」 [大学で入ったチア部は、高校以上にスパルタだった。 私はチアをやめることなく、ずるずると続けている。アキナと同じ大学で。 大学の中で会っても、外で会ってもどこで会っても、アキナは何も言わない。ただ、割れた鏡のような目で私を見るだけだ。 いっそ何か言ってくれれば、と思うけれど、私だって自分からは話しかけることができない。 結局私たちは微妙な関係のままだ。] (14) 2020/10/09(Fri) 6:39:52 |
【人】 二年生 早乙女 菜月[つまんないな、と心から思う。 チアをやっていても、どこか冷めた自分が邪魔をする。 苦しい思いをして、考えないで済む時間ができるのはありがたい。 だけど、チアそのものの魅力には、コロナ前の方が取りつかれていた。 「今」の菜月が好きだよ。>>3:-48 「今」の私はどうだろう。] (15) 2020/10/09(Fri) 6:41:19 |
【人】 二年生 早乙女 菜月[鞄の中には一冊のお守り。 一枚も増えていない、正しい重さの童話集。 ラミネートコーティングされ、 「私立桐皇学院高等学校」と書かれている。 結局高校の図書室に残していくことはできず、 通常よりも高い値段で買い上げた。 ともすると、友君と過ごした日々が ただの妄想じゃないかと思ってしまう。 そんなのは悲しすぎるから。 今となっては、この本だけが あの不思議な現象の証拠になってしまった。 やりとりが何一つ残らなくなって、 確かに友君と過ごしたんだ。 私ひとりじゃ本なんか読まない。 私だけじゃ、こんなに四季には気づけない。 友君からもらった言葉で、私は世界を表していく。 だけど、だけどね、やっぱり、 さびしくて、しかたがない。] (16) 2020/10/09(Fri) 6:41:35 |
【人】 二年生 早乙女 菜月「お、早乙女。いい加減続き読んだか?」 [構内をふらふらしていると、小埜先生に話しかけられた。 小川未明を研究しているとかで、彼の授業を取って以来、なんとなく気にかけられている。他学部の私がわざわざ受けに来たのが珍しいらしい。 「続きは読まないですよ」「そのこだわり何なんだよ」「貞節です」 授業は意味が分からなかった。だけど、毎回単位を落としながらも、同じ授業を受けている。 「下手の横好き、ここに極まり、だな」 いいんだ、必修じゃないし。] 「そういや、今年もう一人入ったぞ。小川未明好きが。早乙女と違ってできるけど」 悪かったですね、と唇を尖らせるのも、小埜先生は聞いていない。ちょうど外から入ってきた男子学生に手を上げて、「あ、いたいた。おーい小林……消毒!」アルコールをせずに入ろうとした青年に叱責を飛ばす。] ……小林? [はいはいと聞き流そうとして、それができずに青年を見た。 よくある名前だし、ただの偶然、だとは思う。 「小林、こいつが前ちらっと話した面白いやつだ。文学部じゃないのに俺の授業撮って、歴史に残る酷いレポートを書きながら毎回授業取ってくる。今年も落ちる予定だ、なあ早乙女」 ぺらぺら話しかけてくる小埜先生を無視しながら、 それでも、ほんの少しだけ期待してしまった。]* (17) 2020/10/09(Fri) 6:44:06 |
【人】 在原 治人[外へ出てからは、慌ただしく過ごした。 本当は少しの期間も 手放したくはなかったけれど、 貴方は大企業の代表で、忙しい身の上だ。 俺は俺で、旅行らしい旅行などしたことがなく パスポートを申請するところから やらなければならなくて 最短で7日間+移動を含む1日 逢えないことが確定してしまった。 (…………淋しい) もう二度と、 こんな想いはしたくないから 手も目も掛けてやらなきゃいけなくて 足枷になり得る甲虫たちは 躊躇なく、全て引き取ってもらうことにした。] (18) 2020/10/09(Fri) 11:28:40 |
【人】 在原 治人[一般的に買取りは 幼虫は2齢のみ、成虫はA品のみ等と 条件が付くことが多いのだが、 AlberTだと名乗れば わざわざ定休日に店長自ら出向いてくれて 卵に至るまで全て、諸手を上げて買い取ってくれた。 大きさ、艶、角やアゴの形の美しさ 青みが強く出た人気のスーパーブルー、稀少な亜種など 超優良血統ばかり。 手塩にかけて育てた彼らを どうして手放すことにしたんですか?と 不思議そうに訊ねられ、] 外国に行くんです 長期になるかもしれなくて、それで… [要領の得ない答えを返せば、 ついにワイルド個体を自らの手で 捕まえに行くことにしたのか?と食いつかれた。] (19) 2020/10/09(Fri) 11:30:53 |
【人】 在原 治人いや、 あの… クワカブじゃなくて、 ひと、なんです [彼の、屈託のない笑顔や 綺麗な微笑みを 思い浮かべながら否定をすれば 自分でも気づかぬうちに表情に出てしまっていたのだろう。 おめでとうございます、と 何故か買取り金額に 色まで付けてもらってしまった。 店頭に並べば、1頭で 軽自動車が買えてしまう7桁を超える雄も居たから、 しばらく、自力でも あちらに滞在できる程度の金額になったのは とても有り難かった。] (20) 2020/10/09(Fri) 11:33:32 |
【人】 一年生 小林 友[大学は、まさに人の坩堝。 同じ講義を受けてる人間の名前なんか 全く知らずに同じ教室にいる。] 『おーい、小林!消毒!』 [小埜先生から呼び止められて視線を上げると 隣に、背の低い先生より頭半分高い 見たことのあるような女の子がいる。 先生に招かれて近くによると 背丈は、俺と同じくらいだろうか。 あの子はチアをしていて ]筋肉がどうとか言ってたっけ。 「「小林、こいつが前ちらっと話した面白いやつだ。 文学部じゃないのに俺の授業とって 歴史に残る酷いレポートを書きながら 毎回授業取ってくる。 今年も落ちる予定だ、なあ早乙女」」 [先生がそう、笑って紹介してくれた その女の子の胸には、ボロボロの 『小川未明 童話集』。] (21) 2020/10/09(Fri) 18:44:39 |
【人】 一年生 小林 友…………小林、ユウ、です。 友、と書いて、ユウ。 [あれだけ見たいと願っていた顔が 水面に揺らぐようにぼやけていく。 話し掛けたいと思っていたのに、声が出ない。 人違いだったらどうするんだ、と 冷静な自分に急き立てられるように 俺は、ただの小川未明好きかもしれない人に こう尋ねるんだ。] (23) 2020/10/09(Fri) 18:45:44 |
【人】 一年生 小林 友[もし、それに肯定が返ってきたならば。 ……ああ、先生の前でキスなんかしたら 後でしこたまからかわれるし……。 世界を越えてもままならないことばかり! それでも、君と一緒なら。] (24) 2020/10/09(Fri) 18:46:28 |
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