【人】 空虚 タチバナ[カナとはきっと同じ時期に入院していただろう。 生きている頃に顔を合わせたこともあるかもしれない。 しかし自身は何に対しても無気力で、 彼女はいつだって■■さん≠求めていた。 故に、私が彼女を認識したのは命が尽きてからだ。 動く心配のなかった自身とは違い、 彼女はただひとつのことに対してまっすぐだった。 だから初めてその姿を認識した時、 拘束された手足を見て驚いた表情を浮かべたと思う。 しかし彼女がそれを物ともせず歩き出した時、 自身の胸の穴と同じようなものかとも感じた。 死んでいるが故に、意味を成さないカタチ。] (218) 2022/08/11(Thu) 3:02:20 |
【人】 空虚 タチバナ[生まれてくることのできなかった子どもたちの前では、 いつも以上に無口になる。 口を開いてしまえば、 「代わってあげたかった」なんて、 ふざけた言葉が溢れてしまいそうだからだ。 過ぎてしまったもしも程、愚かなものはない。 もし、生まれたのが私じゃなかったら。 あの子たちの誰かだったなら。 ……だったらなんだと言うのだろう。 生から解放されたというのに、 あの子たちを見るといつだって生を思い出してしまう。 だから、あの子たちが望むことを私は阻まない。 それは罪悪感などという愚かな感情ではなく、 ただ関わりを避けるためのエゴに過ぎない。] (221) 2022/08/11(Thu) 3:03:02 |
【人】 空虚 タチバナそれに、抜け駆けは厳禁……だし。 [もし、これまでの言動に僅かでも優しさを感じたなら、 速やかに逃げてしまうといい。 すべては自分のため。欲望を満たすため。 生と家族から解き放たれた今、良識も常識も掻き消えた。 強いて言うなら、彼女らが生者ではないから。 生きていない者の未来は奪えないから。] (222) 2022/08/11(Thu) 3:03:15 |
【人】 空虚 タチバナ[死ななきゃいけないと思ったら、死んでいた。 それなのになぜか自分は今もここに留まっている。 どうして。なんで。分からない。 生きたい、なんて。思ったことないのに。 死んで尚、訳の分からない何かが自身を苛んでいる。 頭が痛い。締め付けられるようだ。] (223) 2022/08/11(Thu) 3:03:32 |
【人】 空虚 タチバナ― 病棟廊下 ― ……でもね、めちゃくちゃしてたら気にならないの。 [誰にともなく呟いて、ニタリと微笑んだ。 笑っているような、怒っているような表情だった。 こんな所にやってきて、命が惜しくないんでしょう。 だったら私にちょうだい。 慰めて、弄んで、ぐちゃぐちゃにして、] どうして、私だけ……。 [黒く長い髪をした女が当てもなく廊下を歩いている。 もし耳が暇をしていたのなら、か細い声が届くだろう。] (225) 2022/08/11(Thu) 3:04:23 |
(a65) 2022/08/11(Thu) 3:11:00 |
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