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【人】 Cucciolo アジダル──どうでもよくねえ? んなこと。 ここには道理も倫理もカミサマも何も無いし、 人が動く切っ掛けなんて欲だけだよ。 俺が欲しいのは彼らが明日を迎えるって結果だけ。 そこにまあ、理由…… 尤もらしい言い訳なんか思いつかねえわ。 そんな風に"気味悪く"慈悲を振りまくよりか 畜生扱いしたものを愛でてる方が よっぽど真っ当だろうと思うけどね。 少なくとも、 [ 言い訳じみた行動理念を吐く程度には 憐憫所以の施しはこの場所で受け入れられ難い。 必要なのは真実でなく、周囲を説得するだけの言葉だ。 ] 少なくともまー、さあ、あれよ。 理由なく人助けするヒーローに憧れてるとか言うより よっぽど真面な理由だろ。 [ 彼を見ていた視線は外れ、瞼の下へ。 そんなアホなことを肯定するのは一人で充分で、 ] (50) 2020/10/11(Sun) 1:51:09 |
【人】 Cucciolo アジダル……? [ 一人、誰の事だっただろうか。 眼を開けたかと思えば どこか遠くを見るように揺らめいて踏鞴を踏む。 壁に頭を打つようにして前のめりにふらつけば、 彼の方に倒れ込みかけて、 見覚えのある、 ある。そう。 見覚えのある黒髪が視界に留まって眼を見開いた。 一人、たった一人。] ………。 [ その世迷言を肯定してくれた人がいたのだ。 ] (51) 2020/10/11(Sun) 1:51:18 |
【人】 アジダル( Ditele di farmi una camicia di lino Prezzemolo, salvia, rosmarino e timo… ) [ ……窓から差し込む朝日が眩しくて、 抱き締めた肩口に目元を押し付けた。 細くも透き通った歌声が一瞬途切れ、 笑息を含んだ声色が男の名を象った。 ] ( Buon giorno. Ajdal. ) ……Buon giorno. Mia bella. [ ……音はその部屋には鳴らなかった。 既に思い出せない声は聞こえないが、 言葉は字幕のように脳に入ってくる。 衣擦れ、歌う声、川辺の水音、喧騒。 その人の吐息による残響を追いかけ、 擦り寄った首筋に暖かなキスを贈る。 ──これは、安寧の、 ] (53) 2020/10/11(Sun) 8:42:57 |
【人】 アジダル[ 擽ったそうに捩る身体をつかまえて、 脚を絡めながら下腹部を緩く撫でる。 僅かに弛んでいた皮膚の触れ心地は、 すっかり本来のすがたを取り戻して、 少し前までそこに命が入っていたと、 思わせないほどになめらかであった。 膨らんだここに耳を当てて語り掛け、 見苦しいほどに頬を緩ませた日々は、 未だ男の記憶の内に根を張っていた。 朝の風が薄手のカーテンを纏い踊る。 その影を受けた揺り籠の覆いの下で、 ありふれた幸せがやすらかにねむる。 十年すら共に過ごせなかった時間の、 何気ないたった一欠片だというのに、 瞼を開かずとも綿密に思い起こせた。 ] (55) 2020/10/11(Sun) 8:43:08 |
【人】 アジダル [ ……。 執着の強い思い出だからこそ、 違和感に対する修正力も強く。 ] ──、ケンブリックのシャツは、まだだ、 もう少し、……ここにいてよCuore mia…… [ 観測者の存在など忘れた故に、 閉じ込めた愛しい人の心地が 多少違ったところで構わずに。 柔らかく感じる髪を指に絡め、 唇の先端で軟骨を食むように 耳の先を撫でつつ愛を囁いた。 「二度寝しよう?」と誘えば、 「ダメ」と叱られるんだろう。 恰も幸福の泉に沈み切っては 呼吸すらする気のないような 熱っぽくも蕩けたその笑顔は、 日常と地続きのルーティーン。 ……観測者が一歩でも動けば 容易に観測点がずれる程度の。 ] (56) 2020/10/11(Sun) 8:43:57 |
【人】 アジダル[ 是が失われることをもう知っていた。 聞き飽きる程の甘さを撒き散らして、 この時全てが終わればよかったのだ。 揺りかごの天使がかわいい声で泣き、 寝乱れた聖母が柔らかく抱き上げて、 それを朝食のラテとビスコッティで 迎えに行って寄り添うばかりだった、 そんな至福の時で。 至福の時だという、のに、 記憶の中ですら陶酔しきれずに。 ] (57) 2020/10/11(Sun) 8:44:06 |
【人】 アジダル[ いつだって忘れきれない光景は光を簡単に呑み、 テレビのチャンネルを移行するように脈絡なく、 鉄臭くも醜悪な景色に切り替わる。 赤い溜まりの中に横たわる黒髪の女と、 その腕の中で良い子に眠る赤ん坊と、 報復の怒りが滲む凄惨な室内。 瞳にそれを映した男は 憎悪と怨恨を湛えた顔で、 泣けもせず観測者とすれ違う。 ]* (59) 2020/10/11(Sun) 8:46:09 |
【人】 アジダル[ 嘲笑うでもなく、呆れるでもなく。 戻ってきた言葉たちに肩を竦めただけに留める。>>60 自分の事を知っているかのような口ぶりには>>61 僅かに警戒するような反応は見せていた。 ] 気味悪い方がここいらじゃ真っ当なんだよな。 人助け結構。施すもご自由に。 ただしそんなものを受け取りたいかと思うかは また別の話しなんだぜ。 [ タダより高いものはなく、 純粋な感情ほど信用ならないものはない。 今や廃墟になった教会の、 Take freeの篭に入ったパンよりも 生ごみ袋の減りの方が速かった。 悪意と策略に篭絡された街に於いては 下心がある程度が丁度いいのだ。 それは例え味方の内であったとしても。 ] (77) 2020/10/13(Tue) 0:06:50 |
【人】 アジダル[ 画面の向こうにいた英雄は太陽を背負っていた。 真っ新な拳を祈るように振るい、 守る手を開いて弱きものに伸ばしていた。 それを取れるのは守られる人が他人を信じられるからだ。 生憎と路地裏ではそんな感情は疾うに売り切れている。 ] それに、もう俺は人を殺しているし。 [ 路地裏の角裏、伸びる影に隠れて立つ体を見降ろせば 真っ新な服を赤に濡らした昨日が見えて 奪うばかりの人間がうつっていた。 英雄を名乗るには黒に潰され過ぎているが 取引をするには十分な信用が見えるのだろう。 精一杯の振る舞いを糾弾する良心を殺したから、 小さくかぶりをふって。 ] (78) 2020/10/13(Tue) 0:06:56 |
【人】 アジダル[ 人にやさしくされた分だけ。 生き延びて嬉しかった分だけ。 ただ他人に受け渡してやりたいとはあまりに不遜な感情。 ただそれが真実であるという事実だけが 片付け忘れた死体のように重く転がっている。 ] いい加減、 がっかりしたか?[ どうでも良さそうな声色は何重にか重なって さっさと通り過ぎ。 ] (79) 2020/10/13(Tue) 0:07:00 |
【人】 アジダル[ …………。 当然の報いだと理解していた。 男はそれだけの事をしてきたのだ。 捕虜の口を割る役目を担い、 酷なことを他人に強いてきた。 同じ宿に二人で入り、 一人だけ出るようなことだってあった。 けれど。 彼らなりの落とし前としての行動だったのだろう。 拷問にしては甘い遺体の損壊具合と ほどなくして泣きだした赤子の健康状態を見れば いっそやさしくされていた方だと気づいていた。 けれど。 それは勝者を定める戦争でなく、 雌雄を決する諍いでもなかった。 ワンターンずつ入れ替わるゲームのように、 規定も、協定も、権能も、目的も、条件も、何も。 何もない。 子供の喧嘩よりも単純な癇癪で、 蹂躙されてしまったのは、。 ] (81) 2020/10/13(Tue) 0:07:08 |
【人】 アジダル[ だからヒーローには相応しくなかった。 過ちと知って尚、怨恨の連鎖を断ち切るのが 取るべき道だと理解しておいて尚、 男は銃を捨てようとはしなかった。 ] (82) 2020/10/13(Tue) 0:07:13 |
【人】 アジダル[ 観測者の姿が目に入りなどしないかのように景色は廻る。 ふらふらと歩みながらあらゆる反撃を行い、 暴虐と呼ぶに相応しい復讐を撒き散らし。 自分のボスに潰れる程殴られても、 生まれて初めてめぶいた自分だけの殺意を 持て余しているかのように関係者を根絶やした。 最後の一駒を撃ち抜いた空虚を背負い、帰った拠点。 こちらに手を伸ばして笑う娘を見て、 漸く一粒涙が、落ちる。 ] (83) 2020/10/13(Tue) 0:07:18 |
【人】 アジダル Fra l’acqua del mare e la spiaggia Allora sarà il mio vero amore... [ 柔らかな髪を優しく撫でて、 喉を握り潰した慟哭は 擦れた歌声の形をしていた。 ] (84) 2020/10/13(Tue) 0:11:49 |
【人】 アジダル Ditele di mieterlo con un falcetto di cuoio Prezzemolo, salvia, rosmarino e timo [ 明滅して、 揺り籠の赤子は少女へと成って、 ] (85) 2020/10/13(Tue) 0:14:38 |
【人】 アジダル E di legare i covoni con rametto d'erica Allora sarà il [ 明滅して、 髪の伸びた少女は小さなまま男に手を振って、 ] (86) 2020/10/13(Tue) 0:16:35 |
【人】 Cucciolo アジダル[ 自業自得だ、と、 男は土に立って吐き捨てる。 傘もささず濡れるに任せた雨の中、 質のいい服を着ろと教えた人のいる 6フィート下の箱へ。 後方の建物では誰も喪服など纏わず、 次のトップを誰にするかばかりを議論している。 有力候補であった男が女一人殺された程度で 使い物にならなくなったのは、彼らにとって 想定外で好都合だったようだ。 所詮温い故郷の出身、 ボスに囲われてただけのガキ、 血を絶やさないよう、 かまびすしい有象無象共を、男に世話になった 十数人の仲間たちと元金色毛虫の青年が その拳を以って黙らせている。 彼が気にかけた男の方にはその喧騒は届いていない。 最初から墓と男しかいないかのように その空間はしとしとと静まり返っていた。 ──これは、決別、の。 ] (94) 2020/10/13(Tue) 1:58:36 |
【人】 Cucciolo アジダル……非道いタイミングで死んだね。 [ 顳顬を伝った雫が顎に溜まりを作る。 揺れた景色に混じった言葉がほつんと落ちた。 無法地帯だった街を暴力で支配し、 肥大した権力で公的機関に圧力をかけて お飾りだった秩序に意味を持たせ終えて直ぐに その人は心臓に鉄の口づけを受けた。 娘を妻の親族に引き渡し、 ボスの為に生き直そうと男が決めて間もない頃だ。 ] あんたはいつもそうだ。 僕の気持ちなんかお構いなしに土足で入り込んで…… あんな話、 [ 彼女の人生は父親の自殺から壊れていったという。 他愛ない肴だった話は、自棄になった男から 残酷に選択肢を奪っていった。 繋いだ恋人の手は冷え、我が子の手は離れていった その手に最早何を握ればいいのかわからないというのに 首に繋がっていた筈の輪さえ消え失せて。 ] (95) 2020/10/13(Tue) 1:58:43 |
【人】 Cucciolo アジダル[ 観測者の存在には気付いていない。 けれどそれがどう振舞おうが気に留めず、 後ろだか、土の下だか、あるいはどちらでもなく 静かに言葉を紡いでいた。 雨脚が強くなる。 ] ……。 僕は、組織を抜ける。 母と妹ももう僕の助けなんていらなくなったみたいだし、 Giustinoも、……強い子だから、大丈夫だ。 ごめんな。あんたの仇は取らない。 苦しいのに生きる理由なんてもうないけど、 ……苦しんで生きる以外に、 ……幸せにならないでいることしか、もう。 …………あんたや、妻や、娘を、 あいしている証明の仕方がわかんねえや。 [ どんな因果がどこに繋がり、誰を傷つけるだろうか。 自分の力では守れないと気付いた今は恐ろしく。 ずぶ濡れになった目元から温い水が伝い、 臆病な言葉と一緒に土に染みた。 ] (96) 2020/10/13(Tue) 1:58:50 |
【人】 Cucciolo アジダル[ 徐に膝をついた。 既に濡れきった膝に土が纏わりつくのも構わず、 墓石の前を手で掘り返す。 棺桶まで至らない小さな穴は、染み出る水に追い立てられ 徐々に底がせり上がっていった。 その穴が埋まってしまう前に顔を近づけると 水鏡に映った、あまりにも情けない顔の人物は しずかに口を動かした。 ] ……、あ、 ……………───。 ──っ、 (98) 2020/10/13(Tue) 1:59:23 |
【人】 Cucciolo アジダル[ 一言落とした穴に土をかけて、 恩人と共に埋葬したならば、 人のいる方へ……光る扉の方へと踵を返した。 ] (99) 2020/10/13(Tue) 1:59:44 |
【人】 Cucciolo アジダル[ 人を害したことを後ろめたく思う程度には 青年にだって人権意識が存在する。 倫理よりも手段を選んだこと全てを理解されようとは 元から思ってはいなかった。 然し口から飛び出したのは意図せずして防御のそれ。 否定されたことに僅か安堵したこと、 眼を瞠るほどに驚いたのは青年自身だった。>>90 虚勢を張って面子を保つ日々に ……心から弱みを晒すだけの余白はなく、 肩を並べて後ろを守り続けた組織では 随分空っぽの意識だけが育っていたようだ。 ……ひとときの肯定や心休まる場所。 剥き身の自分と向き合える時間が 適切に取れていれば違っただろうか。 ───。 青年が振舞った優しさは、 男がただ二人にしか向けられなかった愛情は 次は絶対守り抜くと決意できない程に、深く。>>91 ]娘の方へと向けられた。 (104) 2020/10/13(Tue) 6:51:30 |
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