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人狼物語 三日月国


141 【誰歓RP】bAroQueチップで遊ぶ村【花見】

情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


九朗が参加しました。

【人】 九朗



[職人街の一角から、今日も小さく鋭い、火花の散る音がする。]


(1) 2022/04/08(Fri) 22:11:07

【人】 九朗

[店と作業場を兼ねた工房の中。
四方の壁は換気のための窓と出入り口の戸をのぞいて、用途や大きさ、形や材質も様々な部品が雑然とうず高く積まれていた。
そのせいで室内は穴熊の巣のように狭くなっており、作業台に向かって黙々と仕事をする男 ――
一二三の姿は長身の部類に入るにもかかわらず、半ば物陰に埋もれてしまっている。

勝手知ったる馴染みの工房。
声もかけずに工房の戸を開けてみれば、一二三は決まりきった口上のように言い放つ。>>0
実際に、今日は何度か仕事を断っているのだろう。
それでも黙って戸口に立っていれば、ようやく仕事の手を止めた一二三と目が合った。 ]


 お客じゃなくてすみませんね。


[軽い口調でそう返せば、火花の熱と光から両目を保護するゴーグルを外して工具を置く一二三。
九朗は工房内に積まれた物に着物の袖をひっかけないよう気を配りながら戸口から数歩の距離を歩き、台の上に上体を預けて小首をかしげる。]
(2) 2022/04/08(Fri) 22:12:54

【人】 九朗


 子供の人形……ですか?


[てっきり蒸気帆船に乗る傭兵から、魚竜討伐に使用する銃槍の修理でも頼まれたのかと思えば。

一二三の手元にあったのは朋にもこの店にも不釣り合いな白い兎の縫いぐるみだった。
それもただの縫いぐるみではなく、ゼンマイを巻いて動かす仕組みの玩具だろうか。
背中の縫い目を解かれ幾分くたりとした人形の傍らには、ネジや歯車のひとつに至るまで丁寧に分解された駆動部と骨格状の骨芯が並べられていた。
見ただけで子供のものあとわかる愛らしい縫いぐるみに一体どうしたのかと尋ねれば、近所に住む兄妹が動かなくなった縫いぐるみを抱いて泣いていたらしい。
祭りの雑踏で落とした後、不運にもそばを通りかかった荷車の車輪に踏まれて骨の部分が折れたようだ。

ここ数日の春の陽気と見頃の桜、それに神社の祭りも重なれば、仕事は休みにして花見へ出かける島民は多い。
特に職人街の人間ともなれば花見だ祭りだとそれを口実に仕事を休む工房は多く。
九朗が歩いてきた通りも普段は槌で金属を叩く音や機械の稼働音で騒々しいくらいだが、今日は少しにぎやかだと感じる程度だった。]
(3) 2022/04/08(Fri) 22:16:29

【人】 九朗

[そんな中、仕事ではなくただの善意で、縫いぐるみを修理するために骨芯の削り出しまでする一二三。
それをただの子供好きや面倒見がいいという言葉で表すのはどこか不満で。
商売っ気がないと評するのは、あまりに人間味に欠けて惜しいと九朗は思う。

とはいえ島をあげての祭りの日にまで、工房に籠って螺子や歯車に囲まれて過ごすというのも如何なものかと。
普段は自分の方が不健康だなんだと店から連れ出されることが多い身であることは都合よくわきへ置いて。

九朗は車輪に踏まれて汚れた白兎を手に取り、訝しげな顔をする一二三に眦の皴を深くする。]


 じゃあ、兎は私がきれいに洗っておきましょう。
 どうせならリボンでおめかしするのも
 いいかもしれませんね。

 女の子が喜びそうな
 かわいいリボンを買いに行くついでに、
 お花見がてら、一緒に出店をひやかしに行きませんか?


[縫いぐるみの首をかしげながら「ね?」と笑みを重ねてみれば。
「最初からそのつもりで来たんだろう」と、なんだかんだで友人のおねだりを断れた試しのない一二三は早々に是と答えた。**]
(4) 2022/04/08(Fri) 22:21:34
九朗は、メモを貼った。
(a0) 2022/04/08(Fri) 22:31:32

【人】 九朗

[早速明日の約束をとりつけた九朗は、機嫌もよく一二三の工房で針と糸を借り、白い縫いぐるみのほつれを一刺し一刺し丁寧に縫っていた。
車輪に踏まれて折れた骨芯の代わりを削り出した一二三の方は、歯車の欠けや摩耗がないか、小さな部品をひとつひとつ改めている最中だ。

黙々と作業するふたりの間は静まり返っていたが、会話の口火を切ったのは意外にも一二三のほうだった。
唐突に前振りもなく。
そういえばと言って続けられた言葉は
「昔お前が作ったものが修理に回ってきた」
という短い一言。

どこか抑揚を抑えた一二三の言葉に、九朗の瞬きがひたりと止まる。]


 …………おや、

 それは………
 ふむ…、驚きました……ね。


[本当に驚いたという顔で目を丸くする九朗に、一二三の顔が苦虫を嚙んだようになる。]
(36) 2022/04/10(Sun) 0:07:14

【人】 九朗


 ふふ、なんて顔してるんですか。
 単純に驚いただけですよ。


[もういい加減旧式の部類に入るだろうに。
まだあれらを使っている人がいたのか…とか。
わざわざ修理してまで、まだ使おうとする人の手に巡り合えたのか…とか。

たとえ修理の依頼だとしても、遠くへ旅立った我が子の知らせを聞いたようで。
少し長めの瞬きとともに伏せられた九朗の視線に反し、加齢による皴の増えた口元がゆっくりと弧を描く。

対して九朗の表情の変化をつぶさに観察していた一二三は、褐色に近い短髪をガシガシと乱暴に掻いた。]


 ん?
 戻ってこないのか…ですって?
 戻るも何も、私はここにいるじゃないですか。


[くすくすと笑う九朗に、はぐらかされてたとわかっている一二三は言葉を重ねる。
はぐらかすことも、言葉尻をとって茶化すこともできないよう、はっきりと。
「職人として戻ってくる気はないのか」と。]
(37) 2022/04/10(Sun) 0:08:33

【人】 九朗


 戻るつもりはありませんねぇ…
 十年、あちこち旅して見聞を広げたつもりですけど。
 作れるものは作ってしまいましたし…。


[そう言いながら、九朗は縫い終わった糸をくるりと玉止めし、糸切り鋏の先でパチンと切った。

十年、二十年。
人生の大半をかけて、作れるものは作ってしまった。
その果てに、本当に作りたいものは創れないのだと気づいてしまったというだけのこと。
そしていままでにあった「作ること」に対する熱意は、見る間にしぼんで消え失せてしまった。]


 言ってしまえばこれは、
 挫折の末の逃避なんでしょう。

 ………なぁんて顔しているんですか。
 今の生活だって、結構気に入っているんですよ?


[一二三の顔を見て困ったように首を傾ければ、光の加減で鉄色にも見える髪がさらりと揺れた。**]
(38) 2022/04/10(Sun) 0:10:20

【人】 九朗

[「今の生活だって案外悪くはない」>>38
その言葉は正しく本心なのだろう。
九朗の微笑はただ、眠いのに眠くないと服の裾を握りしめる子供を見つめる親のような。
人の手ではどうにもできないことを、仕方ないのだと諦めて、飲み込むことを覚えてしまった大人のような。
そんな言いようのない温かさと寂しさを含んでいて。
九朗の顔を見ている一二三も、重たいものでも飲み込むように太い喉をぐぅと鳴らした。

わかっているのだ。
お互いに。
お互いにいい大人なのだから。
これ以上この話題に踏み込めば、傷を負うのは自分だけではない。
時間とともに曖昧にして、誤魔化したものを浮き彫りにしてしまうと。
互いに大人になったが故に、言葉にせずとも肌で感じて悟っている。]
(56) 2022/04/10(Sun) 23:34:33

【人】 九朗

[友人として過ごした時間がある。
時間の上に成り立つ信頼がある。

だからこそ

沈黙の間に見え隠れするそれを、言葉にして浮き彫りにするのが恐ろしい。]
(57) 2022/04/10(Sun) 23:35:05

【人】 九朗

[そうすれば長年の友人という関係も、そこにあった信頼も、春風に散らされた花弁のように空中へ投げ出されることになるだろう。
その花弁が着地するのは地面の上か、それとも嚙み合わなくなった歯車の隙間か。
どこへ飛ばされ、どこへ落ちるのか。

大人になったからこそ、曖昧にして誤魔化せるものもある。

何を思って一二三が言葉を飲み込んだのか。
それは九朗にはわからない。
九朗が後生大事に抱えている罪悪感や後悔を一二三が知らないのと同じだ。

死ぬまでにいつかは向き合わなくてはならない時が来るかもしれない。
だが九朗はそれを、曖昧に微笑んで先延ばしにしている。

何度も、何度も。
苦い薬を飲むように、言葉を飲み込んでくれる一二三の優しさにあまえている。]
(58) 2022/04/10(Sun) 23:36:05

【人】 九朗


 そういえば、明日の祭りですけどね。


[作業台の一二三から目をそらし、他にほつれたところや、傷んだところがないか、手の中の縫いぐるみを検分しながら別の話題を振る。
わざとらしい話題の転換。
横顔に突き刺さる一二三の視線の鋭さを肌で感じながら、九朗は中身のない白兎に向かって話しかける。]


 姪が神楽の奉納をやるんです。
 姫櫻の神楽、覚えているでしょう?


[この時期となれば、砂漠の海を渡って旅の芸人たちが稼ぎ時だと賑やかしにやってくる。>>28
人の目を楽しませる狐の神楽もそのひとつ。

九朗が言っているのはそれとは別の、薄墨神社の神楽殿で御神木に向かって捧げられる神楽のうちひとつで。
数え年で七つを迎えた少女四人が魔除けの鈴を髪に挿し、桜の枝を手に舞うのだ。]
(59) 2022/04/10(Sun) 23:37:02

【人】 九朗

[九朗の姪と聞いて、一二三が記憶を手繰るように宙を見る。
そうか、あのお転婆の娘がもうそんな歳か。
そう言って口元を綻ばせる一二三はなかなかどうして子供好きだった。
九朗の妹なら俺の妹も同然だとばかりに、実兄の九朗よりも手厚く世話を焼いていたのではないだろうか。
そんな兄の友人のお節介を、当の妹本人がどう思っていたかはさておき。


閑話休題。


兎角九朗が十歳の折、妹は神楽の舞姫に選ばれた。
それはそれは喜んで神社に通い、送り迎えをする九朗や一二三も巻き込んで練習していた。

だが幼いなりに熱心にやりすぎたのだろう。
当日になって熱を出した妹の代わりに、妹そっくりな娘がほかの少女たちに混ざって神楽を舞った。
自分ではない誰かが自分の代わりに神楽を舞うのを、一二三の背に負われて見た妹の胸中は荒れに荒れた。

神楽が終わるや否や、一二三の背でぐずり。
帰りの道で「飴でも買うか?」と機嫌をとろうとする一二三の背で散々手足を伸ばして暴れた少女の熱は増々上がって、家に帰れば居なくなったことを心配した家族に一二三共々散々怒られた。
それが余計に妹のジレンマに火をつけたのだろう。
一軒先の隣にまで響くほど、大きな声で泣き始めた。

そんなところに戻ってきた九朗は、どうして妹が南天よりも赤い顔をして、喉が裂けそうなほどの大声で泣いているのか分からず目を丸くした。]
(60) 2022/04/10(Sun) 23:38:17

【人】 九朗


 どうしたの?
 熱がつらいの?


[こっそり妹を連れてくるよう一二三に頼んだが、着るものが足りずに熱が上がったのだろうか?
小さくなる一二三の前を一瞥して通り過ぎ、妹をなだめようと手を伸ばしたが…。


―――― パチンッ   バシッ!



容赦なく伸ばした手を叩き落され、返す手が九朗の頬を打った。
それもグーで。
これには両親に叱られていた一二三も、九朗の家族も、声を忘れるほど驚いた。
だが妹が泣いていることよりも、その妹にグーで頬を殴られた痛みよりも。
九朗の呼吸を止めるような衝撃は、黒曜石のような瞳からぼろぼろと涙を零す妹の一言だった。


「お兄ちゃんのバカ!嫌い!
大っ嫌い!

 あたしの役だったのに!
 楽しみにしてたのに!!
 いっぱい練習したのに……!!」


聡い妹にはわかっていたのだ。
自分の代わりに巫女の装束を着て神楽を舞っているのが誰なのか。]
(61) 2022/04/10(Sun) 23:40:23

【人】 九朗

[同じ光景を思い出していたのだろう。
あの後は苦労したなと遠い目になる一二三に、九朗はあの時殴られた頬へそっと手をやる。

妹が逞しかったのか。
それとも九朗の当たり所が悪かったのか。
口の中まで盛大に切った九朗だったが、自分の怪我もそっちのけで、布団を被って籠城した妹に許しを請うので必死だった。

子供ながら、妹のために、ただ善かれと思ったのだ。
熱を出した妹の代わりに神楽を舞うことも。
一二三に無理を言って、妹を神社まで負ぶってきてもらったことも。

ただただ善かれと思って。
今日まで熱心に練習してきた妹の代わりに。
妹たちが舞う神楽を何度も見て、妹と一緒に何度も練習した僕ならできるでしょう?

今日という日を楽しみにしていた妹を悲しませないために。
顔付も背丈も似ているから、化粧をして髪を結えば、みんな妹だと思うよ


だってこの姫櫻の神楽は、女の子が舞うものなんだから


必死に練習してきたものをあっさりと兄に取られた妹の気持ちを、幼い兄は目の前に突き付けられるまで考えてやれなかったのだ。]
(62) 2022/04/10(Sun) 23:42:46

【人】 九朗


 結局あの件で、一番大人だったのはあの子でしたね。


[大事な神楽が終わるまでは、泣きも暴れもしなかったのだ。
数日後には一二三も九朗も許して貰えたし、翌年の祭りは両家の家族で和やかに花見を楽しむこともできた。

なにより数年後、今度は青年たちだけで舞う神楽の舞い手に一二三と九朗が選ばれたとき。
辞退しようとした九朗を「昔のことで悪いと思って遠慮してるなら、小さい頃の私に失礼だわ!」と叱り飛ばしたことだろう。

とはいえその妹の娘が、巡り巡って再び櫻姫の神楽を舞うことになるとは。
できれば今度こそ、熱を出さずに無事神楽の舞台に立ってほしいと。九朗も一二三も願わずにはいられない。**]
(63) 2022/04/10(Sun) 23:43:49