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【人】 跼蹐 カナイ──会議室の扉が、そっと後ろ手に閉められた。 消耗こそすれ神経が昂ぶったような感覚が持続し続けているのは いよいよおかしくなりつつあるのか最初からおかしかったのか。 一度深く息を吐いて、注意深く気配を探る。 自身に現れた力が特定の個人を探す事に長けたものではなくとも、 不安定に揺れる気配があれば、すぐに気付く事はできる。 それが多少遠くであっても、大まかな方向程度は。 『おねがいします』。 たったそれだけの文章でも、 何が起きたのかということを察するには十分だった。 だから闇雲に探す必要は無いのだと知っていた。 『ただ二つお願いがあるのです。 聞いてもらえるのです?』 『はい、構わないのです。 1つは、この能力が制御できなくなったら その時は僕を止めて欲しいのです。 叶様や他の人に害をなしたい訳ではないので』 (0) 2022/06/06(Mon) 22:47:34 |
カナイは、無事に、という言葉には、きっと何も言わないまま。 (a1) 2022/06/06(Mon) 22:48:59 |
カナイは、少し眉尻を下げるだけだった。 (a2) 2022/06/06(Mon) 22:49:10 |
【人】 跼蹐 カナイ>>+0 >>+1 弓日向 以前二人で歩いた道程を、今は一人で歩いている。 会議室を後にして、空気の良いとは言えない廊下を少し歩いて 一回、二回、角を曲がって、…… ────三回目の角を曲がった所に、あなたは居た。 その凄絶な姿を見て、 あなたの代わりに悲鳴を上げるように軋む音を聞いて。 ああ、と。 息を吐くようにやるせなさを吐き出した。 ──追想。 ……気味が悪くとも、こうして確かに利益を齎しているのなら。 けれど、益にならないなら?…… ……そしてあなたのそれは、あなたを何処まで、 どういったものにまで変化させ──変異させてしまうのか。…… (2) 2022/06/06(Mon) 23:28:44 |
【人】 跼蹐 カナイ>>+2 弓日向 人体には存在し得ないパーツが床へ近付いていく。 悲鳴じみた音を立てて、ゆっくりと。 その様相を見て胸の内に湧いたものは、恐怖ではなくて。 「…ああ……また僕は」 「死で何かを得た分、死で何かを失うんだ…」 ヒトとは異なる形状の骨。 四足歩行の──凡そイヌ科の特徴を呈するそれは。 唯一の慰めであり、拠り所だった、飼い犬を想起するものだった。 あの子も自身が恐怖から解放されたすぐ後に旅立ってしまった。 「……でも、これは」 「きっと、おれにしかできない事だから」 どうせもう引き返せない自分がやるべき事だ。 それに、あなたの状態は、自身の内にある力で対処する事が。 恐らくあまりにも──適切なものだったから。 そして何より、同じ理不尽を受けた被害者のあなただから。 こんな形でも、その願いの一つくらい、 叶 えたくて。やりたい事だ。だから引き返せない、引き返さない。 (4) 2022/06/07(Tue) 1:12:10 |
【人】 ハリの豺狼 カナイ>>+2 弓日向 だから逃れる為ではなく、向き合う為に。 その四文字を確かに認識したその直後、 また一つ、二つ、まるであなたの心の軋む音のようなむごい音。 それを聞きながら、叶はやはり逃げなかった。 ──恐怖を呼び起こし、研ぎ澄ます。 殆どあなたの理性による制御を外れた意思が、 どのような行動を取ろうとも、それを回避しようともせず。 恐れるものは、あなたではなくて。 これまで、そしてこれからの自身の行いと、その発覚だ。 この力はある程度対象を目視できなければならないようだった。 だから回避などに感けている余裕など無くて、 何れにしてもあなたに正面から向き合うほかなかった。 (5) 2022/06/07(Tue) 1:13:54 |
カナイは、この力を使う時の感覚が恐ろしくて。 (a4) 2022/06/07(Tue) 1:17:01 |
カナイは、それと同時に、どうしようもなく安心する。 (a5) 2022/06/07(Tue) 1:17:16 |
カナイは、多分、前に力を使った時からあまり時間が経っていない。 (a6) 2022/06/07(Tue) 1:18:24 |
【人】 ハリの豺狼 カナイ>>+3 >>+4 弓日向 そうして刹那に嵐は過ぎ去って。 再びの静寂と、それから徐々に血臭に満たされ始めた廊下。 ゆっくりと広がっていく血溜まりと、横たわる少女を見た。 能力の起源に紐付いた奇妙な安堵は長続きしない。 だから今この胸の内を満たすものは。 その思いを理解できたばかりの少女を失った事によって齎された 喪失感と、悲しみと、それから人を手に掛けた罪悪感だった。 「………弓日向さん」 ほんの少し軽く、けれど脱力しきって重く。 まだ温かい身体をすぐ近くの仮眠室へ運び込んだ。 野晒しは忍びなく、けれど会議室へ連れて行くには憚られた。 「あなたはあの時自分の事を薄汚い人間と言ったけど、 おれはそうは思いませんでした」 寝台へと寝かせて、瞼や唇が開いたままなら閉じさせて。 その横で殆ど唯一の遺品となるであろう端末に指を滑らせた。 連なる望みと、呪詛と、それから。 そして、あなたの最後の言葉を思い返して目を伏せた。 「おれの方がずっとどうしようもない」 そんな人殺しに感謝するだけでなく、生きろと言うなんて。 いったいこれから何処へ生きて行けと言うのだろう。 (8) 2022/06/07(Tue) 5:05:59 |
【人】 ハリの豺狼 カナイ>>+3 >>+4 弓日向 だからそんな身勝手はすぐにしまい込んで。 きっとまた少し血に汚れた白衣の裾で目元を乱暴に拭った。 「神様なんて居ないかもしれないけど」 深く息をして、仮眠室を後にするべく立ち上がった。 「居ない方がいいのかもしれない」 だって、もし仮に、そんなものが居たら。 「おれはそれを殺さなきゃ気が済まないから」 たとえばこれが、誰かの描いた筋書きであるのだとしたら。 自分はその誰かを怨まずにはいられないだろう。 そしてきっと、それを殺さない限り。 自分に本当の意味での平穏が訪れる事は無いんだろう。 でなければ、真に恐ろしいものを取り除けはしないのだから。 (10) 2022/06/07(Tue) 5:07:37 |
カナイは、静かに電気を消して、仮眠室を後にした。 (a10) 2022/06/07(Tue) 5:08:01 |
カナイは、また声を聞く。きっと仮眠室を出て少し後の事。 (a11) 2022/06/07(Tue) 5:20:35 |
【人】 ハリの豺狼 カナイ仮眠室を出て、誰かの声を聞いた後。 弾かれたように廊下を駆け出して、 その傍らに気配を探る。読み取ろうとする。不安定な気配を。 今明確に排除すべき恐ろしいもの──奈尾の気配を。 進行方向がわかるのであれば、その背後に回り込むように。 殺さなければきっと殺される。 真に恐ろしいものから逃れるには、殺すしかない。 自分ならきっとできる。自分がやるしかない。 何れにしても脇目も振らず会議室への道を突っ切っていく。 元はドッグトレーナーを目指していたのだ。 犬と共に駆ける為の日々の名残は、まだ身体に残っている。 (11) 2022/06/07(Tue) 7:35:45 |
カナイは、猟犬じみて廊下を駆けて行く。狩るか狩られるかは、まだわからない。 (a15) 2022/06/07(Tue) 7:36:58 |
カナイは、逃げない。 (a25) 2022/06/07(Tue) 13:50:17 |
カナイは、逃さない。 (a26) 2022/06/07(Tue) 13:50:21 |
【人】 ハリの豺狼 カナイ──ひゅ、と風を切る微かな音がして。 ────パンッ!!!! 苦痛による、血を吐くような凄絶な絶叫が響いた後。 銃口より発せられる乾いたものとは異なる破裂音。 脇目も振らず廊下を駆け抜けた先でまず視界に入ったのは、 ナイフを振り被る長身痩躯のその背中。 ひどく焼け爛れ崩れた肉とそれが変質したらしき何か、 その間から時折顔を覗かせる白いもの。 惨憺たる有様となった奈尾の背中、その上部。 ともすれば頸にほど近い箇所で、 ともすれば剥き出しの骨に罅が入り、或いは砕けるような。 無防備な背に飛来した何かを避けられなければ、 奈尾はそんな凄まじい衝撃を感じる事になる。 痛みは無くとも。 音と衝撃の出どころは、 叶が咄嗟に奈尾の背に投げた、掌大のガラス片。 それが忽ち膨張するように体積を増し、炸裂したためだった。 (23) 2022/06/07(Tue) 18:07:17 |
カナイは、その鋭く透明な意思の形は、断ち切る為に。 (a30) 2022/06/07(Tue) 18:07:27 |
カナイは、きっとどうしようもない人間だけど。 (a31) 2022/06/07(Tue) 18:07:32 |
カナイは、誰も幸せにならないこの筋書きを断つ事はできる。 (a32) 2022/06/07(Tue) 18:07:39 |
カナイは、向き合って、終わらせる。自分ではなく、あなたの罪を。 (a33) 2022/06/07(Tue) 18:07:45 |
【人】 ハリの豺狼 カナイ直撃すれば、ともすれば脊髄を傷付けたかもしれない。 たとえ仮にあなたが痛みによって怯む事は無くとも、 幾らかその部位を損傷してしまえば、恐らくは。 脳が身体に信号を──意思を伝える事が妨げられる。 それは意図した結果ではなく、 完全に奈尾の自由を奪うには狙いは甘かったかもしれないが。 ただひたすらに、咄嗟に投げ、咄嗟に恐怖を掻き集めた。 そんな無茶な行使と短時間での連続使用、 そして不安定な精神では、反動はこれまでよりも強く。 それぞれの意思が交錯する、そんな一瞬の後。 殆ど蹌踉めくように踏み出し、けれど注意深く様子を窺った。 反動によってぐわんと殴打されたように意識が揺れて、 視界がちかちかと明滅しても、動きがあれば見逃さない。 あと二回。 (24) 2022/06/07(Tue) 18:08:24 |
【人】 ハリの豺狼 カナイ「────あ、」 だめだ。 揺れる意識の中、眩む視界の中。 蠢くそれを見て、思考はただそれだけが鮮明だった。 牽制程度にしかならないかもしれないとは思っていたけれど、 その変容は、その執念は、想定をゆうに超えていた。 これは、自分でなければできない事だ。 あなたが真に恐ろしいものに成り果ててしまう前に。 あなたがこれ以上の罪を重ねる前に。 自分がこれ以上失わない為に。 信じた人を、助けてくれた人を、傍に居るものを。 僅かでも平穏な時を過ごした、安心できる場所を守る為に。 ──ここで終わりにしなければ。 (28) 2022/06/07(Tue) 22:40:38 |
【人】 西へ行く カナイそれからはあっという間だった。 「この──ッ、 その人から離れろ!!!」 殆ど思考を挟む間も無く、猛犬が喰らい付くように。 深和に覆い被さる異形を尋常ではない力で引き剥がし、 そのままの勢いで殆ど床に叩き付けるように引き倒した。 もはや肉薄する事も反撃を受ける事も厭わず、 ただその動きを止める為に押し倒すように抑え込む。 ──果たして。 この場所は以前に刃の雨がぶち撒けられた地点の近くだろうか。 そうであるならその破片が。 そうでないなら、また一つ、すぐ近くの窓が爆ぜ散って。 あと一回。 床に散乱した破片が、ぴしり、めきめきと耳障りな音を立てた。 その直後、その全てが瞬時に成長し──── 「────う"、あ っ" 」 無機質に冷たく、鋭く、透明な無数の杭となって、 異形と化しつつある奈尾を自分諸共にずたずたに刺し貫いた。 それから一拍遅れて熱く鉄臭い塊が喉の奥から込み上げ、 鉄臭さが口の中いっぱいに広がって溢れ出す。 想像を絶する痛みが身体の中を、神経を、脳髄を灼いた。 お仕舞い。 (29) 2022/06/07(Tue) 22:43:28 |
【人】 西へ行く カナイたとえるなら、そう、針の筵。 ──無間地獄の刀山剣樹。 ねえ、奈尾さん。 自分勝手に、身勝手に、自らの欲求で。 どんな理由があったとしても、確かに人に害を為した。 どこまでも罪深いおれ達に似合いの地獄だと思いませんか。 あなたが悪人かどうかだとか、 どうしてそのような事をするのだとか。 そんな事は論じるにはもう今更な事だ。 どのような理由があれ、あなたは罪を犯した。 どのような理由があれ、自分は罪を犯した。 その罪深さを突きつけられる時が今だった。 おそらくこれはたったそれだけの事だから。 (30) 2022/06/07(Tue) 22:43:53 |
カナイは、それでもまだ生きていて、奈尾を抑え付けようとする。 (a38) 2022/06/07(Tue) 22:45:01 |
カナイは、当たり前に、死にたくなんかなかったけれど。 (a39) 2022/06/07(Tue) 22:45:09 |
カナイは、逃げ場は無くとも、足を止めたくはなかったけれど。 (a40) 2022/06/07(Tue) 22:45:15 |
カナイは、生きてと、そう望んだ少女を裏切ってしまうのは、嫌で仕方なかったけれど。 (a41) 2022/06/07(Tue) 22:45:22 |
カナイは、死ぬ覚悟は、もうできた。 (a42) 2022/06/07(Tue) 22:45:28 |
カナイは、それでも、伝えなければならない事があるから。 (a43) 2022/06/07(Tue) 22:45:34 |
カナイは、この地獄の中で、もう少しだけ生きている。 (a44) 2022/06/07(Tue) 22:45:40 |