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人狼物語 三日月国


45 【R18】雲を泳ぐラッコ

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【人】 二年生 小林 友



  太郎は、少年と友だちになって、
  自分は少年から金の輪を一つ分けてもらって、
  往来の上を二人でどこまでも
  走ってゆく夢を見ました。
  そして、いつしか二人は、
  赤い夕焼け空の中に
  入ってしまった夢を見ました。

  明くる日から、太郎はまた熱が出しました。
  そして、二、三日めに七つで亡くなりました。

  ─────『金の輪』
          小川 未明
 
(0) 2020/10/05(Mon) 14:26:00

【人】 二年生 小林 友


  「ともちゃん、本当に大丈夫?」


[そう青柳が尋ねてきたのは
 また図書館に行こうとした矢先のこと。
 いつもみたいに話しかけるだけじゃなく
 後ろから俺の肩を強く引いて、
 青柳は真っ直ぐ俺を見つめている。

 今更なんだと言うのだろう。
 そんな嫌そうな感情が表に出ていたのか
 青柳の手に力が篭もる。]


  「何かあるなら、話して欲しい。
   クラスメイトとして、友達として」

  ……何も無いって。
  俺は、青柳がどうしてそんなふうに思うのか
  全然分かんないよ。

  「だってともちゃん、前なら俺に
   そんな風に言い返したりしなかった」


[なるほど。さすが周りに目を配れる男。]
(1) 2020/10/05(Mon) 14:26:28

【人】 二年生 小林 友


[強硬な青柳に促されるように
 人気のない教室の空いた席へ腰を下ろすと、
 青柳も俺の隣の席を引く。
 じっと覗き込むような目線から逃げるように
 机からはみ出たプリントの切れ端に
 視線を落として、俺は息をついた。

 何から話せばいい?
 目に見えない女の子と、放課後の図書館で
 便箋越しにメッセージやり取りしてます、
 俺はその子のところに行きます邪魔しないで?
 信じるわけない。こんなこと。

 時間をただ沈黙のために費やしていると
 青柳がそっと口を開いた。]
(2) 2020/10/05(Mon) 14:26:49

【人】 二年生 小林 友



  「俺のね、中学の時のクラスメイト。
   ひとり自殺した子がいるんだ。

   ひとりでいてもなんとも思わなかったし
   そいつが昼休みとかに逃げるように
   図書館とか保健室とか、行くの
   仲間と笑いながら見てた。」


[時々声を上ずらせ、静かに語る。]
(3) 2020/10/05(Mon) 14:27:38

【人】 二年生 小林 友



  「その子が死んだ理由、
   はっきりしないまま終わったんだけど
   ……もし学校で何かあったら
   力になれたかもしれない。
   逃げる道があげられたかもしれない。
   そう思うと、やりきれなくて。

   世の中には、その子だけじゃない、
   悲しいこと辛いことが山ほどあって
   覚えていられないくらいだけど
   もう辛いことが起きないように
   少しでも行動するのは、
   無駄な事じゃないのかな、って。」



[青柳の言葉も、心もひどく真っ直ぐで
 俺はまた何も言えずに口を噤む。

 また長い沈黙の後、俺は考えながら
 唇の隙間から言葉を絞り出した。]
(4) 2020/10/05(Mon) 14:28:16

【人】 二年生 小林 友



  ─────俺には、そんな勇気、ないよ。
  今傍目に死にたそうに見えてたとしても。


[それ以上、何も言えない。
 気まずい沈黙が教室の中に、
 澱のように溜まっていく。
 「そうか」と短く切って、
 青柳は足を組みかえた。

 俺は何か言わなくては、と
 頭の中を必死にフル回転させて……]


  青柳はさ、もし好きな女の子がいて
  その子が、手も届かない遠くにいたら
  ─────どうする?


[つい、そう、尋ねてしまった。]*
(5) 2020/10/05(Mon) 14:34:58

【人】 二年生 小林 友

[少しの沈黙の後、]


  「遠距離、的な?」


[青柳はううん、と唸って腕を組んだ。
 もし、俺が「いや、異世界の子」って言ったら
 今度こそ可哀想な奴扱いにされるんだろうか。
 それとも、青柳はそれでも俺を
 見捨てずそばに居てくれるのか。]


  「俺なら、ちゃんとメッセージ送って
   「逢えなくても好きだよ」って
   相手がちゃんと分かるように伝える。
   それでも会いたかったら……
   俺も会いに行っちゃうかなぁ。」


[少し照れくさそうに笑って。]
(6) 2020/10/05(Mon) 19:01:03

【人】 二年生 小林 友




  「てか、遠距離の話とかだったら
   恋バナ、全然聞くからさ。
   ……あっ俺すごい深刻な話しちゃった?
   だとしたらともちゃんめっちゃゴメン!」


[謝り出す青柳を宥めて
 俺は内心、今の言葉を噛み締める。

 例えば、今図書館に向かっても
 いるのは菜月の影で、俺は手を繋ぐどころか
 声も、顔も知らないんだ。
 他のカップルが当たり前みたいに到達してる、
 その出発点にすらいない。

 会いに行くにはどうしたらいいんだろう。
 俺はもう、そればっかり考えていて。]
(7) 2020/10/05(Mon) 19:01:32

【人】 二年生 小林 友




  青柳、聞いてくれてありがとう。
  ごめん、俺なんかの恋、バナ……?
なのかな

  つまんない話だったと思うけど、ホント。


[にっこり、出来る限りで微笑んでみせて
 俺はカバンを手に図書館へ向かう。

 今度は、青柳は咎めなかった。]
(8) 2020/10/05(Mon) 19:02:00

【人】 二年生 小林 友



[そうして、図書館の宵闇の中
 俺は菜月と逢瀬を交わす。]*

 
(9) 2020/10/05(Mon) 19:02:25
[幸いなことに、図書室はあれからも
 私たちを繋いでくれた。

 友君の文字をなぞる。

 本当、映画みたい。
 2020年とんでもないなって、
 改めて思う。

 今の状況だって十分映画みたいだけど。]

[続く優しい言葉を、何度も読み返す。]


 ……ありがとう


[ぽつん、と落とした言葉は届かない。
 他にももっと言葉があるはずなのに、
 どれだけ友君の言葉が沁みてるか、
 声が、表情が届けば、もっと伝えられるはずなのに。
 私にできることは、ただ友君の言葉を指でなぞるだけで。

 友君の文字がかすれなくたって、
 滲んだ視界では見えにくかった。]

[私は友君に何でも話した。

 チアの魅力、息がぴったり合って、
 会場の観客と一緒に演技を作り上げていく達成感。
 だけど、去年は銅賞になってしまったこと。
 リベンジしたくて必死に練習したのに、
 すべてのイベントが消えてしまって。]

[アキナを落としてしまったことも。]

[空気を乱さないか、興ざめじゃないか、
 そう怯えて飲み込んでいた柔らかい心も、
 友君なら受け入れてくれる気がして、
 優しさに甘えて、話してしまう。

 だけど、どれだけ心を寄せても、
 私たちの距離は遠い。]*



 ……とも、くん


[友君の影が、私に近づく。手が伸ばされて、耳を撫でた。
 耳にかけてくれた髪は、一本だって動かない。
 いくら筋肉をつけたって、輪郭までは女のままだ。
 その丸い胸と腰を、友君がなぞる。]

[友君の声も、顔も見えないのに、
 気遣うような声が、表情を、感じる気がした。

 嫌じゃなかった。
 ただ、なんの感覚も無い愛撫が悲しかった。]


 ……ふ、


[影に口づけられると、じんと唇が痺れた。
 
 無いはずの感触に戸惑って、
 ほんの少しの期待を込めて友君を見上げる。
 だけど、鼻先に指先をかざされると、
 触れられなくても痒くなることを思い出して、
 そうだよね、これ以上の奇跡は起きないよね……
 なんて、すぐに落胆した。

 友君はそうやって甘い痺れをもたらして、
 私の緊張をほぐしていく。

 だけどやっぱり足りない、
 友君に触れたい。
 友君に触れてほしい。]

[私は友君の手を取る。
その手は、空を掴む。

 そのまま、カーディガンのボタンに導いた。
 ハート形の可愛いボタンを、
 私の、
 友君の 
 指が、
 一つずつ外していく。]


 ……ともくん、見て。
 私をもっと、みて。


[衣擦れの音が図書室に響く。
 私の影は、布の厚み分、小さくなった。
 友君に知ってほしい。
 早鐘のように鳴る鼓動も、
 乱れた息遣いも、
 夕焼けの色に染まった頬も、
 何一つ触れられなくたって。

 そのほんの欠片だけでも伝えたくて、
 友君の手を、裸の心に導いた。]

[窓から吹き込む強い風が、カーテンを引いた。
風は、ヒュー、ヒュー、と
 音を立てて吹いていました。

 うっすらと開いた隙間から、月光が矢のように刺さる。
 いつのまにか、満月が近い。
 
 月明かりに照らされた私たちは、
 確かに繋がっていた。]**

【人】 二年生 小林 友



  天使でありますから、たとえ破られても、
  焼かれても、また轢かれても、
  血の出るわけではなし、
  また痛たいということもなかったのです。
  ただ、この地上にいる間は、
  おもしろいことと、
  悲しいこととがあるばかりで、
  しまいには、魂は、みんな青い空へと
  飛んでいってしまうのでありました。

     ─────『飴チョコの天使』
            小川 未明
(19) 2020/10/06(Tue) 9:44:54

【人】 二年生 小林 友

[その日の逢瀬で、菜月と一体何が話せたろう。
 けれど、夕方の束の間の時間なんて
 俺達にはちっとも足りなくて、
 俺は家に本を持ち帰って、
 話し足りない続きを書こうとした。

 何でも菜月は打ち明けてくれて、
 柔らかくて繊細な心をひた隠しに
 仲間や家族に笑ってみせた、その裏まで。]
(20) 2020/10/06(Tue) 9:45:53

【人】 二年生 小林 友

[出来るだけ近くで彼女の気持ちを聞きたくて
 影に寄り添い、声に出す。

 ─────ああ、悔しい。悔しいなあ。
 もっと触れたい、近くにいたいのに。

 便箋を書いては消して、書いては消して。
 今までのやり取りは頭の中。]
(21) 2020/10/06(Tue) 9:47:24

【人】 二年生 小林 友

[そんな扱われ方をした便箋が……
 もう、裏なんかセロテープが無いとこの方が
 珍しいくらいになっているそれが、
 こうなる事なんて、分かっていたはずなのに。]


  ─────……あっ!


[何となく書き添えた、赤いハート。
 恥ずかしくなって消そうとしたら、
 びり、と音を立てて便箋が裂けてしまった。

 慌てて学習机の上に手を伸ばして
 セロテープを取ろうとしたら、
 手も触れていない便箋が、びり、びり、
 もう耐え切れないのだ、と言わんばかりに
 ひとりでに千々に切れていく。]
(22) 2020/10/06(Tue) 9:49:07

【人】 二年生 小林 友



  
ちょっ、えっ、待ってよ!



[慌てて便箋を手で押えても、手の下で
 容赦なく紙は裂けていく。

 たとえ破られても、
 焼かれても、また轢かれても、
 血の出るわけではなし、
 また痛たいということもなかったのです。


 この紙が無くなったら、菜月に逢えない。
 いやだ、いやだ、嫌だ!
 焦る俺を他所に、
 シャーペンと消えるインクの跡を刻んだ便箋は
 もう飛ばす寸前の紙吹雪みたいになっていて。

 ただ、この地上にいる間は、
 おもしろいことと、
 悲しいこととがあるばかりで、
 しまいには、魂は、みんな─────
(23) 2020/10/06(Tue) 9:55:46

【人】 二年生 小林 友

[ともかく、セロテープで繋いでしまえば……
 そう思って、紙から手を離した矢先。


 細かく千切れた便箋たちは、
 たちまち真っ青な
へと姿を変えて
 窓の外へと飛んでいくと、
 まんまるなお月様の方へと
 飛び立っていくのでした。]
(24) 2020/10/06(Tue) 9:59:36

【人】 二年生 小林 友

[行く手に美しい星の光る空を仰ぎ
 窓から身を乗り出すようにして
 俺は一人、大きな声を上げて泣いた。

 「さびくて、しかたがない!」


 真っ青な蝶の昇った空には
 ただ青ざめた顔をした月が
 黙って地上を見下ろしていた。]*
(25) 2020/10/06(Tue) 10:05:32
[あはは、ごめんね。
 お客さんに上の子見てもらうために頑張ってたのに。
 ちょっとすねすねモードはいってた。

 そんなことを、返事に書こうかな。]

[どんなに見つめても、影は影。
 うすぼんやりとした黒い輪郭が
 目の前で揺らいでいるだけ。
 触れたはずの唇が空を切って
 微かな空気の揺らぎだけが
 すう、と湿った唇を撫でた。

 唇を離すと、影の手が俺の手を取り
 心臓の辺りへと導いてくれた。

 どく、どく、と脈打つ肉の感触もなく
 俺の手はきっと、菜月の心に触れている。
 脆くて危うい其処はきっと、
 乱暴に暴けば傷が付いてしまう。
 けれど、それを躊躇う程度には
 柔らかくて、綺麗な形をしているのだろう。]

[俺は、ぐっと空を掻いて
 菜月の柔らかい部分に触れようとした。

 けれど、それはやっぱり虚空のまま。

 触れていたら伝えられたんだろうか。
 ありったけの「好き」の気持ちを
 菜月の中に撒き散らして……

 そこから奇跡でも芽吹いてくれていたろうか。]

【人】 二年生 小林 友




  「どうしたの?!もう夜も遅いのよ?!」


[驚いた様子の母さんを押し退けるように
 俺は家の外へと飛び出した。

 青い蝶は一匹残らず、
 大きな月へと旅立ってしまった。
 泣いても、叫んでも、
 ただ慣れた顔のご近所さんが
 窓からひょっこり顔を出すだけ。

 頬を伝う涙が口へと流れ込んで
 まるで、海に溺れたみたいに塩辛い。]


  
なつきィィィィーっ!!!



[どれだけ叫べば届くのだろう。
 世界を隔てて、君のところまで。]
(31) 2020/10/07(Wed) 19:21:09