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人狼物語 三日月国


174 完全RP村【crush apple〜誰の林檎が砕けたの?】

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[それと同時に頭の中に巡るのは大して接点もなかった人間に、それでも親切に振る舞う小泉さんの姿。

集合写真の時に場所を替わってくれたこと。
パンを買いに来てくれと言われたこと。
香坂さんと一緒にパン屋に行くと約束したこと。
アレルギーに配慮してくれたこと。
そして直前に別れてしまったこと。

あの時、別れていなければ、ともすれば小泉さんは命があったのかもしれない。
誰一人、欠けることはなかったのかもしれない。

小泉さんを犠牲に願ったことは後悔しないと決めた、赦しも乞わないと。
だから、こんなことを考えても意味はないし、考えてはいけないことだと思う。

それでもふと、脳裏に過った。

私は、工藤さんの方を見る。
工藤さんが仲良くしたいと教えてくれたのは、彼なりの気にかけてやってくれというメッセージなのだと受け取って。
そして私もまた、彼女の人生に付き合うと決めたから。]

工藤さん…

[その先の言葉は出なかった、ただ私は彼女の背をそっと撫でた。あの時と同じように。
今はそれしか、出来ないから。]

メモを貼った。

[白状した夢の中での背後霊っぷりに送られるジト目から目を泳がせていると、投げかけられた問いには再び首を傾げた。

幻滅するようなことがあっただろうか。
徹っちんとの会話がすれ違ったりするのはお互いがちゃんと友達でありたいと思っている故のことだと知っているので、これから先があることを思えば尚更心配はしていない。

還る前の皆の前での出来事もあの場にいた者にしかわからないものがあるのだろうし誰にも責められることじゃない。
隠さない本音を伝えられたことはよかったんじゃないかなとオレは思うし。

先輩のことならオレは尚更何もできてない。それに、先輩はあの時間のことを──。

答えを言う前に差し出された両手に小さく笑って背中に手を回す。]

 いや?いい女だと再認識したくらいだ。

[抱き寄せてから幻滅したかの問いには否定を返して。
それでもきっと本人的には後悔とかいろいろと思ってしまうことはたくさんあるだろうけど。
誰の夢かを知った今、そんな気持ちを抱えているのはオレも同じだから。]


 ……うん、徹っちんは生きてるって信じてたけど、
 やっぱりちょっと怖かったしな。
 遺言とか言い出すし。

[耳元に落ちるマブダチの無事への安堵に、答える声は少しだけ掠れそうだった。

そして、もう会えなくなる人の名前を紡ぐのを聞いて。
そこに涙声が混じるのがわかるから頭に手を回して慰めるように触れる。

耳にかかる吐息が引き攣る音で途切れるのがわかって、撫でる手が微かに震えた。]


 ……、先輩は、あの時間を、
 …有意義だったって、

[あの時間で得るものがあればよかったと還るオレに言った先輩。
先輩にとって天使の慈悲だったと受け止めていたのなら、何も出来なかったなんてことはきっとないって思いたい。

うまく言葉が出てこなくて、一度目を覚ました時に流れたはずのものが目の奥からこみ上げてくるのがわかった。

泣いてもいいはずだ。
だって泣きたい時は泣いた方が良いと先輩は言っていたから。]*

[最後、残してきた言葉を思えば今すぐにでも目を閉じて夢に会いに行きたかった。
でも、なるべく覗かないでおこうと思う。
見られたくないこと、聞かれたくないこと、知られたくないこと。
勝手に知るのは俺自身が許せない。

それからこの会いに行けるなんてクソみてぇな“慈悲”が等しく全員にあるとするなら。
俺が夢にいた時は誰も見なかった。
つまり夢の中からはこちらを見ることは出来ないってことだ。
津崎くんにだって、小泉くんにだって
会いたい人も見えてたい人もいるだろうに。
俺だけが見えて、向こうから見えないなんて。
それはそれで、辛すぎるから。

どうしても呼ばれたら行こう。

見えてなくたって、俺は傍にいる。]

メモを貼った。


 ……ぅ…………。

[聞くと居たたまれなくなる"かわいい"もだけど、"いい女"とか。

武藤はまた、そんな殺し文句を繰り出してきて、頬に朱が走る。

津崎も少しそういうところあるけど、武藤も大概、自覚無しの人たらしだ。

それを、"そんなことない"って思ってしまって、ありがとうと素直に受け止めることの出来ない自分の臆病さは、ただただ、申し訳なくて。

でも、笑顔で受け止められるようになるまで、多分、武藤は待っててくれるのだと思う。]


 ……うん。津崎に遺言、言われて。
 どうしようかと思った。

 って……ああ、見てたんだね。

[さも横で見たような風に言われた から、言葉通りに"見てた"ということだねと頷く。

何を言ってるのと腹立たしかったし、けど"マブダチ"として唯一できることなら、彼の願いに応えたい、応えなきゃ、と思って。

心が端から凍りついていきそうだったけれど、もっときついのは津崎の方なのだからと必死で冷静を努めていた。

声も気配も感じなかったものの、あのやりとりを武藤が見ていてくれたのなら、あの時の心が冷えた記憶も、少し和らぐ気がした。]

 "生きてたら、全部スルーで"
 になって、良かった…………。

[配信の手伝いはするって約束したけど、そんな形で手伝いたくはなかったもの。

津崎と交わしたその約束を武藤はまだ知らないかもしれないけれど、いざやるとなったら、多分武藤も巻き込んでしまうのだろうし、だったら、3人でやった方が、絶対楽しい。]


 小泉さ、ん…………、
 "有意義"って、思ってくれた、んなら、
 …い、いな……ぁ……。

[ああ、もう絶対、泣きじゃくってるのは武藤にバレバレだろうけど。
それでもいいやと武藤の首筋にしがみつく力を強くする。

で、武藤も泣いてるな……と気がついたけど。
泣いていいよ、って思った。一緒に泣こうよ、って。

それは小泉さんにとって何の弔いにも慰めにもならないかもしれないけど、でも、"自分の事など忘れて幸せになって"なんて、私はきっとどちらの立場に立っても思えないだろうから。]

 起きる前、小泉さんの、パン、食べたの。
 猫型だっ、たの。

[すごく美味しかったんだよ、とせめて笑顔を作りたかったのに、もう全然、無理だった。*]

メモを貼った。

[窓の外を見た。
夕日が沈もうとしているのが見える。
赤い空を見つめて、進んでいる時間を認識した。
もうあの青い空はここにはない。

ただボンヤリとみつめているしかできなかった。
茜色の空をもう、小泉くんが見ることはない。
パンを奢ってくれる約束も。
生きてかえったなら、聞けるはずだった願い事も。

スマホを恐る恐る取り出して保存ファイルを見た。
俺が頼んで保存してもらった写真は不思議と残っている。
ふ、と吐いた息。
笑み故に毀れたのか、息が詰まったのかは、自分でもわからなかった。]*

メモを貼った。


―― 少し未来:病室 ――


[武藤と会話して、その後、私の病室から去っていって(看護師さんに追い出されたとも言う)、それから少しした頃。
意識が戻った私を見舞いに、母と弟がやってきた。

私同様に泣き虫な2人の涙を見て、"死んでもいい"と思っていたことを改めて反省した。

  もう"死んでもいい"なんて、思わない。

  これは、小泉さんに貰った命だと思う。

  "たった一人" を引き受けてくれた、
  小泉さんに貰った命。


話によれば、外傷はほとんどなかったものの、私は一時、原因不明の脱水症状に陥っていて、嘔吐したり激しく魘されたりと、細々したことはあったらしい。]


 ────ああ、だから、

[なんで手術着みたいなのを着ているのかなとか(少なくとも武藤は私と同じ格好ではなかった)、なんで点滴されているのかなとか、不思議に思っていた事柄が、腑に落ちた。

左手の裂傷は、割れたパフェグラスの破片が刺さっていたから……だそうだ。

再検査で異常なしのお墨付きが貰えたところで、漸く私服──美術館に行った時と大差無い──に着替えられたし、点滴の針も抜かれ、そして私はようやく病院内を歩けるようになる。*]


 あ、うん。見てた。

[そういえばあの時オレは二人には見えてなかったんだとか今更。
徹っちんが他の人と個人的に話してるところはなんだか気が引けてほとんど見てないが、この2人なら別に、自分がいることが自然だとすら思っていたし。]

 でもまだ世に出してないオリジナルの曲とやらは聴かせてもらわないとな。

 徹っちんそのうち海外行くらしいし。
 なんか、ばーちゃんちとか。

[寂しくはなるけど離れても帰ってくるのだから悲嘆することでもない。
それまでにいろいろパフェ食うでも動画の撮影でも、一緒に出来れば楽しいことは知っているから。]


 ……オレも、そう思いたい。

[少なくともくっきーが先輩と本音を話したり手料理を食べたりする時間はきっと無駄じゃなかったはずで。

オレがいた時間、それから見てきた時間。
あの夢の中のことをひとつひとつ思い出すと静かに溢れてくる涙が頬を伝う。

おそらく此方が泣いているのも伝わっているだろうなとは思いながらも、泣きじゃくる背を緩く撫でた。]

 あんだけ美味そうに食べてたら先輩も嬉しいんじゃねえかな。
 先輩、ほんとにパン好きだし。
 パンもだけど、人に喜んでもらうこと…?、誰かの力になることが好きなんだと思うし。
 
[少なくともオレにはそう見えたから、今はいっぱい泣いたら、またあのパンを食べてた時みたいに笑えれば良いと思う。]

[濡れた自分の目元と頬を手の甲で擦って顔を上げれば、泣いてぐしゃぐしゃになってるくっきーの顔に向き合った。]

 先輩のパン屋、行く約束してるから一緒に買いに行こうな。

[猫のパンでもトラのパンでも、と言った顔はなんとか笑えていたと思う。

向かい合った眦を親指拭えば涙は止まっていただろうか。
まだ溢れてくるようなら濡れた目元に唇を落として、泣き止むまで待つよ。]*

メモを貼った。

──病院・どこかのタイミングで──

[くっきーの見舞い(?)を終えた(追い出された)後で、まつもっちゃんの病室へ向かった。

此方へ還る直前、声が出ないようだったが大丈夫なのだろうか。

喉の調子が悪いのであれば食べたり飲んだりも今はできないかもしれないのかもしれないし、と手土産は思い浮かばず。

筆談できない>>:5+116とは聞こえたので理由はわからないがまだ会話は難しいかもしれないけれど。

顔を合わせれば開口一番で]

 まつもっちゃんが、生きててよかった。

[そう伝えるつもりだ。

還る直前の様子から「いきたい」に当てはまる漢字がなんなのかはオレにはそこまで察せていないし、聞くことはしないけれど。

これはオレの単なる願望で。
それ以上でもそれ以下でもない本心だから、返事は出来なくても伝えられればそれでよかった。]*

メモを貼った。


[別に、武藤に見られて困ることは、していなかった……はず。

まさか、吐いてる時にすぐ隣に居た とか、一人でべそべそ泣いてる時にもずーっと傍に貼り付いてた とか、絵の中の偽物の自分に喧嘩を売っていたところで"いい女"呼ばわりされてた とか、そのあたり暴露されてたら「なんでそこまで全部見てるの」と、拳を握り締めていたかもしれないけど、まあ、黙っていてくれたなら……うん。

いずれにしても、津崎とのやりとりは見られて困るところはどこにも無かった……のだけど。]

 ────え。

 それ、全然聞いて無い。

[武藤の言った"海外行くらしい" は初耳だったし、ばーちゃん云々は少しだけ本人の口から聞いたけど、そういえばどこの国のとか、そういうのは全くすっとばされてたし。

まあ、遺言で口にすることでもなかったんだろう。

「武藤から聞いた」と後に私が津崎に告げたところで、「言わなかったっけ?」くらいの反応が返ってくるんだろうし。]


[パンが美味しかった。
美味しいと伝えることができた。

それを心底喜んでくれたか否かは、推測でしかなくて、武藤の言葉 は、もしかしたら互いの傷を舐め合うだけの言葉だったかもしれないけれど。

それでも、この無機質な病室で一人抱えて泣くよりは余程に良かった。

武藤のおかげで、涙も早く引っ込んでくれたのだと思う。]

 ────行く。
 小泉さんのパン屋さん、行く。

[小泉さんの後輩です、とてもお世話になりました、って言って、いっぱい買い物する。

ようやくに目を合わせた武藤は、武藤の側も泣いた後っぽい顔になっていた。
けど、あからさま、私の方がもっと泣いてて、なんだか悔しくなったかな。

最後にぼろ、と零れそうになった涙まで唇で止められ、ようよう気持ちが落ち着いたのだった。]


 ごめん。
 ──もう、大丈夫。

 そういえば、工藤さんや朝霞さんは無事?
 そういえば松本さん、
 還る前になんだか具合が悪そうでだった……。

[自分の指の状態からして、夢と現実はいくらかリンクしているようで。

松本さんの具合が気になったけれど、まだ動けないんだよねと、点滴付きの腕を掲げたのだった。

そうしているうちに、回診の時間が来たようで、武藤は病室を追い出されることに。

動けるようになったら、今度は私が武藤のお見舞い(?という名目で良いのかな?)に行こうと思う*]

メモを貼った。

─病院・武藤くんと

[ベッドの上でただ空を眺めていた。
病室のドアが開く音に振り返れば、そこには武藤くんが立っていた。
その姿は幾分と元気そうで、怪我などなかったことが窺える。

開口一番告げられたそれ。

武藤くんがどこまで俺を見ていたのかは知れないが。
その言葉が嘘偽りない本心であろうことだけはわかる。
唇を開いたけど、空気を吐くだけで声は一つも出なかった。
ふっと苦笑を漏らして、自分の喉を指さす。
その後首を振れば理解はしてもらえるだろう。]

 ……、…。

[「生きていてよかった。」

頷けばいいのか、首を振ればいいのかわからなかった。
永遠に、その答えは出ることなどない。

だから「ありがとな」とゆっくり唇を動かした。]*

──病院・くっきーの病室──

[ずっと貼り付いてたことを具体的に告げるのはむしろオレが恥ずかしいので拳は解いておいて大丈夫た。

知らないはずのことを知ってるかのように答えることはあるとは思うので、「なんでそこまで見てるのかポイント:を踏まないようには気をつけたいとは思うが自信はない。]

 オレも徹っちんからはこっちに還る前くらいに聞いたから初耳だった。
 まあ、行ってもそのうち帰ってくるとは言ってたし、またすぐ会えると思うよ。

[どのくらいの期間かはわからないけど、戻ってきた時にオレは結婚してるかなと言われたのを思い出し。
若干恥ずかしくなるのと同時に、それは長い期間なのか短い期間なのか…?と疑問が湧いた。

数年くらいだろうか、そんな長いことではないなら良いなと思う。
多少長くても、此処で感じた帰りを待つ時間よりは穏やかに待てることは確かだ。]

[目覚めた時に一人で流した涙はただひたすらに苦しくて、その後もふとした時に泣いてしまいそうな感覚が残っていた。

だからこうしてくっきーが一緒に泣いてくれたことで、大分心が楽になった気がする。

パン屋に行く約束に頷いた顔はだいぶ落ち着いていたようだったから、なんとか作った笑顔は幾分自然なものに戻せていたかもしれない。

さすがにオレの方が泣いてたら恥ずかしいなと思ったけど、見合わせた顔がなんとなく悔しそうだったから]

 待ってる間の競争はオレのが速攻で負けたから引き分けってことで。

[最後の一滴が止まった後で、一方的に知ってばかりはやっぱ不公平かなと思ってバラしておいた。]


 ミサミサは脛に傷を…、
 いや、言い方が悪かった、
 脛にでかい痣がある以外は怪我はないそうだ。

 じゅじゅは足を骨折してるらしい。
 顔出したけど親御さんに悪い虫を警戒されたみたいなので会ってはない。
 あ、でも良さげなチョコ菓子をもらったので後で徹っちんと3人で食おう。

[先に還っていた二人の状態を説明しつつ、まつもっちゃんの名前が出れば具合は大丈夫か心配になってくる。
命に別状ないのはわかっていても。]

 じゃあオレはまつもっちゃんの様子見に行こうかな。
 
 ちなみにオレは無傷だから、いつでも会いに来ていいぞ。

[今更みたいに自分の状態も付け加えて。

回診に来た看護師に追い出される形でくっきーの病室を後にした。]*

──病院・まつもっちゃんと──

[喉を指差して首を振る様子に話すのが困難なのだとわかって、早くまたいろいろな話ができるようになれば良いと思う。

あの夢の中でたくさんのものをくれた声をどこか懐かしく思い出していた。

口の動きで伝えられたお礼に、うん、と笑って返す。]

 還る前にまつもっちゃんが言ってくれたことで、
 待ってる間大分救われたから。
 オレもありがとう。

 くっきーが還ってきて、
 徹っちんが生きてて、よかったよ。

[その裏にある先輩の死が悲しくないわけがないけれど。

オレの大切な二人の無事を祈ってくれていた時にオレが素直に頷けなかったことを今は全部ひっくるめて受け止められれば良いなと思う。

一方的に話すことになると思うけど、そんなことを告げれば]

 喉の具合良くなったら教えてね。

[その時は何かお土産持ってくるわと付け加えて、何ごともなければ病室を後にしただろう。]*

メモを貼った。

[武藤くんの笑顔は柔らかくて それは本当に救いだったかもしれない。
礼が返ってきたならば、今度は一度頷こう。
何かを与えられたなんて思ってはいないけど、それでも
何か受け取ってもらえるものがあったのなら、首を振る必要はない。

俺が生きていて。
黒崎ちゃんが生きていて。

津崎くんが生きていて。]

 、  …、…。

[一瞬、呼吸が止まった。
その裏の死をどうしても感じてしまうから。

たった一つの願いである“津崎くんが生きている”こと。

喜びたい、すぐにでも。
聞こえやしないだろうけど夢の中まで駆け出していきたい。
会いたい、傍にいたい。
それでも、ぐ、っと拳を握る。
もう一つだけ頷いて、少しだけ眉を下げた。

「おう。」

喉の具合がよくなれば、には唇でそう返して。
部屋を出る武藤くんを見送った。]

[武藤くんがいなくなって、病室には静寂が訪れる。
静かではあるけれど色んな音がした。
蝉の声、木々の擦れる音、心拍を測る機械、俺の鼓動。

生きているリズム。

あの世界では切り取られていた一部。
小泉くんはもう、感じることはないんだ。

夏の暑さも、空の移り変わりも。]

 っ  、… 。

[目の奥がチリチリと焼けるように熱かったけど
唇を噛み締めて、拳を握って、窓の外の夕日を睨み付けた。

「いっぱい泣いてやればいいと思う。」

俺はまだ、泣いちゃいけない。
そう思ったから。]*

メモを貼った。

[まつもっちゃんの病室を出て、廊下を歩きながら話していたときの表情を思い返す。

並べた生きていてよかったはただの事実で。

「皆が幸せに生きること」を願ってたまつもっちゃんが、その裏にある死に罪悪感や絶望を抱かないはずがないのはわかっていて「よかった」なんてわざわざ言ったことに、何か胸に詰まったような顔を思い出して胸が痛まないと言ったら嘘になるけど。

最後に一人残るのが誰だったとしても、還った皆に向かってよかったって言うつもりだった。

先輩にもう会えないことを思えば悲しくて押しつぶされそうだけど、多分先輩は皆が生きていてよかったと思うはずだ、とは願望だけじゃなくて。

もし還る側だったとしたらと想定してまず心配することが「皆のために出来ること」だった人だから。

残ることより還ることに対して不安を覚えていたような先輩が、もし還ってきたとしたら、その裏にある悲しみがどれだけ深くても「よかった」と伝えたいと思ってた。]

──病室──

[先輩が還ってきたらお礼を言うと返して、還ってこなかったらの想定には何も答えなかったミサミサの胸中はわからなかったし、先輩にもう会えないとわかった今どんな心境かもわからない。

いくらか口数が増えて、話すたびにどこか成長しているように見える不器用な後輩が変わったのは多分、先輩のおかげなのだろう。
こちらの言葉への返答以上をあまり返さない彼女から唐突に出た先輩の話からそれくらいはわかる。

夢の中ではあまり見かけなかったけれど、先輩の側にいるのだろうか。

病室に戻ってきても今は目を閉じる気にならなくて、代わりに残された二人のことを考えて目頭を押さえた。

 徹っちん。
 先輩のこと、先輩との最後の時間、
 託すことしかできないけど任せたよ。

先輩の思いを受け取って送り出して欲しい。

最後の二人では還る方の苦しさや悲しみも大きいことは想像に難くないから、還ってきたら笑顔で出迎えられるようにはしておくつもりだ。

心の整理はまだどうしてもつかないけど、再び顔を合わせられる時までには、きっと。]*

メモを貼った。

―― 夢・パンを焼く小泉さん ――


[気付けば私はまた美術館の中に居た。

ああ、そうか、回診の後、また眠気が襲ってきて寝ちゃったのか……と思いつつ、でも、津崎と小泉さんの会話を覗き見ようなんてつもりは全然なくて。

帰ろう、と踵を返したところで、ふあんと記憶にある香りを感じたのだった。 ]

 ………………パン?

[焼いたパンじゃなくて、それよりずっと前の、発酵している小麦粉とかバターとかの、ちょっと甘い、ミルクっぽいような匂い。

別に食べたいと思ったわけじゃなく、小泉さんのパン作りを見たいと思って、つい、ふわふわと近付いてしまった。]


[私がパン生地を作ろうとするとすぐベタベタになって、それが嫌で粉を足して、足しすぎて大惨事……という感じだったのだけど、やっぱり、小泉さんの作業はすごく綺麗だった。]

 1次発酵って、どのくらいなんだっけ……。

[オーブンに貼り付いて、少しずつ膨らんでいく生地を見ていたら、小泉さんがぽつぽつと独り言を呟いていて。

聞くともなしに聞いていたら、突然、語りかけるような口調が飛んできて、私は足が地面から浮くほど驚きながら、目を見開いた。]

 ────え……。

["死んでほしくなかろうが、俺は死ぬ"。

それはまるで、こんなの嫌だと駄々をこねた私 への返事の言葉のよう。
いや、それはきっと、私のあの時の言葉への返事だった。

正論じゃない。正論じゃないよ。
それは全部、小泉さんの本心で、全然、教科書っぽくもなくて。]