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人狼物語 三日月国


203 三月うさぎの不思議なテーブル

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 ― 巣穴を出る前に ―



[ 速崎から視線を向けられることは、無かった。
  或いはタイミングが悉く合わないだけなのか。
  失恋の瞬間と葉月との会話にも鉢合わせた大咲は、
  尚更なんと声を掛ければいいか分からなくて
  結局その日も、後ろ姿へ指先を伸ばしかけるばかり。

  バックヤードの事務用品置き場から紙とペンを拝借し
  置手紙を書き記す。
  まるでいつかの再来だ。

  今度は此方から送る番。
  店長へ「けいちゃんが大丈夫そうな時、渡してください」と
  言付けてから、しっかり預けた。 ]

 

 


   『  けいちゃんへ


      ちゃんと話し合えたの、見てたよ
      私も一度、けいちゃんと話したいことがある

      でもまだ少し整理できないんだ。
      言葉を押し付けることはしたくないから
      整理してから、話したい。
      避けないし、離れないって約束する

      だからちょっとだけ、待ってて


                  真白  』


 

 


     [  ──いつ届くかは、さて。*  ]


 

メモを貼った。

[時間配分も満腹具合も見誤る。
酔いつぶれた葉月を笑えない体たらく。

会計後にタルト1つ分の計上がされていないことに気づいて「あっ」と声を上げたが、もうひとつ分払うとレジ前でごねるのもみっともないか。
真白の方が上手だった。
苦笑してレシートを畳み、「彼女の分も払う男」になる機会は次に持ち越すことを内心誓う。]

メモを貼った。


 ……ちょっと動こ。

[クローズから彼女が出てくるまでの間、腹と胸を落ち着かせる為に近くをうろついた。
もう何度かこうして彼女が上がるのを待って一緒に彼女の家まで歩いたり一緒に電車に乗ったりしているが、いまだに待つ間にドキドキしてしまう。

これが初恋という訳でも初交際という訳でもない。
過去には恋人もいたが、こんなに強く求めてしまう想いが自分の中にあることを今初めて経験している。
そのことを彼女に話す機会があるかどうか。
言葉端に滲んだ過去にもやもやしてしまう程に自分の言葉に敏感でいてくれる彼女を安心させるには、話すのと話さないの、どちらが良いのだろうか。

不安を感じる隙も無いくらいに愛を実感してもらいたい。
今のところ、自分が負けっぱなしな気もするが。]

[今日、これから、彼女が泊りに来る。
焦らすつもりがあったのかなかったのか、
二人きりになって、名前を呼ばれることを想像しただけでじっとしていられない。

あまり激しく動き回ったら、ナギのスープや想いで繊維質を消すマジックのかけられたアスパラが勿体ないことになりそうなので、あくまでウォーキングレベル。

しかし、店から出て来た彼女が疑問に思う程度には、出迎えた自分は息が上がっていたことだろう。]


 お疲れ様。
 タルト、冷蔵庫借りててごめんね、持つよ。

 ……うん、僕も繋ぎたい。

[同じ気持ちだとはっきり言葉に出して手を差し出す。
繋いだら、そこからはもう白うさぎを独り占めする時間。]


 この服袖が広いんだ?
 手首まで掴めちゃいそ。

[繋いだ手から指を伸ばして少し悪戯。
ふふ、と笑って見下ろした彼女の唇の美しさに動揺したのは指の跳ね方で伝わるか。]

 今日のスカートも可愛いな〜
 このまま誰にも見せずに僕の家に連れて帰りたいけど、
 お泊りセット、買うでしょ?

[営業時間がうさぎよりも長いドラッグストアは駅前にある。

店に来る前から泊りを計画していたなら持っているかもしれないが、恐らくそうではないだろう。
布団はあるし寝る時の服は貸せるけれど、その他今の自分の家には女の子に必要な諸々は何もないので。

茶葉はさすがに置いてなさそうなので、大人しく次のデートを待ちます。*]

[白状しよう。

 住所をそのまま伝えたのは、
 伝えたところで自宅に押しかけるような
 人柄ではないことぐらい、十分に理解していたからだ。

 男の一人暮らし。
 誰かが押しかけてきたとてそれなりの重さの鍋と、
 毎日厨房に立つ立ち仕事。

 ジムに通っていなくても、
 刃物など振り回されない限りはなんとか出来る心持ちはある。
 魅せる為の身体をしているか、といえば別の話だが。

 高野の知り合って見てきたものの中で、
 そういった行動に出ることは微塵も思いつかなかった。

 まあ、それはそれとして。
 自宅に来る、というのなら。

 断る理由もないか、と思ったのも一つ。]

[寧ろ、後日返信で送られてきた住所に、
 真顔で首を傾げたものだった。

 少なくとも『芸能界』に携わる人間が、
 そんなにあっさりと住所を渡してもいいんですか。

 ……俺が流出したら、
 どうするつもりだったんだろう、この人。


 行けなくはない距離の地名を見ながら、
 小さくため息をつく。そんなつもりは毛頭ないが。
 
 だけど。

 自身も、同じように信用されているのだとしたら、
 悪い気はしなかった。]

[胸が火傷したような熱さを覚えたあの日以降も。
 メッセージのやりとりは続いた。

 待ち合わせの場所、時間。
 もう一度、シフトの確認。

 短いやりとりの中に挟まれる、
 期待が滲んでいる言葉。

 遠足を前の日にする子供のようだな、と。
 微笑ましくなって液晶を撫でる。

 時間が経つとともに火傷は落ち着いて、
 そんな日々を重ねながら、
 一度店に高野が来店した時には、
 いつものように接することが出来ただろう。

           

             ――そのラジオを聞くまでは。]

[いつもの深い夜、風呂上がりの缶一本だけのビール。
 同じ時間にAIに呼びかけられば、
 部屋にサウンドが流れ始める。

 タオルで濡れた髪を拭き取りながら、
 今日も始まったラジオ。

 その日は誰かの誕生日を祝うメッセージから始まった。
 そういえば、速崎もそろそろ誕生日の時期で。
 あれから、彼女を祝うミニパーティの話は、
 進んでいるような、いないような。

 速崎から直接聞いた大咲との話。
 口を挟まないと決めたからには、
 大咲に振るわけにもいかず。

 二人の間がぎこちないまま過ぎていく今では、
 その話題も立ち消えになっていくのだろうか。]


[そんな考えを巡らせていた時に、
 不意に聞こえたタルトのキーワードに
 ラジオに意識が引き戻された。

 一生わすられない味。
 写真にも残した、宝物。]


  …………、


[忘れもしないあの日の。]
 


 

  ……ふ、


[吐息を吐き出すように、笑いが零れた。

 今までとは違う一人称の原因は、それだろうか。
 妙に畏まっているような。
 なのに、心踊っているような。
 
 天気予報を度々見るほどに。
 楽しみにしているというのは嘘じゃないらしい。

 ラジオは今日は生放送なのか。
 この前のように録音なのか。

 ベッドに投げたスマホを手にとり、
 メッセージアプリを開く。]




             『もうすぐですね。

              待ち合わせ場所は――、』**

 

―― サクラサク ――

[指定したのは自宅から徒歩で行ける公園の入り口。
 入り口の防護柵に腰を掛けて待っていれば、
 もうすぐ着くというメッセージが届いた。

 寒くない格好で、と言われて結局選んだのは、
 白地のトレーナーの上に、
 オフホワイトのパーカー付きボアフリース。
 更に紺のマウンテンパーカージャケットを着込んで。
 下はよく分からなかったから、
 いつものように黒のジーンズという出で立ち。
 
 到着したというメッセージに腰を上げて
 交通量の多い道の方へと向かっていく。

 背丈からすぐにその姿は見つけられたので。
 ゆっくりと、向かって。]


  おはようございます。

  そうですね、この時間に会うのは。


[いつもとは違う挨拶を交わして、
 体調の確認には軽く頷いて応える。]

[彼が報告してくれていた通り、
 天気は晴れやかな日が射していて、
 着込んでいたら、少し暑いぐらいだ。

 渡されたヘルメットとグローブ。
 触れるのは初めてだが眼にしたことはあるから。]


  ないですけど、見様見真似で。


[そうして視線を手元に落とせば、
 ヘルメットにはうさぎのマーク

 カラーが眼についたのは、
 自身がよく見ている色だからか。]


  これ、元からですか?


[トン、と指でうさぎを指して、問いかけて。]

[グローブを装着して、帽子より窮屈なヘルメットを被る。
 確かに外の音は、ぼわっとしていつもより聞き取りづらい。

 先に慣れた仕草でバイクに跨るのを見て、
 真似るように高野の肩に手を添え。
 捕まるようにして後ろに跨る。

 小さな声は聞き取れなくて、]


  …………?
  どこ、掴まったらいいですか?


[指定があるなら、その場所を。
 ないのなら、腰元に手を回すつもりで。*]

メモを貼った。

【人】 厨房担当 シャミ



 いらっしゃいませ、ツユリさん
 あれ、今日は──


[なんだかキラキラしているね? そう言おうとしたが
その表情があまりキラキラではなかったので]


 ……雰囲気が違うね
 お腹すいてる? そうでもない?


[今日は全部盛りはしない注文>>81ににっこりする。
口元はたいてい、無表情にしていても笑みの形をしたままだけど]


 今日の海老、大きくてぷりぷりで美味しそうだよ
 少々お待ちくださいね、こちらサービスのお茶です


[温かい梅昆布茶をどうぞ*]
(98) 2023/03/09(Thu) 21:23:50
 私服、見るの初めてだ。
 いいね

[ トレードマークの帽子はなく、
 もちろん眼鏡もない。
 
 いつもの姿を見慣れていても
 近づく姿はすぐに見つけることが出来た。

 天気良好、体調良し、を確認できれば
 装着具を渡す。 ]

 そんなに難しいものでもないから
 大丈夫だと思う

[ 見様見真似、それが出来るのって
 センスと能力でも在ると思う。
 それなら、と見守るだけに留めて ]

 ……特にカスタムはしてないよ。

[ はしゃいで買いました、はちょっと
 言いづらく。なので、その問いには
 そう答えた。 ]

 一応ベルトで留めるけど、
 どこでもいいよ この辺とか。

[ 見様見真似にしては、まごつかず、
 グローブとメットを被り、シートに乗り込む君に、
 どこ>>と聞かれたら、腰のあたりを
 叩いて教えた。 ]

[ ………自分の体に回される手に、
 一瞬言葉を失うも、地面を軽く蹴り、
 バイクは走り出す。

 寒くないように、とそういったのは
 立ち止まっているなら、暑く感じても
 ずっと風を浴び続けるとそれなりに、
 寒く感じるから。

 理想的と言えるスタイルをしてくれたと思う。

 目的地まで、危険な道はない。
 山を一つ通るけど、行きも帰りも緩やかなものだ。

 中心部を抜ければ、穏やかな田園地帯が続く。 ]

 ああ、 最高

[ 故に信号もそれなりに少なくなる。
 余暇にバイクを走らせることも、
 それを共有できるのも。

 思わず漏れた声は、漏れたにしては
 それなりに大きな声。

 本音を言うと、叫びたいくらいには、
 そんな気持ちだったんだ。* ]

―― 友人へ ――

 『いーよ、体調平気なら』

[ そのメッセージに気づいたのは
 お使いに出た時のこと。

 メッセージからは声色は測れない、
 が、この分ならただの二日酔いだろう。

 頼まれれば買い出しくらいは
 引き受ける所存だが、いい大人だし
 大丈夫だろう。

 そのうち、もしかしたら同居人も
 増えるかもしれないし、それなら尚更。

 次に会う時には、遠慮なくご馳走になるとしよう。
 酔っ払いって重たいし、そもそも成人男性だし

 貸し借りは頻繁に作るもんじゃない
 友達なら、尚更ね。* ]

 

[ 
「 ねえ、恋ってどんな感じだと思う? 」


  あれは確か、高校三年生の冬。
  家のことで同じように荒れていた友人から不意に問われ、
  大咲は「んー……」と思い悩んだことがある。

  恋。誰かを想って、その人の特別になりたがる感情。
  関係が壊れることを恐れることがあってもなお
  「特別同士になりたい」と思う、こころ。暖かい春。 ]


  分かんないよ、そんなの
  ……恋人いる子に聞きなよ。


[ 遠い世界のことだな、と思った。
  自分にとって恋やら愛だのといったものは種類が無くて
  漫然と、親の手料理くらい、遠いものだった。 ]

 

 

[ それがまあ、今となっては。
  一言一句聞き逃さないよう、常に神経を張り巡らせたり
  滲んだだけの"可能性"に一喜一憂したりとか。
  スマホの通知音が鳴ると、真っ先に名前を見てしまって
  貴方からなら嬉しくなるような。

  勝てないなあ、と思っているのがお互いさまなんて
  知らないまま、少しずつ、雪が解けていく。 ]


  ……?


[ 名前の件は、焦らす魂胆なんて全然なかったから
  出迎えた彼の息が何故か上がっているのを見れば
  なんで……? と疑問符を頭に浮かべ、首を傾げた。

  彼氏の家に、彼女が泊まる。
  それも、初めてそこで名前を呼ぶという約束付きで。
  大咲はその緊張感を察せるほど、慣れてはいないのだ。 ]

 

 

[ 同じ言葉で返してくれる彼へ、頬を緩めて手を繋ぐ。
  タルトの箱はお言葉に甘えて持って貰うことにして、
  ……繋いだ手から悪戯に伸ばされた指先の感覚へ
  「ひゃぅ、」と油断しきっていたが故の声を零した。 ]


  い、悪戯禁止です!!


[ 赤い顔で見上げる先、月明かりに照らされる彼の顔。
  その瞬間に何故か自分の肌の上で跳ねた貴方の指が、
  "動揺"という心のゆれを教えてくれた。

  あ、もしかして今、思惑は成功しましたか。
  リップを塗り直した時の、ほんのすこしの狙い撃ち
  ふふ と笑い、お泊りセット購入には
  「買いたいです」と頷いて。 ]

 

 

  神田さんにしか見せない格好も、ありますよ
  ……寝る時のとか……?


[ デート服は流石にだって、デートなので。
  お家デートの時も、家へ来るまでに誰かには見られる。
  となれば必然的に寝る前の姿しかない。
  今度お気に入りのブランドでパジャマを新調しよう、と
  密かに誓って駅前のドラッグストアへ寄り道だ。

  お泊り用に小分けされたスキンケアセットや歯ブラシ、
  その他、必要なものを籠へ入れていく。
  女子は急遽のお泊りに必要なものが多いので
  暇をさせたり、神田にも買い足すものがあるのなら
  いったんは別行動で。 ]

 

 

[ 買い終えた必要なお泊りセット一式を手に、
  桜を眺めながら手を繋いで歩く帰り路。
  ポニーテールに纏めた髪がふわふわ揺れていくのも
  まるで少し浮かれた心を表しているみたいだ。

  それはきっと、貴方の家へ到着する間際。
  不意にちらりと伺うように瞳を見つめ、問いかける。 ]


  ……この家に泊まるの、何番目ですか?


[ 恋人として。と、付け加え。

  初めてなら満足したように笑うだろうし
  そうじゃないなら
  次からはちょっと、何か置いて帰ってやろう、なんて。* ]

 

メモを貼った。