111 【身内村】あの日の、向こう側【R18】
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[ なんとなく湯を浴びる気分にはなれなくて、
シャワーで水を流していた。
火照った身体を冷たい水が伝い、熱を奪っていく。
閉じた瞼の裏に鮮やかに燈るのは、
赤
。
遊びじゃないとしたら
海斗のことを想っている人が
近くに居るということなのだろうか。 ]
─────…………
女なら、覚悟決めるけど、
男なら、譲らない、ということでいっかな。
[ 最終的な結論は、本日のところはそう纏まった。
水音に不埒な思考を混ぜ込んで、一人で笑った。 ]
[ 風呂で諸々の準備をしたせいで
(別に言わなくてもいいかもだけど
件の処置はさすがに湯をつかいました)
完全に冷えた身体をタオルでざっと拭拭いて。
単純だと苦笑いしてしまうけれど
すっかり頭も落ち着いていた。
綺麗に洗濯されたTシャツと黒のスエットを
手早く身につければ海斗の部屋へ向かう足取りは
調子の良いことに軽いものだった。 ]
[ 部屋の扉をノックすれば、招き入れてくれただろうか。
いつもと変わらない笑みを浮かべて、
と可愛く(自分比)言って手を伸ばしたら
海斗の頬に触れられたかな。
氷みたいに冷たくなっていた自覚はあるので
怒られてしまうかもしれないけれど。 ]*
[ 自室の戻って、ベッドの布団を捲れば、
一応、大きめのバスタオルを布団の上に敷いておく。
自分もベッドの上に座れば、
思考を巡らせていた。
いつ、つけられたのか。
一つ、思い出して、心当たりがあるなら、
部室であったこと。夢かと思っていたけれど。
あれが、誰かによるものなのかもしれない。
部員の誰か? だが、こんなことをするような人物
思い浮かばずに、首を傾げるだけだった。
あとは、一人だけ
妙に、前にキスマークのことを
割としつこく聞いてきた友人がいたことを、
思い出したけれど、思い当るとしたらそれくらい。
もう、考えても答えは出そうになくて。]
あーーー、
くそッ、
アイツだったら、絶対許さねー
[ 次会った時でも、それとなく聞くと決めて、
イライラと、頭を掻けば、ぼすっと音を立てて、
そのまま背中をベッドに預けた。
見慣れた天井を見上げて、深く溜息を吐く。]
[ 聞こえたノック音に、飛んでいた意識が覚醒する。
身体を起こして、とんとん、と軽い足音を立てて、
珍しく扉を開けて、出迎えたのは、
多分、さっきのことを気にしているせい。
開いた先で、いつも通りの笑顔が待っていれば、
思わず、吹き出すように笑って]
ははっ、って、……
ッ、!!
[ 頬に触れた指先の冷たさに、びくりと肩を震わせた。
まだ、熱い季節だから、空調が聞いている部屋でも
この冷たさは、心地よいもだけど、
いきなり触れられれば、さすがに驚く。]
んだよ、頭冷やさないといけないくらい
実は、怒ってんのかよ?
[ 頬に触れる手に、手を重ねて、
その手に頬を摺り寄せるように、首を傾いで、
笑う瞳を覗き込めば、俺も、いつもの笑みを浮かべて、
そのまま背に腕を回す。]
もう、こんなことさせねーから
[ 相手が、女だろうと、男だろうと、
俺は、この腕の中にいることを願う。
それが、俺の
幸せ
だから――
恥ずかしい、けど。
今は、それを忘れて、甘えるように抱きしめた。*]
[ ノックをすれば扉が中から開いた。
珍しいこともあるもんだ、と目を丸くしつつ、
やっぱり気にしているのだろうと緩やかに笑む。
ふざけた挨拶にも濁りのない笑顔が返ってきて、
伸ばした指先は避けられなかった。 ]
怒ってねぇって。
滝に打たれんのと似たようなもんだ。
[ 煩悩は捨てられてないけど、と付け足して笑う。
海斗の頬は熱を帯びて、あたたかい。
じんわりと氷を溶かすような温もりが
掌の皮膚を通じて心まで伝わる。
そこに、さらに手が重ねられ、今度は心臓が弾む。
すり、と擦り寄せられる頬が艶やかで、柔らかで。 ]
……あったかいな。
[ 思わず呟いた。 ]
[ 片方の手が背中に回れば、抱きしめられる。
素直に抱きしめられたなんて、
久しぶりな気がするけど、どうだったかな。 ]
─── ごめん。
[ 腕の中から聞こえた声に微かに頷いて、
こちらからも抱きしめ返した。
確かな幸せを噛み締めながら、
唇が紡いだのは、なんでか謝罪の言葉だった。 ]
[ 綺麗に整えられてご丁寧にタオルが敷かれた
ベッドまで数歩。
さっきのやり直しとばかりによいしょと
背中を抱える腕の力を増して抱き上げて、
今度は硬いシンクじゃない、
柔らかなベッドへそっと下ろそう。
タオルが擦れて、空気が揺れて、
海斗の匂いが濃く、鼻腔を満たす。
俺はベッドの下に膝立ちで。
見上げれば知らない誰かが咲かせた花が良く見える。
目を眇めてにやと笑いながら、
その赤のすぐ隣に唇を這わせた。
あからさまな挑戦状のお返事を、丁寧に、
そして拒まれないうちに素早く、ひとつ。
ぢゅ、と音を立てて、
より鮮やかな新しい
赤
を並べたくて。 ]
……ちなみにちょっと聞きたいんだけど、
もし俺がキスマークつけて帰ってきたら、
海斗どうする?
[ 今までにもしかしたらそんなことが
あったかもしれないけれど
お互いの気持ちが通じてからはもちろん無いから。
ちょっと意地悪なそんな質問を、
じいと見上げて目は晒さずに聞いてみよう。
悪戯な光で瞳をゆらゆら揺らめかせながら、
今日の気まぐれな彪の望む夜のことも
ちゃんと読み取れればいいなと思って。 ]**
あっそ、なら良いけどよ
[ 怒ってない、と聞けば
それを信じよう。
微睡むように頬を寄せて、
冷たい手のひらに、熱を奪われているのに、
逆に、鼓動は早く、身体は熱くなっていく。
零れた呟きに、口の端を緩く上げて]
それこそ、兄貴が謝ることじゃねーだろ
[ くすり、と吐息だけの笑みを漏らした。]
っ、お、ちょ……ったく、
[ 背中にかかる力で、持ち上げられる予感に、
慌てた声をあげながらも、しょーがねぇなと、
大人しく運ばれてやる。
あんまり、こう軽々と持ち運ばれるのは、
そこそこ癪に障るのだけど、惚れた弱み、
仏頂面をする程度で、我慢してやる。
降ろされた先は、先ほどまで寝転んでいたベッド。
床に膝をついた兄貴の瞳を覗き込んで、
絡む視線が楽しげに細められると、
首筋に唇が寄せられて、ぴり、と微かに痛みが走る。
所有印をつけられる音に、ぁ、と小さな声をあげて、
それでも、今はそれを拒むことはしない。]
あ"?
そんなん
一応、話くらいは聞いてやるけど
[ 不機嫌を隠さない声をあげて。
それでも、多少殊勝な態度で、そこまで言うが、
今までと違って、兄貴は正真正銘、俺のものだ。
想像するだけで、イラっとする。
兄貴というよりは、付けた相手に。]
合意の上か、どうかにもよる
[ 一言、そう冷静そうに落としてから、
ふっ、と口元を歪めれば、]
でも、兄貴が誰のものなのか、
きっちり、分からせる―― かもな?
[ 逸らされない視線を交じり合わせて、
瞳に狂暴な色で迫れば、そのまま唇に、
噛みつくようにキスをした。
噛
みついて、
痕
を残して、
刻
みつけて、
俺のものであることを、分からせてやる。]
ん、……っ、だから、
夏生がつけたいっていうなら、
今日は、特別に許してやっても――いいぜ?
[ あくまで、少し上から目線なのは、
こんなことをいうのが、恥ずかしいからで、
照れ隠しなのは、お見通しだろうけど。
にやり、と生意気な笑みを浮かべて、
捨てられなかった煩悩、あんだろ?と
挑発するように、誘うように、口の端を舐めて、]
[ きつく吸い上げた肌には、綺麗な花が咲いただろうか。
いつもは痕をつけるなと喧しく言う、
形の良い唇からは拒絶ではない、
微かな吐息が落ちてきて。 ]
そーか、一応弁明はさせてもらえるわけだな。
[ 単なる譬え話にあからさまな不機嫌で顔を覆う海斗に
ぶは、と吹き出した。
濁点がついた あ゛? が、愛しい。
ああ、もっと。
執着して、離れないで─── なんて。
]
一方的に襲われてレイプされた場合は、
温情があるかも、ってことね。
[ くすくすと笑っていれば、急に海斗の瞳が
ぎらりと輝いて、緩んでいた口元が一気に近づく。
すっかり辿々しさの消えた、激しく噛み付くような口づけ。
あえてこちらからは何もせず、嫉妬と執着の香りを纏う
口付けに酔う。
唇を噛み切られても構わない、
それすら俺の幸せな願いでしかないと、
伝われば良いなと思った。
つくづく俺は、救いようが無い。 ]
煩悩?もう108しか残ってねぇわ。
[ 口の端に見えた、ちろりと動く舌の赤。
来いよ、の言葉が甘く、掠れて
理性に火をつけて、爆ぜて、溶かす。 ]
─── 仰せのままに。
[ 恭しく立ち上がりざま、後頭部を抱えて
覆い被さるように唇を奪い返した。
体重をかけて、ベッドに沈めながら、
呼吸まで奪う口づけを。 ]
[ 空いた手は海斗の指を絡めてシーツに縫い止めて、
唇を上も下も柔く食んで、歯列をなぞり、
そのまま舌をねじ込んで
口腔内の粘膜の隅々まで確かめるように愛でた。
海斗の足の間に上手く身体を滑り込ませたら、
わざと膝や太腿で下腹部にそっと触れてみようか。
口づけは止めないで、伝い落ちる唾液を追って
食んで耳朶に歯を当てて。
そのまま首筋をぬるりと舐めれば
思い出したようにまた強く吸い上げて、
ぢゅ、と赤の数を増やしてしまおう。 ]**
[ 痛みを与えても、
逆に喜んでしまうのだから、
本当に、この
兄という奴は、仕方がない。
二片、並んだ赤い花弁を晒しながら、
その反応に満足そうに笑う俺も、どうしようもない。
容易く、離れることなんてできない。
愛しくて、もっと、
刻
みつけたい――
]
[ 従順な従者のような言葉を吐きながら、
覆い被さって、与えられるのは激しい口づけで。
甘く漏れる吐息すら、喰らわれて、
喰らい返すように、呼吸を奪い合う。
くらくらするのは、上手く呼吸ができないとか
そういう理由じゃなくて、重なった熱に、
求められているということに、酔っているから。
シーツに縫い留められた指を握り返し、
与えられるままに、受け止め、
いや、もっと、と求めるように、
自由な手で、頬を撫でて、男らしい
骨ばった固い輪郭を指で撫で、耳元を擽り、
項に手を添えれば、逃さないようというように、
より深く、唇を重ねて、貪った。]
[ うだるような夏は、過ぎ去り、
空調だって聞いているというに、熱い。
だけど、この熱が心地よい。もっと欲しい。
口内で暴れる舌先に、同じように舌を絡めて、
吸っては、時折、歯を立てて。
歯列を丁寧になぞられれ、
口蓋を擽られれば、反射的に、身体をびくりとさせ
頭が逃げそうになる。
だけど、逃れることなんて、出来るはずがなくて。
欲しい、欲しい、―― 愛しい。と、
舐り尽くされるのが、心地よい。
足の間に、受け入れるように兄貴の身体を挟んで、
触れられる感触に、むずがるように、足を震わせた。
やられっぱなしというのも、性に合わない。
重ねた唇を緩やかに笑みに変えれば、
膝で誘うように、兄貴の腰を擦った。
濡れた感触を辿る唇が、首筋にまた、
赤を増やした気配に、]
ッ、……首、だけで―― いいのかよ?
[ 違うだろ?と、
蠱惑的な色が灯った瞳を細めて、煽り。
するり、と空いた片手で、
シャツの裾を捲し上げ、自ら肌を晒して、
何処へでも、つけるといいと、嗤った――
下は、いつもの部屋着で、
スウェットなのだから、そちらを脱がすのだって、
手間は掛からないだろうな**]
[ 晒した喉笛に食らいつく牙は鋭くなく、
それでも確かな硬さで皮膚を捉える。
ぴく、と身体が僅かに震えて構えるけれど、
薄い皮膚を突き破るほどには強くなくて。
あえて聞こえるように吐き出した吐息は、
思っていたよりずっと熱を帯びていた。 ]
[ 息継ぎすら惜しむほどに貪り合う口づけに酔う。
舌に歯が立てられると、強い快感に
下腹部に血液が滾るのがわかる。
口蓋をしつこく攻めれば無意識なのか
頭が逃げていきそうになるから
後頭部の髪に手を差し入れて、逃すわけないと
がっしり引き寄せてさらに深く唇を押し付ければ
空調の微かな音に、湿った水音が響いて
ぞくぞくするほど淫猥だった。
何処からか、夏の名残の蚊取り線香の匂いがする。
残念ながら線香じゃ死なない、
悪い虫もいたもんだ、と含み笑いが漏れた。 ]
[ 覆い被さる身体に、行儀の悪い膝が動く。
スエット越しに確かな兆しは、海斗の膝の
硬い骨に伝わっただろうか。
びりびりと走る刺激に背を丸め、同じ昂りを
行儀の良い俺は撫で下ろした手で探すことにしよう。 ]
……へぇ、珍しい。
つけていーんだ?
[ 挑戦的なセリフに加えてするりと捲られたシャツ。
露になる肌に、どく、と心臓が煩く跳ねる。 ]
んじゃ、お言葉に甘えて、───
[ 片手は海斗の指と絡めたまま、もう片方の手で
スエットを脱がせにかかる。
せっかくお許しを頂いたので、気まぐれな王子様の
気が変わってしまう前に、素早く赤い花を、
鎖骨の上にひとつ、心臓の上にひとつ。
胸の頂には触れない位置に、鬱血で印を。 ]
5こ、つけよーか。
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