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トラヴィスは、その冷たさに身震いした。 (t0) 2021/10/21(Thu) 22:07:49 |
トラヴィスは、一歩、舞台に上がった。 (t1) 2021/10/22(Fri) 6:57:36 |
トラヴィスは、本当はまだ怖い。けれど、 (t2) 2021/10/22(Fri) 20:29:52 |
トラヴィスは、舞台へと、もう一歩。 (t3) 2021/10/22(Fri) 20:30:03 |
【見】 舞台人 トラヴィスかつ、かつ。 硬い靴底が、床を鳴らす音。 それは広間へ辿り着くと、一際大きく鳴らされた。 「さあさあ皆様、御立合い!」 知る人ぞ知る、とある劇団の街頭即興劇が始まる合図。 「『僕はしがない吟遊詩人。 国々へ詩を朗唱して歩くとはよく言ったもので 夢に縋り、霞を喰い、毎晩酒に浸る……そんな日々さ。』」 よく通る声。 それは広間に留まらず、館内へ響いていく。 強く耳を塞ぐでもしなければ、小耳には挟む事となるだろう。 (@2) 2021/10/22(Fri) 20:32:40 |
【見】 吟遊詩人役 トラヴィス「『昨晩のことはよく覚えていない、 それで良いのさ、 詩人は気ままに生きるものだ』───詩人は己に言い訳を繰り返し、 自堕落な毎日を繰り返していた。」 瓶を掴むかのように、荒く何かを飲んでは投げ捨てる動作。 ありもしない帽子を深く被り、目線を隠す。 持ち合わせていない竪琴に手を伸ばしては、ため息を吐く。 正反対の鴉のような黒髪を掻いて、 道行く物を睨み付け、世に希望を見出していないような眼差し。 男の身なりは それらとは正反対の煌びやかなものだが 立ち振る舞いは、 まさしく廃れた吟遊詩人を幻視させる程であった。 (@3) 2021/10/22(Fri) 20:37:42 |
トラヴィスは、広間から、廊下へ。廊下から、館の何処へでも。 (t4) 2021/10/22(Fri) 20:38:37 |
【見】 吟遊詩人役 トラヴィス「吐き捨てるような日常の最中、詩人は一人の少女と出会う。 パイを焼く事だけが取り柄の少女だった。 『嗚呼、嗚呼、この子の笑顔こそが僕の人生に射す光だ!』 けれどもそんな幸福も、長くは続かなかった。」 大袈裟で、加筆の多い即興の朗読劇。 脚本は紙切れ一枚きり。 演出は全て、男の頭の中。 舞台上から、観客席の誰もへ声が届くように。 時にすれ違う貴方の手を取って、 時に出くわした貴方の頬を撫でて、 時に貴方の背を追いかけて、その手の甲へキスをして。 (@4) 2021/10/22(Fri) 20:41:23 |
トラヴィスは、館中を自らの舞台へ。 (t5) 2021/10/22(Fri) 20:42:23 |
【見】 吟遊詩人役 トラヴィス「『少女は断末魔だけを僕の耳へと届かせ消えた。 僕は知っている、死神が少女を奪ってしまったと!』」 この即興劇の登場人物は当て書きだ。 詩人と少女。それから、 「『どうか君達にお願いだ、 死神が死者の国へと帰るよう、願ってはくれないだろうか?』……嗚呼、自分でどうにかしろって?」 少女の内に秘められていた死神。 「仕方ないじゃないか、 『だって僕は─── 既に死神に殺されてしまっているのだから。 僕に出来る事は、こうして透明な詩を叫ぶのみ。』」 (@5) 2021/10/22(Fri) 20:44:02 |
トラヴィスは、見えない誰かの想いを繋ぐ、伝達人。 (t6) 2021/10/22(Fri) 20:44:48 |
【見】 吟遊詩人役 トラヴィス……舞台人が語り歩いたのは、そんな純粋な物語だった。 「『少女は苦しんでいた筈だ、今となっては僕には分からない、 けれども、嗚呼─── この詩が聞こえる者達よ! 』」託された想いを、願いを、 舞台人は屋敷中へと届ける。 「『どうか少女を、救ってやってはくれまいか─────………』」 詩人は、少女に潜む死神にに殺された。 詩人は姿を隠された今となっても、少女の声を無視したくないと、救いたいと願い、笑顔を望んでいる。 託されたから、演じている。 汗が流れ落ち、呼吸が荒む。 演じる事は──やっぱり、どうしたって、心から楽しいと思えた。 (@6) 2021/10/22(Fri) 20:47:07 |
トラヴィスは、館内を一周して、広間へ。「有難う御座いました!」 (t7) 2021/10/22(Fri) 20:48:02 |
【見】 くるみ割り人形 トラヴィス男は、観客から──客演として踏み出した舞台を、 そうして降りた。 詩人に螺子を巻かれただけのくるみ割り人形は 螺子が回り切ったら、煌めく時間はもうおしまい。 広間の、いつもの円卓の一席へ 優雅さの欠片もなく腰を下ろす。 使用人に用意させるのは暖かい紅茶ではなく、ただの水だった。 「………や、長いブランクを抱えているにしては 悪くない演技だったと思うんだけど。 なにぶん脚本家が素人なもので。」 ユピテルの方へと視線を向ければ、 疲労の中、はにかんで手を振った。 「ね、彼の竪琴、 私にも触らせておくれよ。」 言外に、己は詩人と意思疎通を果たしたと知らせながら。 (@7) 2021/10/22(Fri) 23:36:23 |
【見】 くるみ割り人形 トラヴィス>>21 宇宙服のそれを一瞥。 0番から降りた男は、もう舞台に興味はなかった。 「御伽噺で結構さ。 感想、解釈は自由だからね。 けれども………そうだな、」 ちらり、と何もない場所へ視線を向けて、戻す。 「───詩人に直接聞いてくれないか? ……なんてね。冗談だよ。 主演俳優の解釈で良ければ、話せるけれどね。」 (@8) 2021/10/23(Sat) 0:12:32 |
【見】 くるみ割り人形 トラヴィス>>25 「そうだな………、」 顎を撫でる。腕を卓上で組んで、長い足をゆるりと組み替えた。 「不器用な詩人には、どちらも救うなんて不可能だから 他の全てを捨てて、一番大切な少女を選んだんだろう。 決して死神だけを見捨てた訳じゃない。」 自分だって、きっとそうする。 大切な者達が危険に脅かされた時。 それら以外を捨てる覚悟は─────………覚悟、は、…… かぶりを降った。 脱線している場合では無い。 「死神は……そうだな、一線を超えてしまったからね、 因果応報。救われる可能性は低いんじゃないだろうか。 君達は神にでも願って、死神を隠せばどうだい?」 これは詩人の意思では無い解釈。 以降の舞台に演出は加えないし、その結末は自分の知るところでは無い。 とても無責任な、たった一つの意見であった。 「けれど、この戯曲の結末は、 君達次第で喜劇にも悲劇にも姿を変えるよ。 舞台の上の君達よ、どうぞ悔いのない選択を。」 (@9) 2021/10/23(Sat) 1:27:04 |
【見】 くるみ割り人形 トラヴィス>>29 ユピテル 「そう」 短い言葉。 代わりに表情に、喜色が余す事なく溢れている。 「居ないよ。 私を一番輝かせてくれる脚本家は、もう私の側には。」 普段ならば、発さないであろう言葉。 他人の言葉を吐いた後だからか──それとも、この数日で貴方から受けた眼差しのお陰だろうか。 今だけは、少しばかり素直になれた。 汗を拭って貰えば、 やっと有難うと礼を言う。 「君が持っていると聞いたんだ。 つまりそれは、その竪琴に触れても良い証左だと思わないかい? けれども、そうだね、壊すつもりはないよ。 ……弦を張り替えてやるつもりさ。 それは私にとっても必要な事だから。」 その瞳に、曇りはない。 貴方の信頼に報いることが出来ると、自信を持てる程に。 (@10) 2021/10/23(Sat) 1:39:59 |
【見】 くるみ割り人形 トラヴィス>>31 「道化で結構さ。ご都合主義で上等。 芸術と愚鈍は紙一重とも言うさ。 嘲笑の一つくらい、想定内だよ。」 男も、からからと笑った。 二人が笑い合う、それはそれは穏やかな空間だった。 「君がこうして舞台に降り立って、言葉を発した時点で、 『興味を惹く』狙いは、既に果たされたからね。 これで良い、私はとても無責任な主演さ。」 男の目的は、詩人の言葉を多くの人に伝えることであって、 少女や死神を救うなんて事は関係がなく、どうでもいい。 それの更に先──大衆に受ける事などは視野にない。 最も貴方は、それを理解した上で、 ただ引っ掻き回したくて述べたのかもしれないけれど。 それよりも無反応が一番の批判であると、男は考えている。 「また観においで。次があるならね。 君は貴重な感想をくれた観客だから、 その時は、とびきり良い席をご用意させてもらうよ。」 消えるそれを、見送った。 男はどこまでも穏やかに、貴方を見ていただろう。 (@11) 2021/10/23(Sat) 3:00:11 |
【見】 くるみ割り人形 トラヴィス>>33 ユピテル 貴方の視線に問われれば 口元へ人差し指を当てて「秘密」と告げた。 そうして竪琴を受け取って 少しだけ躊躇ったのちに、 貴方の頭へ手を伸ばし、撫でました。 「有難う。 さっきの舞台の公演料なんだ。 彼の竪琴の音色がね。 42弦、余す所なく錆びているから こうする他ないだろう?」 貴方にとっても大切であろう竪琴。 まるでそれの様子を以前から知っていたような口振り。 しかと手中に収めれば、びょんとそれを鳴らしてみた。 男には、竪琴から綺麗な音を奏でる事は出来ない。調律の知識が少しあるだけだった。 音を整えようと、席を立つ。 それ以上は何も言わない。 男は、この宴の終わりが近い事を、何度も見聞きして知っているから。 恐らく最後くらいは、此方から。 「……またね」 (@18) 2021/10/23(Sat) 8:40:18 |
トラヴィスは、キエを一瞥して………、 (t11) 2021/10/23(Sat) 8:44:49 |
トラヴィスは、何も言わなかった。 (t12) 2021/10/23(Sat) 8:44:56 |
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