93 【身内】星の海と本能survive -Ap-02-【R18G】
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処刑室。
いつも通りの笑顔で使用人は静かに座している。
何ら変わらぬ様子ではあるが、この時だけ身に纏うものを変えていた。
前で紐を結び、留めるタイプの入院着。
それだけを着て、微笑みながら皆を待っている。
| カストルは、やっぱり怯えた顔をやめることはできないでいる。
けど気にしているのは、シトゥラのほうだった。 「……シトゥラ、大丈夫?」 みんなを見回して、一番大丈夫じゃなさそうに見えるから。 (3) 2021/09/04(Sat) 22:13:38 |
| 「あ、ああ……!シトゥラ……!」 どうしよう、と周りを見る。アラートも耳に入る。
「……えっと……待って!シャト、聞こえる?ちょっと待ってくれないかな……?」 (8) 2021/09/04(Sat) 22:18:06 |
「やあどうも!皆の俺だよ!それじゃあ処刑を始めようか!」
人が集まる頃。
処刑対象はいつも通りの声で進める。
首に手首に足首に。
もしよかったら胴体も!
好きに切ってもらって失血死するまでを俺は観察したいんだ。
ほら、出血量の推移による人間の肉体の変化を理解しておけば他人の治療なり何なりに活かせそうだろう?」
「…………」
使用人はいつも通りだ。
いつも通りであると決めたのだ。
| 「……テンガンに任せて、いいのかな」 でも、自分には連れ戻せそうにない。 あんなふうに逃げ出すことを、強要はできない。
「……逃げちゃったら、こんな風になるんだ」 だから、先に処刑室へとついていく。 (14) 2021/09/04(Sat) 22:30:16 |
| カストルは、やっぱりどうすればいいのかわからない。から、みんなを見ている。 (a13) 2021/09/04(Sat) 22:42:37 |
「……。シャト殿、俺の声って放送することできる?」
おもむろに処刑対象が口を開いた。
| >>17「……いる!」 ぎゅ、と飛びついた。やはり今日も震えている。 (18) 2021/09/04(Sat) 22:46:39 |
「ああ、よかった。来てくれた」
微笑みながら安堵する。
処刑対象は基本的に両足を伸ばし、上半身だけを起こして楽な姿勢を取っている。
また、意識が残り動けている間は希望するなら相手の希望に合わせて立ったり座ったりと体勢を変えるだろう。
処刑対象は笑みを浮かべたまま、静かに受け入れる。
「シトゥラど……」
いつも通りに口を開こうとして、やめた。
「シトゥラ」
二人きりの時にだけ捨てていた敬称をここでも捨てる。
決して本物の親子ではないけれど、母親のように穏やかな水面のような声音で話を続ける。
「大丈夫、俺は帰ってくるよ。ハマル殿もテレベルム殿もシェルタン殿もラサルハグ殿も、皆そうだっただろう?
ほら、果物包丁とかあるよ。それ持って、テンガン殿とこちらにいらっしゃい。
テンガン殿もぱっと済ませちゃおうよ!俺もサクッと起きるからさ、そうしたら3人でスイーツ食べちゃおう!ねっ?」
皆を受け入れる。道具だからではなく、自分の意思で。
| 「バーナード……」 ぐ、と引く力に一瞬抵抗して、やめる。つい抵抗してしまっただけだ。
そして慌てて近くの、小さなナイフを取ろうとして、 「痛っ」 指先に小さな傷を作ってから、今度は気をつけて取った。
「……つ、ぎ?やろうか……」 (31) 2021/09/04(Sat) 23:55:12 |
| 頷いて、すぐ近くでそれを見た。 首の傷よりも小さく見えるけれど、すごく痛いに違いない。こんなに小さな指の傷ですら痛むのに。
「ヌンキ……ごめん、」 見下ろしたヌンキの手に、生ぬるい涙が落ちるのが見える。自分のうるさい呼吸音が聞こえる。 バーナードのつけた傷とは違う場所に、似たように押し当てて、血の流れる様を見て、そこでようやく気づく。 ……血は、とくに苦手みたいだ。
バーナードの手を強く引いて、下がった。ナイフは手に持ったまま。 (35) 2021/09/05(Sun) 0:22:02 |
| ナイフは、すぐに手を離した。視線はヌンキの方を向いて。
「みて……見てる、よ。ヌンキが、頑張ってるところ。 ちゃんとここから見てる、から!」 ヌンキにも聞こえているだろう。聞こえるように言ったから。 (37) 2021/09/05(Sun) 0:48:03 |
真白の入院着が赤いいのちの色に染まっていくのに反比例して、処刑対象の肌は青白く変化していく。海のような鮮やかな輝きを持つ色などではない。眠りにつく死者の色。
「……ぁ、う……たしか、全血液量の……20%が失われると……ね、ショック症状、が…………」
一人、また一人と『処刑』を行っていく間。
処刑対象はずっと唇を震わせ続けていた。
気を失わないように、誰に語りかけるわけでもなく話し続けている。
いつも通りの声……にしたかった。
いつも通りの笑顔……を浮かべたかった。
上手くできているだろうか。命はどんどん流れていく。何人目からだろう、判断が出来なくなっていた。
とめどなく血が流れる。
止血しないと。
痺れが霧散して、感じずにいた痛みが体を這い回る。
体が悲鳴を上げている。
頭痛がする。
「え、えと……は、ぁ……あせ、かいて、る?と、思……呼吸、ぁ、はやくな、て……は、くる、うまく、出来、」
頭痛がする。
「こど、が、……よく、聞こえ、どく、どく……て、あと、ずつ……」
頭痛がする。
「ずつ、な、て……症じょ……に、あった、か、な…………?ぁ、目の……ま、が、くら、……耳も、ぅ…………」
寒くなってきた。震えが止まらないような気がする。分からない。
自分ではもう何も分からない。
「……………………ぁ」
痛い。痛い。痛い。
苦しい。苦しい。苦しい。
止められない。止められない。止められない。
体が、頭が、押さえつける心を振り払って叫んでいる。
何かが心臓ごと自分の内側に纏わりついて、引きずり下ろそうとするような感覚。
急に叫びたくなってきた。
急に泣きたくなってきた。
どこにも行けないのに、逃げ出したくて仕方がない。
頭痛がする。
この感覚、知っている。
「あ、あ。あ」
頭痛が止まった。
何かが砕けた音がした。何かが押し寄せる。
ああ、こういうことか。
怖い。
笑え。
痛い。
笑え。
苦しい。
笑えってば!
いつも通りに振る舞わなくちゃ!
……。
「……。
しに、たくな、い……………
…………………………」
……
…………
………………
| (a26) 2021/09/05(Sun) 1:54:23 |
| カストルは、バーナードを引っ張って処刑室から出ていく。 (a27) 2021/09/05(Sun) 1:58:03 |
ロビー・・・に来ましたが、少ししてからすぐにどこかへ向かいました。
| カストルは、ロビーで演奏中。メンバー全員が片腕を トロンボーンtaktにしたことで有名なあのバンドの曲だ。 (a38) 2021/09/05(Sun) 12:38:39 |
中庭のベンチに座り、キャラメルひとつ。甘いでございます。
通信をきいていた。だから、君の発言は知っている。
…淡い夢は覚めたのだと。
その時は思って。すべてがどうでもよくなったのに。
今の僕は知っている。
君が。僕のために泣いてくれたことを。
…もう僕には、祈る事しかできないけれど。
君の心が、命が。どうか無事でありますように。
| 「……いっかい休んでいい?!」 カストルは机にべろべろに広がった。液体。 (47) 2021/09/05(Sun) 19:02:55 |
| (a58) 2021/09/05(Sun) 19:05:20 |
これは空気読まずにローズヒップティーdrinkを頼むシェルタン。
| 「……ムルイジわよ!」
ここ1000年でもっともレベルの低いモノマネであった。 (48) 2021/09/05(Sun) 19:06:24 |
| 「テンガンこのやろうわよーーッッ」 ムルイジはそこまで言ってないし、ムルイジのモノマネレベルもなかなかに低いなと思った。 (50) 2021/09/05(Sun) 19:14:23 |
ぱちり、目が覚める。
体を起こしてまず初めに首に手を当てた。
首を裂かれた傷がない。シトゥラが、テンガンが与えた傷がない。
胴に手を這わせる。キューが与えた傷がない。
両手首を観察する。バーナードが、カストルが与えた傷がない。
足を持ち上げる。レグルスが与えた傷がない。
肩の周りを調べる。キファが与えた傷がない。
肩から胸を撫でる。サルガスが与えた傷がない。
脇下を探る。ムルイジが与えた傷がない。
綺麗な体。何一つ傷はない。
スペアボディへ正常に切り替わったことを知覚する。
──頭には今もなお、底なしの沼に引き摺り込まれそうな死の恐怖がこびりついているのに。
「・・・金平糖sweetをお願い致します」
冷静になりました。とりあえず 何か食べます。
「シャト様〜」
金平糖いただきました。キャッキャ
お礼もちゃんと言いました。ありがとうございます。
体を起こし、顔を上げた。
スペアボディは死ぬ前と同じような入院着を纏っていたが、愛用していたバンダナまでは用意してくれなかったようだ。
顔をあげた際、かすかに音を立てて金色の髪が地に向かって流れていく。
「……これが、俺たち人間が忘れ去っていたもの」
「…………実に不可解だ」
「古今東西、人間の中には不老不死を求めて研究を重ねた者がいた。倫理道徳を人の命と共に焼べて禁忌を犯してでもその領域に辿り着きたいと躍起になるものがいた」
淡々と、かつて己がアーカイブから得た情報をまとめていく。
「そうして人類はたどり着いた。
大気の檻を抜け出して絶対的な終わりに満ちた宇宙さえも遊泳できるようになった。
人の限界を超え、死という生物にとって覆しようのない運命からも逃れられるようになった。
俺はこれをある種人間の進化の形、終着点の一つだと思っている。
──例えその結果人類が生きる肉塊になったのだとしても。きっとそれは進化した結果、新世代の人間の姿なのだろう」
「故に、我らがいる。……いや、いた。
尽くして尽くして尽くして尽くして、寄り添い使われ人を支える為の道具を生み出そうとする者がいた。
……俺は、もう関係のない話だけどね。
もう俺は元の家とは疎遠になったのだと、ようやく思い出せたのだから」
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