113 【身内】頽廃のヨルムガンド【R18G】
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「ゴミの始末をしてくれたから、〈骸狩り〉はもう、お払い箱……?」
「そろそろ廃業……なんてことにはならないのでしょうね」
スカリオーネが戻ってきたのを見て、「噂をすれば」と呟いた。
「ご苦労様ね、〈骸狩り〉……今日も徒骨折りだったのかしら?」
「……政府の人間があなたを労いたいみたい。
臭い泥は落としていったほうが賢明でしょうね、きっと」
姿を表さないまま椅子を蹴飛ばしそうになるのを抑えた。
「そう。
山の頂にたどり着く前にあなたの身体が音を上げなければいいわね。
今のうちにやめておいたほうがいいんじゃない、煙遊びは」
「……あなたなら、例え死んだとしても登り続けそうね」
それを成し遂げるまで〈骸狩り〉の仕事は終わらないのだろう。
今まで数多の生死を見てきた術師は、どこか憐れむように口にした。
この類の霊魂が逝き着く先は、多くの場合は泥の中であるから。
〈骸狩り〉が狩られる骸に……とは口にはしなかった。
灯屋
「……レイ」
死霊術師の彼女が、目を背けるように酒場に入ってきたあなたに。
湿気た表情をしたあなたに、無遠慮に声を掛けた。いつも通り。
「……墓所に行きたいのだけれど、今はどうなってるの?」
とても時間をかけて食べた皿をテーブルへと投げる。
カランと鳴ったそこにあるのは空席とシチュー皿だ。
やっぱり透明な男はそこにいる。顔を見せてはくれないが。
「辛気臭い話をどうしてあなた達は楽しそうにお話するんですか、それが職業病ってやつなんですかねえ」
「綺麗にするのは何処の……ああ、オーウェン。
お土産は気に入ってくれましたか」
声が小さい。
ガーベラの花を、花瓶に挿しました。造花ですけれど。
──曰く。
フランドル・スキアーは、折れる事ができない。
切掛一つで忽ちに自らの命を奪う首輪を着けられても。
頭が割れるかと思うほどに思い切り殴り付けられても。
視界がぐらつき崩折れかけた所を強かに蹴り飛ばされても。
前後不覚の中、身体のあちこちが床や壁に叩き付けられても。
その背や腹や手足を骨が軋むほどに踏み躙られても。
皮膚にあかあかと灼けた鉄を押し付けられても。
悪態を吐き続けた末に毒を飲まされ喉を焼かれても。
或いは胸の悪くなるような幻覚を見せられ続けても。
フランドル・スキアーは、折れる事ができない。
フランドル・スキアーは、折れる事ができない。
これはきっと、折れないのではなく、折れる事ができない。
縋る先、生きるよすがのある限り、心折れる事などできやしない。
縋る希望は不確かで、けれど諦める事は誰よりも自分が許さない。
そんな"どっち付かず"の状態では。
最初から、最後まで。
自ら望むものは、剣を捧げる先は、望む居場所はただ一つだけ。
生かすも殺すも、自ら定める事などできやしない。
自分の意思では、生きる事も、死ぬ事もままならない。
むかしむかし、鳥と獣の戦争があった際に。
コウモリは、獣の味方をしていました。
しかし、鳥に襲われて捕まってしまったコウモリは
「私は翼が有るので、獣ではなく鳥なのです」
と弁明しました。コウモリは鳥の軍勢に寝返りました。
やがて戦争が終わり、鳥と獣は和解しました。
しかし、双方にいい顔をしたコウモリは
鳥からも獣からも嫌われて追われることとなり、
鳥が活動する昼間も、獣が活動する夜中も活動することが出来ず、
その中間の夕暮れ時しか外を活動できなくなったということです。
これは寓話的な末路であり、そして。
どっち付かず、何処にも属さないという事は。
何処にも味方が居ないという事。
自由である事の、そのツケを払う時が、今来ただけだ。
──御布令に名が載った翌日の事。
役者騙りは、そこかしこに乱暴狼藉の名残を残したまま。
つまりは随分と草臥れた様子で酒場に現れて。
「『人生は歩き回る影法師、哀れな役者だ──』」
いつものように、台本を諳んじようとして。
けほ、と空咳を一つ。
「……役者は廃業だ。
今日び、わざわざ演じなくたって悲劇か喜劇がやってくる。
ずけずけと、独りでに街は笑顔を取り戻す。
予定外ではあれど、"怪盗役"も演じ終えた事だしな…」
今日もこの役者騙りは丸腰も丸腰だ。
ふらりと適当な席に着き、テーブルに両肘を預けて。
喉が痛い、だとかぼやいたのち。
「ノアベルト。
張り紙と共に連れ浚われ消える事になったのは、
俺ではなく、あんたの方だったな」
未だ姿の見えない誰かに、一言だけ。
この陰は、未だ変わらずここに在る。
「──ペトルーシャ。
"打ち捨てられた灯台の裏、鼠どもの通り道"。
お望みのものが二つ、そこにあるだろうさ…」
その後に死霊術師の姿を認めれば、もう一つだけ。
気怠げに、簡潔に、確かな"取引"の履行を告げた。
「契約は満了だ。
また何処ぞへ失せない内に回収する事だな…」
「……アンゼリカ嬢、元気ですか?
先生は幻聴として生きていますよ」
「すみませんね、授業もできなくて。このクソッタレな首輪がついていると首をカッ切りたくなるほどイライラしてしまっていつもの顔でいられないんですよ。今なら反乱軍だろうが政府だろうが全部ぶち壊せる気持ちです、こんなふうになってはいけませんよ」
比較的近くから聞こえてきた。
忙しそうだがここに出てこれる体調にはなったのだろう。
| 「……フランドル」
厨房を借りていた男が、戻ってきた様子を見つめて。 暫し動きを止めた後、また厨房で動きを再開する。 新しいカップを取り出した音が響いた気がする。
「随分と声が小さいようなので。 温めてますし蜂蜜も入れてるから沁みない筈です」
「よろしければ、」と。 蜂蜜入りのホットレモネードをマグカップに入れて、 シチューのスプーンの位置から推測したノアベルトと、 戻って来たばかりのフランドルにそれを手渡す。
ちゃんとスプーンは付けてある。 言わないと「つけなさそう」と思わわれる気がするので。 (11) 2021/12/15(Wed) 23:54:50 |
ローブで目立ちませんが、他の者と同じように首輪をつけています。
差し出されたレモネード。そしてスプーン。
グローブをつけた指で器用にスプーンを回し、
一瞬その匙はあなた達の視界から消える。
すると男は、エアハートの顔面にスプーン投げつけ、
コップ倒し、中身を全てぶちまけてテーブルを汚した。
「手が滑りました。すみませんね、エアハート」
布巾を汚れるのがわかっていたかのように取り出せば
テーブルには勝手に動く布と吸い込まれていく液体。
ついでに先程よりもはっきりした男の声が響いていただろう。
| エアハートは、不器用なんですけどスプーン受け取れますかね? (1)(1)2d6+2 成功値10 (a4) 2021/12/16(Thu) 0:25:52 |
エアハート
「…………」
差し出されたレモネード。
それを持つ相手を見て物凄く複雑そうな表情をしたのは、
なんか不意に今日見た夢の事を思い出したからだ。
もはや高熱を出した時に見る悪夢みたいな光景だった。
「……お前、…いや、やらかしたんだろうな。
まあいい、話しておきたい事がある。
今じゃなくていい、後で少し顔を貸せ」
目の前の男目掛けて飛んできたスプーンと、
大惨事になるテーブルと、聞き覚えのある声。
それはまあ、やはり何とも言えない顔にもなるわけで。
流石にレモネードに罪は無い、ので、受け取っておいた。
基本的に、他人の作った飲食物は受け取らない。
ただ、金銭を支払った上で提供されるものは別。
そして、相棒とも呼ぶべき者の作ったものもまた例外。
それだけのことだ。
| 「あっつッ」 思い切りスプーンが顔にぶち当たった上に、ホットだ。 つまり普通に熱い。熱伝導を恨みながら頬を手で擦る。 若干赤くなったがさすがに触れただけ故軽い火傷で済んだ。 「おや、随分御機嫌斜めですねノアベルト。 みんなの前でまき散らす程に柑橘類はお嫌いで?」 別段、気にした様子は見られない。 まあ少し残念くらいは考えていそうだがその程度。 明確に意図的に拒絶して捨てられようと表情は変わらない。 「掃除も私の担当でもありませんのでお気になさらず」 (12) 2021/12/16(Thu) 0:32:44 |
フランドル
「あたくしじゃなくてエアハートとお話したいんですか、フランドルはいけずですね。
一緒に悪夢を見た仲だというのに
」
一緒に話したいとも告げていないのに突然の悪態。見えないが。
スルーもできるがあなたは多少
思い当たることはあっておかしくはないだろう。
「痛そうですねえ、御愁傷様。
いいええ、あたくしの嫌いな食べ物は食べられないものです。
味がなくても何でも食べられます。
好き嫌いはしないようにと教えられてきましたから。
手が滑っただけだと言いましたよね、勘違いなさらないでください」
| >>+14 フランドル 「え、なんですかそのど う見てもお前の方に否が 、 みたいな言い方は……普通のレモネードですよこれ」 味見もしてますからね、別の器で!と抗議しているが、 そも飲む気になってる方に抗議してもあまり意味はない。 「────」 話したいこと、とやらに間をあけて。 何か浮かぶ事があったのか、「ええ」と素直に頷いた。 「でも今すぐじゃなくていいんですか? いざとなれば片付けますけど」 何を片付けるかはまあ視界に入るものが全てだろうが。 とにかくも、レモネードを呑む程度の暇な時間はある。 (13) 2021/12/16(Thu) 0:39:56 |
目の前の出来事に、唖然としていました。
怒鳴り合いにならない限りは、許容できるものですけれど。
なんだか、御布令が出る前の日を思い出してしまったのでした。
ノアベルト
「は?
いやいけずも何も無いだろう
俺からあんたに話す事は特に無いし…」
あの時また会いに来ると言ったのはそっちだし、
そもそもあの悪夢にはこいつも居たが…みたいな顔をしている。
心当たりは、あるため。
「そもそもあの悪夢にはこいつも居たが……
」
言った。
| >>+15 ノアベルト 「……と言う事は、成程。 ノアベルトは私の事がそれはもう大嫌いなんですね。 しかも酒場内で随一レベルって程に。光栄ですね」 合点がいったと言うように、手を打つ。 突然何をと誰かから視線が来れば、続けて解説を始める。 「私も半年間ただ何もせずここに居た訳ではありません。 貴方が飲食物を、しかも他人に貰ったものをですよ? 事故で零したとして、謝罪しない人間とは思えない。 食品で好き嫌いがないならもう、 エアハートが大嫌い! しかないですよね。 全く。先にそう言ってくれれば、 こっそり代わりに別の人に出して貰いましたのに」 勿体ないですよ、蜂蜜入れたのに。 と、そっちの方面に怒って。怒って(?)いる。しかも、 嫌われてるのに落ち込む所か本気で喜んでるように見える。 (14) 2021/12/16(Thu) 0:50:10 |
| エアハートは、え、まだあの夢続いてるんですか?怖いですね…… (a8) 2021/12/16(Thu) 0:58:55 |
エアハート
「非があるんだろう実際に。
レモネードに罪は無い、お前に罪がある」
当然の如く抗議はにべもなく、ばっさりと。
普通のレモネード以外の何だと思ってると思ったんだ。
そんな気持ちはまあ置いておいた。
「……いや、ちゃんと清算しろよ。
飲み終わるまでは待ってやるから…」
言外に雑に片付けるなと言っている。
助け舟は期待できそうにないですね。
「謝ったでしょうが、頭おかしくなりましたか?
お話したくないのがわかりませんか、き」
「き、……嫌いになるほど
あなたのことは好いていませんよ!
私が好きなのは、」
しばし沈黙、立ち上がる音。周りの視線。
「姿を消してるのにこんなに目立たせることありますか?
戯言はやめてください、この話は以上です」
フランドル
「ああブレませんねぇ……。
あなたの心には鉛が何かが入っているんですか?
よくわかりました、
……趣味が悪い……
」
スカリオーネに挨拶をし損ねるところだった、ご機嫌よう。
きっと視界の外からの、『怪盗』への感謝の言葉。
灯屋の声に一度そちらへ視線を遣って。
役を終えた元役者は、何も言う事はなかった。
が、自分個人に勧められたなら…
チキン……まだいっぱい……これ、チキン?
鳥なら……チキン?そうかな…そうかも…
レイ
「……そう」
あなたの言葉を聞けば、ただ、その一言だけ。
彼の墓所には、彼女の縁者の墓もあった。
墓があった、とは言えど骨も肉も納められていない形だけのもの。
「……なら、いいわ。墓所に行きたいわけでもない。
どうせ、あの墓の中には何もなかったのだから……
まあ、他の死者にとっては堪ったものじゃないでしょうけど。
生者には、そんな声なんて聞こえてないのでしょう……
間違っても、それと同じにはなりたくないのだから……」
| >>+18 フランドル 「言い切られる程に私そんなに信用ないです?」 容赦なく何故か左右から責められている。 ただホットレモネードを渡しただけなのに。 一体どうしてこうなってしまったんでしょうか。 大体日頃の行いと言えばそうだが、今の男に自覚はない。 「清算と言われても、むしろレモネードが…… しかも向こうが話を切りたがってます。 難しい男心ですね。一介の冒険者にはさっぱり」 助け舟をくれないのを見ると諦めて戻って行った。 ちょっとだけ寂しそうな気配はあった。 (17) 2021/12/16(Thu) 1:17:53 |
| >>+19 ノアベルト 「見えないけれど顔、謝ってない言い方じゃないですか。 あなた、謝罪だって思ってなくてもそれっぽく。 言えはできるのに言ってない。謝ってないと同じですよ」 幼い店員ですら内心舌打ちしていてもそれっぽく謝罪に 聞こえるような謝り方はできる。それすら、と言う意味。 「私、嫌いなのかって聞いただけで、 私の事を好きかなんて一言も言ってませんけども」 何でその単語が出てきたのだろう。 いや、薄々ギミックがわからなくはないが、しかし? なんて思っていたらもっと気になる台詞が来た。 「好きなのは?」「好きなのは?」 「旦那?」 二回連続で聞いた。 続けて述べられた言葉に首を傾げる。 「そもそも真っ先に人の作ったのをぶちまけて 勝手に目立ちだしたの、ノアベルトじゃないですか。 そんなこと言うなら次は普通にちゃんと飲んでくださいよ」 (18) 2021/12/16(Thu) 1:23:19 |
ノアベルト
「生憎と俺は不器用な生き方しかできないらしい。
或いは、ブレるほどに
他に目を向けるような余裕も無いだけか」
曲がらないのか、曲げられないのかは定かではなく。
趣味が悪い、という言葉にはほんの少し眉を顰めて。
けれど特にそれ以上突っ掛かるような事はしなかった。
この世は趣味の良い人間の方がずっと少ない。
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