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【人】 空腹な迷い人 レックス[ 漸く飢えの波が治まって、顔をあげた。 はぁ、はぁ、と浅い呼吸を繰り返して、 机に縋るように身体を起こせば、 先程のナポリタンが目に入る。 ゆっくりと、数度深呼吸をしてから、 再び、フォークを手に取った。] すっかり冷めてしまったけど……美味しいや [ 冷たいけど、美味しいと感じた。 ソーセージを口にすれば、腹が満たされるのを感じる。 少しずつ、少しずつ、 普通の食事で満足できるようになればいいのに だけど、少しずつでは間に合いそうもなかった。 きっと、近いうちに自分はあの子を喰っていただろう。 許されないことで、仕方がないことで それでも、そんな未来を迎えたくなかったから ――優しい鬼になりたかった 胸の内で、そんな願いを抱きながら、 自嘲の笑みを浮かべた。] (209) 2020/09/14(Mon) 21:01:45 |
【人】 空腹な迷い人 レックス[ 何処かの物語の主人公が言っていた。 "人前に出てこないゴブリンだけが、いいゴブリンだ"と 鬼も一緒だ。 人前にでてこない鬼こそが、良い鬼なのだろう。 それでも――――…] ひとりぼっちは、寂しいんだ [ 人との争いで、父は死に。 人に見つかり、母は死に。 自分は、それでも生きることを選んできた。 一人で、お腹を空かせながら、闇の中でひっそりと 一人になってから、1年、2年、3年。 最初の頃は、野山の動物を狩って生きていた。 だけど、寂しさに、孤独に耐えきれなくて。 人に化けて、村に住んでみた。 戦災孤児と偽って ――偽りでもないが だけど、見た目が変わらないことを 訝しんだ村人に殺されそうになった。] (211) 2020/09/14(Mon) 21:01:51 |
【人】 空腹な迷い人 レックス[ 次に、その村から、ずっと遠い町に今度は潜り込んだ。 孤児はたくさんいるから、そこでは上手く潜り込めた。 だけど、孤児仲間が襲われているところ 鬼の力で助けてしまった。 ――『騙したのか、この バケモノめ !!』今でも憶えている。 助けてやったのに、罵られて、石をぶつけられて ――――拒絶された 人間と一緒に生きるのは、やはり無理なのだと思った。] (212) 2020/09/14(Mon) 21:01:53 |
【人】 空腹な迷い人 レックス[ それから、10年、20年 長い時間を一人で生きてきた。 襲ってくる人間を殺しては喰って、腹が減っては、喰って 食事をした後は、それでも罪悪感でいっぱいだった。 男を喰った、女を喰った、子どもも喰った。 ――襲ってきた父親を殺して ――周囲に知らせようとした母親を殺して ――たった一人残しては可哀想だから、子どもも殺した 仕方がなかったんだ。 生きるためには、仕方がなかった。 ごめん、ね……ごめんなさい…… 美味しい食事に涙を流しながら、謝っていた。 そんな時に、やってきたのが白鬼だった。 近くの山小屋に、鬼と共存を目指している娘がいると そんな話を急にされた。 自分が食べているものなど、目にも入っていないかのように そんな酔狂な奴がいるなら、会わせてくれと言った。 食べてやろうかと思ったが、白鬼にとっても大事なようで 同族であろうと殺す。 というような目で見られたのを覚えている。] (213) 2020/09/14(Mon) 21:01:55 |
【人】 空腹な迷い人 レックス鬼の養父とでも言うのかな…… [ 父親のような顔をした白鬼を思い出して、 くくくと喉の奥で笑った。 昔のことを思い出しながら、食べていれば いつの間にか、皿は空になっていた。] ごちそうさまでした [ 手を合わせて、小さく呟いてから、 個室を出れば、周囲の本棚に目をやった。 よくよく見れば、ここにある本は読めるようだ。 見たことない文字なのに、 意味は理解できるというのは不思議な感覚だ。] こ、凍れる? [ ふと目に留まった本を手に取ってみれば、 そこには、人狼の娘の物語が描かれていた。] (214) 2020/09/14(Mon) 21:01:58 |
【人】 空腹な迷い人 レックス[ 愛しいと想ったものを、食べたいと思ってしまう少女。 彼女にとって、食べるということが最大の 愛情表現 だった。初めて、自ら欲して食べたのは、初恋の少年。 だが、それをきっかけに、彼女の両親は死んだ。 両親は、村の人間には手を出さないこと、 代わりに村を襲う連中を退けることを約束して、 この村に住んでいたというのに、 幼い娘は知らずに契約を破ってしまったのだ。 その日から、彼女が新たな村の守護者になった。 優しい獣になりたいと願いながら、 人間と共存したいと願いながら それはきっと無理だと、――諦めながら しかし、そんな日々も 人間側の裏切りにあい、終わりを迎えた。 愛しい友人を食べ、初めての仲間を得て、 仲間を守るために、自らを差し出した。 本当は、人間と一緒に生きたかったのに 大好きな子たちと一緒に生きたかったのに その願いは、諦めて。 仲間のことを、大好きな子たちのこと 彼らの幸せを願って、死んで逝った。] (215) 2020/09/14(Mon) 21:02:00 |
【人】 空腹な迷い人 レックス……僕は、こんな風に諦めたくないから だから、願いを叶えに行かなきゃ [ たとえ、それが悪魔に魂を売るようなことであろうと この願いだけは叶えたい。 あの子との約束を守りたい。 ぱたりと、本を閉じて、静かに瞳を閉じた。 じわりと胸の奥に広がる熱を感じていた。 愛しいという想いを、力に変えて進もうと] (216) 2020/09/14(Mon) 21:02:02 |
【人】 空腹な迷い人 レックス 『あはははははははははは!!!! いいぞいいぞ! その調子だ!! そのまま、一人くらい、 喰ってから戻ってくればいい!!』 (217) 2020/09/14(Mon) 21:02:04 |
【人】 かみさま 尊龍[ざあぁと強い風が吹く。 私を包むように、愛おしむように――、 花弁が涙のようにはらはら舞っては空に昇る] ああ………、 [私はその風に心奪われしばし風の吹く先を見つめた。 エリサが戸惑う様子を横目に見つつ。 幸せを胸に抱き、安堵したように微笑んで、 その風に口付けるよう目を閉じた。 目元を掠めた花弁が私の涙のように流れゆく] (219) 2020/09/14(Mon) 21:44:06 |
【人】 かみさま 尊龍[――、幾重もの輪廻の果てのように永く短い一時。 過ぎ去った風を遠く見送り、 視線を私を見つめるエリサへと向ける。 他人行儀に慌てるエリサがおかしくてクスと笑み。 混乱し、口走るその言葉――、 「連れ去ってくれるのですか?」 耳にすれば、稚児を見守る笑みはふっと消え、 エリサのほうへと一歩、歩を進め] ……ああ、そうだよ。 月森 瑛莉咲。 私はお前を遥か昔からずっと待っていた。 会いたかったよ、私の愛しい子。 [ふっと万感の想いを込め愛し気に微笑み目を細め] (220) 2020/09/14(Mon) 21:46:33 |
【人】 かみさま 尊龍[今すぐにでも駆け寄り抱きしめたい。 だが、混乱しているエリサを怯えさせてもいけない。 だから、私からはそれ以上歩を進めず。 代わりにエリサへ手を伸ばし、エリサを乞う] おいで、一緒に神域へ行こう。 そうして夫婦となり共に過ごそう。 これからはずっと一緒だ。 [”エリサ”には性急すぎる話だったか、とも思うが。 答えは彼女の”魂”が知る事だ、と。 涼やかな目を優しく細め、与えた謎かけを稚児がどう解こうとするか――、見守る大人のような風情で見守っている。**] (221) 2020/09/14(Mon) 21:47:45 |
【人】 希壱[雨の降る道を急いで走る。 雨に濡れた髪が視界を遮って。 水たまりに突っ込んだ靴に水が浸水してきて。 泥が跳ねてズボンの裾がグチャグチャになっても、尚。 突如、都会の空を覆った雨雲は、 容赦なく地面に向かって雨を落とした。] ───洗、濯っ、物おおおっっ!! [今朝見た天気予報では晴れだと言っていた。 快晴で、雲ひとつない青空が広がるでしょうなんて、 どこのお天気キャスターの言葉だったか。 それを信じてしまったが故に、 いつもよりも多めに洗濯物を干してきてしまったのだ。 講義が午後からで、朝に余裕があるからと シーツまで干してきてしまったのだから尚更である。 …まぁ、急いだところで もう一度洗い直すことになるのだけれど。 それでも急いで帰らなくてはいけない事に変わりはない。] (222) 2020/09/14(Mon) 22:32:31 |
【人】 希壱あっ!やべっ、 なずな、傘持ってってねぇ! [そこで思い出す今朝の言葉。 『きょうは晴れるんだって! だからね、お気に入りのクツ、はいてくの!』 無邪気に笑って、靴箱の奥に大切に仕舞われていた 水色の靴を引っ張り出していた。 今日は体育もないから履いても大丈夫なんだと、そう言って。 チラ、と腕の時計を確認すればもう17時を過ぎていた。 急いで走って小学校へ行ったとしても きっと、すれ違いになってしまうだろう。 そもそも、俺も傘もってなくてずぶ濡れだし。 新しい傘を買う思考は、 洗濯物で頭がいっぱいだったが為に思いつかなかったし。 …てか、今買ったって遅すぎるし。] (223) 2020/09/14(Mon) 22:33:16 |
【人】 希壱[いい加減走ることにも疲れてきて、 バシャバシャと地面を蹴っていた足をゆっくり止め始める。 今まで色々上手くいっていた気がするけれど、 やっぱり俺はどう足掻いたって変わることはできないのかと 雨でどんよりとした空を見て、気持ちまで沈んできてしまう。 …思えば、昔からそうだった。 誰かに認めて欲しいなんて気持ちで頑張っても いつも空回りばかりしていた。 結局どれだけ頑張ったって、 その頑張りを誰にも認めて貰えないのに。 優しさに見返りを求めてはいけない。 なんて、誰が言った言葉かしれないけれど。 ありがとうの言葉くらい、くれたって言いじゃないか。 …たった五文字を求めるくらい。 したって、いいじゃないか…] (225) 2020/09/14(Mon) 22:34:12 |
【人】 希壱[…なんて、ただの自己嫌悪だ。 土砂降りの中。赤信号で足を止める。 周りには、しっかり天気予報を見ていた人で溢れていて 頭からつま先までずぶ濡れになった俺を なんだか笑っているようにも見えて。 そんな事ないってわかってるのに。 そんな気持ちで支配された心では、 どうやったって前向きにはなれない。 だから、早く青になれなんて心の中で叫んだ。] (227) 2020/09/14(Mon) 22:39:29 |
【人】 希壱[家に帰って、早く、おかえりを言う準備をしないと。 シーツだって取り込まないと。 今日は、あの子の好きな晩御飯にするんだから 仕込みだって、午前のうちに終わらせたんだ。 お気に入りの靴が濡れて落ち込んでるだろうから 慰める為に、言葉だって考えて。 あぁ、でもその前に。 風邪を引かないようにお風呂にも入れてあげないと… その後に洗濯機を回して。それから…] (228) 2020/09/14(Mon) 22:41:24 |
【人】 希壱『あ、おにいちゃんだ!』 [そんな声が、走る車の騒音の中、聞こえてくる。 そちらに目を向ければ、黄色い傘を差した妹がいて。 幻想かと一瞬思うものの、 黄色い傘のその子は、真っ直ぐこちらに向かってくる。 前髪からぼたぼた垂れる雫を掻き分けて、 しっかりとその姿を見留めた。] (229) 2020/09/14(Mon) 22:41:44 |
【人】 希壱──なずな! よかった、傘、持ってたんだな [近づいてくる黄色い影に、 こちらも数歩走り出して迎え入れる。 先程止まっていた赤信号の横断歩道は、 通りゃんせのメロディを流しながら、 いつの間にか青に切り替わっていた。 パシャ、と水が跳ねる。 あの子のすぐ側まで行くと、 視線を合わせるようにしゃがみこむ。 水色の靴は濡れてしまっていたけれど、 それでも全身がずぶ濡れになっているよりはマシだ。 よくよく見れば、合羽も着ていて ランドセルカバーまでついていた。] 『おねーちゃんがね、前にわたしてくれてたの。 もしものときにつかいなさいって!』 [そう言うと、ニコ、と妹は笑う。] (230) 2020/09/14(Mon) 22:43:12 |
【人】 希壱[そうか、姉貴の入れ知恵か。 こうなる日を見越して、置き傘をさせていたのだろう。 用意周到に。きっと、俺がやらかした時の為に。 そう考えて、気分が沈み出す。 いつも以上に気分が落ち込むのは、 きっと、雨のせいだ。 ほら。この子だって。 何も言わない俺を不安そうな顔で見てる。 直ぐに笑顔で対応しなくちゃ。 俺が不安にさせてどうするんだ。 大丈夫だよ、帰ろうって。 余計なことも言わずに。 苦しい気持ちを吐き出せずに。 ]……そう、か。 姉貴が持たせてくれてたんだな。 なずなが濡れてなくてよかったよ。 さ、帰ろう。 兄ちゃんずぶ濡れだから、手は繋げないけど ……ごめんな。 (231) 2020/09/14(Mon) 22:43:54 |
【人】 希壱[そっと立ち上がって、横断歩道を見る。 さっきまで流れていたメロディは止んでいて、 信号機は再び赤になっていた。] ………ついてないなあ。 [そんな言葉を漏らした直後。 耳を劈くような音が辺りに響いた。] (232) 2020/09/14(Mon) 22:44:17 |
【人】 希壱[瞬間、世界がスローモーションに見えた。 雨の中、スリップしたトラックが横倒しになっていく。 そのトラックに巻き込まれた赤い車が、 いやに鮮明な色を保ったまま、こちらへと突っ込んでくる。 クラクションが街中に響いて。 叫び超えが鼓膜に響いて。 すぐ隣にいたあの子を突き飛ばす。 俺と同じ、タレ目で猫目な瞳が大きく見開かれる。 紫の瞳が揺れて、俺を呼ぶ。 あぁ、そんな顔すんなよ。 大丈夫だから。 なずなが無事ならそれでいいんだ。 そう思って、ニコ、と小さく微笑んだ。] (233) 2020/09/14(Mon) 22:44:51 |
【人】 希壱[ グシャ 、と嫌な音が響く。ギシ 、と嫌に骨が鳴る。視界が歪んで、赤に染って。 何が起きたかを理解する頃には。 もう、俺はこの世にいないんだろう。] (234) 2020/09/14(Mon) 22:45:21 |
【人】 マリィ[楽しかった、って言葉に そうね、って返すくせに どっちも「また来よう」を言わないまんま。 少し歪な空気のまま、車は芸術村へ するりと滑り込むでしょう。 いよいよ日も陰り、夜の時間の近付く頃。 人影もまばらな美術館へ入れば 途端に、眩しい色彩が目を焼いた。] ………………、 [四面を取り囲むように聳え立つ 天使や聖なる御子、聖母を象ったステンドグラス。 正面にどんと構えていたのは、 磔刑に処されるキリスト像だった。] (237) 2020/09/14(Mon) 22:53:50 |
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