09:40:15

人狼物語 三日月国


83 【R18】ラブリーナイト・りたーんず!【ペアRP】

情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


到着:リカちゃんパパ 敷島 虎牙

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[テレビから流れるポップな音楽に合わせて
 梨花がたどたどしい口調で歌う。
 口にはまだ朝ごはんのオムレツが入ったままで
 ケチャップのついた口を大きく開けた瞬間、
 ぷり、と口元から卵の欠片が飛び出した。]


  『あーもう、ほら。
   口に物が入ったまま歌わないの。
   さっさと食べる!』


[妻の絵美が眉根を寄せて
 ティッシュで乱暴に梨花の口元を拭って……
 ついでに俺の方をじろりと睨めつけた。

 もう何回も言われたから、本当は分かってる。

 「ぼーっと見てないで、パパも叱ってよ」
 「イクメンイクメンって、外面ばっかり」
 「オムツも替えたことないくせに」
 「外に出た時抱っこと荷物持ちするのが
  父親の仕事だと思ったら大間違いだよ」

 何度も繰り返されて、
 耳に出来たタコすら擦り切れ血が滲むほど。]
(4) 2021/07/01(Thu) 11:24:15

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[でも、俺だって『パパ』になんか
 なりたくなかった。

 叱られた梨花が泣く声から意識を背けるよう
 俺は必死に子供向けのアニメに耳を傾ける。
 丸っこいデザインの着ぐるみたちが踊って歌う、
 パステルカラーの優しい世界。
 癇癪を起こした子供の泣き声は
 まるで爪を立ててガラスを掻くように
 優しい世界を切り裂いていく。

 絵美は俺に文句を言うのを諦めたのか
 聞こえよがしのため息ひとつ寄越して
 黙ってハイチェアから梨花を抱きあげる。
 豆のサラダだけ残った俺の皿の上を
 妻の左手が断りもなく横切った。
 嵌めた時はすんなり入ったのに、
 ふと見たその薬指の指輪の上には
 いつの間にかうっすら肉が乗っていた。

 くまの浮いたすっぴんの目元に
 コーヒーの染みみたいな肝斑が出来て
 髪はひっつめ、梨花が掴んで離さない襟元は
 すっかり伸び切ってびよびよになっている。]
(5) 2021/07/01(Thu) 11:25:01

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[そこに居るのは、合コンの時に
 ぱっちりと大きな眼を瞬かせて笑ってた
 かわいい女の子なんかじゃない。
 『おばさん』だ。
 絵美は、俺を置いて、『ママ』になって
 そのままシームレスに老いていき、
 多分気付けば『おばあさん』になる。


 ─────そう気付いた瞬間、
 俺は背筋がぞっと粟立つような感覚を味わった。


 俺が『パパ』になるのを待たず
 きっと等しく、老いは訪れてくる。
 『お兄さん』と呼ばれず『梨花ちゃんパパ』と
 周りに呼ばれ始めて早2年。
 ふと気付くと『おじさん』だの
 『おじいさん』だのと好きに呼ばれて、
 耳元で大きな声で、ゆっくり話されるのが
 いつしか当たり前になっていって……。]
(6) 2021/07/01(Thu) 11:25:39

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[そんなの、考えただけで気持ちが悪かった。




 ─────参加した理由なんて、そんなもの。]*
(7) 2021/07/01(Thu) 11:26:11

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[つれない子は嫌だ。
 真剣に愛してくれる子がいい。

疲れた顔で振り払われるのはもうたくさん。


 出来るだけ若くて、
 それからうんと可愛い子がいい。

おばさんなんて見たくもない。


 ああ、でも声は高くない方がいい。
 大人の甘さを残した、シガーの香る唇が。

金切り声ばかり出す、
ケチャップ塗れの唇から離れたいもの。
(52) 2021/07/01(Thu) 21:44:18

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[対等に近い関係を築いて
 たった一晩、肌を寄せあって愛を確かめ
 後は後腐れなく、さようなら。



 メールを打ってまもなく、
 そんな『理想の子』は、
 思ったよりあっという間に見つかった。]
(53) 2021/07/01(Thu) 21:44:41

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

  ー ホテル・ザ・ラピス ー

[飾り気のないグレーのボーダーのTシャツに、
 さっくりとしたサッカー地のハーフパンツ。
 ゆったりとロビーに置かれたソファーの上で
 足を組み、俺はスマホに視線を落としている。]


  『リカちゃん、パパにお風呂入れてもらって
   気持ちよさそう🤗💕💕
   イクメンパパがいてうらやましいなぁ
             ❊ⓐⓘⓒⓞ❊』


[ブログに書き込まれたコメントに
 ひとつひとつ返事をするのが日課。]


  >❊ⓐⓘⓒⓞ❊さん
  僕はまだ妻から学ぶことも多い毎日です(笑)
  ❊ⓐⓘⓒⓞ❊さんも一緒に頑張りましょ💪💪


[多分この人達は、俺がオムツの替え方も
 知らない、って打ち明けたら
 手のひらをくるりと返すだろうか。
 ─────それとも、
 「それでもオムツの買い出しを
  手伝ってくれるだけマシ」
 とか、言ってくれないだろうか。]
(54) 2021/07/01(Thu) 21:45:14

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[育児ブログの生み出す収益で
 妻も子どもも食べてるんだから、良いじゃないか。
 会社から出る金も、ブログの収益も
 きちんと家庭に還元して
 それの何が不満なのか。

 「だって、あなた父親でしょ?」
 「育児は綺麗なことばかりじゃないよ」

 そう、そうだけど。
 でも疲れるのも、汚いのも嫌いなのが
 飾らない俺の本音。]
(55) 2021/07/01(Thu) 21:45:34

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[競合のイクメンパパの「Daichan PaPa」は
 娘の食べ残しを食べたりするだろうか。

 「いくみママのレシピbook」のお子さんは
 本当に、全部のご飯を完食してる?

 子どもの名前を隠れ蓑にした、
 半匿名のこの世界で
 本当に幸福な子どもは何処にいるだろう?

 我こそは真に幸福な子どもを育てる、
 完璧な家族を嘯く人間で溢れていればいい。]
(56) 2021/07/01(Thu) 21:46:36

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[全部のコメントにリプライをしながら
 「リカちゃんパパ」はロビーを行き交う人々に
 ちらちら視線を走らせる。

 俺と結ばれる相手はどんな子だろ、って
 好色を潜めた視線で値踏み。
 好みの子と目が合ったら、
 にっこり笑って会釈でもしてみようかな。]*
(57) 2021/07/01(Thu) 21:47:02

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[行き交う人の流れを見ながら
 俺はぼんやりと考えを巡らせる。

 あの子は足が綺麗で柔らかそう。
 あの子は肌が白くてシミひとつない。
 あの子は……ああ、ホテルの従業員か。

 これから重ねる肌を思えば
 まるで塩水をたらふく呷ってしまったように
 じん、と喉が渇いた。


 そうしてやがて、一人の女と目が合って
 向こうもぺこりと頭を下げる>>75
 季節感にそぐわない長袖とパーカーは
 見ていて暑くなるようだけれど、
 反面、擲つように露出された形のいい脚。

 ─────(85)1d100点、と値踏みして
 にこり、と笑い返そうか。]
(98) 2021/07/02(Fri) 11:23:56

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  ふふ、今日は多分みんな「待ち合わせ」ですよ。
  なんたってホテルひとつ貸切ですから。


[だからここにいる以上は
 きっとこの子も同じ目的なんだろう。
 腰をずらして隣のスペースを空けると
 俺は膝の上で指を組み合わせながら
 唇を片方上げて笑みを浮かべた。]


  君も会えたんですね、「いい人」に。


[迷い込んできたアリスじゃないなら
 きっとそうでしょう?って
 内緒を共有するみたいに声を潜めて。]
(99) 2021/07/02(Fri) 11:24:20

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[もし、こんな可愛い子が
 俺の願い人ならば……
 一夜の恋人になれたなら。]


  いいなあ、君の「いい人」が羨ましいや。


[そう、口元だけで微笑んで]


  僕も、「いい人」待ち。
  ……なんだか、寂しくって、ついね。


[組み合わせた指の間に、日焼け跡の残る
 左手の薬指をそっと隠した。
 疚しいわけじゃないんだけど
 大っぴらにするのも、なんか違う気がして。]
(100) 2021/07/02(Fri) 11:31:17

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  …………君の願いは、なんですか。


[名前を聞くのも、ここに来たわけを聞くのも
 なんだか違う気がして、俺はそう尋ねよう。]*
(101) 2021/07/02(Fri) 11:33:36
リカちゃんパパ 敷島 虎牙は、メモを貼った。
(a2) 2021/07/02(Fri) 12:28:39

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[声を掛けて、席を空けた。
 たったそれだけの行動なのに
 随分距離が近付いたな。
 そう、甘えるような声でタメ口をきく彼女を
 窘めもせず、俺は内心そう思った。

 じりじりと、吐息が通うよりも、
 まつげの瞬く音すら聞こえそうな距離、
 妻からの咳払いに引き止められることも無く
 若い身体がまたひとつ、距離を縮める。]


  そう、お揃い。


[ここに集まる人間は多かれ少なかれ
 皆「そう」なのだけれど
 そんな真実には蓋を閉めて、俺は喉を鳴らす。]
(125) 2021/07/02(Fri) 20:02:58

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[とろとろに甘く煮詰まったような声で
 彼女はここに来た目的を話す>>106


  愛を探しに、ね。


[くす、と嗤いが漏れたのをもし咎められたら
 素直に謝ろうか。
 「だって可愛いなって」……なんて
 お世辞をひとつつけた上で。

 そんなの、何処にあるんだろうか。

 あると思ってもし主催者が
 ここに彼女を呼んだのなら
 さて彼女はどんな人間に出会うやら。
 もしそれが俺だったら─────?
 そんなの笑えない冗談だろ!



  きっと、僕ら似た者同士だと思うけど。


[ひそひそ、声を潜めるついでに
 こっちからもひとつ距離を縮めて。
 ソファーの上に投げ出されていた手の上へ
 そっと俺の手を重ねて、ぽつり、ぽつり、と
 俺は千由里の心の中へ澱を落とす。]
(126) 2021/07/02(Fri) 20:03:28

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  俺達きっと愛し合ってる。
  そう思ってたのは、俺だけだった、みたいな。

  そんな寂しいことあって、ここに来ちゃった。


[問われなかった目的を打ち明ける。
 真実と嘘とを織り交ぜて。

 すぐ顔の横にあった千由里の旋毛へ頬を寄せる。
 久々の滑らかな髪の感触に
 つい、口角が緩く持ち上がる。]
(127) 2021/07/02(Fri) 20:04:45

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[そう呟きを落として、身体を離す。
 手が触れて、それ以上に近付いたことを
 困ったような笑みを作って詫びようか。]


  …………僕は、


[つられて本名を名乗りかけて、危うく止めた。
 けど、適当につけたハンドルネームは
 この甘い雰囲気に相応しくなくて。]
(128) 2021/07/02(Fri) 20:09:24

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  ─────…… タイガ。
  虎の牙、って書いて、タイガ。


[そう、八重歯を見せて笑った。

 パパって名前は、やっぱり重たいな。
 内心そう後悔しながら。]*
(129) 2021/07/02(Fri) 20:12:14

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[ちょんと口を尖らせてひねて見せるものだから
 それがあんまりに可愛くて
 「ごめんね」って手の甲を撫でて宥めた。

 変じゃないさ。
 俺もそれがこの世のどこかにあると思ってた。
 でも、そんなの知らずに
 こんな場所まで探しに来ちゃった女の子が
 無知で、愚かで、だから可愛い。]


  意識して欲しいって思ってる……なんて
  こんなおじさんから言われたら
  さすがに気持ち悪いでしょ。


[冗談めかして笑って逃げて、
 俺は密かに若い女の子の匂いに酔いしれてた。
 あー、この甘い匂いは整髪料か、シャンプーか。
 若い女の子は、何だか花のような果実のような
 甘くて可愛い匂いをまとっているのに
 どうしておばさんになると違う匂いになるのかな。]
(149) 2021/07/02(Fri) 23:15:40

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[甘い言葉を交わして、
 2人っきりの空気に酔いしれて。

 重ねた手は、逃げなかった。
 それをいい事に、指先で千由里の手の甲を掃く。
 肌理の細かい肌の感触に、ぞわり、
 背筋が粟立った。]


  でしょー。
  名前「は」カッコイイのに、って
  よく言われるんだ。


[ニッと笑い返してきた千由里の
 小さくて白い歯は、キスしたくなる形。
 そのカッコイイ名前の、カッコイイお兄さんは
 何らかの欲望を持って
 このホテルに来ていることなんか
 すっかり忘れちゃってるみたいに見えるその顔に
 いきなりキスしたら驚くだろうか。

 それとも、そんな欲望を向けられることに
 もはや慣れすぎている手合いだろうか。
 そういう子、俺は好きだよ。


 仄暗い欲望が一度離れた身体の距離を
 もう一度縮めようとするのを押し殺して、
 俺は千由里の言葉に、うーん、と唸ってみせた。]
(150) 2021/07/02(Fri) 23:16:09

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  会ってからのお楽しみ、ってやつなのかな。
  ほら、クリスマスプレゼントだって
  箱に入った上に靴下にまで入ってる。
  「知る」までの過程が楽しいんだよ、きっと。


[だから、そわそわしちゃうのは
 何も悪いことじゃない。

 ……でも、続く質問を聞いた瞬間、]
(151) 2021/07/02(Fri) 23:16:33

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙




  …………っ、


[頭の中で赤ん坊が泣いた。
 枕元の時計すら手探りじゃないと見つからない
 真夜中に、周囲をはばからない大声で。

 何も聞こえない。
 何も聞こえない。
 俺は知らない。何も出来ない。
 黙っていれば、俺じゃない誰かが
 きっと助けに来てくれる。

 そうして俺がじっと黙っていると
 隣から不機嫌そうな気配が起き上がって
 それでも赤ん坊は泣いている。
 オムツかな。おっぱいかな。
 それとも……なんでもないのかな。

 「あんたはパパでしょ」って絵美が言う。
 
違うよ、ただの胤でしょ。

 そんなふうに言い返す勇気もないくせに
 寝たフリだけは上手くなって─────]
(152) 2021/07/02(Fri) 23:17:34

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  愛させてくれる人、かな。


[無意識に左手の薬指に出来た
 僅かな肉のくびれを指先でなぞりながら
 俺は自分の中に答えを探した。]


  寂しくて、寂しくて、どうしようも無い時、
  傍でべたべたに甘やかしてくれる人より
  俺の気持ちに答えてくれる人が欲しい。

  俺はきっと、恋がしたい。
  心の中をいっぱいに「好き!」って気持ちで
  溢れてる瞬間が、きっと一番気持ちがいい。


[いつの間にか床の絨毯の模様に落とした視線を、
 もう一度千由里に戻して、ふ、と緩め]
(153) 2021/07/02(Fri) 23:18:45

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  ちゆは、どんな風に恋したい?


[相手が欲しくて、
 頭の中を相手のことでいっぱいにして、
 何が何でも手に入れたい、って
 そう思っちゃう気持ちは
 理解はできるけど、きっと俺にはわからない。
 よく回る口は「きっと出来るよ」って言うけれど
 恋が燃え盛っても、愛にはならないのは
 俺の中ではどうにも覆らない事実なのだから。

 そうして千由里と暫くソファーで話して
 時間が来れば「お互いいい人に会えますように」って
 別れようとするだろう。

 たまたま同じエレベーターに乗って
 たまたま同じ階で降りて
 ……たまたま、同じ部屋まで行ってしまえば
 さすがの俺も気が付くだろうけど。]*
(154) 2021/07/02(Fri) 23:24:43

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[てっきり、もっとすごい答えが
 かえってくるかと思ってたけれど
 千由里の答えは極々平凡なものだった>>170


  普通の、幸せな恋、ね。


[普通に遊園地行ったり、
 普通にレストラン行ったり、
 思い出を少しずつ積み重ねていったりしてさ。
 新しいネイルがどうとか、
 新しい服が可愛いなぁとか、
 そんな話で時間を埋めて……

 それから、家に帰ってベッドに入って
 「また会いたいなぁ」とか思っちゃったり。

 多分恋はそういう時が一番楽しい。]
(197) 2021/07/03(Sat) 15:32:39

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[そうして時間が来たのを確認したら
 千由里に一声かけて席を立つ。

 部屋に行けば、一晩とびきり愛してくれる子がいて
 泣き声やら金切り声、赤ん坊の臭いを
 俺の頭から消し去ってくれるに違いない。

 浮き足立つ俺の後ろから
 付かず離れず、千由里がついてくる。
 同じエレベーター、同じ階に降りて
 同じ部屋の前で立ち止まる。]


  ここ……だけ、ど……


[覗き込んでくる千由里に
 俺も目をまぁるくして、オウム返しに答えた。

 もしかして、そういうことかな?
 でも、そんなの─────

 そう思ったら、手が出ていた。]
(198) 2021/07/03(Sat) 15:33:33

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[伸ばした腕の中に千由里の身体を収めて
 ぎゅ、っと抱き締める。
 思ったより華奢で、さっきよりもずっといい匂い。
 肺いっぱいに千由里の纏う空気を吸い込んで
 俺はそっと呟いた。]


  君で、良かった。


[君が相手なら、一晩、たった一晩でも
 俺の願いは叶うに違いない。
 ……そんな予感がした。

 だけれど、いきなり抱きついたのはまずかったか。
 腕を解いて千由里を解放したら
 ちょっと眉を下げて笑ってみせる。]


  ……ごめ、ハッスルしちゃって……


[でも、仕方ないよね。
 柄にもないこと考えちゃったんだ。]
(199) 2021/07/03(Sat) 15:47:43

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  「こんなの、運命みたい」って
  思っちゃってさ。
  君だったらいいのに、って思ってたから。


[恥ずかしいことを打ち明けるようで
 頬が少し火照ってしまう。
 運命、って。なんだそれ。
 まるで現実を知る前みたいな口説き文句!

 恥ずかしくて自分でくすくす笑いながら
 俺は千由里に改めて尋ねよう。]


  君が「僕を愛してくれる人」かい?*


 
(200) 2021/07/03(Sat) 15:52:01

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[「運命」なんて、笑った拍子に吹き飛ぶような
 ふわふわ軽い言葉のくせに、
 「あたしも」って、向こうから返事が来た途端
 確固たるものとして胸を占めていく。

 そうやって、不思議そうな顔するくせに
 次の瞬間にはいたずらっ子の顔をする。
 ぐ、と顔を引き寄せて
 吐息の通う距離まで。
 次は、どうするの?って。
 次が気になってワクワクしちゃう。
 ほら、これが「恋」の楽しさだよ!]


  もう僕を愛してるって?


[こんな可愛い子だったらさ、
 引き寄せられてキスしそうになったら
 赤面のひとつでもしたくなるけど
 ひとつ堪えて、俺はふふ、と肩を揺らす。]
(219) 2021/07/03(Sat) 22:45:57

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[ちょん、とスタンプを押すように
 柔らかな唇が重ねられる。
 熱烈な言葉に反して控えめなそれに
 僕は一瞬きょとりと目を瞬かせ、]


  …………これくらい僕のこと好き、ってこと?


[もし千由里が一切の穢れのない純新無垢で
 このキスが彼女の渾身だったら
 これってものすごい愛だなって思うけど
 彼女の態度を見るに、違う。
 君はもっとすごいことしてると思う。
 男に身体を拓いて、その欲望を身に受けるより
 もっとすごい、何かを。

 だから、今度は俺から千由里に唇を重ねよう。

 啄むような口付けを、何度も角度を変えて。
 舌先で唇をノックして、許可が下りたら
 暖かな咥内まで蹂躙していく。
 呼気も思考も奪い合って
 肺も脳も、お互いの存在で染めていくような。]
(220) 2021/07/03(Sat) 22:46:17

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[漸く唇を離したら、未練がましい銀の糸が
 互いの唇を繋いだか。]


  ……僕は、このくらいじゃまだ足りないけどね。


[千由里の肩を捕らえたまま
 俺はにっかりと笑ってみせた。
 もっと俺のこと好きになって欲しい。
 互いに燃えて盛ってさ。
 
もう帰るべき場所とか忘れるくらいに。


 さて、このまま部屋になだれこんで
 フードに隠された若い素肌を暴いてもいいけど
 ……せっかくさっきお話出来たんだ、
 僕から一つ提案しよう。]
(221) 2021/07/03(Sat) 22:46:50

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙




  このまま部屋に入ってもいいけど……
  ちゆ、ちょっと外出ない?

  ホテルの近く、デートしよ。


[ここは家からも職場からも離れてるし
 誰にも見られる心配はない。
 それに、千由里がより深く
 僕を好きになってくれるなら。]


  手ェ繋いで歩いて、お茶とかしたりしてさ。
  そういう「普通の」デート。
  ……どう?


[勿論、千由里がそんなんじゃなくて
 キスより深く互いの身体を重ねたいと言うなら
 部屋に入って、ねっとり満遍なく愛を注ごうか。]
(222) 2021/07/03(Sat) 22:47:11

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  えーっと、ね……
  この近くだとアートアクアリウムがあるかな。
  金魚が綺麗な水槽で泳いでるやつ。
  あとは、全国津々浦々のアンテナショップ巡り……
  うーん、ちょっと地味かな?


[提案しつつ、俺は開いたスマホで
 近隣の情報を収集している。

 俺は千由里の好きなものをまだ知らないし
 千由里も俺の好きなものを知らない。

 お互いを知るいい機会だから
 どんどんワガママ言って欲しいって思うんだ。]*
(224) 2021/07/03(Sat) 22:47:57

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[こんなもんじゃない、って
 ちゆだって、って
 なんだかムキになったみたいに反論する千由里に
 「へえ?」って片眉上げてみせる。

 こういうところは子どもっぽいのに
 時々見せる女の魅力が酷くアンバランス。
 だからきっと、大人の男はほっとけなくなるんだ。

 とっても可愛かったから、
 離した唇で、もう一度軽くキスを落とすと
 さてさて、デートの提案を。]


  だって、「普通の幸せな恋」したいんでしょ?


[突っ込んで、腰振って、乳舐めて
 「はい、純愛」なんて、つまらない。
 もっと俺に溺れて欲しい。
 頭の中も腹の中も、
 俺という存在でいっぱいになって
 もう俺しか見えないほどになって……

 俺が求めてる「愛」ってそういうもの。]
(258) 2021/07/04(Sun) 3:00:48

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙




  だって、俺がそうしたいんだ。
  だから今回、ちゆは俺に振り回されたってことで。


[ね、って笑って、俺はわがままを言う。
 そうして千由里が乗り気らしいなら
 指輪の跡がある手で、手をそっと握り返して]


  じゃあ行こ、デート。
  初デートだから、ちゆのこと、沢山教えて。
  俺のことも知って欲しいし。


[とはいえ、あけすけに全部を晒け出すつもりは無い。
 この特別な夜のための極上のスパイスを
 これから買い出しに行くだけのこと。]
(259) 2021/07/04(Sun) 3:01:16

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[だって、ほら。



 俺は「リカちゃんパパ」なんだから。



 一夜明ければシンデレラも家に帰るだろ?

 ならせっかくの舞踏会。

 踊り明かさなきゃ勿体ない。]
(260) 2021/07/04(Sun) 3:02:17

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[ホテルの外に出てタクシーをつかまえると
 千由里と一緒にアクアリウムへ向かう。]


  僕も久しぶりなんだ、アクアリウム。
  水族館は昔付き合ってた彼女と一緒に
  美ら海水族館行ったなぁ……
  ジンベイザメがでっかくってさ。


[道中、そんなことを話したろう。
 俺から千由里の「恋」の話も尋ねたりして。
 だってこんなところに来てまで
 「普通に幸せな恋」を求めるのって
 なんだか不思議な感じがしたからさ。

 アートアクアリウムには
 流石にジンベイザメはいなかったけれど、
 一歩薄暗い館内に足を踏み入れると
 大きな掛け軸を模した水槽の中、
 黒い琉金がゆらゆらと長い尾を揺らしていた。

 アートとアクアリウムの融合を謳うだけあって
 見た目も美しい様々な金魚たちが光を纏い
 趣向を凝らした水槽の中で泳いでいる。

 二人で手を繋いで歩いていても
 この時期に長袖の千由里に誰も振り向かない。
 周りのカップル達と同じように
 俺たちふたり、恋し合ってるように見えるのか。]
(261) 2021/07/04(Sun) 3:02:52

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙




  ちゆ、はぐれないようにね。


[腕から指先までをしっかり絡めていれば
 はぐれるわけもないのに、
 ついそんなことを言ってしまう。

 途中、上開きの水槽の中に指を入れた
 幼稚園くらいの子どもが、
 こっぴどく母親に叱られていて……
 悲しげな、子ども特有のきりきりとした泣き声が
 暗い館内に響いていた。
 それを聞けば、つい、千由里と繋いだ手に
 きゅ、っと力が入る。]


  …………ごめんね、子どもが、苦手でさ。


[他の施設よりは子どもの来場者は少ないようだが
 それでも決してゼロじゃない。
 ほの明かりに照らされた千由里の横顔に
 へにょ、と眉を下げてみせて。]
(262) 2021/07/04(Sun) 3:11:25

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  ……ずっと僕だけ見てほしい、っていうの
  やっぱり無理な話なのかなぁ。


[ぽつり、弱音を吐いてしまった。
 既婚者で、子どももいるってこと
 明言も匂わせもしたくなかったはずなのに。]


  ……ちゆは、もし、幸せな恋をして……
  その先、どうするの?

  結婚が、したい?
  それとも、子どもが欲しい?


[この子の目は、何を見すえているんだろ、って
 なんとなく聞きたいけど、聞くのが怖い。
 でもつるりと滑らせた口はそのまま
 押し込めていた疑問を吐き出してしまった。]
(263) 2021/07/04(Sun) 3:23:20

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[つい、じっと千由里の目を覗き込んで
 問い掛けてしまった。

 視界の端では、万華鏡の景色みたいに
 金魚たちの長い尾が揺れている。
 その美しさを表現するためだけの
 狭いガラスのケースに押し込められた魚は
 可哀想なのに、どうしてか魅惑的で。

 人の流れに逆らい足を止め
 俺は傍らの千由里の答えを待つ。]*
(264) 2021/07/04(Sun) 3:38:35

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[道中たくさん話しをした。

 コンビニレジ横のカフェラテ、
 何処のが好き?俺はエブリーマートかな、とか。

 近所にコーヒーのうまい喫茶店があって
 夏の間はコーヒーかき氷を出している、とか。

 年齢を聞かれたら32、って普通に答えるけど
 千由里とはほとんど干支一回り離れてるって事実は
 俺の官能を甘く刺激するだけだろう。

 ドライブばかり連れ出す彼女の元カレは
 車好きじゃないなら、きっと俺と同じ。
 誰も俺たちを知らない世界に行きたくて
 二人きりでどこまでも。

 もちろん俺は千由里を責めない。
 そうなんだ、とこくこく相槌打つだけ。]
(283) 2021/07/04(Sun) 14:09:35

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[感動したような声を出す千由里に手を引かれ
 人波を縫って歩く。
 無邪気な顔がネオンに照らし出されて
 しっかり繋いだ手を時折振り返ってくれるのが
 本当に子どもっぽいのに、全然嫌じゃない。]


  うん、可愛い。


[繋いだ手を揺らして、微笑む。
 目は金魚じゃなく、千由里に向けて。

 誰にも咎められない二人きりの世界を
 子どもの声が切り裂いていく。
 千由里が手を引いて、親子連れを追い抜いて
 そうして世界に静寂が戻った頃、
 千由里はへらりと笑って言った>>269


  ……意外。


[俺は目をちょっと見開いて、
 それから強ばった頬を少し弛めた。

 なんか子ども向けの用品店の販売員とかでも
 おかしくないかな、ってちょっと思ってたから。]
(284) 2021/07/04(Sun) 14:10:05

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[そうして、俺が吐き出した弱音を
 千由里は受け止める言葉を返してくれる。

 俺だけを見ててくれて
 俺だけを愛してくれて
 ずっと一緒でいて幸せなら、本当にいいのに。

 だから、聞いたんだ。
 その目で夢見るその先を。

 子どももなく、
 夫婦という枷もなく、
 ただお互い一緒にいるだけ。
 笑って、そんな答えを返す千由里の頬に
 俺は黙って手を添えて─────
 そっと唇を重ねた。]
(285) 2021/07/04(Sun) 14:10:33

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  ……もっと早くちゆに逢えてたら良かったのに。


[神様は本当に意地悪。

 覗き込んだ千由里の目の中には
 アクアリウムの照明に照らされた
 悪い大人の顔が写ってた。]
(286) 2021/07/04(Sun) 14:10:56

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[アクアリウムを抜けて、
 せっかくだから、と近くのカフェに立ち寄った。
 小さな店内にはコーヒーの香りがたちこめて
 口コミによると夏季限定フラッペが人気だとか。

 俺はアイスコーヒーとレモンケーキ。
 千由里には、俺が誘ったんだから、と
 好きなものを選んでもらおう。

 ─────ああ、若い子って真っ直ぐだな、とか
 感性が瑞々しくて、まるで熟れた桃みたいだ、とか
 話しながらも、徐々に俺は焦がれてく。

 ハグをして、キスして、デートまでして、
 でも今夜はそこから先が確約されてる。
 男なら、デートで一番テンションが上がる日。
 さてその長袖の下の素肌は
 どんな肌触りがするだろう……。

 想像するだけで、酸いものを頭に描いた時のように
 きゅっと歯茎の付け根が疼くよう。]
(287) 2021/07/04(Sun) 14:16:27

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  ねえ、ちゆ。


[向かい合った席に手を伸ばし
 重ねた千由里の手の甲を撫でて、尋ねる。]


  ここは、さっきよりも静かだけど……
  もっと、二人っきりになれる場所、行かない?

  君をもっと、知りたくてさ。


[色を含めた目で、それがただの
 喫茶店のハシゴじゃないのを伝えながら
 俺は千由里の意志を確認する。

 けど、ちょっとマズったかな。
 早計が過ぎたかもしれない。
 他に千由里が行きたいところがあれば
 もちろん付き合うつもりだけれど、
 果たしてなんと答えてくれるか。]*
(288) 2021/07/04(Sun) 14:26:15

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[期待の色は裏切られず、
 肯定の言葉と共に、掌をすう、と撫でられて
 思わず背筋がぞわりと逆立つ。]


  うん、もちろん。


[無邪気な問い掛け>>304に目を細め
 湧き上がる情動を鎮めるように、
 冷たいコーヒーを喉へと流し込む。

 お揃いのレモンケーキの、
 皿の端についたクリームまで
 綺麗にきちっと平らげたなら
 また手を繋ぎ合わせてホテルへと帰ろうか。

 ちょっとこのドキドキするような、
 甘いひとときが好きだ。
 タクシーに乗ってホテルまで向かう時の
 互いの期待を胸に秘めあったまま
 でも、望むものは同じ、みたいな。]
(311) 2021/07/04(Sun) 21:50:02

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[今度はちゃんと、ホテルの部屋へと足を進めると
 広々とした空間が視界の端から端へ拡がっている。
 大人二人が並んで大の字で寝ても余りあるような
 大きなベッドだけじゃなく、
 ゆったり寛げそうなリビングまである。

 生活臭からかけ離れた、上質な空間。
 つい、深呼吸しちゃう。]


  ちゆ。


[ここでキスでもしようかな、って
 思ってたんだけど……ふと思い付いて
 俺は悪戯っぽい笑みを浮かべて、言った。]


  ……ただいま。


[ここは俺たちの家であり、
 世間から逃げるように帰ってきた
 二人だけの愛の巣……っていうごっこ遊び。
 
そういやデキ婚だったから、新婚生活なんて無かったや。

 千由里をまた思い切り抱いて、
 微かにレモンの味が残る唇を吸えば
 「ああ、本当にこんな新婚だったら良かったのに」
 って、またちょっと思った。]
(312) 2021/07/04(Sun) 21:50:55

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[性急だと言われたら
 「余裕無くてごめんね」って眉を下げて謝るし
 何も言われなければ、ただただ
 相手の形を確かめるよう、千由里の背に
 回した腕で、体の輪郭をなぞっていく。
 軽いキスの雨を何度も何度も降らせながら
 目を閉じても、もう子どもの声は
 どこからも聞こえなかった。]


  ちゆは……僕の何が知りたい?


[口付けの合間に、まつ毛の隙間からじっと
 彼女の顔へと視線を向けて問う。]


  血液型?それとも星座?
  出身校とか、それとも……
  僕がどうやって、人を愛するか、とか?


[何を教えたら、彼女はよりより
 俺の方を向いて、このひとときを
 より情熱的に過ごさせてくれるだろう。

 千由里の手を、俺のTシャツの左胸に導いて
 フードの下で解れた髪を、そっと耳にかけてあげる。]
(313) 2021/07/04(Sun) 21:51:19

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙




  分かる?ドキドキしてるの。


[掌じゃ分からないなら、耳を寄せてもいい。
 それでも分からなければ、
 もっと深いキスを受けて欲しい。]
(314) 2021/07/04(Sun) 21:51:44

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[このままバスルームに二人で
 なだれ込んでもいいんだけれど、
 装わない、素のままの千由里を
 じっくり味わってもいい。

 長い口付けから彼女を解放して
 俺は唾液で絖った唇を持ち上げる。]


  ちゆ。


[「君をもっと見せて。」
 そう、唇の形だけで乞う。]*
(315) 2021/07/04(Sun) 21:52:08

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[「ただいま」って帰ってきても
 「おかえり」って言ってもらえないんだ。

 「ミックス卵やめてって言ったよね」
 「低脂肪乳じゃないやつ、ってもう忘れたの?」
 「梨花寝てるんだけど」
 「連絡遅いって毎回毎回言わせないで」

 だからそのうち、言わなくなった。
 でも、文句は変わらず増えていった。]
(331) 2021/07/05(Mon) 4:15:09

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[ドキドキしてるのは一緒だ、と
 導かれた指先に、千由里の膨らみが触れる。
 薄い皮膚の下にある骨の、そのまた奥に
 どくどくと脈打つ心臓があって、
 でもそこにはまだ触れられない。

 もっと見せて、と奥に踏み込もうとしたら
 質問で通せんぼ>>320
 千由里の指先が、指輪の跡をなぞる。

 別に好きな人がいるでしょ、って。
 それでも一番になりたい、って。
 千由里の視線はそう言う。

 ─────そうだね、俺は君にまだ
 「愛してるよ」なんて言ってないもの。]


  ……本当に、本当に、愛し合ってたら、
  きっとこんな場所まで来てないよ。


[困ったみたいに眉を下げ、
 俺は宥めるような声を出す。
 そして、離婚したとかじゃなく
 本来帰るべき場所があるのを暗に認めて
 俺は千由里の髪を一筋絡めて
 甘い香りのする毛先にキスを落とした。]
(332) 2021/07/05(Mon) 4:16:21

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  家にいると、ね。
  まるで自分が透明な何かとか、
  もしくは捨て損ねちゃった粗大ゴミみたいに
  なっちゃったような気分になるんだ。
  僕はちゃんとその場にいるのに。

  辛くて、寂しくて、
  受け止めてくれる誰かが、欲しくて。


[脳裏で絵美が「何もしてないくせに」と嗤う。
 それを黙殺して、俺は顕になった
 千由里の額に唇を押し当てた。]


  ……僕は、受け止めて欲しいだけ。
  でも、それでいて更には
  ちゆの一番になりたい、なんて
  そんなの、わがままだって思ってる。


[額から瞼、頬へと徐々に口付けを下ろしていって……
 もう一度、拒まれなければ唇にキスをして。]
(333) 2021/07/05(Mon) 4:16:55

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  どうすればちゆに伝わるかな。
  ……なんていえば、伝わるかな。

  胸がドキドキしてるのも同じ、
  キスもして、ハグもして……
  それでもまだ足りないなら。


[例えば今すぐその脚を押し広げて、
 雄を捩じ込んで、その胎の奥の奥で
 埒を明け、胤を撒き散らかして
 その時やっと一言「愛してる」などと囁けば
 君はそれを鵜呑みにしてくれるのか。

 その先に、「愛」は芽吹かなかったというのに。
(334) 2021/07/05(Mon) 4:18:35

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[そうして、お風呂に行こう、と
 俺を掴んだ千由里の手を取り
 その薬指にやんわりと歯を突き立てた。]


  お風呂は、後にしようよ。


[じっと千由里の目を見つめて
 俺は小さく乞う。
 彼女の指に出来た歪な指輪の跡を
 舌先で優しく慰めながら。]


  俺は、綺麗じゃなくてもいい、
  そのままの千由里を愛したいから。

  だから、今の俺から離れないで。
  一番俺の事が好きな千由里でいて。


[そう願ってしまう俺を、
 君は卑怯者だと突き放せるのかな。]
(335) 2021/07/05(Mon) 4:20:33

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[もしそれでもお風呂に行きたいって言うなら
 別に無理強いはしない。
 (千由里じゃなくて俺が入るべきなのかもだし)

 でも、このままベッドに千由里を運ぶのを
 許してくれたら、きっと俺はうっそりと微笑んで
 「そういうとこ、好きだよ」って耳元で囁くだろう。

 そうして仰臥する千由里から
 俺が手ずから靴を脱がせて、
 顕になった爪先を口に含んで愛撫したい。
 そのままの君を愛してるって証のために。]*
(336) 2021/07/05(Mon) 4:30:26

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[言い放った卑怯な台詞も
 責められることなくすんなりと受け入れられて
 もう何度目かになる「好き」が返ってくる。

 でも言われる度に、胸の奥がムズムズして
 塩水ばかり呷らされて乾いた喉を
 瑞々しい「好き」が満たしてく。
 可愛くて、若くて、家の匂いがしない子が
 俺の事でいっぱいになっちゃう甘露が。

 華奢な体を抱き上げて
 ふわふわのベッドの上に載せると
 その上に伸し掛るように這い上がる。
 二人分の体重が掛かってもベッドは
 雲みたいに音一つ立てやしない。

 ハイヒールをひとつひとつ、
 丁寧に脱がして床へと置いて
 そうして両足とも裸足になったなら
 右の足の爪先から咥内へと招き入れた。

 小さくてキャンディみたいは爪先の爪から
 指の付け根へと舌を滑らせる。
 一日歩いた足だけど、別に臭くも汚くもない。]
(381) 2021/07/05(Mon) 21:30:58

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  汚くないって、言ったでしょ。


[足の指を離した舌を、土踏まずまで
 つう、と滑らせながら
 俺は千由里を足越しに見下ろして笑う。

 草むらの野いちごみたいな、
 野性味溢れる官能が口の中に溢れてく。
 湧き上がる愉悦を口元を緩ませて
 両足とも、千由里の足を清めていく。]
(382) 2021/07/05(Mon) 21:31:20

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[そうしたら、千由里の手が
 俺のTシャツの中に滑り込んできて、
 裸の肌に触れていく。]


  ……そうだね、俺も見せないと不公平だ。


[悪戯っぽい笑みと共に
 俺はベッドに膝立ちになったまま
 自分のシャツの裾に手をかけて
 ばさり、と放り投げる。
 週3のジム通いで、うっすら皮膚の下に
 筋肉の隆起を浮かせた肉体を露にして
 さあ、次は……って千由里に向き直った矢先。]
(384) 2021/07/05(Mon) 21:31:48

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  …………?


[不安を浮かべた目に、首を傾げていると
 千由里の腕が顕になる。
 白い腕に何度も刻まれた
 痛々しい「寂しい」の痕跡に
 俺は一瞬息を飲む。

 女の子の汚れのないまっさらな肌の上の
 消えない傷に、今しがたの淫猥な雰囲気が
 すっとなりを収め、代わりに湧いてきたのは
 
「ああ、この子もおなじなのか」って─────
(385) 2021/07/05(Mon) 21:32:16

【人】 敷島 虎牙




  ちゆ。


[小さく震える千由里に声をかけて
 傷のたくさん刻まれた方の腕を取って
 そこへもねろりと舌を這わせた。]


  あまい。
  ……アイスクリームみたい。


[にやにやと笑うでもなし、
 何か神聖な儀式みたいに
 ぷっくりと肌の上に浮いた傷の凹凸を
 味蕾の上で確かめていく。]


  自分が不確かな時って、あるよね。
  自分がここにいるのか、自信なくなっちゃって。


[そんな時、自分を受け止めてくれる人の存在が
 どれだけ愛おしいかも、俺は知ってる。]
(387) 2021/07/05(Mon) 21:33:16

【人】 敷島 虎牙




  ……でも、今ここにちゆと一緒にいる俺は
  その不安な気持ちを知っている。
  おそろい。


[傷の一つ一つを確かめ、その上にキスしても
 悲しみも苦しみも癒えやしない。
 結局、傷の舐め合い、って思うかもしれないけど]


  ちゆ、まだ傷は痛い?


[俺は千由里の目を覗き込んで尋ねる。
 傷の全てにキスをしたなら、
 改めて、千由里の頬に手を添え
 優しいキスをひとつ。]


  今は、今ここにいる俺は
  全部ちゆのものだから。
  俺の「寂しい」も、「愛おしい」も。

  だから、ちゆの「寂しい」も
  今は一旦、俺に全部頂戴。*
(388) 2021/07/05(Mon) 21:33:54

【人】 敷島 虎牙

[別に慰めでもなく、偽りでもなく
 舌を滑らせた肌は甘かった。
 ちゅ、と吸い付くと時折ほろ苦い鉄の味がして
 それがまた舌を楽しませてくれる。

 それを説明する代わりに、
 赤を肌に刻むように、強く強く吸い付いた。
 「優しい」大人の顔のまま。

 千由里の冷たい手が、火照った身体の上を滑ると
 背筋がどうしようもなく
 ぞくぞくしてたまらなくなる。]


  俺は、好きだけどね。


[弱いところを全部無防備に
 さらけ出しすこのひとときは
 まるでセックスにも似ていて]


  
……いいじゃん。



[千由里の腕をを最後にひとつ舐めて
 そう笑って見せた。]
(454) 2021/07/06(Tue) 18:35:13

【人】 敷島 虎牙



  めんどくさくて可愛くなくて
  寂しがりのどうしようもないちゆでも
  嫌いになったりしないよ。


[何度目かのキスを受け止めたら
 また何度目かの俺からのキスで返す。
 可愛くて、可哀想な俺だけのちゆ。

 もう子どもの声も、妻のため息も
 何処からもそんなの聞こえなかった。]
(455) 2021/07/06(Tue) 18:35:36