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人狼物語 三日月国


83 【R18】ラブリーナイト・りたーんず!【ペアRP】

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【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[だって、ほら。



 俺は「リカちゃんパパ」なんだから。



 一夜明ければシンデレラも家に帰るだろ?

 ならせっかくの舞踏会。

 踊り明かさなきゃ勿体ない。]
(260) 2021/07/04(Sun) 3:02:17

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[ホテルの外に出てタクシーをつかまえると
 千由里と一緒にアクアリウムへ向かう。]


  僕も久しぶりなんだ、アクアリウム。
  水族館は昔付き合ってた彼女と一緒に
  美ら海水族館行ったなぁ……
  ジンベイザメがでっかくってさ。


[道中、そんなことを話したろう。
 俺から千由里の「恋」の話も尋ねたりして。
 だってこんなところに来てまで
 「普通に幸せな恋」を求めるのって
 なんだか不思議な感じがしたからさ。

 アートアクアリウムには
 流石にジンベイザメはいなかったけれど、
 一歩薄暗い館内に足を踏み入れると
 大きな掛け軸を模した水槽の中、
 黒い琉金がゆらゆらと長い尾を揺らしていた。

 アートとアクアリウムの融合を謳うだけあって
 見た目も美しい様々な金魚たちが光を纏い
 趣向を凝らした水槽の中で泳いでいる。

 二人で手を繋いで歩いていても
 この時期に長袖の千由里に誰も振り向かない。
 周りのカップル達と同じように
 俺たちふたり、恋し合ってるように見えるのか。]
(261) 2021/07/04(Sun) 3:02:52

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙




  ちゆ、はぐれないようにね。


[腕から指先までをしっかり絡めていれば
 はぐれるわけもないのに、
 ついそんなことを言ってしまう。

 途中、上開きの水槽の中に指を入れた
 幼稚園くらいの子どもが、
 こっぴどく母親に叱られていて……
 悲しげな、子ども特有のきりきりとした泣き声が
 暗い館内に響いていた。
 それを聞けば、つい、千由里と繋いだ手に
 きゅ、っと力が入る。]


  …………ごめんね、子どもが、苦手でさ。


[他の施設よりは子どもの来場者は少ないようだが
 それでも決してゼロじゃない。
 ほの明かりに照らされた千由里の横顔に
 へにょ、と眉を下げてみせて。]
(262) 2021/07/04(Sun) 3:11:25

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  ……ずっと僕だけ見てほしい、っていうの
  やっぱり無理な話なのかなぁ。


[ぽつり、弱音を吐いてしまった。
 既婚者で、子どももいるってこと
 明言も匂わせもしたくなかったはずなのに。]


  ……ちゆは、もし、幸せな恋をして……
  その先、どうするの?

  結婚が、したい?
  それとも、子どもが欲しい?


[この子の目は、何を見すえているんだろ、って
 なんとなく聞きたいけど、聞くのが怖い。
 でもつるりと滑らせた口はそのまま
 押し込めていた疑問を吐き出してしまった。]
(263) 2021/07/04(Sun) 3:23:20

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[つい、じっと千由里の目を覗き込んで
 問い掛けてしまった。

 視界の端では、万華鏡の景色みたいに
 金魚たちの長い尾が揺れている。
 その美しさを表現するためだけの
 狭いガラスのケースに押し込められた魚は
 可哀想なのに、どうしてか魅惑的で。

 人の流れに逆らい足を止め
 俺は傍らの千由里の答えを待つ。]*
(264) 2021/07/04(Sun) 3:38:35

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[道中たくさん話しをした。

 コンビニレジ横のカフェラテ、
 何処のが好き?俺はエブリーマートかな、とか。

 近所にコーヒーのうまい喫茶店があって
 夏の間はコーヒーかき氷を出している、とか。

 年齢を聞かれたら32、って普通に答えるけど
 千由里とはほとんど干支一回り離れてるって事実は
 俺の官能を甘く刺激するだけだろう。

 ドライブばかり連れ出す彼女の元カレは
 車好きじゃないなら、きっと俺と同じ。
 誰も俺たちを知らない世界に行きたくて
 二人きりでどこまでも。

 もちろん俺は千由里を責めない。
 そうなんだ、とこくこく相槌打つだけ。]
(283) 2021/07/04(Sun) 14:09:35

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[感動したような声を出す千由里に手を引かれ
 人波を縫って歩く。
 無邪気な顔がネオンに照らし出されて
 しっかり繋いだ手を時折振り返ってくれるのが
 本当に子どもっぽいのに、全然嫌じゃない。]


  うん、可愛い。


[繋いだ手を揺らして、微笑む。
 目は金魚じゃなく、千由里に向けて。

 誰にも咎められない二人きりの世界を
 子どもの声が切り裂いていく。
 千由里が手を引いて、親子連れを追い抜いて
 そうして世界に静寂が戻った頃、
 千由里はへらりと笑って言った>>269


  ……意外。


[俺は目をちょっと見開いて、
 それから強ばった頬を少し弛めた。

 なんか子ども向けの用品店の販売員とかでも
 おかしくないかな、ってちょっと思ってたから。]
(284) 2021/07/04(Sun) 14:10:05

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[そうして、俺が吐き出した弱音を
 千由里は受け止める言葉を返してくれる。

 俺だけを見ててくれて
 俺だけを愛してくれて
 ずっと一緒でいて幸せなら、本当にいいのに。

 だから、聞いたんだ。
 その目で夢見るその先を。

 子どももなく、
 夫婦という枷もなく、
 ただお互い一緒にいるだけ。
 笑って、そんな答えを返す千由里の頬に
 俺は黙って手を添えて─────
 そっと唇を重ねた。]
(285) 2021/07/04(Sun) 14:10:33

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  ……もっと早くちゆに逢えてたら良かったのに。


[神様は本当に意地悪。

 覗き込んだ千由里の目の中には
 アクアリウムの照明に照らされた
 悪い大人の顔が写ってた。]
(286) 2021/07/04(Sun) 14:10:56

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[アクアリウムを抜けて、
 せっかくだから、と近くのカフェに立ち寄った。
 小さな店内にはコーヒーの香りがたちこめて
 口コミによると夏季限定フラッペが人気だとか。

 俺はアイスコーヒーとレモンケーキ。
 千由里には、俺が誘ったんだから、と
 好きなものを選んでもらおう。

 ─────ああ、若い子って真っ直ぐだな、とか
 感性が瑞々しくて、まるで熟れた桃みたいだ、とか
 話しながらも、徐々に俺は焦がれてく。

 ハグをして、キスして、デートまでして、
 でも今夜はそこから先が確約されてる。
 男なら、デートで一番テンションが上がる日。
 さてその長袖の下の素肌は
 どんな肌触りがするだろう……。

 想像するだけで、酸いものを頭に描いた時のように
 きゅっと歯茎の付け根が疼くよう。]
(287) 2021/07/04(Sun) 14:16:27

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  ねえ、ちゆ。


[向かい合った席に手を伸ばし
 重ねた千由里の手の甲を撫でて、尋ねる。]


  ここは、さっきよりも静かだけど……
  もっと、二人っきりになれる場所、行かない?

  君をもっと、知りたくてさ。


[色を含めた目で、それがただの
 喫茶店のハシゴじゃないのを伝えながら
 俺は千由里の意志を確認する。

 けど、ちょっとマズったかな。
 早計が過ぎたかもしれない。
 他に千由里が行きたいところがあれば
 もちろん付き合うつもりだけれど、
 果たしてなんと答えてくれるか。]*
(288) 2021/07/04(Sun) 14:26:15

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[期待の色は裏切られず、
 肯定の言葉と共に、掌をすう、と撫でられて
 思わず背筋がぞわりと逆立つ。]


  うん、もちろん。


[無邪気な問い掛け>>304に目を細め
 湧き上がる情動を鎮めるように、
 冷たいコーヒーを喉へと流し込む。

 お揃いのレモンケーキの、
 皿の端についたクリームまで
 綺麗にきちっと平らげたなら
 また手を繋ぎ合わせてホテルへと帰ろうか。

 ちょっとこのドキドキするような、
 甘いひとときが好きだ。
 タクシーに乗ってホテルまで向かう時の
 互いの期待を胸に秘めあったまま
 でも、望むものは同じ、みたいな。]
(311) 2021/07/04(Sun) 21:50:02

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[今度はちゃんと、ホテルの部屋へと足を進めると
 広々とした空間が視界の端から端へ拡がっている。
 大人二人が並んで大の字で寝ても余りあるような
 大きなベッドだけじゃなく、
 ゆったり寛げそうなリビングまである。

 生活臭からかけ離れた、上質な空間。
 つい、深呼吸しちゃう。]


  ちゆ。


[ここでキスでもしようかな、って
 思ってたんだけど……ふと思い付いて
 俺は悪戯っぽい笑みを浮かべて、言った。]


  ……ただいま。


[ここは俺たちの家であり、
 世間から逃げるように帰ってきた
 二人だけの愛の巣……っていうごっこ遊び。
 
そういやデキ婚だったから、新婚生活なんて無かったや。

 千由里をまた思い切り抱いて、
 微かにレモンの味が残る唇を吸えば
 「ああ、本当にこんな新婚だったら良かったのに」
 って、またちょっと思った。]
(312) 2021/07/04(Sun) 21:50:55

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[性急だと言われたら
 「余裕無くてごめんね」って眉を下げて謝るし
 何も言われなければ、ただただ
 相手の形を確かめるよう、千由里の背に
 回した腕で、体の輪郭をなぞっていく。
 軽いキスの雨を何度も何度も降らせながら
 目を閉じても、もう子どもの声は
 どこからも聞こえなかった。]


  ちゆは……僕の何が知りたい?


[口付けの合間に、まつ毛の隙間からじっと
 彼女の顔へと視線を向けて問う。]


  血液型?それとも星座?
  出身校とか、それとも……
  僕がどうやって、人を愛するか、とか?


[何を教えたら、彼女はよりより
 俺の方を向いて、このひとときを
 より情熱的に過ごさせてくれるだろう。

 千由里の手を、俺のTシャツの左胸に導いて
 フードの下で解れた髪を、そっと耳にかけてあげる。]
(313) 2021/07/04(Sun) 21:51:19

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙




  分かる?ドキドキしてるの。


[掌じゃ分からないなら、耳を寄せてもいい。
 それでも分からなければ、
 もっと深いキスを受けて欲しい。]
(314) 2021/07/04(Sun) 21:51:44

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[このままバスルームに二人で
 なだれ込んでもいいんだけれど、
 装わない、素のままの千由里を
 じっくり味わってもいい。

 長い口付けから彼女を解放して
 俺は唾液で絖った唇を持ち上げる。]


  ちゆ。


[「君をもっと見せて。」
 そう、唇の形だけで乞う。]*
(315) 2021/07/04(Sun) 21:52:08

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[「ただいま」って帰ってきても
 「おかえり」って言ってもらえないんだ。

 「ミックス卵やめてって言ったよね」
 「低脂肪乳じゃないやつ、ってもう忘れたの?」
 「梨花寝てるんだけど」
 「連絡遅いって毎回毎回言わせないで」

 だからそのうち、言わなくなった。
 でも、文句は変わらず増えていった。]
(331) 2021/07/05(Mon) 4:15:09

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[ドキドキしてるのは一緒だ、と
 導かれた指先に、千由里の膨らみが触れる。
 薄い皮膚の下にある骨の、そのまた奥に
 どくどくと脈打つ心臓があって、
 でもそこにはまだ触れられない。

 もっと見せて、と奥に踏み込もうとしたら
 質問で通せんぼ>>320
 千由里の指先が、指輪の跡をなぞる。

 別に好きな人がいるでしょ、って。
 それでも一番になりたい、って。
 千由里の視線はそう言う。

 ─────そうだね、俺は君にまだ
 「愛してるよ」なんて言ってないもの。]


  ……本当に、本当に、愛し合ってたら、
  きっとこんな場所まで来てないよ。


[困ったみたいに眉を下げ、
 俺は宥めるような声を出す。
 そして、離婚したとかじゃなく
 本来帰るべき場所があるのを暗に認めて
 俺は千由里の髪を一筋絡めて
 甘い香りのする毛先にキスを落とした。]
(332) 2021/07/05(Mon) 4:16:21

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  家にいると、ね。
  まるで自分が透明な何かとか、
  もしくは捨て損ねちゃった粗大ゴミみたいに
  なっちゃったような気分になるんだ。
  僕はちゃんとその場にいるのに。

  辛くて、寂しくて、
  受け止めてくれる誰かが、欲しくて。


[脳裏で絵美が「何もしてないくせに」と嗤う。
 それを黙殺して、俺は顕になった
 千由里の額に唇を押し当てた。]


  ……僕は、受け止めて欲しいだけ。
  でも、それでいて更には
  ちゆの一番になりたい、なんて
  そんなの、わがままだって思ってる。


[額から瞼、頬へと徐々に口付けを下ろしていって……
 もう一度、拒まれなければ唇にキスをして。]
(333) 2021/07/05(Mon) 4:16:55

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  どうすればちゆに伝わるかな。
  ……なんていえば、伝わるかな。

  胸がドキドキしてるのも同じ、
  キスもして、ハグもして……
  それでもまだ足りないなら。


[例えば今すぐその脚を押し広げて、
 雄を捩じ込んで、その胎の奥の奥で
 埒を明け、胤を撒き散らかして
 その時やっと一言「愛してる」などと囁けば
 君はそれを鵜呑みにしてくれるのか。

 その先に、「愛」は芽吹かなかったというのに。
(334) 2021/07/05(Mon) 4:18:35

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[そうして、お風呂に行こう、と
 俺を掴んだ千由里の手を取り
 その薬指にやんわりと歯を突き立てた。]


  お風呂は、後にしようよ。


[じっと千由里の目を見つめて
 俺は小さく乞う。
 彼女の指に出来た歪な指輪の跡を
 舌先で優しく慰めながら。]


  俺は、綺麗じゃなくてもいい、
  そのままの千由里を愛したいから。

  だから、今の俺から離れないで。
  一番俺の事が好きな千由里でいて。


[そう願ってしまう俺を、
 君は卑怯者だと突き放せるのかな。]
(335) 2021/07/05(Mon) 4:20:33

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[もしそれでもお風呂に行きたいって言うなら
 別に無理強いはしない。
 (千由里じゃなくて俺が入るべきなのかもだし)

 でも、このままベッドに千由里を運ぶのを
 許してくれたら、きっと俺はうっそりと微笑んで
 「そういうとこ、好きだよ」って耳元で囁くだろう。

 そうして仰臥する千由里から
 俺が手ずから靴を脱がせて、
 顕になった爪先を口に含んで愛撫したい。
 そのままの君を愛してるって証のために。]*
(336) 2021/07/05(Mon) 4:30:26

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[言い放った卑怯な台詞も
 責められることなくすんなりと受け入れられて
 もう何度目かになる「好き」が返ってくる。

 でも言われる度に、胸の奥がムズムズして
 塩水ばかり呷らされて乾いた喉を
 瑞々しい「好き」が満たしてく。
 可愛くて、若くて、家の匂いがしない子が
 俺の事でいっぱいになっちゃう甘露が。

 華奢な体を抱き上げて
 ふわふわのベッドの上に載せると
 その上に伸し掛るように這い上がる。
 二人分の体重が掛かってもベッドは
 雲みたいに音一つ立てやしない。

 ハイヒールをひとつひとつ、
 丁寧に脱がして床へと置いて
 そうして両足とも裸足になったなら
 右の足の爪先から咥内へと招き入れた。

 小さくてキャンディみたいは爪先の爪から
 指の付け根へと舌を滑らせる。
 一日歩いた足だけど、別に臭くも汚くもない。]
(381) 2021/07/05(Mon) 21:30:58

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  汚くないって、言ったでしょ。


[足の指を離した舌を、土踏まずまで
 つう、と滑らせながら
 俺は千由里を足越しに見下ろして笑う。

 草むらの野いちごみたいな、
 野性味溢れる官能が口の中に溢れてく。
 湧き上がる愉悦を口元を緩ませて
 両足とも、千由里の足を清めていく。]
(382) 2021/07/05(Mon) 21:31:20

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[そうしたら、千由里の手が
 俺のTシャツの中に滑り込んできて、
 裸の肌に触れていく。]


  ……そうだね、俺も見せないと不公平だ。


[悪戯っぽい笑みと共に
 俺はベッドに膝立ちになったまま
 自分のシャツの裾に手をかけて
 ばさり、と放り投げる。
 週3のジム通いで、うっすら皮膚の下に
 筋肉の隆起を浮かせた肉体を露にして
 さあ、次は……って千由里に向き直った矢先。]
(384) 2021/07/05(Mon) 21:31:48

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  …………?


[不安を浮かべた目に、首を傾げていると
 千由里の腕が顕になる。
 白い腕に何度も刻まれた
 痛々しい「寂しい」の痕跡に
 俺は一瞬息を飲む。

 女の子の汚れのないまっさらな肌の上の
 消えない傷に、今しがたの淫猥な雰囲気が
 すっとなりを収め、代わりに湧いてきたのは
 
「ああ、この子もおなじなのか」って─────
(385) 2021/07/05(Mon) 21:32:16

【人】 敷島 虎牙




  ちゆ。


[小さく震える千由里に声をかけて
 傷のたくさん刻まれた方の腕を取って
 そこへもねろりと舌を這わせた。]


  あまい。
  ……アイスクリームみたい。


[にやにやと笑うでもなし、
 何か神聖な儀式みたいに
 ぷっくりと肌の上に浮いた傷の凹凸を
 味蕾の上で確かめていく。]


  自分が不確かな時って、あるよね。
  自分がここにいるのか、自信なくなっちゃって。


[そんな時、自分を受け止めてくれる人の存在が
 どれだけ愛おしいかも、俺は知ってる。]
(387) 2021/07/05(Mon) 21:33:16

【人】 敷島 虎牙




  ……でも、今ここにちゆと一緒にいる俺は
  その不安な気持ちを知っている。
  おそろい。


[傷の一つ一つを確かめ、その上にキスしても
 悲しみも苦しみも癒えやしない。
 結局、傷の舐め合い、って思うかもしれないけど]


  ちゆ、まだ傷は痛い?


[俺は千由里の目を覗き込んで尋ねる。
 傷の全てにキスをしたなら、
 改めて、千由里の頬に手を添え
 優しいキスをひとつ。]


  今は、今ここにいる俺は
  全部ちゆのものだから。
  俺の「寂しい」も、「愛おしい」も。

  だから、ちゆの「寂しい」も
  今は一旦、俺に全部頂戴。*
(388) 2021/07/05(Mon) 21:33:54

【人】 敷島 虎牙

[別に慰めでもなく、偽りでもなく
 舌を滑らせた肌は甘かった。
 ちゅ、と吸い付くと時折ほろ苦い鉄の味がして
 それがまた舌を楽しませてくれる。

 それを説明する代わりに、
 赤を肌に刻むように、強く強く吸い付いた。
 「優しい」大人の顔のまま。

 千由里の冷たい手が、火照った身体の上を滑ると
 背筋がどうしようもなく
 ぞくぞくしてたまらなくなる。]


  俺は、好きだけどね。


[弱いところを全部無防備に
 さらけ出しすこのひとときは
 まるでセックスにも似ていて]


  
……いいじゃん。



[千由里の腕をを最後にひとつ舐めて
 そう笑って見せた。]
(454) 2021/07/06(Tue) 18:35:13

【人】 敷島 虎牙



  めんどくさくて可愛くなくて
  寂しがりのどうしようもないちゆでも
  嫌いになったりしないよ。


[何度目かのキスを受け止めたら
 また何度目かの俺からのキスで返す。
 可愛くて、可哀想な俺だけのちゆ。

 もう子どもの声も、妻のため息も
 何処からもそんなの聞こえなかった。]
(455) 2021/07/06(Tue) 18:35:36