167 【R18G】海辺のフチラータ【身内】
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違う結末を迎えられた/られるのだろうか。"俺達"は。
その日、被害者は深夜に部屋を出た。
勤務先であるナイト・バー『Pollo Nero』の従業員によれば、午前二時を回ったころ。
ひとりで、鞄は持っていなかった。
最近"喧嘩"によって骨折したということで、右腕はサポーターによって固定したままだった。
証言によれば、最近は護身用に小型拳銃を携帯していたという。(資料A:死体の体内で発見された拳銃。被害者の指紋が検出されている)
聞き込みによれば、彼女は最近同居していた少年(関係性は不明)が何者かによって殺害されたことで精神的に不安定になっていたという。
伝手を頼って後ろ暗い人間たちと接触し、何らかの情報を集めていたようだ。
四年前から性風俗に関わっていた彼女だが、元は北部の小麦農家の娘として生まれ、それなりに裕福に育ったという。
だが十六歳の頃、実家が犯罪組織の抗争に巻き込まれ、家族と実家を失った。
自らの家族を殺めたマフィアのボスに気に入られ、そこで情婦として暮らすこと2年。
そのマフィアもまた、抗争の中で命を落としたという。
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(従業員の証言)
プライド持ってやってる〜、って感じで……
仕事だから、ってめちゃくちゃ真面目でしたよ。
営業もするし、ちゃんとお化粧とか運動、食事にも気を使って…
あ、けど、自分は娼婦しかできないんだ、ってよくヘラってました。
ほんとはやりたくないって。……私たちの前でそんなこというと、私らのテンション下がるから、めったに言わなかったですけどね。
あの人、疲れてると素直になるんです。
最近は、とくに。ずっと。
…。
あの、見つかったら教えてくださいね。
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本名:ビアンカ・ロッカ(Bianca Rocca)
死因:特定困難 負傷、出血によるものと推定
発見場所・遺体の様子:
午前三時十四分頃、被害者と思しき女性が海岸公園へと向かう姿を通行人が目撃。
午前三時十六分頃、近隣住民が車が急発進する音と、女性の悲鳴、衝突音を聞く。
午前三時十九分頃、海岸公園から走り去るワンボックスカーが複数の監視カメラに映る。
午前七時十五分頃。
町人からの通報により、集合住宅のゴミ捨て場に遺棄された女性の下半身を発見。
衣類は無し。暴行を受けた形跡あり。
一緒に捨てられていた携行品、および残されていたメッセージ(被害者が所属していたマフィアのファミリーが性風俗で資金を稼いでいたこと、および同被害者を著しく侮辱するもの)から、同被害者であると推定されている。
上半身はいまだ発見されておらず、捜査中。
幾人もの血を吸ったその靴で地面を蹴る。
男に纏った匂いは、シガレットか硝煙かわかったもんじゃない。
いつも一人、男は誰も連れない。
一番近い部下ですら、最後まで真に信じて居たかもわからない。
店に入るのが三人でも、出てくるときはいつも一人だ。
徹底していた、見せる姿を作っていた。
酷く甘い香りしかこの舌は受入れなかったが、
味のしない料理も砂を噛むよりはよっぽどましだった。
酷く心を病んだのはいつからだったか、もう覚えていない。
男は一つの窓を持っていた、それはパンドラの箱だった。
その窓の向こうには汚職にまみれた世界、
裏切りが裏切りを呼ぶ裏の社会、娼婦にならず者、
孤児達は恵まれない生活で媚びなければいけない生活が広がっていて、本当に全てが見渡せた。
「家族の邪魔になる者は排除しなければならないよなあ?」
ふと目についた『家族』を見逃して要らない命を絶っていく。
それが"楽"になれた。手が震える度にネズミを殺めて収めた。
巫山戯ていると思うだろ?魂を囚われていたかのようだったよ。
勿論、俺は正義なんてうたわない。
正義で人が救えるのなら、目の前で飯も食えないでくたばったロクデナシはいないのだから。
『どうしてこんなことをするのか?
俺がしたいから
だよ』
『冥土に土産に子守歌を歌ってやろうか、なあに。
巫山戯てるわけじゃあない。これも愛情だよ。
俺に魅せてくれてどうもありがとう。
この歌を聞けるのは特別だぞ?』
この歌を覚えて生きている人間なんて、
『一人』居るかいないかだからな。
本名:ヴェネリオ・フィルマーニ(Venerio Firmani)
死因:銃殺。背部に多数の銃弾を受けたことによる失血死。
発見場所・遺体の様子:
町中で起きた乱闘による銃撃戦に巻き込まれ死亡。
乳母車をかばっているような姿で発見される。
背中を何発も撃たれたことにより出血多量、
事前に連絡をしていた病院に運ばれて間もなく息を引き取った。
怪我人は、アルバとノッテ共に多数の被害が出たそうだ。
本名:リカルド(Ricardo)
※孤児のため姓はなし。名前は変えきれなかった。
死因:自動拳銃による射殺、頭部を狙ったもの
発見場所:とあるクラブのVIPルーム
遺体の様子:
服は乱され、体内に性行為の痕跡を残している。
VIPルームでの性行為のあとにその相手or第三者に撃たれて死んだように見えるだろう。
司法解剖などを行えば、消化管からセックスドラッグが使用されているのを確認できる。
また、手には拳銃が握られており、握った手元に硝煙反応が確認された。
その拳銃は、リカルドの密輸業者で流通しているものであり、
マウロを撃ち抜いたとされる弾とこの拳銃の線条痕は一致するようだ。
この時はまだ、ラウラや上司まで同じ日に死亡するなんて、知らなかったんだ。
本名:ラウラ・リベラトーレ(Laura・Liberatore)
※偽りなし。
死因:大腿部の銃創による失血死
(右目の銃創は死後に残されたものと見られている)
発見場所・遺体の様子:
路地裏にて。意図は不明だが、目立たぬ場所に隠されていたようだ。
衣服等に乱れはなく、抵抗の痕も見られない。
腕には
血に濡れた
ショルダーバッグが抱えられており、その中にはハンカチに包まれた写真立てのみが残されていた。
【ヴェネリオの部屋】
戸を開けて見えたのは、がらんとした冷めた家具の色。
何度か人の立ち入りが伺えるその部屋では、ポットとドリッパー、甘い香りが客を出迎える。
クローゼットの中身も二枚のコートに並んだスーツ。几帳面にしわは伸ばされていて埃取りの予備のストックが連なって床に並んでいた。
棚の上にはまだ飾られて新しいカランコエの鉢植えが。主がいないその部屋で、もうすでに乾いた土が転がっている。
他にも電源がつくことなく中身も削除されたパソコン、あからさまに棚から抜かれていった書籍の穴。
死者は何も語らず、語りもしなかった。
『その身なりのままだとファミリーで浮きすぎる。
狙われてる身であると同時に人が減ってるんだ、
郷に入っては郷に従えよ兄弟』
結局そのスーツをこしらえたのはその故人だった。
一張羅は高級ブランドの箱に入って机の上に鎮座している。
なぜかその箱の中には港の五番倉庫の地下にある秘密裏に設置された医療施設の詳細が書いてある文書があるのだが、一体なんの意図かは読み取れないかもしれない。ただ部下からもらってしまった、使う機会のなくなった遺留品を入れておいたのだ。
『孤児院の引き継ぎはフィオレロとマウロにでもやりたかったんだ。
あいつらなら向いてるだろ?
子供に情を持たないで、最後まで駒として扱って管理できる人間。
しかもまめに、丁寧にだ。惜しいやつらを持ってかれた』
『リックはだめだ、きっと早くに俺が地獄につれてく。
余所に捨てようとしたら離れなかったのは誤算だった、お前みたいにな』
テンゴの背丈に合わせられたスーツは気味が悪いほどにフィットし、靴まで添えられているかとおもえば店の名刺まである。
こうして小言が聞こえてきそうな余計なお節介を遺して、この男は友のもとから去っていったのだ。
| (a15) 2022/08/21(Sun) 19:48:59 |
| ツィオは、いつかその"恐れ"が、己を孤独に追い込むことを知っている。 (a16) 2022/08/21(Sun) 19:50:44 |
俺たちが集まったのには、どうやら理由があったらしい。――そう理解した。
| 【会議後のアジト廊下】 「――マーウロくん」 アジトの廊下を、苦しそうに胸部を押さえたまま 肩を怒らせて歩く貴方の前に、道を塞ぐように現れる。 リカルドの隠れ家 「俺の"監禁場所"から突然居なくなったと思ったらさ、 そんな身体でどうしようっていうのかな。 ――聞かせてほしいなぁ、是非。なあ、子猫ちゃん」 まるで挑発するように、 居なくなった誰かのことなど、 マウロの状況や組織の状態など気にも留めていないように、 負傷をしたマウロに、無傷の男が尋ねる。 (5) 2022/08/21(Sun) 21:31:20 |
| 【アジト廊下】 >>6 マウロ 「昨日まで、食事も一人で取れなかったやつが、 よく吠えるなあって印象しかないよ。 そんな奴には閉じ込めておくために 鍵も必要ないと思ってたんだけど、 ――ごめんごめん、舐めすぎてたね」 顔色が、どんどん悪くなる相手に。 ――へらへらと近づいていく。 その、重体患者の胸倉を掴んで――。 ――ドンッ、と、壁に押し付けた。 薄く笑った笑顔のまま、瞳だけが、笑っていない。 「――死にたいのか。 ・・・・ ……もう一度」 絞り出したような声は。 壁に押し付けた方が、痛みを堪えるようで――。 ギリ、と、その襟首を掴む両手に力が籠る。 (7) 2022/08/21(Sun) 22:02:09 |
| 【アジト廊下】 >>8 マウロ ――激情が、迸る。 それは、堪えていたものだったのかもしれない。 安 堵 絶 望 執 着 マウロの生存に、リカルドの死に――そしてラウラの死に。 蓋をしていたはずの、機構としての自分の箍が外れた音がした。 グ、と壁に押し付けたまま、 掴んだ襟首を引き寄せるように顔を覗き込む。 胸板で跳ねたマウロの血が、右の瞼の上から涙のように伝った。 「――それは、死にぞこないの猫一匹が、 血反吐吐いて前に進めば、どうにかなることか――?」 そして贖罪も、諦観もままならないまま。 また俺は、ここで、何かを失うことを。 ――"知っていながら"、"見過ごせ"っていうのか。 全部。……全部。 俺が壊したような、ものなのに――。 だからこれは。本当に、八つ当たりだ。 何の、正当性もない。裏切り者の悲鳴だ。 ▽ (9) 2022/08/22(Mon) 0:41:53 |
| 【アジト廊下】 >>8 マウロ リック ラウラ ――それでも。 自分が、リカルドの腕を掴んで言えなかったことが。 あの日、ラウラの身体を抱きしめて言えなかったことが。 喉の奥から、溢れることを、堪えきれなかった。 ・・ ・・・・・・・・・ 「俺を――独りにしないでくれ」 血を吐くように。痛みを伴いながら。 その一回だけ自分に許した弱音を、 血塗れの幼馴染に、吐き零した。 ――息を、吸い、吐く。 整える。ツィオという名前の青年を。 「――考えてみなよ、一人より、二人だろう。 もう、リックは居ないんだ。無茶をするっていうんなら。 俺にも、一枚嚙ませてくれよ、ここから先、何かするなら」 きっとその方が。 あいつは、自分が死んだことを後悔するだろうから。 (10) 2022/08/22(Mon) 0:43:41 |
| 【アジト廊下】 >>11 幼馴染 両手が。力を失う。俯いた額が、マウロの胸に落ちた。 あの時、これくらいの聞き分けの良さが自分にあれば。 ――お前たちを、自分の沈む深い深い闇に 引きずり込むことはなかったかもしれないと思うと。 喉奥から笑いが出た。 その笑いのまま、体を少しだけ離して、 俯いたまま言う。 「……テンゴさんの言うとおり、 確たる証拠のないうちに表立って暴れるわけにはいかない。 だったら、その証拠さえ掴んでしまえば、 死にぞこない二人でも大きな花火が打ち上げられる。 ――そうだろ、子猫ちゃん」 道の先に進み、振り返りながら両手を広げた。 聞こえる。声が聞こえる。――世界で何が起きているかが。 耳を塞いでも、何をしていても、聞こえてくる。 「ベイビーシッターに、後悔させてやろうよ。 酷い夜泣きを――天まで届ける"悪ふざけ"でさ」 あの頃の悪童の顔で、悪童に対して提案した。 (12) 2022/08/22(Mon) 12:44:34 |
【
冥府下り
】
たった一人の葬列はその日も暗く静かな道を行く。
それと共にあるものと言えば、死者ばかり。
この数日で、街には随分と雑音ばかりが増えてしまった。
思えば、鼓膜を揺らさないその音を聞くようになったのはいつからだったか。
怪我で盲いた片目は在り得ざるものを見るようになった。
死に損ないは、いつだって生者と死者の境界線に居る。
「───全ては都合の良い幻覚だ」
虚ろな死者の残響は、誰にその存在を証明できもしない。
「少なくとも、俺以外にとってはそうなんだよ
事実として、あんた達はもうそこには居ないんだから」
「そうでなきゃあならないんだ」
だから仮にそれが真実であったとしても、
それはいい加減な与太話が偶々真実を言い当てただけの事。
「だから誰に何を聞いたかなんてのは、誰に言えもしないのさ……」
【路地裏】
「……なんだ、あんたまだ居たのか。
さっさと何処へなりと行っちまえば良いのに」
「未練があるのは、どっちなんだか」
| (a50) 2022/08/23(Tue) 20:09:05 |
| (a51) 2022/08/23(Tue) 20:22:46 |
| ツィオは、死ぬ前に、キスぐらいはしてやろうと思う。 (a52) 2022/08/23(Tue) 20:26:20 |
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