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人狼物語 三日月国


181 忘却の前奏曲、消失の1ページ

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【人】 朝日元親



  (……うそ、だ。そんなわけ……。)


(30) 2022/10/26(Wed) 19:40:03

【人】 朝日元親



[ 何も知らないまま産み落とされた赤子のように
  右も左も分からないという恐怖心に
  頭がクラクラと悲鳴をあげてしまう。

  それでも落ち着いていられたのは
  ボクと同じくらい真剣な表情で
  この事態を受け止めている人がいたから。>>24


   あの…先生…

   ボクの記憶って…
   それに、ボクの父さんと母さんは…


[ ボクの質問に先生が首を横に振る。
  ボクの記憶が戻る確証はなく、
  地道に治療を続けていくしかないらしい。

          そして真にボクの心を抉ったのは
          両親がここにいない理由だった。


  
(31) 2022/10/26(Wed) 19:41:23

【人】 朝日元親



[ 先生がボクと彼女の前で口を開く。
  彼女の前で言っていいのかと躊躇う先生に
  構いませんと言い切ったからだ。


  ボクの父さんも母さんも>>0:106
  違う場所でそれぞれ家庭を築いている。

  中学生の頃までは親戚のお婆さんが
  親の代わりになってくれていたけど、

  そのお婆さんもボクが高校に上がる頃には
  既に施設に入ってしまっていて。

  今は元両親から養育費だけが>>0:107
  毎月振り込まれている。


  それがボク、朝日元親の現状なんだと。
  緊急連絡先に登録された母さんの携帯に繋げて
  先生が全て母さんに確認してくれたらしい。]



(32) 2022/10/26(Wed) 19:43:17

【人】 朝日元親



[ ボクがこんな目に遭っているのに
  それらしい人が誰も来ない理由が分かる。


      でも、涙は見せなかった。
      見せるほど、悲しくも感じなかったから。]**



(33) 2022/10/26(Wed) 19:45:00

【人】 朝日元親


***

[ 心の整理がつかないことを察してなのか。
  先生が病室から出ると、彼女と二人きりになって。
  すると、彼女がさっきのボクの質問に答えてくれる。]


   ハツナ、さん…?


[ 確かめるように名前を呼んでみて。>>25
  必死に記憶の中を探ってみても、心当たりがない。
  ハツナさん、と名前を呼んだのは
  ボクが以前そう呼んでいたと聞かされたから。


  でも、ボクの手を握る彼女の言葉に
  ボクは首を横に振る。>>26

  予想だにしなくて当然驚いたけど
  疑うよりも先に、哀しかったんだ。]


(34) 2022/10/26(Wed) 19:45:58

【人】 朝日元親




   ………ごめん。



[ 彼女の微かな望みを断ち切るように
  ボクはまた、首を横に振る。>>27

  もし彼女の話が本当だとしても
  今のボクに彼女の特別である資格が
  あるなんて到底思えなかった。
]*

  
(35) 2022/10/26(Wed) 19:49:00

【人】 朝日元親



[ 今ここに両親が居ないことが
  悲しいことだなんて思わない。

  自分が闇の奥深くに落とされて
  手を差し伸べない親なんているだろうか?
  考えたらたとえボクにだって答えが分かる。

  ボクには、はじめから親なんて居ないんだ、と。]


(51) 2022/10/27(Thu) 4:08:09

【人】 朝日元親



   え?あ、う、うん…大丈夫だよ。


[ そんなわけがない。誰だって分かるのに。>>36
  反射的についそう答えてしまうのは
  ボクが彼女という人を知らなすぎるせいだ。

  信用はしてる。でも信頼は……。


  ボクの記憶が戻らないと困るのは
  どうやら彼女も同じみたいだったけど。>>37

  太陽が枯れ、死んでいく姿に>>38
  ボクはひどく冷静な頭で、言葉を被せた。]

(52) 2022/10/27(Thu) 4:08:54

【人】 朝日元親



   ………ボクの肉親は、その程度ってことだよ。



(53) 2022/10/27(Thu) 4:09:35

【人】 朝日元親



[ 家族だった人達を信頼出来ずに
  蔑み続けた結果、自己嫌悪に苛まれる。

  奇しくも記憶を無くす前と同じ道を辿って
  同じ台詞を吐いていたことにボクは気づけずに。


  でも言葉を被せたボクの傍らで
  キミはボク以上に怒り、哀しんでいたから。>>39
  ボクは思わず目を丸くしてしまうんだ。]


(54) 2022/10/27(Thu) 4:10:06

【人】 朝日元親


***

[ ボクは以前彼女のことを名前で呼んでいたらしい。
  しかも呼び捨てで。なんと仲睦まじいのだろう。
  自分のこととは到底思えない。

  疑うわけじゃないけど
  まだ彼女を完全に信頼出来るわけじゃないから。
  彼女の言うことを信じたくても、まだ踏み込めない。



   うん……ごめんね。


[ 気を遣わせてしまったことにも
  すぐに彼女の期待に応えられないことにも。
  どこか無理をしているようにも感じる
  その笑顔にボクは心が痛くなってしまった。>>41


(55) 2022/10/27(Thu) 4:12:44

【人】 朝日元親



[ 途端、ボクの自己嫌悪を食い止めるように
  彼女の口から事の顛末を語られる。

  交通事故があった時のこと。>>43
  彼女の言うことが本当のことなら
  ボクも…こんなボクでも、誰かを守れたんだって。

  少しだけ、安心することが出来たから。
  ボクは謝る彼女に向かって、小さく微笑み。]


(56) 2022/10/27(Thu) 4:16:27

【人】 朝日元親



    貴女に、怪我がなくてよかった。


(57) 2022/10/27(Thu) 4:16:47

【人】 朝日元親



[ 記憶を無くす前の自分の言いそうなことを
  彼女へと告げる。

  きっとボクなら、そう言うはずだ。

  でも彼女は未だ崩れてしまいそうな
  不安定に揺蕩う笑顔のまま。>>44
  秘めた決意だけで、突き動かされていた。

  とはいえそれも全てボクの感想でしかない。
  何を決意し、何を望んでいるのか。>>45

  今のボクには推し量ることしかできない。]


(58) 2022/10/27(Thu) 4:17:28

【人】 朝日元親



  ごめん、ボクが言っても説得力、ないよね。


[ 口をついて出てしまって数秒。
  ボクは困ったように笑う彼女に、頭を下げた。]

(59) 2022/10/27(Thu) 4:20:31

【人】 朝日元親



[ 謝罪を終えて頭を上げると
  彼女から今後のことの話をされた。
  話題を逸らしたかったなんて
  そんな意図にも気づかないまま。


  ボクはと言えば思わず唸ってしまう。
  何から何まで彼女に手伝わせるわけにはいかないのに
  先生の話からして、ボクに頼れる大人はいない。

  しかも当のボク本人はこのザマだったんだから、
  たとえ信頼しきれなくても、頼るしかなかった。]


(60) 2022/10/27(Thu) 4:36:23

【人】 朝日元親



   なにもそこまでしなくても…


[ けど分かっていながらそう答えてしまうのは
  ボクにとっては彼女は身内ではなかったから。
  特別な人以外には当然の遠慮があった。>>50

  いくら彼女がボクに負い目を感じていても
  たとえ心優しい子だったとしても
  つけ込むような真似はしちゃいけない。]


(61) 2022/10/27(Thu) 4:36:55

【人】 朝日元親



[ でもそれ自体がボクの思い違いで
  彼女のことを誤解し、見くびった証拠だと
  ボクはすぐに思い知ることになったんだ。]



(62) 2022/10/27(Thu) 4:37:41

【人】 朝日元親



[ ボクが優しいだけだったのか。>>66
  彼女にそうさせるだけの気持ちがあったのか。

  答えが分からなかったとして
  腐っても自分のことなら、想像くらいはできる。
  ボクが彼女の言葉に疑問を持っていることは
  彼女になら伝わってしまうかもしれない。

  ボクが優しいはずないし
  貴女にそうさせる魅力があっただけではと。

  記憶がなくとも思考の癖は変わらない。]


(88) 2022/10/28(Fri) 22:37:10

【人】 朝日元親



[ そう、ボクという人間は変わらない。
  だから知らずのうちに過去を掘り返して
  彼女の心に枷を嵌める。>>68>>69

  彼女が誰よりも強くて脆いことすら忘れて。>>70



   そう、なんだ。
   どういたしまして…でいいのかな?


[ 自分のことだというのにまるで他人事だ。>>71
  そんな態度だから、彼女の心に影を落とすのか。>>72


  この実感の無さが、今は心苦しい。
  彼女の張り裂けそうな笑顔に>>73
  見合う人間なら、こんな事考えなくて済むのに。]


(89) 2022/10/28(Fri) 22:38:05

【人】 朝日元親



[ それでも今は、社会的弱者のボクは
  彼女にすがりつくしかなくて。>>74


   あ、うん、その…ありがとう…。


[ どこまでも優しい彼女の言葉に甘えるように。
  ボクは彼女に頭を下げる。
  時に距離を感じさせかねない
  親しき仲を通り越した、礼儀だった。



(90) 2022/10/28(Fri) 22:39:30

【人】 朝日元親



[ 彼女の声は届かないまま。>>79

  病室に一人になったボクは
  彼女が残してくれたメモ書きよりも先に
  自分の携帯を開いて、連絡帳を見た。

  一応頼らせてもらう立場上、
  彼女の連絡先も登録しておく必要があったから。]


(91) 2022/10/28(Fri) 22:40:43

【人】 朝日元親



[ ほとんど登録されてない連絡帳は
  たった1ページに収まっている。

  友人と思しき連絡先もなければ
  グループチャットなんてひとつも入っていない。

  登録されていた数少ない連絡先は
  『元母親』という冷たい名前と、もうひとつだけ。]



(92) 2022/10/28(Fri) 22:41:07

【人】 朝日元親



[ 緊張の糸が切れて、ボクは現実から目を瞑る。
  彼女がここに来てくれた時には>>84>>85
  意識を手放して眠ってしまっていた。

  そうして目覚めた時に
  ボクは初めて彼女の見舞い品を目にして
  手に取り、俯く。
  チョコボールなんていうお菓子は
  本来は見舞い品には相応しくないはずだから。

  彼女がもしそこに居たとしても
  この見舞い品のことは今は聞けないだろう。

  明らかに不相応な見舞い品には
  絶対になにか意味があるはずで、
  それが分からないことに、もやっとしてしまう。



(93) 2022/10/28(Fri) 22:44:13

【人】 朝日元親



[ 知らないという恐怖を乗せたチョコボールを
  ボクは口に放り込む。

  彼女がいたら、一緒に食べようと差し出すけど
  もし彼女がいなかったら。
  ボクは静かに涙を流すことになるのだろう。
]**


(94) 2022/10/28(Fri) 22:45:03

【人】 朝日元親


***

[ 疑念が確信に変わった。
  けれどボクに何ができるかと言われれば
  何も変わらない。

  画面に残る無数の着信履歴を眺めながら
  空白の時間に思いを馳せるだけ。
  片方は『元母親』で、もう片方は知らない番号。
  調べてみると高校の事務室の番号だった。


  何十回にも及ぶ着信を無視し続けたけど
  要件なんてどうせ分かりきっている。]


(95) 2022/10/28(Fri) 22:45:47

【人】 朝日元親



[ 学校はどういう場所か、ボクは知らない。
  けどあの連絡帳を見てしまうと
  どうしても学校に行きたいなんて
  そんな感情は湧いて来そうにない。

  ボクのことが学校に広まっているとは
  知りもしなかったけれど。

  本能的に、行ってはいけない気がしたんだ。]



(96) 2022/10/28(Fri) 22:46:33

【人】 朝日元親



[ そんなボクが学校のことに触れるのは
  彼女がボクに逢いに来てくれた時だけだ。
  けれど板書が綺麗なノートも、プリントも
  もらう度にボクは苦い顔をして言う。]


   いつもありがとう
   でももう、ノートもプリントも無くて大丈夫。

   貴女のことも思い出せないのに
   そんな事に、労力は割きたくないんだ。


[ ボクのためと思ってくれているのは嬉しいし
  それが迷惑だなんて思っていないけど。

  ボクには、強い負い目があったから。]


(97) 2022/10/28(Fri) 22:47:19

【人】 朝日元親



  ねぇ、ハツナさん。

  ボクは…学校ではどんな人だったの?


(98) 2022/10/28(Fri) 22:47:36

【人】 朝日元親



[ 話題をボクが本当に必要な方へ逸らす。
  きっとボクを誰よりも知っているのは
  他でもない彼女のはずだから。

  彼女から聞けばなにか思い出せるだろうかと
  そんな期待を胸に、ボクは尋ねてみたんだ。]*
   

(99) 2022/10/28(Fri) 22:47:56
 




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