45 【R18】雲を泳ぐラッコ
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| あら、 もう弾ける様になったの。 [可愛い妹の、嬉しい嬉しいお誘い。 >>2:0「やっと」を「もう」に変えて笑う。 嬉しそうな笑顔と、ついていく軽い足取りが私の返事。 何度もピアノのある部屋へ入っていく様を見掛けていたし、懸けている時間の多さも知っていた。 頑張ってるのねって日々気にかけていたら、 達成迄の時間は短く感じられた。 招かれた部屋にお行儀よく座って、 よく聴こえる様に髪をふわりと耳に掛けた。 視覚でも彼女の音色を捉えようと、 じっと、瞬きの回数すら自然に減って見つめた] (10) 2020/10/05(Mon) 21:13:20 |
| [曲を聴いていられる時間も──短く感じられた。 彼女のつくりだす音 >>2:1が揺さぶるのは、 鼓膜だけではない。 この胸に、皮膚に、脳髄に入り込んで、 ふわふわと肌を粟立て、 じわじわと目尻を湿らせ、 どくどくと心臓を打ち鳴らす。 私の意思を越えて私の身体を変えてしまうのに、 心地良く夢を見ている気分── 見つめていた筈なのに、 いつの間にか視界は閉じてしまっていた様だ] ……あぁ、 メグ [曲が終わっても、曲に浸っていた。 人間の言葉を発した彼女の、その声すら曲の一部の様にうっとりと聴いた後、用意されていた椅子から立ち上がって、ふわりと彼女に手を伸ばした。 返事のかわりに、抱き締めようとしたんだったと思うけれど、 それは届いたんだったか、どうだったか。*] (11) 2020/10/05(Mon) 21:13:26 |
| [またある日は、私が怪我をした様だ。 彼女が声を掛けてきて >>2:34、視線を落とした先で、私が腕を押さえていた。言われてから気付く程度を越えて血が出ていたのに、おかしいわね、って笑った] メグ……優しい子。 [それは無垢なおまじないだった。 "私"は「子供じゃないんだから」って笑うところだったかもしれないけれど、私は彼女に崇拝のまなざしを向けた] いたいと かなしい おちゃも おいしくない …… [オウムよりも抑揚のない声で繰り返して、 ゆっくり、彼女が手を振った空を見上げる。 眩しい青色に無垢な白が泳いで、それがまた少しずつ小さくなって、次に見た青の色は、先程よりも優しく視界を満たした] そうね……… (17) 2020/10/05(Mon) 22:17:11 |
|
私のいたいの きっととんでいくわ。
だから、
[血に濡れた腕を押さえて、 おまじないをしてくれる彼女に向き合う。 顔は穏やかに微笑んでいるのに、 腕からは血が止まらなくて、指先を伝って草を染めてゆく]
だか、ら………
[口が動かなくなって、 言いたい事を押し込んでしまう。
彼女に不審に思われるのが先だっただろうか。 なんでもないわって、本当になんでもない様に笑って、私はちょっとばたばたと、お屋敷ではない方へ駆けていった。*]
(18) 2020/10/05(Mon) 22:17:16 |
[幸いなことに、図書室はあれからも
私たちを繋いでくれた。
友君の文字をなぞる。
本当、映画みたい。
2020年とんでもないなって、
改めて思う。
今の状況だって十分映画みたいだけど。]
[続く優しい言葉を、何度も読み返す。]
……ありがとう
[ぽつん、と落とした言葉は届かない。
他にももっと言葉があるはずなのに、
どれだけ友君の言葉が沁みてるか、
声が、表情が届けば、もっと伝えられるはずなのに。
私にできることは、ただ友君の言葉を指でなぞるだけで。
友君の文字がかすれなくたって、
滲んだ視界では見えにくかった。]
[私は友君に何でも話した。
チアの魅力、息がぴったり合って、
会場の観客と一緒に演技を作り上げていく達成感。
だけど、去年は銅賞になってしまったこと。
リベンジしたくて必死に練習したのに、
すべてのイベントが消えてしまって。]
[空気を乱さないか、興ざめじゃないか、
そう怯えて飲み込んでいた柔らかい心も、
友君なら受け入れてくれる気がして、
優しさに甘えて、話してしまう。
だけど、どれだけ心を寄せても、
私たちの距離は遠い。]*
……とも、くん
[友君の影が、私に近づく。手が伸ばされて、耳を撫でた。
耳にかけてくれた髪は、一本だって動かない。
いくら筋肉をつけたって、輪郭までは女のままだ。
その丸い胸と腰を、友君がなぞる。]
[友君の声も、顔も見えないのに、
気遣うような声が、表情を、感じる気がした。
嫌じゃなかった。
ただ、なんの感覚も無い愛撫が悲しかった。]
……ふ、
[影に口づけられると、じんと唇が痺れた。
無いはずの感触に戸惑って、
ほんの少しの期待を込めて友君を見上げる。
だけど、鼻先に指先をかざされると、
触れられなくても痒くなることを思い出して、
そうだよね、これ以上の奇跡は起きないよね……
なんて、すぐに落胆した。
友君はそうやって甘い痺れをもたらして、
私の緊張をほぐしていく。
だけどやっぱり足りない、
友君に触れたい。
友君に触れてほしい。]
[私は友君の手を取る。
その手は、空を掴む。
そのまま、カーディガンのボタンに導いた。
ハート形の可愛いボタンを、
私の、
友君の
指が、
一つずつ外していく。]
……ともくん、見て。
私をもっと、みて。
[衣擦れの音が図書室に響く。
私の影は、布の厚み分、小さくなった。
友君に知ってほしい。
早鐘のように鳴る鼓動も、
乱れた息遣いも、
夕焼けの色に染まった頬も、
何一つ触れられなくたって。
そのほんの欠片だけでも伝えたくて、
友君の手を、裸の心に導いた。]
[窓から吹き込む強い風が、カーテンを引いた。
風は、ヒュー、ヒュー、と
音を立てて吹いていました。
うっすらと開いた隙間から、月光が矢のように刺さる。
いつのまにか、満月が近い。
月明かりに照らされた私たちは、
確かに繋がっていた。]**
[あはは、ごめんね。
お客さんに上の子見てもらうために頑張ってたのに。
ちょっとすねすねモードはいってた。
そんなことを、返事に書こうかな。]
[どんなに見つめても、影は影。
うすぼんやりとした黒い輪郭が
目の前で揺らいでいるだけ。
触れたはずの唇が空を切って
微かな空気の揺らぎだけが
すう、と湿った唇を撫でた。
唇を離すと、影の手が俺の手を取り
心臓の辺りへと導いてくれた。
どく、どく、と脈打つ肉の感触もなく
俺の手はきっと、菜月の心に触れている。
脆くて危うい其処はきっと、
乱暴に暴けば傷が付いてしまう。
けれど、それを躊躇う程度には
柔らかくて、綺麗な形をしているのだろう。]
[俺は、ぐっと空を掻いて
菜月の柔らかい部分に触れようとした。
けれど、それはやっぱり虚空のまま。
触れていたら伝えられたんだろうか。
ありったけの「好き」の気持ちを
菜月の中に撒き散らして……
そこから奇跡でも芽吹いてくれていたろうか。]
| ― 彼の人の旅立ちの日のあと ― [私は、庭で彼女に手招きをした。 おいでおいで、と猫なで声で彼女を誘って、 彼女が来たらその場に座って 「膝枕をしてあげる」と上目に笑った] いいこ、いいこね、メグ。 [優しく髪をふわふわと撫でながら、 思い切り甘やかす様な声と手付きで彼女を可愛がる。 けれど、 その感覚も、声も、存在も、徐々に薄くなってゆく。 彼女に認知されなくなってゆく] ………メグ、 私の事、 [声が消え行く。 私、本当はあの日 >>18、 「もう私の事は忘れてね」って言おうと思ってたんだ。 私の声が、消え行く。 彼女はやがて目を覚ますだろう] (39) 2020/10/08(Thu) 5:20:14 |
| ― 帰国者のあった日の朝 ―
[私は、きっと久々に彼女の前に現れた。 にっこりと、上品ながらも満面の笑みだった。 彼女はもうすごくしっかりしてきたのに、 私の方が昔に戻った様に「ねえねえ」と子供っぽく手を振った]
また逢えたね。
[手を伸ばして、彼女が取ってくれるのを待った。**] (40) 2020/10/08(Thu) 5:33:37 |
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