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【人】 焔の魔術師 ベアトリスーー長い夢を見ていたような。 ベアトリスは弟と別々の人生をむ選択をした。新しい道には、新しいパートナーが。 エスポワがいる。 彼女を抱き寄せて、優しいキスを受け止めた。ベアトリスーー華夜からも、幾つも花を咲かすように返して。 「……ありがとう、エスポワ。 貴女が傍にいてくれるのが、 今の私には一番よ。」 そして二人は病院へと移動した。* (8) 2023/10/27(Fri) 23:28:14 |
【人】 焔の魔術師 ベアトリス病室を出て、廊下の片隅にて。 エスポワと二人で向き合う。 彼女の言葉にベアトリスこと華夜は笑みを浮かべる。 確かに困難が待ち受けているだろう。しかし、華夜は彼女とならば乗り越えていけると信じていた。 「切り棄てる?馬鹿なことを。 あり得ないわ。私はもう、貴女以外はいらないの。 でも、そうね……ドローイグやミュジークがまだ、 イーリスを欲するならば逃亡生活に なるのかしら?愛の逃避行ってやつ?」 くすり、と唇に丸みを乗せた時であった。何処からか虹色の光が降り注ぎ、エスポワの首元を覆う。 それは首輪を象った。白い首輪に虹色の宝石がついている。 イーリスだ。 だが、不思議な現象はそれで終わりはしなかった。 何処から、声がしたのだ。 今まで聞いたこともない、男性とも女性ともわからぬ声が。 (18) 2023/10/28(Sat) 15:22:58 |
【人】 焔の魔術師 ベアトリス 『私はドリーム。六大精霊の力を統括する精霊王である。』 「精霊王?!まさかーー」 宝石が放つ神々しい光に華夜は思わずひれ伏す。 声は続ける。 『私は今までイーリスの中に息づいて、人の願いを叶えてきた。 その代償をエネルギーとして。 何年も、何十年も。 永劫なる時の中で、人と精霊全てを 見守ってきた。 そんな私ではあるが、 一度も叶えたことがない願いがある。 それは、私自身の願いだ。』 「精霊王の願い……?」 キラリとエスポワの首元の宝石が光る。 『ゆっくり眠りたい。もう大きな願いは叶えずに。 微睡みの中で小さな願い程度を聞くのは良いが、もう。 ーー休みたいのだ。』 (19) 2023/10/28(Sat) 15:26:48 |
【人】 焔の魔術師 ベアトリス 『人の願いを叶えれば、人と精霊の 橋渡しになると考えた。 しかしイーリスと私の力を巡り、 人と精霊は相対してしまった。 もう二度と悲劇を繰り返さぬ為に。 私は眠る。この少女の首元を安住の地として。 ーーそれが私の願いだ。 私は、私の願いを叶え、代償として 二度と目覚めないであろう。』 ドリームの宣言に華夜は息を呑んだ。イーリスが願いを叶える力を失えば確かにーー人々が争うことはなくなる。ドローイグやミュジークが醜い闘いを繰り広げることも終わるであろう。 『エスポワよ。イーリスを頼む。 どうか三日に一度は宝石の表面を磨いておくれ。 ーー柔らかな布でね。』 最後に七色を放つと、声は聴こえなくなった。 恐らく、エスポワが分け与えた小さな宝石以外はまだ願いを叶える力を持っているが、イーリス本体はその力を失ったのだろう。 「……これで良かったのかもしれないわ。 なんでも願えば叶うなんて間違っているし。 代償もあるのだから。 私達は私達の力で未来を歩んで行きましょう。 ーードローイグに一度戻り報告をするわ。 貴女も来るわよね?」* (20) 2023/10/28(Sat) 15:27:19 |
【人】 焔の魔術師 ベアトリス人間でもない、精霊でもない。 それはすなわち、人間でもあり精霊でもある、という事だ。 しかもイーリスを彼女は身に付けた。エスポワの得た力を考えるならば、ベアトリスはずっとひれ伏してもおかしくはなかったろう。 しかし、彼女と自分は対等であり、パートナーとなったことをベアトリスは知っていた。 たとえサラマンダーが使役できなくなろうと、彼女がいたら千人力だろう。 「ドローイグを滅ぼすですって? 過激ねえ。 私はね、貴女と静かに暮らせたら それで満足なんだけど。」 見た目はこんなに愛らしい少女なのにエスポワったら! でもそこがまた彼女の魅力かもしれない。 「三日に一度じゃ私が足りなくて疼いてしまうわ? 毎日、毎晩愛でたい。 貴女の隅々を。ね?」 触れている柔らかな頬も、輝くような色の髪も、悪戯に光る瞳も、スレンダーなボディも、全部私のもの、とほくそ笑む。 それは大好き、と同義であろう。 (29) 2023/10/29(Sun) 16:26:27 |
【人】 焔の魔術師 ベアトリスその世界の人々は、精霊の力を借りて豊かな反映を遂げた。 ドローイグ帝国は絵画の力により、色彩鮮やかな精霊を友として。 国のあちこちの石壁には、子供たちが描いた絵がたくさん残っている。それは落書きと忌み嫌われたりはせず、街を彩るもの、というのがドローイグの認識だ。 「私はね、この貧しい街に生まれたの。」 ベアトリスはエスポワを伴い、貧民街を訪れている。 生家は燃えて失くなってしまったが、町並みはあまり変わってはいなかった。 子供たちが絵の具を使い夢中に壁に絵を描いている。 自由で愉しそうだ。 「確かこっち……あったわ。ほらこれ。 私が描いた絵なの。」 それは弟ユスターシュと手を繋ぎ並ぶベアトリスの絵である。 小さな二人ではなく、大人になった姿を想像で描いたのだ。 マント姿のユスターシュと、ドレスのベアトリスが並んでいる。 ベアトリスはふ、と目を細めてそこに人物を描き足した。 勿論それはエスポワである。 (30) 2023/10/29(Sun) 16:27:02 |
【人】 焔の魔術師 ベアトリス 「それにしても、ドローイグの王は 情けなかったわねえ。」 実は二人は貧民街に来る前に王に謁見していた。宮廷魔術師であるベアトリスの使命はイーリス奪還であった。そして、ベアトリスはイーリスを首につけたエスポワと帰還した訳である。 これが王にはどう見えたか。 『え、エスポワ様!平に、平に〜!』 なんでも願いを叶える宝石を手にする少女は、さながら紋所を手にする水戸黄門といったところか。 その脅威にただただ平伏する王がベアトリスに何か文句を言うなどあり得なかったのである。 二人は王宮に住まいを得たし、望むならいつでも異世界に行く事も。諸国漫遊していた光國と似たようなものだ。 (31) 2023/10/29(Sun) 16:27:25 |
【人】 焔の魔術師 ベアトリス 『りっこちゃんは恋人がいるから向こうの世界に 残るのよね。 まあ、私達は行き来出来るから いつでも逢えるけど。 そう言えば、チアキローズ姫はどうするの? あの二人はーー結婚するのよね?』 姫と結ばれた弟を案ずる。しかしきっと二人も道を歩んでいくのだろう。 エスポワに身を寄せ、ベアトリスは小さな手を握る。 その姿は壁に描かれた絵ととてもよく似ているのだった。** (32) 2023/10/29(Sun) 16:28:02 |
【人】 焔の魔術師 ベアトリスドローイグの貧民街の子供たちは、壁の絵が増えているのに気が付いた。 ドレスの女性の隣にキラキラした虹色の女の子、マントの男性の隣にお姫様が。 そして、この世界にはない真っ黒な学生服を着た少年。 彼は黒髪の女の子をお姫様だっこしている。 総勢6名。 その絵が、後に立国されるとある国の王と王妃に似ていると噂になるのは先の事だ。 良い観光名所となったであろう。** (42) 2023/10/30(Mon) 1:14:54 |
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