【人】 鬼 紅鉄坊そうか 食事の量は少しずつ、増やしていくほうが良さそうだな [ 食わねば体力は付かないが、器より大きな物は詰め込めない。 次はもっと小さくしようと、残った量を見て思う。 いや。当人に見てもらい、その内自分で作らせるのが一番良いか。 味について語らない理由も知らず、一時巡る思考。 随分と呑気なものだったと直ぐに知ることとなる。 何か思いも寄らないことを言われるのは、 勘違いをしているらしい以上覚悟したつもりだったが── ] (388) 2021/06/19(Sat) 1:18:29 |
【人】 鬼 紅鉄坊……では、千太郎と [ 咎めるように向けられた訂正と>>287 結局はこちらに放るような態度。>>288 確実に、言うべきことは他にある。だが、それ以外何も言えなかった。 顔も知らないだろう母親の遺した想いはおろか、 自分自身にすら関心が薄いかのような様子を見せられては。 せめて自分だけは、さとの為にそう呼ぼうと決めることが精一杯。 鬼は今までずっと、生活の殆どを独りで過ごしていた。 こちらより口が回りよく喋る、あの妖怪の男やもう会えない女 あまり気が合わない数多の同胞たち、 そしていくら繕えど怯えていることに変わりない村人らとの接触は、 鬼の舌の回りを滑らかにはしてくれなかった。 ] (389) 2021/06/19(Sat) 1:18:44 |
【人】 鬼 紅鉄坊[ 残酷な程あっさりと名の話が切り捨てられ>>289 昨日は半ばで終わりを告げた話が再開した。 聞き漏らさぬよう、鬼は頭を少し前に垂れて耳を低くする。 肌にも重みにも、命の主張が感じられない白い手が、 襤褸の着物から覗く筋肉質な影色に添えられて。 近い距離で覗き込み、昏い意思を持って逸れぬ二つの黒眼。 伏せられなくなった紅色は、しかしただただ静かで揺らぎない。 汲み取れる感情など、覗きたがりにも見つけられなかっただろう。 「鬼の子」を蔑みながら、その手で転がされた村人とは違い 鬼の目線は逸れず、じっと話を聞いてから口を開いた。 ] (390) 2021/06/19(Sat) 1:19:02 |
【人】 鬼 紅鉄坊[ 芽の内に踏み躙られ、歪み伸びた枯れかけの植物が もしも正しく育まれていたのなら どんな色の蕾をどのように美しく開かせたのかなど。 躙った者は思い描きもしないだろう。 己の行いも忘れ、醜いと容易に引き抜こうとするだけだ。 つまりはそういうことなのだと、鬼は考える。 ] (392) 2021/06/19(Sat) 1:20:56 |
【人】 鬼 紅鉄坊同族に虐げられる人間を村から救いたいと、 山の鬼が思うことが厚顔無恥だと感じているのなら、 不快に感じたのなら謝ろう [ 反応を愉しもうとするような皮肉の棘にも、鬼は真っ直ぐに返す。 それでいて改めてはいない。 ] 私はかつて、お前の母をよく知っていた どんな夢を抱き、どんな苦しみで胸を痛めたのかも 恋い慕った男、つまりお前の父親への想いもまた 選び救おうとした理由はそこにあるのだ…… [ 続けようとした言葉は音に乗らず、僅かな話の間が空いた。 これ以上母親について語り聞かせても きっと興味を示さないだろう、示せないのだろうから。 ] (393) 2021/06/19(Sat) 1:21:15 |
【人】 鬼 紅鉄坊千太郎がどのように思わされていても、 ここにいるのが人の子を救う権利のない物怪だとしても お前を牢の中で飼い殺すことが正しいとは、私には思えん [ 表情も感情も覗い難い顔の人外であったが、 そう言い切る声は穏やかにも力強く。揺らぎなく。 想いに隠すものは一つもなく、歪んだ花嫁に全てを伝えきった。 ] (394) 2021/06/19(Sat) 1:21:31 |
【人】 鬼 紅鉄坊……さて。一つ、聞いてもいいか 花嫁と扱われる生活に、男児として思うことはないのだな [ 男であると知った時からの疑問。 今まで問わなかったのは、振る舞いを見れば答えは明白だからだ。 故に口調にも既に理解していることは表れている。 ] ならば、望むままに扱おう。私の花嫁よ [ 「選んだ」 「役目」 「相応に」 哀しい花嫁たちを妖怪達の元に送り届ける役目の鬼が、 人里で穏やかに暮らし、家庭を築く夫婦のことなどを その言葉から想起する筈はない。していい訳がない。 何を言われているのか理解しながら、態と口にした。 花嫁という肩書きの元に、「せん」を選び求める。 そんなものは助け出す為の口実でしかなかったが── 少しばかり身を引いて、立ち上がる。 ] (395) 2021/06/19(Sat) 1:21:47 |
【人】 鬼 紅鉄坊まずは共に散歩にでも行くとするか 千太郎の身体では敷地の外は難しいが…… 気分が変わるかも知れないぞ [ 未だその言葉は役目を終えてはいないのかもしれない。 屈みながら手を差し出しつつ、鬼はそう考えていた。 ] (396) 2021/06/19(Sat) 1:22:17 |
【人】 鬼 紅鉄坊── 外へ ── 昨夜は雨が降っていたから 止んだ時にはきっと、強く香っていただろうな ……ほら、六枚の弁のこの花のことだ 毎年、決まってこの時期に咲く [ 差し出した手に重なるものがあっても、拒まれても。 今繋いではいないことに変わりはない。 気遣ってしようとしたことだが、身の丈が違いすぎた。 腕を持ち上げられ続けるのは、筋肉の無い身には辛かろう。 行き過ぎては止まり、また繰り返し。共に歩くことも難儀だ。 時間を掛けて近づいたのは 昨日暮れ始めた空の下で白く咲き誇っていた花々。 あの美しい純白は、今は薄く黄色を混ぜたように色を変えていた。 ] (397) 2021/06/19(Sat) 1:22:38 |
【人】 鬼 紅鉄坊秋の終わりに実を結ぶ、それは薬の材料になる 私は実を、門の前までやって来る村の薬屋と取り引きして…… [ 語り聞かせる話がはたと止まる。 薬屋の娘を昨日、同胞の寝蔵へ届けたことを思い出したのだ。 その姉もまた昨年、花嫁となりもういないことも。 ] ……傷薬を得ているから、怪我をしたら隠さずに言うといい [ 何事も無かったように続きを語る。 あの薬屋の主には、千太郎を会わせないほうがいいだろう。 きっと辛い思いをしているから。 ]** (398) 2021/06/19(Sat) 1:22:52 |
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