三十三
「そうですか。……」
「報われるとか、報われないとか。気持ちは分からないけれど。
みんないきてほしいなってことは、わかるなあ」
短く返事をして、青年を見送った。
それは博愛などではない。殆どの行いは自分のため。
きっと貴方はこれからもそうであり続けるのだろうと、そんな印象を抱いて。
貴方の写真はブレることがなさそうだな、とも。残った知性はそう判断した。
「早くおきてくださいね。篝屋さん。貴方の死は礎になりません。
三十三さんが頑張って生きるには、貴方も生きていないと。今は多分、きっと。
はやくはやく。ねーぇ。ふふふ。
おれはまだ、みていませんから。みたいですから。ゆるしません、ゆるせません」
近くに寄って、怪我の具合を時折検分しながら篝屋の顔を覗き込む。
再度此処に三十三が来るまで、未だ意識を失い続ける青年に意味を持たない笑い声を撒いていたのだった。