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人狼物語 三日月国


124 【身内P村】二十四節気の灯守り【R15RP村】

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ーー先代の記録ーー
[正直、小雪域に連絡されるなり、眞澄を呼ぶなりされると全力で逃げなければならないので、匿ってもらえるのはかなり助かりました
もう、小雪域に戻るつもりはなかったから。
僕のことを覚えている住民がいなくなるまでは、戻れないから。
そんなので、格別な酒に舌鼓をうつわけですが。

酔った勢いで子育ての苦労話とかも語って聞かせた気もするし、風呂の話になれば行こう行こうと軽率に乗って笑った。
冗談を冗談のまま終わらせない。それが菴クオリティ。


小満域を出る時には、どうせまた寂しくなったら寄るよ。なんて軽く答えて。
じゃね!と軽く出ていった。
見送る方は黙ったもんじゃないかもしれないけど、見送られるのは安心した。
その事に気付いたのは、こんなに遅くなってからで。
これは眞澄には教えられなかったな、なんて。
]
 

 
[結局、飛心に任せると言わなかったのは、言わなくても見てくれると思ったからだ。
心から信頼していたから、言わなくても通じるでしょと甘えていたのだ。

大丈夫でしょ。
僕が教えてもらったんだ。眞澄にも教えてくれるでしょ。*]

 


―― 幕間:『桜』
  

[ 春分域の桜は、名勝として広く知られている。

 その辺を歩いているだけで美しく、
 ただの公園でも観光地かと思いそうになるけれど
 本当に観光地として発展した場所の
 山ひとつ薄紅に染まる様子を初めて見たときは

  『 すごい…! 山が桜色です!

    春分域の桜といえば世界的に有名ですが
    本当に、ほんとうにきれいなんですね…! 』


 柄にもなくはしゃいでしまって、
 春分さまも少し驚いたようだった
(ように見えた)


 立春の祝い事は世界的な祭の様相を見せるけれど、
 春分の祝いも、ちょうど桜の時期と重なるために
 ちょっとしたお祭りになる。
 「この桜を見るために来たんだ」なんて
 各地から足を運ぶひとも少なからずいる。わかる。

 なんならそうやって来る観光客、只人だけでなく
(移動の観点で言うと只人の方がすごいのだけど)

 どこぞの灯守りだったりもするから驚く。わかるけど。 **]
 

 
――回想:庵とのひと時


[ 其の日も己は其処に居た。
 其処に居ながら 其処には居ない
 "彼"の大嫌いな人間達と話していた時だった ]


   ……?


[ それは予感めいた何か。
 少しずつ呼ばれることのなくなっていく
 其の名を 呼ばれた気がした ]

[ 冬至の領域への扉は
 どこにでもあって どこにでもない。

 許された者以外が迷い込めぬよう
 其の入口は緩やかな迷路のように秘されている

 故に、権利を失った者が入るのは難しい
 権利を失った事を知っていたならその限りではなくとも

 もし 後者であったなら。
 彼のもとに使い蛍が見えた時 その先に戸は開かれたろう ]

[ 彼が小雪域を出て どれくらいであったか

 彼のくだした選択を。
 知っていても 知らなくても
 少女は変わらずに迎え入れるだろう

 近くとも近すぎず
 親しくとも親しすぎない

 そういう間柄だからこそ出来ることもあり
 居心地の良さのようなものがあるとも 想うが故に。

 彼が露天風呂を所望する様子があったなら
 いつかの雪見風呂だって再現しよう

 この頃には試作品ではない風呂用衣服もあった。
 なんなら一緒にのんびり浸かろうと用意したりして ]

[ 他愛ない話をしたろう。

 お風呂大作戦の話はやっぱり外せない
 慣れない酒も 其の時ばかりはちびちびと飲んだろう

 彼が陽気にこのひと時を楽しむなら
 己もまた それに興じよう。

 その内にもし、
 陽気だけではない声を零すなら
 己もまた 彼の声に耳を傾けよう。

 そうして 彼が旅立つ時には
 お土産に金平糖を渡して

 「さようなら」ではなく
 「いってらっしゃい」の結びを * ]

ーー回想:あるお祭の日ーー
[お祭りが開かれる日は、必ず会場へ出向いて様子を見るのが慣例だ。
その年は、15の風見家の子が挨拶に来るという事だったけれど*。]


 ……元気で活発な子ね。


[そこまで気を使わなくてもいいのに。と思う反面、その気遣いが嬉しくて。
ようやく来た頃に抱えられた量に、更に笑った。]


 甘いものは大抵好きよ。
 だから、どれが良いか悩んでしまうわね。


[その両腕に抱えられたものを見て、目が移ろってしまうのは本当のこと。だからね。]


 貴方の好きなものを頂戴?


[一緒に分けて食べましょう? と、答えたこともあったか。*]
 

─先代霜降より見た立秋─


[ 立秋は明るく場を和ませる雰囲気を持ち、
 なお可愛く甘えて来るものだから、紫明が心を許したのも
 早く、後輩として可愛がっていた。]


 「なに、葵ならすぐにしっかりとこなすだろう。
  ここに頼れる先輩もいるからな。
 
  そうだな、落ち着いたら各領域をのんびり
  見て回りたいと思っている。
  その時には、俺の好物でも用意しておいてくれ。


[ 好物とは、百年以上前から味も銘柄も変わらないままの
 立秋域産茶葉の紅茶クッキーとリーフパイ、紅茶セットのこと。

 ハグには自らも背に手を回し、何度か背中と頭を優しく叩く。
 立秋も灯守り歴は現役では長い部類であり
 幾度と灯守り達の引退、着任を見てきたのだろう。
 去り際には「じゃあな」と、やはり別れの言葉は告げずに。]
 

 
[ 私が立秋域に初めて足を踏み入れたのは
 蛍になり間もない頃、まだ十歳弱の時でした。
 紫明様の昔からのお知り合いであり、灯守り歴も長く
 「気さくな奴だから緊張しなくて良い」との前評判通り
 外見も言動も、年齢を感じさせない方でした]


  あの、これ、生まれつき、この色なのです。


[ 霜降域は銀髪と赤、もしくは黄系統の髪色の子が
 多く生まれると聞きます。
 私の場合父は銀、母は金で、私の髪色は
 どうやら縁起が良かっただったようですが
 道を歩けば視線が刺さるこの髪色は、
 あまり好きではありませんでした。
 勿論、綺麗だと言って下さる方も多かったのですが。]
 

 
  おしゃれ、きれい……。
  ……名前、そういえば、そうですね。
  三色……ふふっ……。

 
[ 直感ですが、立秋様の反応は偽り無き本心だと思いました。
 褒めてもらえたことは嬉しかったのです。
 さらに葵が青で三色という発想は無かったので
 自然と表情が綻び、笑みが漏れたのです。
 ──この時、私は漸く、自らの髪の色を
 少し好きになれたがしました。

 以降、立秋様に好感触を抱き、紫明様には]


  立秋様と、またお会いできますか?


[ と尋ね、立秋域に行く有事の際には、同行したいと
 おねだりしたこともありました。

 立秋様は紫明様にカリーユと呼ばれていたことは
 初対面の頃から知っていましたので
 私も何度か会ってから「お名前で呼んでいいですか?」と
 尋ねたのですが、快諾して下さったでしょうか。
 
 私が霜降となってからも、霜降域を訪ねて下さることがあり
 その際には「相変わらずお上手ですね」と
 慣れた対応が出来るまで、成長していたことでしょう。]

 
[ 少女の心を鷲掴みにした、立秋様の蛍──
 ダイくん様チュウくん様ショウくん様とも
 訪れる度に会いたい、お姿を見たい、と
 周囲を見渡していました。

 最初はぬいぐるみのような存在で、
 会話は出来ないのかと思っていたのですが
 唐突に喋り始めた時>2:*32は、びくっと肩を震わせて]


  きゃっ! びっくりした……おしゃべりできるの?
  わたし、葵。よろしくね、ダイくん!
  チュウくん、ショウくんもね。


[ 驚きながらも、可愛らしい蛍さんたちにお辞儀をしました。
 許されるなら、手を伸ばし、恐る恐る頭を撫でてみます。

 
 果実のような姿をしていらっしゃる蛍の皆さんは
 食べられるのかしら? と純粋な疑問を抱いたのですが
 素直な子供とはいえ、さすがに口に出すのは憚られました。
]*
 

 
[ 大雪の彼女とは、実年齢は同じぐらいであったと思うけれど、灯守りとしては彼女の方が先だった。
 先代とも被る期間があったと思うけれど、
 「ぬいぐるみの姿で話す灯守りが居るんだけど」
と、雪兎同様に笑みで話していたのが思い起こされる。
 彼は私と違って、可愛いものを正当に「可愛いもの」として受け取れる人間だった。
 ]
 

 
[ ――“蛍”でも“弟子”でもなかった私が、“灯守り”になった当初、
 灯守りの何を知っていたかと言えば、一般人と殆ど変わらない事しか知らなかっただろう。
 先代の彼と一緒に住んでいた訳でもないし、彼は仕事の事を深く私に話すような人ではなかった。

 処暑域の行政職員は相当頭を悩ませていたと思うし、非常事態に中央域の職員も対応に追われたのではないだろうか。
 当時の私にはどうでも良いことであったが。……否、今もそうかもしれない。

 処暑域の職員は、突然灯守りになった私に対し諸々の必要事項を伝えつつも、
彼を失ったショックで
気のない私に業を煮やしており、私への対応は強かった。
 しかしそう急かされても私はぼんやりしていたから、それが益々彼彼女の反感を買っていただろう。
 職員は、彼と私の関係を知る事はなかった。
 私も喋ることはなかったから、唯、容姿が似ているから血縁だろうか、と判断されていた。
 それと、私が彼を亡くして放心しているのも話していなかったし、傍目からでは、私の様子は分かりにくいから。
 故に、私の心情は慮られることは少なかった。


 ……それでも諦めることはなかった職員たちには恐れ入る。
 否、先代の彼の部下と思えば納得するのだが。
 なんとか行政が形だけでも回るようになった頃、灯守りの会合への参加を勧められた。 ]
 

 
[ “灯守り魂の管理者”としての仕事については、立秋の彼に大きく世話になったと思う。
 職員が教えられぬ事については、彼に教わった。
 幸い、というべきか、灯宮の番からは遠い時期ではあったし、教わる時間はあった。
 ……尤も、当時の私は放心状態であったから、反応も普段より更に鈍く、良い新人とは言い難かっただろうが。
 そこについては、少々申し訳なく思っている。


 彼にも会合の参加は勧められたのだったか。
 職員に言われた事は、聞かない事も多かった。
 それでも参加に踏み切ったのは……彼に言われたから、というのもあったのかもしれない。 ]


[ 当時の会合出席メンバーで、今も残っているのは、24の席の1/3程度か。
 そう思えば、当時の私を知る者は今でも案外多いのかもしれない。 ]
 

―― 小雪の彼女 ――



  「 彼女は“雪”みたいに凛としたひと……かな
    雪を見てる時みたいな、ぴんとした空気を感じるひと 」



[ 先代の彼が、私に仕事の話をする事は殆どなかったけれど、
 その代わり、灯守りの人となりについては随分聞いていた気がする。 ]


  「 規律に関してしっかりしているし、
    統治者として尊敬出来るひとだよ
    少し近寄りがたく見えるけど……本当は優しいひとなんだ 」



[ その時彼が話していたのは、当時から小雪号に就いていた彼女の事。
 小雪域は少々遠くて行ったことはないし、そこの灯守りについて全く知らない。
 ただ、彼が尊敬し、理想としているのだな、という事は分かる。
 元々行政職員であった彼。
 少々住民に対して心を砕きすぎるところはあるようだが、規則は出来る限り侵さないようにする気質であったから、彼女とは相性が良かったのだろう。
 でも「目を引くような美人だよ」と、恋人の前で躊躇もなく言うのだから、本当に仕様がないのだが。
 ]
 

 
[ 等身大の灯守りの話を聞こうとも、実際会う機会があるとは思っていなかった。
 それが今、灯守り同士としてこうして会っているのだから、どう受け止めれば良いのか分からない。

 小雪の灯守り、と名乗った彼女は、確かに雪のような鋭さを持つ美人であった。 ]


  ………………初めまして

  ……はい、『処暑』です
  ……何か?


[
 “新しい”処暑、とは言えなかった。

 当時の私の容姿は今より少々若く、見方によっては彼の弟妹か、従兄弟ぐらいに見えたかもしれない。
 しかし当時から、感情が表に出ないのは変わらず、更に当時はそもそも感情が凪いでいたから、何を考えているかは分からなかったかもしれない。
 ただ……灯守りとして私の灯りを捉えたのなら、弱弱しくなっているのが判った、かもしれないが。
 灯りと離れる事が不安で、最初は灯りを持ってきていたのだ。
 ]
 

 

  ――――っ、


[ しかし、先代に似ていたから驚いた、という言葉を聞いて、私は一瞬、あからさまに科表情を歪めただろう。 ]
 

 
[ もしかしたらその反応で、先代の関係者だという確信は持たれてしまったかもしれないが、それはさておき。
 彼女は「何かあれば相談に乗る」と言ってくれた。
 ……彼の言っていた通りの、優しい人、のようだ。
 有難い事だとは思った。けれど私は、どうするのが正解か分からずに、「ありがとうございます」と当たり障りのない反応を返したのだったか。
 人見知り、人と関わる事自体が苦手、加えて全他者に対して薄く不信感があったから。
 その厚意を、素直に受け取る事が出来なかった。
 ……話したくない訳ではなかった。けれど私から何かを話すことはなかったから、彼女は直ぐに離れて行ってしまったか。
 彼女の心の内は知らない。私自身を気に掛けられていた事も。
]
 

 
[ 半ば強制的に関わりが深くなった立秋の彼はともかく、私は他の灯守りに対してなかなか心を開けなかったし、会合へ出るのも、暫く間が空いた。
 私は“外”へ出られずに、殆ど領域に引きこもり、淡々と業務をこなしていたけれど、
 ただ、“外”のことは、“風”によって“見て”いた。
 処暑の灯守りに受け継がれる能力『風星』。
 空から地上を見つめる星のように、風によって離れたものを観測出来る能力。

 ただ、私は処暑域を見れば見るほど、分からなくなってしまっていた。
 この人々に守る価値があるのだろうか、と、そういうことを考えてしまう。
 彼から託された位。きちんと継がなければいけない、という思いはあったけれど。
 それでもやはり、彼を失った世界に、意味を見出す事が出来なかった。
 ――私は、この世界を嫌いになってしまっていた。


 “風”を小雪の彼女の元に飛ばしたのは、ほんの気紛れだ。
 彼が尊敬していた彼女の仕事を“見れ”ば、もしかしたら民を治めるとはどういうことか、分かるのではないかと。

 ……さて。それが始まりであった。
 灯守りという存在を“観測”するのは興味深く面白く、元の学者気質は蘇り、熱心な趣味となってしまった。 ]
 

 
[ 会合にも出るようになった私に、彼女は再び話し掛けてくれたのだったか。
 何れにせよ、私も彼女には慣れていったし、それから私が目的を持つきっかけになったことにより、少し、特別気にするようになった。
 もしかしたら彼女は、私が問題ある統治者となっていることを良く思っていないのかもしれないけれど。


 今の印象としては、理想の統治者とも言える、しっかりした灯守りだということだ。
 しかし……どうやら、先代に反発していて、そこに何かがあるらしい、という事は分かった。
 私にはそれをどうすることも出来ないし、
傍観者故にどうしたいと思うこともないけれど。


 私は時々彼女宛に、処暑域の農作物を送っている。
 彼が、短い就任期間にどうやらそうしていたらしいから。
 最初は彼女に相談に乗ってもらった事の礼だったようだけれど、幾ら感謝しても足りないから、とそういうことだったらしい。
 私の言動は彼と似ても似つかない訳だけれど、彼の行動をなぞる私は、彼女にどう見えているのだろうか。

 今なら、なんとなく分かる気がする。彼女が最初、私の容姿を見て驚いた理由。
 彼女も、彼の事をそれなりに大切に思っていたのではないか、と。** ]
 

[ 子供らしい遊びの一般教養が足りず
  おままごとの『たべる』は食べるふりでいいのだと
  知らないうちは話をそらすことで誤魔化そうとした。
 『一般的な夫婦』の会話を知らないうちは
  なんでも小さな妻の望むようにしたいと
  質問に質問で返してでも
  彼女の望みを聞くことでやり過ごした。

  母親の生き写しみたいな彼女はいつでも母親役を望んで
  わたしはいつもその伴侶役、父の役で。
  ママの真似をしたがる彼女とは対照的に
  その場面で父ならどうするかを一切知ろうとしなかった。

  こんな場面でまで父の代理を与えられることには
  不思議と然程何も思うことはなかった。
  単純に、父の存在が必要がなかったからだ。

  青く茂る草原の上に広げた虹色のピクニックシートの上の
  間取りも曖昧な小さなおうちで
  即興で紡ぎ出される物語は、彼女にとっては
  日常をくり抜いた両親の真似事であっても
  わたしにとっては知らない世界の出来事で。

  全然父親の真似をできないわたしの存在を彼女は最初から
  そうじゃないと否定して責めることはなかったから。
  そのまま受け入れてくれたから。 ]

[ 父がどうとか、そんな些細なこと。
  わたしと、この子と、ぬいぐるみたちだけの
  この小さなおうちのなかでは必要がなかった。

  わたしが何者かも理解していないこの子が
  わたしをわたしのまま受け入れてくれるのなら
  この2メートル四方程度のささやかな幸せを
  いつまでも守ってやりたいだなんて
  傲慢に、軽率に、思うようにさえなっていった。 ]

[ 彼女の望むことはなんでも叶えてやりたいと
  思うようになるのにそう時間は掛らず
  彼女の母親がちょっと困るくらいに彼女を甘やかした
  たまに遊びに来ては甘やかしたい時だけ甘やかす
  彼女にとって都合のいいわたしに
  彼女がなついてくれることは
  あまり不思議はないと思えたのでもうこわくはなかった。

  愛情を与えられることも与えることも不慣れな
  気の毒な子供の顔をしておけば
  彼女の母親も過ぎた贈り物を咎めることはしなかった。

  唯一望まれても叶えられなかった望みは
 『帰らないで』だけだと思う。
  そこだけは踏み越えないと決めていた。
  彼女にとって甘やかすだけの都合のいい存在で居たかった。
  家族になってしまうのがこわかった。
  なろうとしてもなれないと思い知るかもしれないことも、
  近すぎる距離で衝突することも、なにもかも怖かった。

  彼女の母親からかけられる言葉が
 「またあそびにきて」から「もう行くの?」に変わっても
  頑なに、「また遊びに来ます」を繰り返した。
 「自分の家だと思って何時でも帰ってきて」と言われても
  形だけでも頷くなんてできなかった。

  望んでも父から貰えなかったその言葉は
  あんなに欲していたくせに
  いざ与えられてみると
  受け取り方がわからなくて、怖くて堪らないだけだった。 ]

[ 歪な愛情を捨てるゴミ箱みたいに、節操なく贈っては
  はしゃいで喜んで懐いてくれるだけでよかったのに
  それだけがよかったのに。
  自分の趣味を刷り込む父のやり方を
  同じやり方で押し付けて否定したつもりになって
  気持ちよくなっていられる時間は案外短かった。

  初めて返された贈り物は、彼女の説明を聞いても
  全然何がどう描いてあるかわからなかったけれど
  隣で一緒にお絵描きをしていたからわかることもあった。
  画用紙いっぱいに彼女のお気に入りの色と
  一生懸命が詰まっていた。

  彼女のような、相手が喜ぶ上手な喜び方ができなくて
  上手く笑えなかった顔はきっと
  泣き出しそうに歪んでしまったと思う。
 「上手にかけたね」「うれしい」「ありがとう」
 「たからものにするね」
  彼女の傍で過ごした時間のおかげで
  正解の言葉を返すことはできたけれど。
  そんなものじゃたりなくて。

  背筋が冷たく凍りついて
  恐怖に震える心地だった。

  どうしよう、かえしかたがわからない。 ]


[ 今でもわからないままだ。

  全然成長できないわたしを表すみたいに
  灯守りになったわたしのすがたは時間を止めて
  あの子だけがどんどん成長して、離れてゆく。

  与えられた暖かなものを
  まだ全然返せていないのに。

  焦る気持ちは次第に消えて
  今ではそれのままでいいとさえ思っている。

  返し終えてしまったら、
  全て終わってしまう気がして。 *]

 ― 先代の話 ―

[村雨は家庭に恵まれない男だった。
 家族は出来のいい弟ばかり構う。人当たりをよくして、交流を広くして、仕事に励み、いい顔して世を渡ったが、精神が段々もたなくなっていった。

 端的に言えば孤独だったのだ。
 自分に好意を寄せてくれる存在がいても、自分と似てて、自分よりはるかに出来がいい弟が現れれば全てもっていかれる。

 そこで出会ったのは先々代雨水だった。
 彼は穏やかに、村雨の話を聞いた。出会ったばかりなのに、不思議と全てを話すことが出来た。]


 「それは、さみしいね」



[そう言われて心の孤独をまるで雪解けのように。解いて貰えた。]

 

 
[それから村雨は彼の元に通い詰めた。色々話を聞いて貰った。
 先々代には蛍はいたが、彼が着任する時同時に共に頑張ろうと手を取り合った友人同士。年も年だった。先々代の引退と同士に引退すると明言していた。
 先々代は人間としての寿命で終わる事を望んでいた。後継が必要だった。

 先々代はそんな環境でも心根を曲げなかった村雨を気に入って、雨水になる話を持ち掛けた。


 彼は受け入れた。
 家族にはその後、今頃という清々しさですり寄られたが、最低限の仕送りだけ確約して近づかないよう約束させたのだった。


 灯守りになってからは大変だったけれど、やりがいもあった。先代に蛍だった人がが手伝ってくれたし他の灯守りや中央の人間にあれこれどうしたらいい? と問いかけるのを恥じない男だった。

 なお、その当時既にそこそこおじさんの年になっていて。今更外見を若くするのはそっちの方が恥ずかしくないか? とそのままにしたという。


 やっと居場所を手に入れた。
 その幸福感で満ち溢れていた。]

 

 
[彼女と出会ったのは、灯守りになって少しした頃。
 そろそろ自分の蛍を探したほうがいいだろうと思った時期だった。

 彼女は自分と偶然出会って
 彼女は自分に惹かれてくれて
 彼女は自分と結婚したいと望んでくれた


 家庭を持ちたい。その願いが強い男は彼女を受け入れ、蛍にして妻にした。]




    [すべてが壊れたのは……年月が暫し経ってから。]