コルヴォ！ 今日がお前の命日だ！

パリン、と音がした。
水の入ったグラスが撃ち抜かれる音だった。

「いらっしゃいませ。」

平然とそう言う女の前には、銃を向けた大の男が複数人。
店の扉が蹴破られて、カウンターを盾にして銃撃を躱して。
返すように3発、小型拳銃を発砲して3人を殺す。
しかしそれで装弾切れ。
まだ相手は複数人。狭い店内、
肉弾戦で勝てるようなものでもなし。
ここまでか、と諦めたのが今の状況。

『噂通りのいい腕だ。私達はその腕を買いに来たんだ。』
『どうだ？私達と一緒に来ないか。』

恐らくリーダー格の男が、銃を向けたままにそう言う。
腕を買いに来た、とはよく言ったものだ。
頷かなければ、この散らばったグラスと同じ末路を辿るのだろう。




ノッテに尽くす義理など、女にはなかった。
だから。

「そう。」　　女は口を開く。夕闇の瞳が前を見据える。

これまでの人生を思い浮かべて、告げる。

「興味がないわ。」


「だって私、ノッテ・ファミリーの家族だもの。」

義理はない。

あるのは、愛家族へのだけ。

きっと人生で最初で最後の笑みを浮かべて。

────パン、と音が鳴った。

メモを貼った。

殺した誰かを弔うように、毎日鎮魂歌を奏でていた。

女を弔う音色は、もう流れない。お店は今日は、静かだった。

その夜を境に夜闇に消えて、何処へも帰る事は無い。

誰かとの口約束を果たす事は無い。

預けたものを受け取りに行く日は永遠に来ない。

次の会議に訪れたのは、その死を告げる書類だけで。

もう誰の元にも戻らない。きっと子守歌を聞く事も無い。

いつだって喪に服していた。

死んでいった人間と、それから死に損なった自分の為に。

きっと魔女の行動にこう言ったはずだ。「興味がないわ。」「……馬鹿ね。」

だから、やっぱり、幸せだったのだ。