三十三
「貴方の言う通りです」
「生きているなら治療しないと。
篝屋さんは生きている。生きている音を拾いました」
「生者の分際で、動かないなんてゆるせない。ぁは、そうですよ。停滞なんて、許せない。進まなきゃ、前に。まえに、すすまないと、ねぇ?」
強い酸が足裏を焼く。じゅ、と靴の底を蝕んでいく。
「……ぇへ、うふふ。で、なんだっけ。
あー……詳しい話をするのは後ほど。運ぶの、手伝って貰えませんか?
ひとまずこの……これ、強酸でしょうか。此処から引き上げますから。その後、二人で運びましょう。
その白衣は何か長めの棒が2本もあれば担架に出来ましたけど、無さそうかな。手や体を酸で焼きたくないとか、何か適当に使ってください」
まるで生きていた時のように、饒舌に喋っている。
けれどその青年は足を焼かれたり、篝屋青年を目にするたびに「ゆるせないなあ」「なんで?どうして?」とけらけら子供のように笑い声をあげている。
この青年は確かに、壊れてしまった後だった。