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人狼物語 三日月国


167 【R18G】海辺のフチラータ【身内】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


【人】 無風 マウロ

【アジト廊下】
「……、アァ?」

壁に手をついて、睨むように前に現れた君の顔を見る。
痛みは治まるどころか、酷くなる一方で。
更には貧血による頭痛まで加わったものだから、眉間には皺が寄りっぱなし。冷や汗すら額に浮かんでいて、息も荒い。
至って平常の君とは、対照的な様相だ。

「……何も」
「生きている、以上」
「やるべきことを、する……だから、会議に出た」

当然のことだ。
片足が吹き飛んでいたとしても、この男は同じように会議に姿を見せたのだろう。
頼ることも下手だから、誰の力も借りることなく。

「閉じ込めてた、つもりだったのか?ハッ……鍵もかけないで、甘いこと考えてんじゃねえよ」

リカルドならそんなヘマしてないだろうよ、なんて口元を歪めて。
(6) 2022/08/21(Sun) 21:50:52
レヴィアは、起きた猫が走り去るのを見た。
(a18) 2022/08/21(Sun) 22:01:44

レヴィアは、今日も店に戻り、そうしていつも通りに鎮魂歌を奏でる。
(a19) 2022/08/21(Sun) 22:01:53

【人】 狡兎 ツィオ

【アジト廊下】>>6 マウロ
「昨日まで、食事も一人で取れなかったやつが、
 よく吠えるなあって印象しかないよ。
 そんな奴には閉じ込めておくために
 鍵も必要ないと思ってたんだけど、
 ――ごめんごめん、舐めすぎてたね」

顔色が、どんどん悪くなる相手に。
――へらへらと近づいていく。

その、重体患者の胸倉を掴んで――。
――ドンッ、と、壁に押し付けた。
薄く笑った笑顔のまま、瞳だけが、笑っていない。

「――死にたいのか。
   ・・・・
 ……もう一度」

絞り出したような声は。
壁に押し付けた方が、痛みを堪えるようで――。
ギリ、と、その襟首を掴む両手に力が籠る。
(7) 2022/08/21(Sun) 22:02:09
ストレガは、時計塔の中でぼんやりと過ごしている。
(a20) 2022/08/21(Sun) 23:04:18

家族を愛している。

家族を愛している。

【人】 無風 マウロ

「治療は、済んでるんだ」
「動けるようになったら、動く……ただでさえ今は、人員も減っ―――ッ、ぐ」

壁に体がぶつけられて、傷口が酷く痛みを訴える。
じわり、シャツに滲み出る鮮血。
ぐらりと揺れる視界。映る君の顔は、冷たい目をしていた。
掴んだ手は、いつもよりずっと力が入らなくて。
けれど、君の気持ちに呼応するように 返す言葉に力がこもる。

「っ、なわけ、ないだろ……!!」
「まだ、死んでないなら―――生かされたん、なら……やらなきゃいけねえことが、あるだろうが…ッ!」

短絡的な思考。いつも通り。
義務感と、焦りに突き動かされたもの。
2人が、幾度となく気にしてくれていたもの。

その果てに得たものが、大切な物が喪われたという情報だけであったのは。
彼の不運が為すものだったのだろうか。

締まる襟首に、苦し気な咳をした。
(8) 2022/08/22(Mon) 0:06:18

【人】 狡兎 ツィオ

【アジト廊下】>>8 マウロ

――激情が、迸る。
それは、堪えていたものだったのかもしれない。
  
安 堵
      
絶 望
         
執 着

マウロの生存に、リカルドの死に――そしてラウラの死に。
蓋をしていたはずの、機構としての自分の箍が外れた音がした。

グ、と壁に押し付けたまま、
掴んだ襟首を引き寄せるように顔を覗き込む。
胸板で跳ねたマウロの血が、右の瞼の上から涙のように伝った。

「――それは、死にぞこないの猫一匹が、
 血反吐吐いて前に進めば、どうにかなることか――?」

そして贖罪も、諦観もままならないまま。
また俺は、ここで、何かを失うことを。
――"知っていながら"、"見過ごせ"っていうのか。

全部。……全部。
俺が壊したような、ものなのに――。
だからこれは。本当に、八つ当たりだ。
何の、正当性もない。裏切り者の悲鳴だ。
(9) 2022/08/22(Mon) 0:41:53

【人】 狡兎 ツィオ

【アジト廊下】>>8 マウロ 
リック ラウラ

――それでも。
自分が、リカルドの腕を掴んで言えなかったことが。
あの日、ラウラの身体を抱きしめて言えなかったことが。

喉の奥から、溢れることを、堪えきれなかった。

 ・・  ・・・・・・・・・
「俺を――独りにしないでくれ」

血を吐くように。痛みを伴いながら。
その一回だけ自分に許した弱音を、
血塗れの幼馴染に、吐き零した。

――息を、吸い、吐く。
整える。ツィオという名前の青年を。

「――考えてみなよ、一人より、二人だろう。
 もう、リックは居ないんだ。無茶をするっていうんなら。
 俺にも、一枚嚙ませてくれよ、ここから先、何かするなら」

きっとその方が。
あいつは、自分が死んだことを後悔するだろうから。
(10) 2022/08/22(Mon) 0:43:41
テンゴは、独り、茶を点てた…共に飲む相手は、居ない
(a21) 2022/08/22(Mon) 1:58:41

【人】 無風 マウロ

>>9 >>10 ツィオ
【アジト廊下】

視界が酷く歪む。
もはや貧血のせいなのか、首元を締め上げられているせいなのかも分からない。
揺れた視界に、鮮血の伝う君の顔が見える。

「……、…ツィ、オ」

そして、耳に入る言葉に 時が止まったような感覚。
君がそんな風に、弱音を吐いた事なんてなかったから。
誰よりも自分の本心を隠してしまう君だったから、そこでやっと。
君も、自分と同じくらい限界が来ているんだと分かった。

「……っ、かった、から」
「はなせ、よ……苦しい、だろうが」

自分では振りほどけないから、手負いの猫は 図々しくもそう言ってのけるのだ。
(11) 2022/08/22(Mon) 3:21:18
コルヴォは、実際はきっと あーあ くらいの気持ちだった。
(a22) 2022/08/22(Mon) 12:16:28

【人】 狡兎 ツィオ

【アジト廊下】 >>11 幼馴染
両手が。力を失う。俯いた額が、マウロの胸に落ちた。

あの時、これくらいの聞き分けの良さが自分にあれば。
――お前たちを、自分の沈む深い深い闇に
引きずり込むことはなかったかもしれないと思うと。
喉奥から笑いが出た。

その笑いのまま、体を少しだけ離して、
俯いたまま言う。

「……テンゴさんの言うとおり、
 確たる証拠のないうちに表立って暴れるわけにはいかない。
 だったら、その証拠さえ掴んでしまえば、
 死にぞこない二人でも大きな花火が打ち上げられる。
 ――そうだろ、子猫ちゃん」

道の先に進み、振り返りながら両手を広げた。
聞こえる。声が聞こえる。――世界で何が起きているかが。
耳を塞いでも、何をしていても、聞こえてくる。

「ベイビーシッターに、後悔させてやろうよ。
 酷い夜泣きを――天まで届ける"悪ふざけ"でさ」

あの頃の悪童の顔で、悪童に対して提案した。
(12) 2022/08/22(Mon) 12:44:34
変化が嫌いだった。これでよかったのに

冥府下り


たった一人の葬列はその日も暗く静かな道を行く。
それと共にあるものと言えば、死者ばかり。


この数日で、街には随分と雑音ばかりが増えてしまった。
思えば、鼓膜を揺らさないその音を聞くようになったのはいつからだったか。
怪我で盲いた片目は在り得ざるものを見るようになった。

死に損ないは、いつだって生者と死者の境界線に居る。

「───全ては都合の良い幻覚だ」

虚ろな死者の残響は、誰にその存在を証明できもしない。

「少なくとも、俺以外にとってはそうなんだよ
 事実として、あんた達はもうそこには居ないんだから」

「そうでなきゃあならないんだ」

だから仮にそれが真実であったとしても、
それはいい加減な与太話が偶々真実を言い当てただけの事。

「だから誰に何を聞いたかなんてのは、誰に言えもしないのさ……」

【路地裏】

「……なんだ、あんたまだ居たのか。
 さっさと何処へなりと行っちまえば良いのに」



「未練があるのは、どっちなんだか」

コルヴォは、足を止めて、振り返る。
死者は戻らないと知っているから。
(a23) 2022/08/22(Mon) 16:59:29

コルヴォは、今日も虚ろな死者の残響を聞く。
(a24) 2022/08/22(Mon) 16:59:42

【置】 ”復讐の刃” テンゴ

【いつかのお話】

 てんは、他者を守る為の器
 ごは、神を迎える為の器

テンゴは、空の器
時折、強い思いを受け取った時だけ、器が満たされる

だから、ずっと知っていた
あの男が、全ての元凶だと

尾を掴むまでには至らずとも、ずっと、ずっと
殺したいと願っていた

ヴェネリオ 兄弟

フィオレロ 可愛い部下

リカルド 友人

アウグスト 父

ラウラとマウロ 家族たち

マキアートとビアンカ 親切な人たち

奪い、傷つけた、
あの男 テオを、決して許しはしない


男は全ての怨念を、その男に向けている…全ての元凶が彼出なかったとしても、最早関係ないだろう……
(L2) 2022/08/22(Mon) 19:57:01
公開: 2022/08/22(Mon) 22:00:00
ストレガは、子飼いの部下から妙な情報を聞いた。少しばかり、前の話。
(a25) 2022/08/22(Mon) 19:58:50

……アベラルドだって、家族を愛していた。

テンゴは、駄菓子屋の屋台を畳んだ…祭りはもう、終わりだ
(a26) 2022/08/23(Tue) 1:11:04

" "を重ね、誓いを交わした。

【人】 無風 マウロ

>>12 悪友
【アジト廊下】

「……そもそも、お前ら」
「俺が、勝手にアルバの連中片っ端から、手出してるように言うけどな……
 この抗争に、関係のない―――羽虫みたいなやつらの排除だって、裏でやってたんだぞ」
「俺たちのシマで、好き勝手やろうとしてるチンピラども、とかな」

要はまあ。気に入らない物を苛立ちのままに排除していただけなのだけれど。
役に立っているならいいだろうと、子供の頃のようなぶすくれた顔。

「証拠がないうちは、そういうバカ共を潰す仕事が待ってる。
 証拠探しの、役にくらいは立ってくれるだろ。そういうどこにでも顔出してる、連中は」
「……ハ、あいつのしかめっ面が目に見えるな」

饒舌に喋っていたかと思えば、君の言葉にもう一人の悪童は笑って。
ふいに壁から一歩離れ、君の方に倒れ掛かる。
傷口も開いているだろうから、体力の限界を迎えていた。

「あー……じゃあ、まずは」
「身体を休ませるところから、だな……肩、貸せよ…ツィオ」
(13) 2022/08/23(Tue) 2:06:37
マウロは、おまえらときっと同じ気持ちだ。
(a27) 2022/08/23(Tue) 5:05:37

ソニーは、かつては《天使の子供(Sonny Amorino)》だった。
(a28) 2022/08/23(Tue) 7:22:20

ソニーは、けれども己の中の悪魔が囁く言葉に耳を傾け、復讐に己の人生を売り渡してしまったから。
(a29) 2022/08/23(Tue) 7:24:15

ソニーは、マルガレーテの居ないフォースタスには、祈りによる救済が与えられることはない。
(a30) 2022/08/23(Tue) 7:25:06

それでも止めたいと、死の淵でも思っている。

テンゴは、何処まで行っても余所者だ…イタリア人ではないのだから。
(a31) 2022/08/23(Tue) 8:57:25

テンゴは、だから、これでいい。全ては最初から決まっていた事だ。
(a32) 2022/08/23(Tue) 8:59:31

俺はひとかけらもよくありませんけどね。

【置】 ”復讐の刃” テンゴ

【三日月島:どこかの森の中】

土を掘り返す男がいた。
穴は2つ。然程大きくはない。

男の傍には、鉢植えが二つあった。
馬酔木と、カランコエだ。

男は此処に植えていくつもりだ。
どうせならば、此処の方が良いと思ったから。

自分もいつ死ぬやら分からない身である。
枯れるよりは余程良い。
(L3) 2022/08/23(Tue) 10:33:18
公開: 2022/08/23(Tue) 13:00:00

【人】 ”復讐の刃” テンゴ

【駄菓子屋:店内】

異国情緒溢れる店のカウンターにて。
飴の詰まった瓶をいくつか並べて、眺めている店主がいた。

一つは、
べっこう飴。

店主の一番のお気に入り、親しんでいる物。

一つは、
オレンジの飴。

太陽の光をいっぱいに浴びた柑橘は甘みが強い。

一つは、
抹茶ミルク飴。

この島では馴染みのない味で、珍しがられるもの。

「…さて、どうするかね。」

ころり、ころりと瓶の中で転がる飴を眺めて、独り言ちた。
(14) 2022/08/23(Tue) 10:40:54
家族を愛している。

テンゴは、いつも通り、飴を袋に入れて懐に仕舞った
(a33) 2022/08/23(Tue) 11:01:58

【見】 郵便切手 フラン

【バー:アマラント】

「お届けもの、です」

祭りの間、もう開くことはないのだろうと悟った扉の前。
一輪、花を添えた。
誰に見つかることなく枯れて朽ちる確率の方が高い。
それで丁度いいと思った。
密やかに過ぎるくらいが丁度いい。

「……サインは要りません」

正式な届け物でもないし、
受け取る人もいないから。

「よい夢を。」

帽子を僅かに持ち上げて、良き夢が訪れていることを祈る。
その後は暫く看板を見つめたままぼうっとして。
それから踵を返して立ち去った。
(@2) 2022/08/23(Tue) 11:30:38
文字通り命を賭けてますので。

レヴィアは、一筋の汗を流した。
(a34) 2022/08/23(Tue) 12:22:09

レヴィアは、ぼたぼたと血を流した。
(a35) 2022/08/23(Tue) 12:22:28

レヴィアは、どこか出かけられた見送りの言葉に、「えぇ。」とだけ返して
(a36) 2022/08/23(Tue) 12:31:27

レヴィアは、その日の夜に、仕事に向かった。
(a37) 2022/08/23(Tue) 12:31:49

レヴィアは、ゴシックの服をワインレッドに染めている。
(a38) 2022/08/23(Tue) 12:32:12

テンゴは、べっこう飴を口に含んだ
(a39) 2022/08/23(Tue) 12:43:52

テンゴは、家族 ノッテを愛している。
(a40) 2022/08/23(Tue) 12:55:44

レヴィアは、雨が降る前に帰った。ワインレッドはほどなく止まる。
(a41) 2022/08/23(Tue) 13:06:12

【置】 ”復讐の刃” テンゴ

駄菓子屋を早々に閉めて。
カラス面は出かけて行った。

復讐を遂げる為の勘を取り戻すべく。
仕舞い込んでいた刀を手に、ゆっくりと。

月の美しい、晴れた夜のことだった。
(L4) 2022/08/23(Tue) 14:49:43
公開: 2022/08/23(Tue) 17:00:00
コルヴォは、花束を海へと放った。
いつかの夕暮れの事。
(a42) 2022/08/23(Tue) 15:11:28

コルヴォは、死者に花を手向けない。
(a43) 2022/08/23(Tue) 15:11:34

コルヴォは、それは自分の役目ではないと思っている。
(a44) 2022/08/23(Tue) 15:11:39

コルヴォは、自分の役目でなければいいと思っている。
(a45) 2022/08/23(Tue) 15:11:44

コルヴォは、話を聞く気が無いわけではない。いつだって。
(a46) 2022/08/23(Tue) 15:37:25

レヴィアは、店のカウンターに猫のぬいぐるみが二つ、新たに並んでいる。鎮魂歌が鳴り響く。
(a47) 2022/08/23(Tue) 17:20:14

テンゴは、駄菓子屋のシャッターを降ろした。さあ、もう幕引きだ。
(a48) 2022/08/23(Tue) 17:59:06

【置】 ”復讐の刃” テンゴ

【***】

昼行灯
:昼に灯る行灯のように、役に立たない者を指す


テンゴは昼行灯だった。
顧問であり、異国人である以上、敵は多い。
故に役立たずを演じる必要があった。

役立たずを危険視する奴はそういない。
嫌悪することはあっても。
ただ、役立たずに大役は務まらない。

黙らせるのには色んな手を使った。
口八丁を使った事もあれば、威圧したこともあった。

だけれど、男は、ノッテ・ファミリーを愛していた。
大きな恩義の為だけに、男は生きてきた。

義理堅い東洋人。
それがこの男の本性。

昼行灯の火は、一度消された。
そして、その火種はもう、ない。

『昼行灯の火は、二度と、灯らない――』
(L5) 2022/08/23(Tue) 18:08:08
公開: 2022/08/23(Tue) 20:55:00
ストレガは、ベッドの上で銀色を撫でている。
(a49) 2022/08/23(Tue) 18:31:47

" "に" "を落とした。

ツィオは、"さよなら"、と言った。
(a50) 2022/08/23(Tue) 20:09:05

メモを貼った。

ツィオは、さて、どうやって殺すかな、と思った。
(a51) 2022/08/23(Tue) 20:22:46

ツィオは、死ぬ前に、キスぐらいはしてやろうと思う。
(a52) 2022/08/23(Tue) 20:26:20

ストレガは、きちんと伝言を済ませた。
(a53) 2022/08/23(Tue) 20:30:31

【置】 鳥葬 コルヴォ


子どもの頃から、つくづく運の無い人生だった。

何度も死ぬような目に遭っては、望まぬ偶然悪運が命を繋いで。
それとは対照的に、自分に関わった人間は尽く死んでいく。
それがもはや単なる偶然では片付けられない域に達した時、
人生を悲観する事を、誰が咎められようか。


他者の死が、自分のせいだなとど驕った事は無い。
人はいつかは死ぬものだ。それが偶々その時だっただけの事。
それぞれの意図、それぞれの行動があって、その結果そうなったに過ぎない。
けれどそればかり見ていれば、嫌気も差すというもの。

嫌気が差して、疲れてしまって、けれど逃げる事も許されない。
そんな閉塞感に満ちた時間が、いつまで続くかもわからない。
(L6) 2022/08/23(Tue) 20:53:15
公開: 2022/08/23(Tue) 20:55:00

【置】 鳥葬 コルヴォ


終わりの見えない闇路は苦痛だった。

もしもそれが漸く終わるとしたら、今だと思った。

それで良いと思っていた。


けれど、本当はそうではないのかもしれない。
今更になってそんな事に気付くなんてのは、やっぱり運が無い。
(L7) 2022/08/23(Tue) 20:53:36
公開: 2022/08/23(Tue) 20:55:00
マウロは、手紙を読んだ。遺されたそれに、何とも言えない顔をして。
(a54) 2022/08/23(Tue) 20:55:31

マウロは、「それも、知らなかったな」と言って。寂しげに、薄く笑っていた。
(a55) 2022/08/23(Tue) 20:56:16

【置】 天使の子供 ソニー

小さな部屋の中に、音楽が流れ続けている。子供のための祈り、子守唄の伴奏だ。
締め切った部屋は蒸し始めて、細く流れる血の匂いが壁に塗り込められるように充満し始めている。
バスルームの壁を背にして、乾ききっている空のバスタブの中に座り込んでいた。
此処までに至る幾つもの部屋には鍵が掛けられている。辿り着くまでには、時間が掛かるだろう。

ぼんやりと天井を見つめていた。そこに楽譜があって音符が踊っているかのように、指で辿る。
目線はタイルの色をほとんど形も判然としないままに見つめている。ジェイドの色が輝いていた。
僅かに差し込む月の光はちょうど目元を映し出していて、瞼に嵌った宝石を照らし出す。

考えていた。自分に何が残っているのかと。
親友と親の仇、そう思いこんでいた人税の目標のような誰かを失った。
仰ぎ見るように心の中にあった、甘い匂いのする眩しい明星を失ってしまった。
たった一人きりの友人を失い、己が助言を仰ぐ優しい手を失い、
己が先に順番が来たとしてもその背にして守るはずだった目上の彼を失い、
この街から逃がそうとしていた友人も、彼女が大事にしていただろう脆い存在も失ってしまった。

此処に残り続ければ自分の手に何が余るのか、何が出来るのか。考えた、筈だった。
ぼんやりと麻痺した頭は、死臭に囚われてしまったように眩んでしまって。
自分の中には何も無いのだと、ようやく気付いてしまった。

「……♪……♪……」

手の中にはくしゃくしゃの紙。手の中には一丁の拳銃。
それは誰かから買い付けたものではなくて、隠し持っていた虎の子の一丁だ。
思い出の中のメロディを鼻歌でうたってみて、それを耳で聞く。けれどもそれは、自分の声だ。
本当に欲しかった誰かの声ではない。それはもう、得られはしない。
(L8) 2022/08/23(Tue) 20:56:43
公開: 2022/08/23(Tue) 21:00:00

死んでも、生きても、結局はどちらも同じ事。

その事に気付いてしまったからには、もうどちらを選べもしない。


結局の所、全ては自己満足だ。
だから生きるも死ぬも、それに自分が納得できなければ。
それらは何れも決して救い足り得なくて、救いを求めてもいなくて。

だから、名もなき烏はもう誰が望む所にも行かない。
行き着く先は、誰も知らない場所であればいい。

【置】 天使の子供 ソニー

「……ああ、約束。果たしておけば、よかったかな」

ほとんど抑揚のない声が思い出したようにこぼした。誰に向けるでもない声だ。
けれども一度言葉にしてみたなら、誰かが聞いているような気がしてしまって。
叶いもしないことを、口にしてみた。

「ねえ先生、最後に。オレに、――……」

最後に口にしたのは何だっただろう。
誰も聞かない。聞こえない。届かないだけのもののまま。
その声も、心も。命も。思い出も瞳も、花の匂いも何もかも、一人のもののまま。
どこかそれに安堵しながら。

拳銃の引き金を、引いた。
(L9) 2022/08/23(Tue) 20:59:44
公開: 2022/08/23(Tue) 21:00:00