お前はあの村で死んでいた筈なのに
お前はあの時からオレのものだというのに
[ 猛禽の瞳が下僕と定めた人間を睨みつけた時、
不可視の手が首を絞め上げ、宙へと魔術師の身体が浮かぶ。
与えられるのは殺意ではなく苛虐。
逃れることを許さないが、窒息死も迎えられない。
農村の子供に礼儀作法を教える為にどれ程時間が必要でも、
彼の常識の外にあった術への呑み込みが遅くても、
決して体罰は行わなかった悪魔による、仔への初めての暴力。 ]
何百年生きたとして、人間は人間だ
いつか駄目になってしまうことなど、最初から分かっていたとも
[ 倒れた椅子もそのままに自らはより深く座り足を組み
自分の手でワインを注ぎ足し、藻掻く彼を見物しながら。
ふとため息をつき、そんな真実を明かそう。
誰かの為だけに生きることなど、悪魔ですら成し得ない。
悪意を生きる目的とすれば、待ち受けるのは狂気。 ]