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人狼物語 三日月国


169 舞姫ゲンチアナの花咲み

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視点:




   この人を悲しませたくない、裏切りたくない。
   そして貴方は私の気持ちを裏切ったりしない。
   手帳の続きを口にするのは、そんな理由。


    「
……感染せば、助かる。

     それが、私が知る全て。」


   でも、それは望まない。
   誰であろうと、この病を感染したいなんて
   思えるわけがなくて。

 



   私にとってのW最善Wは恐らく
   静かに、足掻かず過ごすこと。

   治療法がまだあるかもしれない、と
   期待して、それが裏切られて
   絶望を見るよりも。

   胸をふたぎ、貴方と暮らす方が、まだ、なんて。


 



   
でもそれは、あくまで私にとって。

   貴方が、見失いかけた希望を探そうとするならば。


    「何処に、いくの?
     治療法を探すのなら、私も連れて行って。」


   独りにしないで、と願うように
   すこし遅れて立ち上がると
   ふらり、と立ち眩みを起こして
   貴方の方へ、よろけてしまった。
   
         
残された時間がないと示すように。*


 




     「過去がどうであれ
      今の貴女はそれを知っている。

         それだけで……十分です。」


   過去のウユニはあちら側の人間だった。
   仮にその通りだとしても、今は違う。
   サルコシパラが受け止めるのは過去だが
   信じるのは過去ではなく現在の姿なのだから。

   その言葉が聞ければ
   サルコシパラは満足気に微笑むのだ。
   安心した、と。






   しかし事態は何も進展してはいない。
   唯一判明している対策法は

   彼女の病気を誰かが引き受けること。


   それは遠回しな
犠牲
であり
   ウユニが望まない最悪な未来。
   それ故に、本来最善であるはずのこの対策は
   選び難い悪魔の選択にほかならない。





   となれば選べる選択肢は
   全て最善とも最悪とも遠い
   ズレた折衷案しか残されておらず。


     「もちろんです。
      貴女を独りになんてしません。」


   まるで迫る現実から逃避するかのように
   立ちくらみに揺れる彼女を支えて。
   サルコシパラは外へと出るのだった。





   心の奥底では理解していた。
   この先に望む未来などないことなんて。

   もしその時になれば自分は選択を迫られる。
   愛する人を死なせて悲哀に突き落とすか。
   愛する人を救いあげて、悲哀に晒すか。


   その事を全て承知の上で
   サルコシパラはこの未来を選んだのだ。






   とはいえ行先をこの街にしてしまえば
   花がわかりやすく目立ってしまうウユニが
   忌避の目に晒されることは容易に想像がつく。

   サルコシパラは仮面をつけ直し
   少し迷った素振りを見せたあと。


    「そうだ。
     この帽子、よければ使ってください。」


   そう言って自分が愛用していた帽子を差し出す。
   少しでもその姿が周りに晒されないためには
   必要なことだったから。





   それから
   サルコシパラはウユニから視線を逸らすように
   蒼空を見上げると。


    「実は……隣町で行きたい所があるんです。」


   いつもは彼女に伺いを立てる配慮をするのに
   今は何も言わずに彼女の手を引く。
   有無を言わさずに、彼女を連れていくために。