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人狼物語 三日月国


124 【身内P村】二十四節気の灯守り【R15RP村】

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 雨水様がそれでいいならいい。


[それだけ言い切って、なせばなる精神を発動した。
 先代は気まずそうにする。]


 「あー……灯守りってまぁ結構立場あるっつーか。
  大変な側面もぶっちゃけある。
  あと人の灯りを扱うのが主な仕事だ。
  他の仕事は人に任せていい。けどそれだけはやるしかない。

  花雨、お前俺の後継ぐ気……あるのか?



[その言葉に暫し沈黙が流れた。]

 
 

 

  ────── 
今更



[呆れすぎてとっさに言葉が出なかっただけだ。]


 ぼくは、雨水さまに引き取られてから今までずっと
 勉強してきて、側で見てきて
 なりたい、と思うようになっていった。

 大変な事でもやるよ。
 雨水さまは……ぼくにとっては
 恩人で、すごい人で踏み出す一歩をくれて、勇気をくれて

 ……お父さんみたいな存在になっているんだよ。

 ぼくはね、雨水さまみたくなりたい。
 だから 
雨水になるよ。


 

 
[そう言ったら、先代はまた固まって、俯いて
 それからぼくを抱きしめた。

 泣いていた理由をぼくは、知らない。


 ぼくたちの間には言葉にしていないことがある。
 先代がどうして蛍を持ちたがならいのか。それにぼくのお母さんのこと。

 ぼくはお母さんに必要最低限の衣食住以外は放置され
 最終的にはいないもののように扱われた。
 だから
(半ば拉致の)
お別れの時も、お母さんってこんな顔だったっけ、と思ったくらいだった。

 彼と住んでいる間、ぼくはお母さんのその後をきかなかった。相手も何もいわなかった。


 許せないのかどうか自分でもわからない。
 ただ、今なら少し余裕をもってお母さんのことを考えることは出来る。

 今頃一人になっているのかな。
 今頃、どうしているのかな。

 ……今でも、ぼくの事が怖いかな。

 それが怖くて、聞けないまま。]**

  

――もう随分と昔の話――

「小満さまはもうご承知おきかと思うのですが、何年か前に、森の方の牧場の旦那が亡くなったじゃないですか」

[発端は、軽い噂話からだった。]

「あの家の残された息子がね、なんというか、不思議な子なんですよ。いえね、気味が悪いとかじゃないんです。むしろいい方だとは思うんですけど」

「母子とふたりじゃあ回らないからって、あそこ、随分と動物を売ったでしょう。それで、母親が羊だの馬だの世話しながら、息子は教会を手伝ってるそうなんですが」

[話好きのおばさま方やら、その旦那やら。
 街ゆけば時折、その子供の話を聞いた。]

「教会のみなし児なんかがね、まだ子供だからよくよく喧嘩だってするじゃあないですか。そんなときにその子が仲裁に入ると、しばらくしてすっかり仲直りしちまうんだってさ」

「泣いてる子供をなだめるのもうまいなんて聞くね。普通にしてるとなんだか捉えどころのない静かな子なんだけど、こと人の輪に入ると空気が変わるってんで、こないだあっちの爺さんなんかは『天使さまが宿ってる』なーんつって」

[だなどと言うから、さてどれほどたおやかな美少年がいるだろうかと様子を見に言ったら、
まあ見た目はまだあどけない線の細さもあって相応だったが
蓋を開ければ御し難いクソガキであったのだが。閑話休題。]

[その天使と呼ばれた少年は、器用にも教会の裏にあるオレンジの樹の上に登って、枝張りに背を預けながら木漏れ日の中で笛を吹いていた。
 そうしているとそこらの牧童と何も変わらないという印象だったが、まだ13のその子供――それでも、教会の孤児と比べれば年長の方だ――が、なんらかの"能力"持ちであることは、会話の内容からピンときた。
 人の心か、意識か、そういったものに作用するたぐいのものだろう。
 ただ、それよりも俺が興味を惹かれたのは、その子供と目があった瞬間、自身の灯りが微かにふるえて、引き寄せられるような、そんな感覚があったからだ。

 それが予兆だったのかどうかはわからない。
 ただ、こいつなのか、という確信めいたものが脳裏によぎったのは事実。
 もとから能力ちからを得ているなら、素質も充分だ。
 発端は噂話。しかして確実に、出会うべくして出会った。
 これを天命と言うならそうかもしれない。出会いは喜ばしく、
――そしてとても、悲しかった。
]



[
別れの日は近い。
]

 

菴ィ。

[ある会合のタイミングで、真反対の灯守りに目を留め。]

子育てって難しいな。

[などと戯れにこぼせば、一体どんな顔をされるだろう。
 驚かれるか、腹の底から笑い飛ばされるか。
 それから数年後に彼が赤子を押し付けられるとは、まだどちらも露と知らない時期の話だ*]

  
――回想:処暑からの贈り物


[ 処暑との始まりは 何気ないものだった。

 高性能端末であれど 完璧ではない。
 見聞きする力には当時から秀でていれど
 大きすぎるものは口に入らないし
 それ以上に最も劣っていた性能は 嗅ぐ力。

 だからこそ。
 その劣っている筈のものを通じて
 本体に感知させたその存在――…

 …嗚呼、そうだった
 あれは 葡萄だったかもしれない
 
 雨水に渡している恵みの正体が
 瑞々しさを伴う香りが果たして何であるのかと
 目も心も ひとしきり奪われたのが始まりだった ]

[ 処暑はいろんなものをくれた。

 実際に顔を合わせた事は少なくとも
 会合だけでなく、時にそれ以外の日も。

 逢うたびに恵みを貰い、小さな礼を返す
 そんなささやかな日々が 確かに好きだった

 漬け物、酢昆布、チョコレート――…
 吐き出すものは日々様々だったけれど
 矢張り金平糖を贈る事が多かったように思う。

 小さな頃からずっと、好きでいるお菓子が故に ]

[ 数年ばかりの刹那
 けれど 数え切れぬ程続いた処暑活

 形の残らぬものばかりの中に於いて
 其れは今尚、残り続けるもの。


  ――部屋に飾られる 一つの写真立て。


 処暑が収めた、一枚の写真
 陽の差す雪景色にちょこんと座すのは
 南天の葉と実で化粧を施されたゆきうさぎ

 いくら時が経とうと褪せる事無く
 融けることのない世界が 其処には在る ]

 
[ 時に その写真から雪うさぎが消えること
 知っている者がどれだけ居るかは、また別の話 ]

[ 処暑の領域を訊ねたのは
 その贈り物が届いて 程なくの事だった ]


  こんにちは、夕来。
  先日は素敵な恵みをありがとうございました

  新しく蛍を迎えることにしたので
  あなたに 一番に挨拶したいと思いまして


[ 連れ立つのは 二匹のゆきうさぎ。
 足許に居るのはきっと見た事もあるだろう蛍――おつる

 そしてもう一匹。
 腕の中 すやすやしていた目が不意に開いて ]

[ ぴょーん!
 元気よくおつるの隣りへ降り立つ雪うさぎ。
 おつるより一回り小さいうさぎがぴょんぴょん跳ねる ]


  こちらが 新しい蛍です。
  末候 雪下出麦――いづる、と名付けました


[ 処暑の足許にすり寄れば
 南天の葉をぴこぴこと揺らし
 南天の実の如き双眸で足の主を見上げた。 ]

[ 雪の無い其処で 二匹のうさぎがはしゃぐ
 己が地に於いては 決して見る事の無い景色 ]


  並んでいると
  なんだか兄弟みたいに見えます

  おつるもすっかりお兄さんの顔で
  ……たまに さびしそうにしていましたから

  本当に ありがとうございます


[ 見上げれば 一つ笑みを浮かべて
 そうして処暑の領域を 目に留めるひととき ]


  ……。
  すてきな恵みのお礼に
  何を贈ろうかと考えていました

  でも だめですね
  いいものが思い浮かばなくて

  なにかほしいものはありますか?
  あなたのお願いを 叶えさせて下さい
 

[ ――私は 私なりに。
 このひと時を愛しいと そう思っていた

 彼と 彼が想う大切な存在
 二人がどうか幸せであるようにと

 この世に巣食う数多の闇の中にも
 確かに差す 柔らかな光の中に
 どうか二人が居られますように、と。

 一人の灯守りとして想い
 一人の人間として、願う程には ]

[ いつか 口にした言葉
 優しすぎる存在への苦言――或いは自戒 ]


 
  ――夕来。
 
  どうか、気を付けて下さい
  世界は自分が思うより残酷です

  灯守りは最強でも ましてや無敵でもない
  敵と味方の判断を違う事があれば
  自分だけじゃなく 大切な人も苦しめる

  ……。
  私は、苦しめてばかりでした

  だからどうか
            ――…気を付けて



[ 解っていた筈の、自明の理。
 それでも繰り返した 弱さと 罪と 罰 ] *

─ 回想・大寒さんとの出逢い ─


  はっ、初めまして……!

  ああありがとうございます!
  お気遣い痛み入ります恐悦至極でありますですっ!
  この度先代立春から立春を引き継がせていただきまして
  不束者ですがこのとおりこちらこそ是非とも
  なにとぞなにとぞよろしくお願い致します!!


[ご挨拶周りのために用意した台本が、
ご本人を前にして綺麗さっぱりすっ飛んだ。

緊張しなくてもいい、と優しい言葉を掛けていただいても
高速で脈打つ心臓を落ち着かせることは簡単にはできなくて。
自分でも何を口走っているのかよくわからなくなりながら
恐縮しきりでご挨拶したのを憶えている。

ただ、先代の立春──師匠が大寒さんのことを
とても気に掛けて可愛がっていたのを知っていたから。
師匠が大寒さんにさえ別れの言葉を告げずに去ったことを
淋しそうにしてくださる様子が見受けられたなら、
弟子の私は師匠の分までもっとしっかりしなくては、と
少しばかりの落ち着きを取り戻せた。]


  
  『様』などとつけないでくださいどうか……!
  西も東もわからぬ若輩者ですゆえに
  ご指導ご鞭撻のほどをっ

  私の方が様をつけるべきでして
  なんとお呼びすれば!
  大寒様でよろしいでしょうか!


[そんなごく普通の(?)ご挨拶から始まって
鍵の使い方、灯りの送り方、手続きの仕方といった
基本的なお仕事のお話をうかがっていたはずが
気付いたらお姉ちゃんの話を聴いてもらっていた。

なぜだ。なにがおこった。おかしい。
いくら緊張して我を見失っていたからって
当初の予定ではこんなはずじゃ……

一度語り始めればどこまでも枝分かれして
延々と伸びていってしまう最愛の姉語りが
ひと段落ついたところで漸く、本来の目的を思い出した。

貴重なお時間を割かせて無遠慮に付き合わせてしまったのを
申し訳ないと謝ろうとしたら、
大寒さんは心から楽しんでくださっていたようだった。]

[その時に、初めて知った。
大寒さんは物凄く聴き上手な御方なのだ。
きっと師匠も大寒さんを可愛がるように見せかけて
他愛のない話を色々と聴いてもらっていたんでしょう。

それをきっかけに度々お話を聴いてもらうようになり
私も大寒さんのお話も聴きたがるようになって、
文通をされているとの情報を得てからは
折に触れて立春域の絵葉書や押し花を送るようになった。

今日の私が無事にお役目を
果たせたかどうかはご存知の通り。

練習通りに一度も噛むことなく読み上げられたのは、
すぐ隣の大寒さんが会合の直前に
そっと私の背を押すように
微笑みかけてくださったおかげでもあるんだろう。]

 
 [  『大寒』はもともとふたつの灯りでした。

      過去を見つめる『凍空』と
      未来を見通す『寒月』。


     片方がいずれ灯宮へと導かれ、巡り還る。
     
   

    先代様が語る、そのまた先代様のことを
    『わたし』が聞くのはとても不思議な心地でした。
    先代様は『わたし』の中にいる、
    誰か先先代と重ねていることに、気づいていました。


    先代様のこどくと、いたみと、くるしみと、
    『わたし』がしらない、
    『わたし先先代』へのあい。



  
「わたし」は、いらない。

 

    それでも『わたし』は、大寒寒月大寒として産まれました。
    お役目をはやく引き継ぐことが、
    心配をかけない立派な大寒となることが
    先代様が下さった愛をお返しすることに、
    先代様が苦しんだ魂を救うことになると

    

    わたしは しんじていたのです。



    ……もし、わたしが『凍空』ならば
    あなたを救えたのでしょうか。




   わからない。
   

   いいえ、本当は救えないことをわかっていました。
   だってわたしは違うもの。
   

   『わたし』は『わたし』でいたかった*

    

[先代雨水村雨には、まあ世話になった。
 可能なら死に目には立ち会いたいと思うほどには。
 
それが叶わない灯守りも多いのだ、まったく。


 私が灯守りとして小満の号をいただいた頃には、もう何度か会合にも連れてこられ、顔は知っていた相手。
 座を辞する前の先代小満とも気が合ったようで、よくしてもらったとも思う。
 だからこそ。
だからこそ、少しばかり甘えていたのか。


 気ままな牧童の心のまま灯守りになった元天使は、好奇心、興味本位でふらふらと動くことが多かったので、今と変わらず何かがあると顔を出したり、中央の職員の頭を悩ませたりと自由奔放だった。
 にも関わらず、雨水の灯守りがやってくるとふいとどこかへ逃げてしまう。まるで自分の興味はそこにひとつもなかったかのように、ふわりと。
 もしも捕まることがあったなら、不機嫌隠さずに黙りこくってしまうだなんてのもしばしば。]

[なんとなく、嫌だったのだ。
 この人の前だと、いつまでも子供でいてしまいそうで。
 
失った父親すらも、思い出してしまいそうで。
]

[無論、若かりし時分の話であり。
 この身体の時を止める頃には、くだらない話で笑い合うような仲のいい同僚でしかなかったと思うのだが。
 いつ頃、どうしてそうなったかなんて覚えていない。
 反抗期の抜け方なんて、そうそうわかったもんじゃないだろう。

 相手にとっては笑い話だろうそれを、語り草にしないでいてくれるのはありがたい。
 こちらとしても、なるべくなら完全に忘れてしまいたい話だ。
 たまに私が包丁を握って、飲み明かす。そんな良き仲間でいてくれた村雨を想う*]

ーー回想:処暑ーー



 ……処暑の君が殺された?


[訃報が届いたのはいつ頃か。
その報せに、思わず資料から視線を上げる。
聞けば先代の蛍に殺害されたとのことだった
幸い、犯人は捕まっているとのことではあるが、だからと言って亡くなったことには変わりなく。]
 



 ……弔電を書くから、持っていって頂戴。
 後は後は香典を包むからこちらも。

 葬儀にはーー行かない方がいいかしらね。
 灯守りが行くとなると、また大騒ぎになるでしょうし。


[小雪域の職員に命じると、雪のチラつく窓を眺める。
礼儀正しくて優しい子だった。
元行政職員だったということもあり*、仕事も卒なくこなす人物だった。
彼と仕事ができるのは、楽しみであり、光栄なことだったと思っていたのに。
とても残念だと思ったことは、覚えている。]
 

 
[その後、次の処暑の君に会ったのはいつだっただろうか。
その姿を見た私は固まった。先の処暑の君に似ていたから。]


 ……失礼。初めまして。
 灯守りの二十 小雪よ。
 ……処暑の君、であっているかしら?


[一瞬固まったことに何か言われただろうか。
言われたら正直に、先の処暑に似ていたから驚いた旨を伝えるでしょうけど。

一先ず、挨拶を交わして、何かあれば相談に乗る旨も伝えて。
当たり障りのない話をしたけれど、あまり話したがらなそうにしていたのなら、すぐに別れることでしょう。]
 

 
[先の処暑の君との関係は尋ねなかった。
もし本当に関係者なら、とても辛いことだろうと思ったから。
それでも、似ているこの子はたぶんおそらく関係者なのだろう。とそう直感で感じていて。]



 願わくば、彼の眠りに安寧を。
 ーー似ているあの子に、幸多からんことを。


[願わずにはいられなかった。*]