170 【身内RP村】海鳴神社の淡糸祭
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[ 声に手を伸ばした。
波の音を後ろに、海を背にして。
その視線の先に──────────
それはいつかみた夢。
夢は未来を映す幻。 ]*
音楽は君の好きなもの
君の好きな食べ物も知ってる
[ 君の好きな曲の癖、あったかな。
学生の時、沢山聞いた君の曲。
俺は最初は凄い凄い!と喜ぶことしかできなくて
でも勉強したんだ。君の好きなもの理解したくて
知っていくと俺も楽しくなってきて、
曲の話し合いとかも出来ていたかな。
君と違う視点での意見とか出れてたらいいなって。 ]
君が作った曲だよ?
伝えたいもの込められてるよ
自信を持って!!
俺の歌を聞けーーー!!くらい言ってさ
"それしかない"なんて言わないでよ
俺は宵稚の存在に救われてるんだから
まるで、そんな
言い聞かせてるみたいに……
― 妖 ―
……………、…… 海音?
海音、どうした?海音?
[目の前にお前は居る。
此方から言葉を、声を掛けても、
その声が伝わっていないらしい。
なにかの膜が、俺たちの間に張られているようだ。
もう一度、名前を呼ぶ。
押さえた片耳の中、お前の声は聞こえない。
その代わり──、蛍のようなお前の代わりに。
あたりに浮かぶは、
だった。
が、光って、漂っている。]
……なんだ、これ
[赤とも、蒼とも違う。
そもそも、"黒が光っている"なんて、
常識的に考えられない事だ。
――― けれど、コレを俺は知っていた。
]
──勘違いかと思いましたが、
久しい顔じゃあ御座いませんか
人魚の落とし子よ
秉燭の儀は終わっていますよ
また道に迷ったのです?
[だんだん海音が黒く塗りつぶされる
。
そこにいるのが解って、何度も呼びかけていれば
足音も気配も無く声のみが背後から落とされる。]
っ、……は?
[祭りの前、海音と会う前。
否、もっとその前、その前、ずっと。
ずっと、海音の居ない間。
俺を苛み続けていた声だった。
『声』と称するには悍ましく、曖昧で
水中を漂っているような反響をする。
繰り返し、繰り返し、
夜な夜な同じ言葉を囁き続けていた。
この言葉は、この村に帰ってきて、
あの時 明瞭に『言葉』になっていたのに。
――何故今の今まで忘れていたのだろう。]
[その顔は、人の形をしていた。
身体や足も、人の形をしていた。
祭りを楽しんでいるのか、
面紗で顔がわからない。
けれど、真似事のように身につけた浴衣の袖から、
四肢と同じ様に、揺蕩う触手が伸びている。
ひとつひとつが、淡い光を放っていて
黒の光と同じ様に、漂っている。
揺蕩う姿を見続けていれば、
自分が海中の中にいるのかとさえ、錯覚する位。
足音も気配もなかったのは。
此の様に常に地に足を付けず、
泳いでいるせいなのだろうか。]
……な、に、なんで、
アンタ、浮いて…
[現実的ではないと頭が理解しているのに、
受け入れられないのが、人間というもので。
──、だって、俺、いい大人だ。
そんな迷信、信じてるわけが無い。
だが…今コイツは、なんて言った?
久しぶり?
そう、そうなんだ。
どうしてだか俺はコイツに、此の光に覚えがあった。
]
嗚呼
其れが貴方の産みの親が仰有っていた
海鳴の坊で御座いますか
[『声』は海音に顔を向けて、妖艶に微笑む]
此度の件に関しては、
海月火は関与しちゃあ、居ませんが――
貴方自身がまた此処に来れたのは、
其方のお陰かもしれませんねえ
……何を言ってるか
さっぱり解らない、と言った顔をされます事。
私はもう『貴方の願い』に関して、
全て終わらせた、ということですよ。
[それは、どちらに向けて言った言葉か。
けれども、『声』は、楽しげに宙を泳いで]
っ、な、なに、やめ、やめろ
[俺の周りに、黒の光が楽しそうに漂う。
ただくるくると回り続けていたのではない。
ずるり、
と、光からずり落ちるように、
何本もの管が垂れ下がり、蠢くのだ。
後退る。危険だと、逃げろと警笛鳴る。
―――逃げる? どこへ?
]
[求めたい相手の声が、聞こえないのに。
縋りたいその手が、握れなかったのに。]
―――、ヒ、
[一瞬の怯みをついて、
海月が、管が、光が、頭に絡みつく。
そのひとつ、否、
二つが――額を這い
、]
や
め
、ッ……!!!!!
[あろうことか、
耳孔にズルズルと侵入してくるのだ。
刺し貫くような、脳への刺激に、絶叫した。]
[ごぽ、ごぽと。
大きな水泡が弾けるように「喉」を鳴らす。
管が何かを呑み込んでいるように、
数度膨らんでは、頭に乗った海月が煌めく。
やがてそれは海月とは別の光の玉となって──
光の中に『記憶』を映し出した。
それは、いつしか、お前にも見られてしまうのだろう。
話せることも、話せないことも、 全部、全部]
― 回想:真 ―
[一度目の"来訪"。それは偶然だった。
子供にはよくある罪。迷い子。
五つの時。俺はこの世界に来たことがある。]
……あれ、
かいと、かいと?
おとーさん、おかーさん
……みんな、どこいったの?
[此の時から――『言い伝えなんて迷信』で。
ただ皆とはぐれてしまっただけと思っていた。
……だって、俺はこの時から、
父と母と、海音以外、どうだってよかったから。
愛する人が、世界のすべてだったから。
]
………、…。
──♬、…♪……
[悲しみに蝕まれる心を抑えつけて、
ごまかすように、海音だ大好きだと言ってくれた、
二人の大好きな、歌を歌う。
歌っていれば、見つけてくれやしないかと、
淡い期待を抱いて、歩く。]
『篳篥の音にしては、か細いと思えば。
生まれたての稚魚で御座いましたか』
[『声』は初めて、その時俺に声を掛けてきた。
人間の姿をして宙に浮く様をみて、
幼い俺は――恐怖で足を竦ませていた。]
『唄がお好きで?』
[『声』は尋ねる。俺は無言で頷いた。
『声』は続けて尋ねる。
どんな唄が好きか。謳って、何を得るのかと]
あのね、あのね…うたうと、
みんな、わらってくれるの
ぼくがみんなをえがおにできるの
[面紗の下、『声』は静かに微笑んだ。
俺もだんだん、何もしてこないソレに対して、
恐怖というものを薄くしていってしまう]
…だからね、ぼくね
うたがうまくなりたいんだ
すきなうたをずっとうたって…
みんなをえがおにしてあげるの
。゚ ゚o .゚
..。゚ ゚o
。o゚
[その時、気づかれてしまったのだ
其れが『願い』であると、気づかれてしまったのだ
妖に、人の生の短さ等些細な話で
『みんな』という言葉の意味を履き違えたまま。
――俺にとって、『みんな』とは、
父と母と、海音だったのに。]
私達の好みも千差万別
私の好みは、雑味な願いが混ざる前の──
純な子が望んだ欲が、熟した果実
其れが美味であり、私の魂をも満たすのです
十年です
十年、胎の中で願いを孕ませなさい
期が熟した頃に、歌えましょう
宛ら人魚の様に
その身を贄とし、永久に歌えましょう
[その後、俺は何事も無かったように。
迷子として祭りから抜け出して――
悲痛の顔を浮かべた両親の腕に抱きとめられた。
心配したんだから、と怒り、悲しみ、安堵。
全てをぶつけられて、それで終わりだった。
――終わりだと、思っていた。]
[それは、俺に覚えのない記憶の断片。
脳を強請られて、引きずり出された記憶。]
おとうさん、おかあさん。
あのね、ぼく、みんなとはなれたときね
だれかにあって、みちあんないしてもらったの
なにか…おはなししたようなきがする
でも、わすれちゃった
ぼく、ありがとうっていえたかな
[子供の曖昧な世迷い言を。
両親は、青褪めた顔で聞いていた事なんて――
俺は、知らなかった。
わすれて、いた。]
[十年後。その願いが果たされる迄。
俺は『歌』を忘れていた。
『声』の言う通り、
歌を、愛を、心に秘めて孕ませたまま。
今まで見向きもしなかったもの。
軽音部、譜面、ギター、音楽。
十年を境に、その才は一気に花開いた。
願った事も忘れて、
愛する人に、歌を聞いてほしくて。
一番は海音だったけれど――
家に帰って、聞いてほしい人が、いたんだ。
]
親父、おふくろ、俺、曲作ってみたんだ。
ちょっと聞いてくれないか?
[両親、というものは。
本当に子の事をよくわかっているものだ。
その歌を聞いて。
『俺』が、『何』を、『誰』に願ったのか。
その時、大方を悟ったのだ。
――曲を聞き終えて、おふくろはただ一言。
『素敵な歌ね。』と。それだけだった。
高校生が作った稚拙な歌だから?
その時から、俺に対する愛情が薄れていたから?
――その、どちらも違った。
父も母も、刻限が迫っていると気付き、
俺の前で平静を取り繕うので精一杯だったのだ。
]
[それは、俺に覚えのない記憶の断片。
管を通じて、送り込まれてくる『誰か』の記憶。
お金を机の上に置き、書き置きを残す。
朝から晩まで、村に残る書物を漁る。
自分たちの寝る暇も惜しんで
何度も、何度も、何度も探して。
ときには村を出て、専門家にも訪ねた。
言い伝え、伝承、呪い、代償。
科学的根拠の無いもの、けれど確かに近づくもの。
それに抗う手段、方法、対策。
――その全てが、水の泡に帰そうとも、
愛する子の為に、全てを尽くす親の姿。]
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