(a8) 2022/08/11(Thu) 13:21:05
| [この病院に巣食う者たちについて、詳しく知らない。 深く関わろうともしてこなかったからだ。 ただ、長い間刷り込まれた常識が、 自身を無能たらしめている。
私は誰よりも愚かで、出来が悪くて。 みんなは私よりも優秀で、強くて、何でもできて。
……いいなぁ。]* (25) 2022/08/11(Thu) 13:48:41 |
| (a10) 2022/08/11(Thu) 13:50:39 |
| [チハヤと名乗った青年 >>26は、 後ずさった自身を宥めるように声をかける。 学生だろうか。 幼くは見えないが、彼の抱く好奇心は 己の知る大人のそれよりも鮮やかに見えた。] ……。 [いつ亡くなったの、なんて気軽に聞くくらいには、 無謀で、愚かで、鮮やかで、あるいは素直で。 こんな子ならきっと愛されるんだろう。 彼の事情を顧みることなく、勝手な感想を抱く。 己を見下ろした視線が彼に戻った時、 少しだけ呆れと羨むような色が混じっていた。] ……タチバナ。 [チハヤというのは名前だろうか。 ならばこちらも名前を口にすべきだと思ったのに、 自然と零れたのは家族と同じ響きを持つ音だった。 いつ、という問いは答えない。だって覚えてないの。 時間なんて死んでしまえば意味を失うのだから。] (35) 2022/08/11(Thu) 17:35:12 |
| [彼が好奇心の理由 >>27を語るから、 彼に痛みを種を植え付けながら耳を傾けた。 原因、理由、目的。 彼の口にする幽霊の話は、因果関係を探るもの。 遠い昔、大学時代のレポートを思い起こさせた。 ……きっと、今のまま彼が死んだとしても、 幽霊にはならないんだろう。 実際がどうであれ、そう感じたのは事実だ。] (36) 2022/08/11(Thu) 17:35:28 |
| [自身は答えを語らず、彼は言葉を続ける >>28。 痛みが彼に宿ったのを確認して手を離そうとするも、 血の通わない指先は彼の手に捕らわれた。] さぁね。もう忘れてしまったわ。 けれど……夢なんて、 [何かを口にしようとして、言葉を見失った。 今、自分は何を思ったんだろう。 私はただ――」 (37) 2022/08/11(Thu) 17:36:40 |
| [――彼をめちゃくちゃにしたいだけだもの。 生きた人間と変わらない痛みを忘れるくらい、 理由や意味を考える余裕がなくなるくらい、 タノシイことでいっぱいにして、満たして。] どうしたの? [チハヤ >>29が何かを堪えるように蹲った。 だから人間と同じ足を曲げて彼の顔を覗き込む。 長く黒い髪の間から覗く瞳は瞳孔が開ききっていた。 似ているでしょう。生きているみたいでしょう。 それでもどこか違うでしょう。 生と死の境界なんて語る気はないけれど、 死者は 生者の延長線上に存在するのだ。] (38) 2022/08/11(Thu) 17:37:48 |
| [きっと、死ぬその瞬間まで、 私の中から常識や良識がなくなることはなかった。 だからあなたの思う特別 >>27は私の中にないのかも。 だって、私はあの子たちや彼女よりも ずっと愚かで、出来損ないで、何もできなくて、 ただの人間に過ぎないんだから。] (39) 2022/08/11(Thu) 17:39:04 |
| [母が子どもにするように、彼の頭を撫でる。 彼が手を掴んだ時も、今も、真っ白な肌に温度はない。 いくら彼の手に温もりがあろうとも、 髪を透いた指先が耳の先を掠めたとしても、 逃れようのない冷たさが彼の肌を蝕むはずだ。]
苦しい? つらい?
[狂うことすらできなくとも、 濃厚な死の温度と匂いは生者の不安を煽るのだろう。
怖がらなくてもいいの。驚かなくてもいいの。 真っ白な布に黒いインクが染み込んでいくように、 きっと、魂が勝手に怯えてくれるから。
頭を撫でる手を止め、今度はこちらから手を取って、 引き寄せるような動作で頭を抱き込もうとする。] (40) 2022/08/11(Thu) 17:40:34 |
[チハヤが拒もうとしない限り、
彼の頭は胸元に押しつけられることだろう。
温度はない。鼓動もない。死の甘い匂いがする。
そして何より命を刻むはずの場所は空っぽだ。
しかしそれ以外すべて人間の形をした柔らかさが、
彼の頬や鼻をくすぐることになる。]
チハヤ、
[彼が教えてくれた名前を呼んだ。
これまで彼に対して示した態度とは一変して、
紡ぐ音は蕩けるように甘やかだ。]
何も怖ろしくないわ。
気持ち良くて、楽しくて、それだけでいい。
だから早く、いたいのなくしちゃおうね。
[言葉と同じ甘さを持つ指が彼の首筋へ伸びる。
明確な死の冷たさを持って、
少しずつ彼の体温を蝕もうとして。
蹲る彼の上に黒くて長い髪が垂れ下がって。
――夜が満ちていく。]*
| (a13) 2022/08/11(Thu) 17:51:53 |
君のこの、胸の方こそ
必要だろうに…
[ぼくが漏らした弱音を叶えてくれようとしているなんて、
彼女がそれほど甘いとは思っていない。
それでも自らの身体を使って、優しい仕草で、
丁寧に肌を重ねようとしてくれている仕草に
彼女を見上げてゆるい笑みを溢した。
艶やかな黒糸の流れに視界は塞がれる。
壁に背を預けたまま、彼女の冷ややかな身体を引き寄せ、
温度を混ぜ合わせるように唇を重ねた]**
[彼女の体重が預けられた机の影から伸びた何本かの影が彼女の太腿に、腕に、身体に、絡みつくように触れる。
ほんのりと湿り気を帯びたそれは太さは様々で、
彼女の身体を這うようにゆっくりと上へ上へと伝っていく。]*
[理性を失った者がぶち込まれる豚箱。
外に放ってはならない、ケダモノの巣窟。
欲望に塗れた、獰猛な姿。
嗚呼、それはいつかの──両親
そして、いつかの──自分。
相応しい場所
死ぬのならば、此処──だろうか、と]
| [チハヤ >>41が私の名前を呼ぶ。 怨霊の前で無防備な姿を晒す男が、 私が不幸にした家族の名前を呼ぶ >>42。 頭痛が酷くなって一瞬目の前が眩んだ。 大した抵抗もなく彼の頭を抱きしめられたなら、 きっとその動揺を見られることはなかっただろう。 唯一、彼の頭を掻き抱いた指先だけが ほんの僅か、震えただけだ。] あまいの、きらい? [この身により近づけば、死の甘さは一層香り立つ。 もったりした、喉に張りつくような匂いが 彼の身体の内へ、中へ、奥へ、入り込もうとする。 己の唇は彼の左の耳元へ滑り、 冷たい吐息と湿った問いを吹き入れた。] (54) 2022/08/11(Thu) 21:14:19 |
[――それなのに。
彼の言葉に一拍、息が止まる。]
| [交わした言葉は決して多くはないが、 きっと彼はこの場所に留まれと願えば そうしてしまえるのかもしれないと思った。 彼は、夢なんてないと言った。 >>28 自分自身を空っぽだと言った。 過去の人間が遺した言葉を引いた彼 >>1にとって、 現実はひどく無味なのではないか。 現実は希薄で、夢は空虚。 ゆえに彼の知らない死の先が、未知の未来が、 彼を満たすかどうか。 チハヤの零した弱音が、 己の中に彼への勝手な印象を刻み付けていく。] (55) 2022/08/11(Thu) 21:15:08 |
| [でも、それじゃあダメだ。 それじゃあ、わたしが満たされない。
自らの意思で死を望んで、求めて、選んで。 そうして、XXXの代わりに悔いて欲しい。
私は怨霊だ。恨みが私を留めている。 だから――彼の願いを叶えようとしているなんて、 ありえない。あってはいけないの。
だって、生まれた時から私は加害者で あなたは私に貪られる哀れな被害者なんだから。] (56) 2022/08/11(Thu) 21:15:50 |
……どうして。どうして笑うの。
[それなのに先程までの憔悴した様子は掻き消え、
その笑みは初めて声をかけられた時のような
気の抜けるものだった。]
必要ない。
だって……今から、
あなたがいっぱい注いでくれるんでしょう?
[あなたのためだと優しくすれば、
彼は死の海に浸り続けてくれただろうか。
真実が必ずしも幸せを運ぶ訳じゃない。
望む噓を吐くことだって、意味があるのに。
なぜか、彼の問いに頷くことができなかった。
代わりに冷たい手が彼の頬を撫でて、
瞳孔が開いたままの瞳を大げさに細めて見せた。]
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