―― “灯守り”としての記憶・1 ――
[ “灯守り”として、私がまず関わる事になったのは、今も灯守りとして位にある立秋の灯守りたる彼だった。
統治域が隣であった事と、私が『鍵』を彼から受け取る側であった事、それから彼の快活な性格から、
逆隣の白露の灯守りよりも、頼る相手として相応しい、と処暑域の行政職員に判断された、らしい。 ]
「 立秋の灯守り様は知っているよね?
聞こえているように、朗らかで大らかな太陽みたいな人だよ 」
[ 当時の私も、隣の灯守り様の顔ぐらいならば知っていた。
年若い、可愛らしい姿。しかしこれでそれなりの歳なのだから、灯守りとは不思議なものだ、と。
……当時は彼と言うべきか、彼女と言うべきかは迷う程だったのだけれど、元が男性であると知ってからは、彼と称している。これは余談だ。
そして、そろそろ引退を考え始めていた時期だった事は、後々知ることとなる。
彼の統治の様子は処暑域にも届いていた。
先代の彼のように、自分の足で統治域の様子を見て回るような統治者である、と。
実際に関わっていると夏に活発になる太陽のよう、と、それが先代の彼の評だった。
実際、「カリーユさん」と呼んで、隣人故に気軽に足を運んだり、雑談をしたりしていたようだ。
彼は後輩という意識が強かったようだから、年若い姿であっても流石に、可愛がるというようではなかったようだが。 ]