109 毒房のその先で
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朝───というよりは、昼に近い時間帯。
す、す、す……とゆるやかに寝室の襖が開き、 跳ねた寝癖、乱れた衣服のまま 壁に身を委ねつつ廊下を歩く男の姿がある。 闇谷暁(寝起きフォルム)だ。
「りょ……かがみ、ぬま……、 ……………風呂………………めし……」
一先ずシャワーを浴びたい。 その後に食事を用意する。
そのような意図の言葉を吐きたかったが 喉は掠れているし、何より半分くらいまだ夢の中。
「…………」
くあ、と欠伸をひとつ。 ずるずると風呂場に向かっていった。
朝兼昼ご飯が用意されるまで、 まだ時間が掛かりそう。
(0) 2021/11/27(Sat) 0:19:12 |
| 闇谷 暁は、寝起きが悪い。今は比較的規則正しく生活している。でも、今日は寝坊をした。 (a0) 2021/11/27(Sat) 0:20:39 |
| >>1「………ああ、リョウ。 お早う、よく眠れたか?」 あなたの顔を見ればいつも通りに挨拶し、 それから少し気恥ずかしそうに視線を逸らす。 「……いつもお前に、背中を押して貰ってる。 なんだ、その……ありがとう。 高志ならまだ寝てるから、騒がしくしないようにな。」 しー、と唇へ人差し指を当てる。 「朝……もう昼か。 何食べたい?」 (2) 2021/11/27(Sat) 12:49:57 |
| >>3「そうか、良かった。」 これで貴方が寂しがったならば どうしようかと思っていた。 わし、と貴方の頭上へ手を伸ばし、撫でる。 貴方が自分の背を越す前から 変わらず行われる、労う為の動作。 「……… 炒飯みたいなやつ? 何だ………? 分かっ…………た。やってみる。」 美味しいものが食べたい念も受け取った。 我々とてそれなりに深い付き合いだ。 『炒飯みたいなやつ』とフンワリした注文を受けても 23%ぐらいは伝わっている。 → (4) 2021/11/28(Sun) 15:41:47 |
安堵。
これでもしリョウに寂しい思いをさせていたなら
猛省するところだった。
(……難しいな。)
高志も、リョウも。
どちらも大切にしたいのに
恋愛と家族愛での差が出てしまう。
(三人でも寝たいし、
せ、せっ、せ………セ、も、人並みには、したい。
どうにか両方叶えられないだろうか。)
そのうち、ふたりに相談してみよう。
自分たちは、家族なのだから。
| とんとん、 ぐーぐー、 じゃばばば、 きゅっ 台所からは包丁を扱う音。 洗面所からは洗濯機が唸る音。 時々、水が流れた後に水道を捻る音。 テレビが静かな分、 ご近所の井戸端会議や談笑なんかも 僅か聞こえてくるのだろう。 ……なんて穏やかな日常。 少し時間を置いて、 鶏肉が香ばしく焼けていき、 ケチャップ、それからバターの匂いが家中に広がっていく。 探偵が導き出したメニューは…… ケチャップライス だ。 じきにケチャップライスとだし巻き玉子に 昨日のポテトサラダを添えたプレートを4人分、居間へ運んで来る。 「鏡沼、美味しいやつ(多分)だぞ。 リョウ、これで………合ってるか……? あー、流石にそろそろ高志も起こした方が良いな………。」 (5) 2021/11/28(Sun) 15:54:30 |
| (a4) 2021/11/28(Sun) 15:54:46 |
| 「炒飯みたいでグリンピース……、 うーん、今度一緒に買い物行くか。」
その時に、あれこれ考えながら 共に見て周れば良い。 ちなみに66+23%ほど理解が進んだ。
「美味いなら良かった。 …………、 ……寝かせておいてやりたかったけど、 もう良い時間だしな。分かった。」
濡れた手をタオルで拭い、 とん、とん、と階段を登っていく。
(7) 2021/11/28(Sun) 17:14:02 |
| (a5) 2021/11/28(Sun) 17:14:40 |
| (a8) 2021/11/29(Mon) 16:36:24 |
闇谷暁は、あなたたちに寄り添う共鳴者。
平和な日常に瞳を細め、
幸せそうに穏やかに微笑むのだ。
「いただきます」
変わらぬ日常に、少しのスパイスをも楽しんで
今日も明日も、自分たちは、箱庭の外で生きていく。
| (a9) 2021/11/29(Mon) 16:51:12 |
暫く前のことだ。夢を見ていた。
自分は実家の離れにいた。実兄が女性を殺し、紛い物の自由を得るために己が偽装工作に手を貸した犯行現場だ。
けれど夢の中のそこには荒れた形跡一つ無い。
兄もいなければ殺された女性もおらず、まるで何も起きなかったかのように何もかもが綺麗なままだった。
ここで時間を過ごしていても何の益もないと判断し、襖に手をかける。
隔たり一枚を滑らせてどかした先。
離れの向こう側は何もなかった。文字通り、天も地も、世界を形成するもの全てが存在していないのだ。
ただただ、全てを飲み込む闇が広がっているだけ。
意を決してその虚無に身を躍らせても何も変化がない。気付けばまた離れの客間に立っている。まるで己の行動に意味などないと嘲笑うように。
時間の流れが把握できない場所で思考することすら馬鹿馬鹿しいと思えるくらい立ち尽くし、或いは座り込み。自分もまた物言わぬ風景の一部と化した頃に視界がぼやけて意識が遠のく。
そこで夢が終わる。その繰り返し。
連日それが続いていた。
愛する者たちが傷つく内容の夢であれば嫌悪を催していただろうが、ただただ自分がもう縁のない過去の場所に佇むだけの意味などない内容だ。
家族には黙っていた。
貴戸本人は意味のない、価値すら見出せない夢だと切り捨てていたが。
水面下で、本人に知覚できないところで、夢は静かに少年を蝕んでいたのかもしれない。
或いは、意識していない不安の芽がそのまま夢として表出してしまったのかもしれない。
生きやすいようにと邪魔なものは一切捨ててきた少年。
その中には一般的な家庭で育った者であれば当たり前のように手にしていた温もりなども含まれる。
多くの者にとっての当たり前を、少年はそれこそ当たり前のように投げ捨てた。
敷かれたレールを歩くには不要なものだったから。
そのツケが今、こうして当たり前の温もりを感じ取れる世界に歩き出した際にやってきたのだろう。
自分は闇谷暁に同じくらい気持ちを返せているだろうか?
自分は迷彩リョウを温かな世界に導けているだろうか?
分からない。今まで積み上げてきたもの全てを手繰り寄せて思い返しても、参考にできそうなものなどろくに無かった。
家族とは血と責務と系譜でしか繋がりが無かったから。
ああ、それでも。
紫色の瞳が脳裏によぎる。
無邪気な家族の声が木霊する。
己と共に歩いてくれる大切な人が出来た。
上に立つのではなく、隣に並んで。
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