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人狼物語 三日月国


203 三月うさぎの不思議なテーブル

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[胸が火傷したような熱さを覚えたあの日以降も。
 メッセージのやりとりは続いた。

 待ち合わせの場所、時間。
 もう一度、シフトの確認。

 短いやりとりの中に挟まれる、
 期待が滲んでいる言葉。

 遠足を前の日にする子供のようだな、と。
 微笑ましくなって液晶を撫でる。

 時間が経つとともに火傷は落ち着いて、
 そんな日々を重ねながら、
 一度店に高野が来店した時には、
 いつものように接することが出来ただろう。

           

             ――そのラジオを聞くまでは。]

[いつもの深い夜、風呂上がりの缶一本だけのビール。
 同じ時間にAIに呼びかけられば、
 部屋にサウンドが流れ始める。

 タオルで濡れた髪を拭き取りながら、
 今日も始まったラジオ。

 その日は誰かの誕生日を祝うメッセージから始まった。
 そういえば、速崎もそろそろ誕生日の時期で。
 あれから、彼女を祝うミニパーティの話は、
 進んでいるような、いないような。

 速崎から直接聞いた大咲との話。
 口を挟まないと決めたからには、
 大咲に振るわけにもいかず。

 二人の間がぎこちないまま過ぎていく今では、
 その話題も立ち消えになっていくのだろうか。]


[そんな考えを巡らせていた時に、
 不意に聞こえたタルトのキーワードに
 ラジオに意識が引き戻された。

 一生わすられない味。
 写真にも残した、宝物。]


  …………、


[忘れもしないあの日の。]
 

【人】 店員 チエ

――うさぎ穴に波乱が起きた日――

あ……いや、

[>>16気が進まない、とかじゃない。
 立たせてほしい、立たせてほしいんだけど。
 くだらない意気地無しが、一歩引きたがったんだ。

 だけど、躊躇った途端急に『大丈夫』の線が引かれた気がして、もう踏み込めなくなる。
 この店でやっていこう、と話を締められたら、追いすがろうとした手は空を切った。]
(86) 2023/03/09(Thu) 21:04:07

 

  ……ふ、


[吐息を吐き出すように、笑いが零れた。

 今までとは違う一人称の原因は、それだろうか。
 妙に畏まっているような。
 なのに、心踊っているような。
 
 天気予報を度々見るほどに。
 楽しみにしているというのは嘘じゃないらしい。

 ラジオは今日は生放送なのか。
 この前のように録音なのか。

 ベッドに投げたスマホを手にとり、
 メッセージアプリを開く。]

【人】 店員 チエ



(優しいのは どっちだよ)


[忙しいからスタッフ募集って、言ったくせに>>3:514
 しんどい仕事の負荷を分けたいって、言ったくせに>>6
 大丈夫、と全部引き取ろうとする。
 こちらに負担をかけさせまいとして。

 わかってる。今そうさせたのはボクだ。
 ボクが今、線を引かせた。]
(87) 2023/03/09(Thu) 21:04:28

【人】 店員 チエ

[ほんの数分前の、ぱっと咲くみたいに笑った顔>>0を思い出す。
 喜んでた。ボクが手伝おうとしたこと。力不足なんて、言ってなかった。
 どころか、自己評価を叱られまでしたのに。

 ……あんなに、ボクでいいって、伝えてくれたのに。]


(ばかやろう。馬鹿。馬鹿チエ)


[自分の浅はかさが、じくじくと全身を蝕んでいく気がした。
 苛立ちと、後悔と、自虐が身体の中で渦巻いて、それからどんな風に仕事をしていたか記憶にない。

 賄いでトマト煮は、出したんじゃないか。
 だけど、何を、食べたんだっけ。]
(88) 2023/03/09(Thu) 21:04:53



             『もうすぐですね。

              待ち合わせ場所は――、』**

 

【人】 店員 チエ


[自分が人形になったみたいな錯覚。
 何をしても空虚な、からっぽ野郎みたいだ。]
 
(89) 2023/03/09(Thu) 21:05:15

【人】 店員 チエ

[ちゃんと帰ったかどうかの記憶もないけど、目が覚めたらベッドの上だったから、帰巣本能ってやつを褒めたい。
 といっても、着替えも何もかも放り出して、そのままヤケで寝たっぽいけど。
 夜シフトだけの日で助かった。
 シャワー浴びて、着替えて、顔手入れして、トーストを焼く。
 バター塗ってぼんやり齧りついて――……]

……

[はぁ。重めのため息をつく。
 馬っ鹿じゃないの。昨日より少しは冷静になった自分が、昨日の自分に怒る。
 パソコンを、つける。]
(90) 2023/03/09(Thu) 21:05:29

【人】 店員 チエ

[いったい、何が違うというんだろう。
 かわいいものが好きだからと、着たい服を着ているのと。
 作り方も知らないで、やってみたいからと見様見真似でボア地に針を通すのと。

 スタート地点は、それよりずっと前に出てこれているはずなのに。]
(91) 2023/03/09(Thu) 21:05:43
―― サクラサク ――

[指定したのは自宅から徒歩で行ける公園の入り口。
 入り口の防護柵に腰を掛けて待っていれば、
 もうすぐ着くというメッセージが届いた。

 寒くない格好で、と言われて結局選んだのは、
 白地のトレーナーの上に、
 オフホワイトのパーカー付きボアフリース。
 更に紺のマウンテンパーカージャケットを着込んで。
 下はよく分からなかったから、
 いつものように黒のジーンズという出で立ち。
 
 到着したというメッセージに腰を上げて
 交通量の多い道の方へと向かっていく。

 背丈からすぐにその姿は見つけられたので。
 ゆっくりと、向かって。]


  おはようございます。

  そうですね、この時間に会うのは。


[いつもとは違う挨拶を交わして、
 体調の確認には軽く頷いて応える。]

【人】 店員 チエ

[3日後に、店長に少し無理を言って、一日休みたいという話をした。
 事前連絡だから、もしかするとうまく誰かと変われただろうか。
 その場合、必ず埋め合わせはするからと再三頭は下げた。

 三号機は型紙も決まっていたし、少し慣れも出てきて、まる一日あればひと通りの形を仕上げるくらいは、できるようになっていた。
 でも、今回は店休日一日だけでは、足りなかった。]
(93) 2023/03/09(Thu) 21:05:58
[彼が報告してくれていた通り、
 天気は晴れやかな日が射していて、
 着込んでいたら、少し暑いぐらいだ。

 渡されたヘルメットとグローブ。
 触れるのは初めてだが眼にしたことはあるから。]


  ないですけど、見様見真似で。


[そうして視線を手元に落とせば、
 ヘルメットにはうさぎのマーク

 カラーが眼についたのは、
 自身がよく見ている色だからか。]


  これ、元からですか?


[トン、と指でうさぎを指して、問いかけて。]

【人】 店員 チエ

[薄手の布をぐるり巻きつけて、大きさを確かめる。
 それの大きさ違いを、あと2枚。
 重ねて縫い合わせて、ボタン……はうまくいかなかったから、マジックテープ。
 幅の広いレースリボンを折り畳んで、こっちも左右と後ろを縫い止める。
 細長い端切れを、くるくる巻いて――


 丸2日使って、うさぎ1羽。
 神田さんに撮ってもらいたいくらいには気合を入れた仕上がりにはなったけれど、仕事休んで作りました、って雰囲気にしたくなかったから、まだこの子の話は誰にもしていない*]
(94) 2023/03/09(Thu) 21:06:33
[グローブを装着して、帽子より窮屈なヘルメットを被る。
 確かに外の音は、ぼわっとしていつもより聞き取りづらい。

 先に慣れた仕草でバイクに跨るのを見て、
 真似るように高野の肩に手を添え。
 捕まるようにして後ろに跨る。

 小さな声は聞き取れなくて、]


  …………?
  どこ、掴まったらいいですか?


[指定があるなら、その場所を。
 ないのなら、腰元に手を回すつもりで。*]

メモを貼った。

店員 チエは、メモを貼った。
(a17) 2023/03/09(Thu) 21:10:18

 私服、見るの初めてだ。
 いいね

[ トレードマークの帽子はなく、
 もちろん眼鏡もない。
 
 いつもの姿を見慣れていても
 近づく姿はすぐに見つけることが出来た。

 天気良好、体調良し、を確認できれば
 装着具を渡す。 ]

 そんなに難しいものでもないから
 大丈夫だと思う

[ 見様見真似、それが出来るのって
 センスと能力でも在ると思う。
 それなら、と見守るだけに留めて ]

 ……特にカスタムはしてないよ。

[ はしゃいで買いました、はちょっと
 言いづらく。なので、その問いには
 そう答えた。 ]

 一応ベルトで留めるけど、
 どこでもいいよ この辺とか。

[ 見様見真似にしては、まごつかず、
 グローブとメットを被り、シートに乗り込む君に、
 どこ>>と聞かれたら、腰のあたりを
 叩いて教えた。 ]

[ ………自分の体に回される手に、
 一瞬言葉を失うも、地面を軽く蹴り、
 バイクは走り出す。

 寒くないように、とそういったのは
 立ち止まっているなら、暑く感じても
 ずっと風を浴び続けるとそれなりに、
 寒く感じるから。

 理想的と言えるスタイルをしてくれたと思う。

 目的地まで、危険な道はない。
 山を一つ通るけど、行きも帰りも緩やかなものだ。

 中心部を抜ければ、穏やかな田園地帯が続く。 ]

 ああ、 最高

[ 故に信号もそれなりに少なくなる。
 余暇にバイクを走らせることも、
 それを共有できるのも。

 思わず漏れた声は、漏れたにしては
 それなりに大きな声。

 本音を言うと、叫びたいくらいには、
 そんな気持ちだったんだ。* ]

―― 友人へ ――

 『いーよ、体調平気なら』

[ そのメッセージに気づいたのは
 お使いに出た時のこと。

 メッセージからは声色は測れない、
 が、この分ならただの二日酔いだろう。

 頼まれれば買い出しくらいは
 引き受ける所存だが、いい大人だし
 大丈夫だろう。

 そのうち、もしかしたら同居人も
 増えるかもしれないし、それなら尚更。

 次に会う時には、遠慮なくご馳走になるとしよう。
 酔っ払いって重たいし、そもそも成人男性だし

 貸し借りは頻繁に作るもんじゃない
 友達なら、尚更ね。* ]

 

[ 
「 ねえ、恋ってどんな感じだと思う? 」


  あれは確か、高校三年生の冬。
  家のことで同じように荒れていた友人から不意に問われ、
  大咲は「んー……」と思い悩んだことがある。

  恋。誰かを想って、その人の特別になりたがる感情。
  関係が壊れることを恐れることがあってもなお
  「特別同士になりたい」と思う、こころ。暖かい春。 ]


  分かんないよ、そんなの
  ……恋人いる子に聞きなよ。


[ 遠い世界のことだな、と思った。
  自分にとって恋やら愛だのといったものは種類が無くて
  漫然と、親の手料理くらい、遠いものだった。 ]

 

 

[ それがまあ、今となっては。
  一言一句聞き逃さないよう、常に神経を張り巡らせたり
  滲んだだけの"可能性"に一喜一憂したりとか。
  スマホの通知音が鳴ると、真っ先に名前を見てしまって
  貴方からなら嬉しくなるような。

  勝てないなあ、と思っているのがお互いさまなんて
  知らないまま、少しずつ、雪が解けていく。 ]


  ……?


[ 名前の件は、焦らす魂胆なんて全然なかったから
  出迎えた彼の息が何故か上がっているのを見れば
  なんで……? と疑問符を頭に浮かべ、首を傾げた。

  彼氏の家に、彼女が泊まる。
  それも、初めてそこで名前を呼ぶという約束付きで。
  大咲はその緊張感を察せるほど、慣れてはいないのだ。 ]

 

 

[ 同じ言葉で返してくれる彼へ、頬を緩めて手を繋ぐ。
  タルトの箱はお言葉に甘えて持って貰うことにして、
  ……繋いだ手から悪戯に伸ばされた指先の感覚へ
  「ひゃぅ、」と油断しきっていたが故の声を零した。 ]


  い、悪戯禁止です!!


[ 赤い顔で見上げる先、月明かりに照らされる彼の顔。
  その瞬間に何故か自分の肌の上で跳ねた貴方の指が、
  "動揺"という心のゆれを教えてくれた。

  あ、もしかして今、思惑は成功しましたか。
  リップを塗り直した時の、ほんのすこしの狙い撃ち
  ふふ と笑い、お泊りセット購入には
  「買いたいです」と頷いて。 ]

 

 

  神田さんにしか見せない格好も、ありますよ
  ……寝る時のとか……?


[ デート服は流石にだって、デートなので。
  お家デートの時も、家へ来るまでに誰かには見られる。
  となれば必然的に寝る前の姿しかない。
  今度お気に入りのブランドでパジャマを新調しよう、と
  密かに誓って駅前のドラッグストアへ寄り道だ。

  お泊り用に小分けされたスキンケアセットや歯ブラシ、
  その他、必要なものを籠へ入れていく。
  女子は急遽のお泊りに必要なものが多いので
  暇をさせたり、神田にも買い足すものがあるのなら
  いったんは別行動で。 ]

 

 

[ 買い終えた必要なお泊りセット一式を手に、
  桜を眺めながら手を繋いで歩く帰り路。
  ポニーテールに纏めた髪がふわふわ揺れていくのも
  まるで少し浮かれた心を表しているみたいだ。

  それはきっと、貴方の家へ到着する間際。
  不意にちらりと伺うように瞳を見つめ、問いかける。 ]


  ……この家に泊まるの、何番目ですか?


[ 恋人として。と、付け加え。

  初めてなら満足したように笑うだろうし
  そうじゃないなら
  次からはちょっと、何か置いて帰ってやろう、なんて。* ]

 

メモを貼った。

―― うさぎのじゃれ合いは続く ――

[同僚になって三年、仲が悪いわけではない。
 たまには同僚同士で飲みに行くこともあれば、
 大咲とも店のグループチャットで
 やりとりすることもあっただろう。

 なんというか。
 時折、彼女から感じていたのは。
 背伸びをしたい妹のような。
 どこかに必死さと焦燥が見え隠れしていたけれど。

 複雑だと、珍しく素直に心情を吐露されれば。
 おや、と数度瞬いて彼女を見つめた。

 何の心境の変化があったのか。
 数週間前に慌てて早退して以降の大咲は、
 少し、雰囲気が柔らかくなったような気がする。]

[彼女の変化の元となったのが神田であることは、
 その時はまだ知らなかったので。

 神田が腹ごなしに歩いているのを横目に、
 大咲へと視線を戻す。

 
……やっぱり混ざりたかったんだろ?


 そんな言葉を飲み込んで、いつかのように。
 ぽんと、大咲の頭に手を置く。]

 
 
  大咲も、何かあったら
  オニイチャンを頼っていいよ。
  話を聞くぐらいしかできないけどさ。


[父子のような実際のつながりはなくても、
 三年紡いできた絆があるように。

 速崎からも話を聞いていたから
 彼女にも同じように。聞き役として。]

 


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