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人狼物語 三日月国


203 三月うさぎの不思議なテーブル

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[やや気恥ずかしそうに告げれば
彼がちょっと驚いたようにぽかんとして。
その顔がじわじわと赤く染まるのが見えた。

ちらり、とその視線が測定リングに落ちて――
またこちらに向く。
珍しくどこか不安そうに、様子を窺うような。]

……………、


[左手につける意味を知ったうえで、そう言うってのは。
考えるとこちらまで頬が熱くなってしまって。]


………………ダメ、じゃないです………



[微笑ましそうな講師さんの視線を感じながら
真っ赤になってそう答えたとか。]

[さてそんなわけで指輪づくりだ。
選んだ理由はデザインが気に入ったのもあるけれど。]

でしょ?
それに槌目だとさ、模様にも叩く人の個性が出るんだって〜。
それぞれ違う仕上がりになるの。
世界でひとつだけのリング、良くない?

[彼からの初めての贈り物。
喩え無料でも、誘われたものでも。
彼が自分を想って作ってくれるなら
そこには特別な価値があるじゃあないですか。
だからより手作り感の出るものにしたくて。

コンソメスープ云々の話題には
もー!今それはいいじゃん!と
照れたような拗ねたような顔をしたけれど。]



…………うん………。


[微笑んでシルバーを選んだ意図を明かす彼には
ただじんわりと赤面して頷いたのだった。]

[そうして作業開始である。
なお、真剣に作業に集中する彼に
不満を持ったりとかは全くもってなかった。
何故なら私も真剣だから。

だってペアリングだし!変な物作れないし!

……と言うのは別にしても
多分今まで見た中で一番ってくらい
至って真剣な表情で指輪作りに取り組む彼を
作業の合間に時々じっと見て。]


(瑛斗、こんな顔もするんだ〜…)



[なんて。密かにときめきを覚えていた玲羅である。

いや、いつも明るく表情豊かな彼氏のガチの表情、
ちょっとキュンと来るものがあるじゃないですか?
それが自分へのプレゼントを作っているのだから猶更。]

[棒状のシルバーを熱して柔らかくした後
ペンチやらハンマーやらで丸く曲げて
高温のバーナーで熱して隙間がないようにくっつける。
(ロウ付けって言うらしい)
しっかり熱してピンク色になったそれを
水で冷やして薬品に着けて。

歪んだリングを芯金に入れて
木槌で叩いて綺麗な円形にした後に
ヤスリで削ってまた槌で叩いて全体に槌目をつける。

最後に刻印を入れて磨けば完成だ。

講師の先生に手取り足取り手伝ってもらいながら
黙々と工程に集中していただろう。**]

[『ダメ』て区切られた時、一瞬ひゅっと息が詰まって。
それから『じゃないです』と続いたから。
詰めていた息を、肺から全部吐き切った。]


はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜…………


………………
良かった。



[小さく囁いて微笑んで。
自分がこんな風になるなんて、本当に不思議だね。
今は赤い顔の玲羅を揶揄う余裕もないや。]

[コンソメスープの話しをしたら怒られた。
照れたような拗ねたような顔してくれたから。
俺も調子を少し取り戻した。
銀を選んだ理由。彼女に伝えたけど。
ただ。受け止めてくれたから。微笑んで。
自分も彼女の頷きを、ただ受け止めた。]

[槌目には個性が出るらしい。
世界で一つだけのリング。
そんなことを言われたら、ガチにならざるを得ないし……
それと同時に、何処か強張った身体の力が抜けた。
なんだろ。きっと、どんなリングを作っても。
玲羅は喜んで受け取ってくれるって。その瞬間思ったから。
だから大丈夫だって思えた。]


世界にひとつだけのリング。良いね。
玲羅のそれを貰える俺は、幸せだな。


[だから目を細めて、愛おし気に笑いかけて。
講師の先生?多分きっと慣れてるよ。こんなやり取りもね。
栗栖くんは基本目の前の人に集中しちゃうから。
周りの人を見る余裕などありませんでした。]

[そうして鎚を揮う際も。一際の集中を見せた。
玲羅は個性が出ると言ってくれた。
なら。思い切りよく揮おう。
形は後でも整えられるらしい。
潰す事を恐れて、弱く小さな跡目を着けるのではなく。
勇気をもって恐れず大胆に揮った。
それから、先生に指導を受けながら、丁寧に丁寧に型を整え、金属が玲羅の肌を傷つけないよう、ヤスリをかけた。

クリアな質感のリングに。
大きく不規則に着いた槌目。
そうして型を整えるべく繊細に着いた小さな槌目。
キラキラと光を反射し煌めいている。

何度も指先で当たりが無いか確認し。
ようやくヤスリを手放して、先生に確認すると。
刻印を入れてもらうべく、一度手放した。]

[ふと。玲羅を見て笑いかける。
そう言えば作業中お互い無言だった。


出来上がり楽しみだね〜〜。

自分のに集中して、玲羅の見て無かったや。
どんな指輪が出来たのか、楽しみ。


[それがどんな指輪でも、きっと自分には愛おしいのだろう。
目を細めて。]


片付けして、待ってよっか。


[ヤスリで散った金属屑等を丁寧に清めて。
机の上をピカピカにして待ってたら、刻印も終わるだろうか。]

[出来上がった自分の指輪を受け取ったら。]


玲羅。手を出して?


[玲羅の左手を借り受けて。]


…………はい。


[薬指に指輪を通した。
君のために作った指輪は、過不足なく。指に嵌り。
君の薬指を彩った。**]


[この世界中で、一番気まずい5分間を過ごしたんじゃないかっていう自信がある。]

 

[繋いだ手が離れないまま、帰路につく。
 駅まで5分。歩いてすぐの距離は通勤にやさしい。
 ただ今だけはもっと長くなってくれたらいいのに――っていう展開を期待したんだけど。
 実際はぽつぽつ話をしただけで、多くは沈黙。
 静かな夜にふたり分の足音が重なる音が聞こえるくらいに。

 ……あっれー? 一応、一応両想い、かもしれない、一世一代の告白、のようなもの、が受け入れられたその5分後ですよね?
 恋愛ってこうだっけ。いや、違った気がする。]

[かと言ってボクの方も、何が自然な会話なのか、もうまったくわからない。
 正直こっちは完全に、勝手に憧れて勝手に好意にしてずっと視線で追いかけた、っていう
中学生かよ
みたいな片想いをしていたものだから、シャミさんの側から意識されているという想定が本当に、なくて。
 本当にこんなボクのどこが好きなんですか、と聞きたかったけど、さっきなんでと聞いたらなんでだろうと言われてしまったし
 いやいやそんなの関係ない、もっと他愛のないこと話しかけようとしても、横顔を少し見上げるだけで、頭の中が真っ白になる。
 "チエには愛されたい"。見上げたその唇がそう言ったことばかり、頭の中に渦巻く。
 現実味がなくて、自己嫌悪の行き着く先に見た都合のいい夢みたいで、手を離したらそのまま消えてしまいそうだから、繋いだ手を握る力を、少し強めた。

 5分間、ただ体温だけが、つながっていた。]

[家どっちですかとか、送っていきますとか、ほんとは言うべきだったんじゃないだろうか。
 そのあたりに思い至ったのは駅についてからだ。

 だけど最寄り駅まで行こうにも、終電の危うい時間帯。逆方向だったら、往復は厳しいかも。
 それに実際いつもの仕事帰りとさして変わらない時間だから、この時間に出歩くのは慣れているはずで。
 むしろ立場的にはボクのほうが心配される側だったりする?とか考え出したら、繋いだ手が物理的な分かれ道で解けるまで結局、言えなかった。
 情けないポイントのスタンプカードがあったら、そろそろ満点になる気がする。]

……うん。また、ね。
嘘じゃ、ないから。ほんとだから。
誓って、ほんとだから!


[大事にするからね、とか言われてしまうと、それボクのセリフじゃないんだぁ、と、スタンプがまたひとつ増えた気分。]

――自宅――

――あ。

[結局まっすぐ帰ってきた、その玄関前。
 小さな段ボール箱が置かれていた。
 通販の置き配は、家を空けがちな人間にやさしい。
 そこに入っているものを想像して、それを使う瞬間を頭の中想像したら、ふっと笑顔に――]

[なるどころか、かっと顔が熱くなる気がした。
 箱を抱えて急いで部屋に入って速攻でベッドにダイブした。頭を抱えに。]

いやいやいやいや待って、待ってそれは、待ってこないだのボクちょっと待って意味わかんない
一回死んで
死んで詫びて今のボクに


[どうする。いっそこれを渡さなければ。
 いやだめだ。それはそれでボクの矜持が許せない。
 今から別のを探す? いや、間に合わないかもしれないし、そもそもやることそのものが変わるわけじゃない。

 
ああああ
、と深夜に羞恥と後悔とそれはそれとして期待やなんかが入り混じった声を上げて、転げまわり。
 ひとしきりそうしたあと、頭を冷やそうとシャワーを浴びることに決めた。
 いっそ水でも浴びようかとすら、思った*]

メモを貼った。

メモを貼った。

――報告会――

 まああれ言った本人も僕の気持ち気づいてなかったみたいだから
 案外みんな自分のことには鈍感なのかもね。

 って何その怨念籠ったみたいな言い方……
 ええっと、お疲れ……?

[タイミングというのは確かにある。
栗栖は自分よりは来店頻度が低い気がするし、彼が恋する相手は店に来たら大体逢える店員ではなく客だ。
席が遠いと中々親睦を深めることは難しかっただろう。

しかしただタイミングが合わなかっただけにしては声色がやけに不穏だ。
「色々」を聞く機会はあるのか、とりあえず紆余曲折あったらしい彼に労いの言葉をかけた。]


 ん?ああ、そこは何にも疑ってないよ。
 ふふ、「貝沢さん」から呼び捨てになってんじゃん。
 いいね、そういう「つきあってからの変化」みたいなの、
 観察するの結構好きだよ僕。

[真白から栗栖への言葉が気安いことに少し拗ねたりはすれど、実際に二人の仲を疑うことはない。
そうか、彼女は栗栖に惚気ていたのか、と思うとむしろ嬉しかったりして。]

[自分とも栗栖とも貝沢とも真白はよく喋っているし、自分と栗栖は親しいと思っているので、紅葉狩りの誘いに関して此方は全く抵抗なく言ったものの、返事を聞いてはた、と気づく。]

 もしかして……
 
僕、貝沢さんと喋ったことないな……?!


 それは貝沢さんにとっては気まずいかもしれないね。
 僕、あの店で似た時間で食べてたらみんな知り合いみたいに思ってたけど、うん。
 よーく思い返しても僕が一方的に知ってるだけだった。

 知らない人の車が怖かったりしたら全然断ってくれても良いし、
 僕は背景になるの得意だからタクシー運転手みたいな感覚で
 移動手段として使ってもらうのでも構わないからね。

[勿論、秋までに時間はあるので、それまでに知り合っておくというのもアリだとは思う。]


 綺麗だよ紅葉。
 ちょっと山の中まで車で入るところだから穴場っていうか、
 シーズンでも人混み気にしなくて良いし。

 焚火ブースが近くにあるんだけど、
 そこで持ち込んだ芋焼いたりマシュマロ焼いたりするのも出来るらしいよ。
 一人で行くの寂しくて行ったことないけど、4人なら楽しそう。

[プレゼンだけはしておいて、後は二人の意向に任せよう、と話を締めくくろうとした時。]


 えっそれ「おめでとう」の流れなの。
 「キスした」とか「それ以上」とか言ったら
 都度祝われる感じ……?

[それは手を繋いだと自己申告するよりも恥ずかしくて少し慌てた。
この余裕、もしや彼はもう、と思ったが、店内で猥談に発展しかねない話題は止めておこう。

代わりに。]

 お互いおめでとう記念でラムチョップシェアしない?

[黒板を指して「どう?」と小首を傾げた。*]

[ところで揚げ出し大根、めちゃくちゃ食べたいです。
真白が揚げるなら尚更。*]

─ デートの日 ─


[待ち合わせの場所までの歩みは、ゆっくり。
転ばないようにというのもあるし。

道沿いのショーウィンドウに映る自分の姿を見るたびに、歩みが止まりそうになる]


(これは合ってるのか……)


[優しい白色のブラウス。
ブルーグリーンのワンピース。
髪は緩く結えて背に垂らした。

歩くたび、裾が動いて優雅に揺れる。チエはあの商品画像から、この動きまで想像できていたのだろうと思う。
けれど、
これは]



(合ってる……?)



[家で試着した時は気にならなかったのだけど。
あのモデルの子よりも、自分で着ると丈が短い。
     くるぶしほとの長さに、黒い靴を履いた画像。

……ふくらはぎぐらいなんだけど……?


さらに足の甲が露出したサンダルなので、こう、すーすーする。
これは大丈夫なのか。間違ってない? 思ってたんと違うって思われない?]

[手に持った花束を持ち上げて顔の下半分を隠す。
スン]


(でもこれを着る以外の選択はないし)


[合ってるかどうかはわからないけどめちゃくちゃに可愛いし**]

メモを貼った。

[菜の花のカルボナーラにはサーモンを。
 チキンナゲットが食べたいというのなら、それも。
 飲み物も、と増やして行けば、そこそこの量。

 ピザは翌日にも回すことが出来るけど、
 サーモンの方はさすがに今日食べ切った方がいいかな。
 とか、仕事柄、味の保証期間も気にしつつ。

 注文を任せた後は、
 結局落ち着いて座っても居られずに、
 運ぶ手伝いを申し出た。

 自分で作った、というピクルスやサラダに
 少し驚いたものの]


  いい傾向ですね。


[気になっていた食生活が少しでも改善するなら、
 喜ばしいことだから、そう笑って。]

[ワインと缶のサワーがいくつか並ぶのを見たら、
 飲むつもりはなかったけれど、
 飲みたくなる気持ちも少し。]


  じゃあ、こっちのサワーもらいます。


[選んだのはシークァサーのサワー。
 さっぱりとした味だけど少しだけ甘いのが飲みやすい。
 今は飲まずに手元にだけ寄せておいて。

 そんな会話を挟みながら、少し時間が開けば、
 先に見てもいいという言葉に甘えて、

 テレビ画面に配信サイトを移したら、
 そのまま、連続再生を押した。]

 


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