ー奥の院ー
「どうか、かしこまらないでくださいませ。
雛としての咲夜様も、もちろん素晴らしいのですが、此度は少し用向きが違いまして。
「雛」としてではなく、「咲夜様」にお願いがあるのです。」
恭しく挨拶をする彼女を、手で制する。
その様子を黙って見守る子供達だがーー…どこか、そわそわしている、落ち着きのない様が伝わるだろうか。
「この子達は皆、今年に精霊へと昇華した子でして。
雛を愛でる事はおろか、このような場に訪れたのも初めてなのです。
当然、正しく雛を愛でる事などできようもなく、その為に、恥ずかしながら咲夜様へお願いするのが良かろうと愚行したしだいなのです。」
子供達はこれから起こる事に、興味と緊張と、かすかな羞恥の色を持って彼女を見つめている。
ーー…もしかしたら、咲夜が現世で見知った子もいるかもしれない。