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人狼物語 三日月国


94 【身内】青き果実の毒房【R18G】

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>>暴行現場

「…………」

「……わかっ、た」

冷静な、もしくは淡々とした声が鼓膜を揺らし続ける。
それが何だか寂しく思えて、怒りが少し和らいだ。

結局大きな背中が見えなくなるまで視線を送った後、
踵を返し食堂へ向かう。

人を憎むのは、こうも遣る瀬無いのだろうか。
不特定多数を憎んだことはあれど、
誰かひとりに対してそんな感情を抱いたのは初めてだったから。

「ごめん」


その言葉は、誰に対してか。
小さく溢し、食堂へ入った。

椅子に腰掛ける。いつも以上に姿勢が悪かった。

>>普川

最年長の少年と寡黙な少年の暴行現場を見てしまった後の話。
食堂。または、そこへ向かう途中か。
兎に角一緒にいるだろう迷彩少年や闇谷少年の耳には入らないよう距離を取った隙に、最年長者へと詰め寄って声をかける。

「普川先輩。少々よろしいですか」

表情はいつもの仏頂面のまま。極めて落ち着いた様子で、貴方にしか聞こえないであろう声量のまま話を続ける。

「……事情を話したくないのであれば無理に聞きませんが。黒塚に殴ってもらうよう頼んだのは、貴方にとって必要だったからしたことなんですよね?」

>>【食堂】

とは言え、食欲もあまりないらしい。
海鮮鍋foodをゆっくりと食べ進めている。

「……あの。黒つ、アキちゃんとは何ともないから」

「急に怒鳴っちゃってごめん」

ルームメイトの呼び名を言い直し、再び謝罪を口にした。
明らかに何かがあったが、それを言う気はあまりないようだ。

以外に食欲があった。でも魚がいっぱい入っていたので、食べにくそうにしていた。

何なら野菜もあまり好きではない。最早苦行だった。

>>食堂

これは食堂に来た貴戸高志。
どこかの誰かさんのワクワクキッチンにより2回もえらいこっちゃになったので、もう食堂の食べ物は信じられなくなってきた。
ということで厨房を借りて夕食を作ることに。特別上手と言うわけではないが、レシピがあればそつなくこなせる少年だ。

白米にじゃがいもとにんじんの味噌汁、更に肉豆腐にもやしとツナの酢和え。デザートにしゃりしゃりの梨を切ってご用意。それを二人分持ってきた。

片方は闇谷に。もう片方は自分へ……と思ったのだが、迷彩の箸の進みが遅いことに気付くと肉豆腐の皿を少年の前に差し出した。

「迷彩。その鍋は嫌か?俺のものと交換しよう。此方に渡せ」

てきぱきと色々動いている。話は闇谷が聞くだろう……なんて丸投げしながら。

>>【食堂】

一人で去っていく黒塚にかける言葉が見つからないまま、
手を引かれてそのまま食堂へ。

普川の方へは、ルームメイトが向かっている。任せて良いだろう。


ゆるりと席に着いて、暫くして、
ルームメイトが手料理を運んできてくれる。
先程話したばかりの肉豆腐だ。

「……俺は、
 迷彩が何もなく怒鳴るような奴だと思わない。」

それと同時に、黒塚も。
何もなく誰かを殴るような奴ではないと思う。

「無理に聞くつもりは無いが、
 俺がお前を心配している事だけは覚えておいてくれ。」

味噌汁を啜る。

「……部屋、帰り辛くないか?
 とりあえず今日はうちに来るか……?
 
このじゃがいもの味噌汁美味いな……。

暴行現場を見た。
集まってなにやら騒いでいるのも。

みんな大変だなぁと、他人事のように思いながらそれを眺めていた。
だって他人事だもの。
自分に振るわれなければ、何が行われようと構わなかった。
……あ、でも早く仲直りしてもらった方が変な空気にならなくて楽だなぁ。

そんな事を思いながら皆が解散していくのを確認して、ちょっと遅れて食堂へと向かった。

>>【食堂】

「うん、じゃあ、お願い」

肉豆腐を差し出されれば、 素直に応じた。
本当は豆腐もあまり好きではないが、魚や野菜に比べればましだ。
皿を持ち、まとめて二本掴んだ箸で掻き込むように食べ始める。

かけられた言葉には咀嚼をしながら小さく頷いた。

「部屋はもうずっと帰ってないよ。
 テキトーな空き部屋使ってるからヘーキ。
 二人の邪魔にはなりたくない」

ずっと、と少年は言うが、企画が始まる前までは当然自室で寝ていた。
空き部屋で寝ているのはここ数日の話だとわかるだろう。
数口飲み込めば、重い口を開いた。

「……何もなかったんだよ。向こうにとってはさ。
 だから余計にムカつくっていうか。
 オレの気持ちが、どこにも存在してないみたいで」

崩れた豆腐を見つめながら、ぽつりと呟く。

漂ってきた臭いに(´・д・`)な顔をした。

榊 潤は、流石にその缶を開けた食堂に行きたくないと思った
(a60) 2021/09/27(Mon) 13:08:18

>>【食堂】


「邪魔な訳あるか。
 ……寂しくないか?」

な、と、ルームメイトを一瞥。
からっぽな空き部屋で、彼は一人何を思うのだろう。
そんな勝手な想像だけが頭の中にある。

言い忘れていたいただきますと有難うを告げて
箸先を行儀悪く迷わせ、豆腐を割いた。


「……何かあったんだな。」

きっと何か、迷彩が大切な話をして
黒塚がそれを無視でもしたのか。
何にせよ、タイミングの悪い事故……のようなものか、と
一先ずは気楽に捉えた。
大きなことが起こっているとは、あまり考えたくはなかった。


「……多重人格か」

 少年の言葉を反芻し、時間をかけて嚥下し。そんな推察をぼそり、呟いた。
 回答を期待しない、会話未満の音だった。
 
……つくづく、似て非なる。



 ベッドに押し倒され、抑えつけられたまま下半身の服を脱がされ、そのまま行為が始まった。どうしてか追い詰められたようになっていく朝倉を余所に、普川は困惑気味ながらも冷静なように見える。

 その内に感情の堰を切ったように喚き出す朝倉。一瞬の間、その後。殴られたように普川の頭が弾かれる。それを皮切りに、見えない拳と独り善がりの律動との暴力が始まった。

 押さえつけられたまま、痛みに耐えるように身をよじる普川の姿は正しく『強者に抵抗できずに理不尽を受ける弱者』で、そのくせ表情だけはひんやりとしたままだった。


「……アレの言葉を借りるなら」
「『人格』とは、人に存在するものでしょう」

「ならば多重人格でも何でもない。
私は、
本当の『南波靖史』は最初から私しかいない。


「──アレは、
貴方達がずっと『南波靖史』と認識し続け、この舞台上で話し続け、人を『幸せ』にしようとし続けていたあの存在は、」


「名付けいわく本名は、」

  ネウロパストゥム・パトロヌス
「neuropastum patronus」
(操り人形の守護者)


「──自我が芽生えた、私の『異能そのもの』です」



だから、多重人格と言うのはおかしい。
経緯を知らない人間なら、最早それは『寄生』にも聞こえるような話。ただ、この『本人』はただ諦観しか見せていないが。



 ダウンした榊に縋りつかれたまま、ひとつずつ制御装置を外して台に置いた。鍵を使っている様子はなかった。

 ほどなくして影が盛り上がり、榊にまとわりつく。その黒は意思を持って動いていた。彼を普川から引き剥がし、軽く持ち上げる。

 影は触手のように何本にも枝分かれして、榊の着衣を脱がしていく。下半身をうまれたままの姿にしたところで、影がローションのボトルの蓋を開け、小指よりも細い細い影の束に垂らして広げた。
 一本、二本、三本……少しずつ増やされていく影は、結局何本榊に咥えられていただろう? 榊は抵抗しているようだが、人形と変わらないくらいにいとも簡単に動かされていた。

 一方の普川はトロピカルな色のカクテルを飲み切ってから、榊が残していた透明な酒に口を付けていた。ちょっとふわふわしてきたみたい。

>>【食堂】

「邪魔じゃないなら、うん。今日はそっちで寝る」

温かい手料理など口にしたのは、ここに来てからだ。
きっと栄養もあって美味しいけれど、それでも何かが足りない気がした。

「でも寂しいのは、今に始まったことじゃない」


友人に作ってもらった食事を残すのは気が引けた。
調理に割いてくれた時間を無かったことにするのと、同じだと思うから。
薄く色づいた野菜を、肉と一緒に食べ進めた。

「そう。オレにとっては、何かあったんだよ」

貴方に心配はかけたくない、という気持ちはある。
だから、何も心配いらない。
そう意味を込めて、短い説明をした。

「……夢の話、した。
 そしたら、笑われた。それがムカついた。そんだけ」

大人が禁じた、愚かな夢だ。
しかし少年にとっては、ようやく見つけた生きる希望だった。
本当は願っている。再び元の生活に戻れることを。
本当は期待している。もしかしたら、自分たちが許されるのではないかと。

世界はそんなに甘くない。
子供は知っているつもりで、ちっとも知らなかった。

「異能に、自我。そうか」

 ここまで、さほど気にかけてもいなかった言葉を思い出す。
 ああ。だから人間ではないと言ったのだな。そういう、答え合わせ。

「……つくづく、似て非なるな」

 そうして今度ばかりは思考の外、声になった。
 もっとも、一番初めに抱いたのは『難解な本名だな』という間の抜けた感想だったのだけども。

「初めまして――か? 『本当の』『南波靖史』。
 ……で、お前のことはどう呼ぶべきだろうな」

 遠回し、一人と一つを別物として扱うべきかと問うている。俺がアレを靖史と呼ばわることは知っているんだろう?
 直截的でないのは、この男にしては、たぶん珍しいことだった。

>>【食堂】

「………良いよな?
 今日だけと言わず、いつでも。」

言って、気付く。
勝手に決めても良いものだろうか。ルームメイトへちらりと視線を送る。
布団は……近くの部屋から持ち込んで来ても良いだろう。そんなことを考えつつ。

「……煩かったらすまん。」

自分は何とも思わないが、ルームメイトの声が大きい。
……寂しさは紛らわせるのではないだろうか。





「…………、」

貴方の夢。
かつて自分勝手に口を挟み、怒らせたもの。
背中は押せないが、貴方の思いはよく理解していた。

「悲しいな。」

彼のために、何が出来るだろう。
探偵だ何だと名乗っておいて、余計なところで飛び込む癖に、いざ目の当たりにすると足が止まる。戻れないな、と、自虐の言葉と共にもやしを飲み込んだ。

「話して、笑われて……何か言われたか?」

普川

「そうですか」

手短に反応する。殴られる事を求めた理由に関してはその程度だった。
貴戸がもっと反応を見せたのは、その先。貴方の謝罪に関してだった。

「……俺が切り込みたかったのはそこです。
事情はどうあれ、殴るという行為は良い顔をされないものだ。己が当事者じゃないとしても。
だから、もし求めるなら人の目に触れないところでやる事をお勧めします」

目的であった話を伝える。話し終えるまで眉根は八の字に下がり、些か困惑の色を滲ませていた。

「…………先輩、謝り慣れていますか?」

ルームメイトの視線 には快く同意、賛成を見せた。

迷彩を歓迎している。断る理由が無いし、心配する気持ちがあるのは相方と同じなのだから。

>>【食堂】

「うるさい方がいい」

家に誰かがいるのが当たり前だった。
それでも時々、留守番をしたことがある。
テレビを付けたまま、硬い布団で寝たことを覚えている。

悲しいと言われれば、ややあって頷く。
あの時は恐怖心を覆い隠す為に、怒りを募らせたけれど。
怒りと恐怖の下に、悲しみがあったことに今気が付いた。

「え、うーん……」

何か、と言われて思案する。
あまり思い出したくない記憶を、隙間から少しだけ覗き込む。
黒い瞳と目が合って、すぐに目を逸らす。

「母さんに報いる気がないんだな、とか」

「だったら今ここで死んでも同じだ、とか」

――――なあ、そうは思わないか。リョウちゃん?

少年の夢は、そう言われて当然の形をしていた。
ルームメイトの言葉は全てが正論だと、きっと誰しもが納得する。
それが正論で生きていけない子供の神経を逆撫でした、ただそれだけの話だ。

普川

殊更困った顔をした。少し考える為に瞼を下ろす。小さなため息を一つついて、それから瞼を持ち上げる。

「そうですか。
……先輩。その言葉に誠意がこもっていようがいまいが、口から出た発言には責任がついて回ります。
別に俺は、貴方が自ら殴られるのを求めることに思うことは特にありません。先輩には先輩の事情がありますから」

淡々と言葉を紡いでいく。

「……ただ。こうして口先だけでも約束してくれたのに。それを破ってしまったら。……いいや、破るだけなら別に良い。
それで万が一、暁が再び困ってしまうようなことがあれば」


「俺は貴方をもっと叱ります。
覚えておいてくださいね」



「…………はあ」

ため息が止まらない。

「……俺は本当は、こんな事を言うつもりじゃなかったのに。
…………俺は先輩に、お礼をいう用事があったのに」

迷彩と闇谷が廊下で重なりあっているのを見た日。
真意がどうであれ、普川の言葉によって背中を押されて行動することができたのだ。律儀で生真面目な少年はその件に関してあとできちんとお礼を言おうと考えていた。

それなのに、今こうして飛び出した言葉はなんだ?感謝とはまるきり違う棘を含んでいる言葉ではないか。

「…………はあ」

ため息が止まらない。
的外れな言葉を耳にしながら、自身も食堂へ向かった。

貴戸 高志へ感謝の意味を込めて頷いた。 

>>【食堂】



がたん!

音を立てて立ち上がる。

「───ッごめん、」


咄嗟にそう、口から出た。
苦しい記憶を開かせて、
あまつさえ言葉にさせてしまうなんて。

そこまでさせるつもりじゃなかった。
なんて言葉は、ここ以外だって通用しない。
知りたがって貴方の傷に触れた。

悪い、と呟いて再度椅子を引く、座る。

「……同じな訳ないだろ、
 違うよ、違うんだ、リョウ……。
 お前は望まれて産まれてきたんだ、
 そんなことあってたまるかよ……!」

ここには居ない男の言い分も、理解できなくはない。
それでも情のせいか、目の前の少年の事ばかりが大切に思えてしまって
本当に、探偵失格だ、と瞳を細めた。

箸を取り落としそうになって、置いた。

>>【食堂】 

立ち上がった貴方に、少年は目を丸くした。
大したことを話したつもりなど、微塵もなかったから。

死ねと言われたことが悲しかったわけじゃない。
自分の夢を、生きる理由を、
ちっぽけなものだと扱われたことが悲しかった。


貴方の感傷が、理解できない。

「やっぱりそうだよね?
 ここで死んだら、同じじゃないもん」

故に。
的外れな言葉を、そうと気付かず平然と返した。

「でもさ、でもさ。望まれて産まれただけじゃ、」

ほんの数年で見える世界と常識は一変した。
無学な少年でも、大人達が何を言わんとしているかは察しがつく。

「────生きるのを許された、ってことにはならないよ」


これは曲論だらけの少年が学んだ、数少ない正論だ。

少年の言葉の何処かを拾い上げて食事をつつく箸を一瞬ぴたりと止めた。

何事もなかったかのように食事を進める。ふと家族の事を思い出したが、もう関わりのない話だ。

 
「へぇ。珍しい事を言いますね。非なるとは散々言われましたが、
 “似てる”が入っているのは初めてです。どう言う事ですか?」

気だるげな顔から少しだけ疲れが消える。
少し前に期待して、また落胆する羽目になったから止めようと思ったのだが。これは期待とは少し違う、同類の可能性への興味だからいいだろう。

「別に“お前”でいいですよ。気付かれたくないって言いましたし。
 下手に名前をつけると、アレにバレると困ります。

 ……アレの中では私、もう消えた事になってるので。
 思い出すと暴走しかねませんから。私の事大好きすぎるので、あの子」

最後の最後、気を抜いたせいか、
今までの声色と違って少し苦笑に近いものが零れた。

「俺も、人間ではないからだよ」

 ちらりとカメラを、マイクを気にする動きを見せつつも。
 記憶を選り分け、言葉を選んで話を続ける。

 最も簡単な方法と知りながらも口を噤むことを選ばなかったのは、たぶん、ただ話をしたかったから。
 同類への――普通でないものへの、期待。それをこの男も有していた。

「異能によってうまれた生き物。
 ……まだ人間として認められていないと言えばいいか?」▼

「『父親』が……俺を作った、あの人は。
 そうだな。俺のことが、好きだったんだろう」

 瞼を伏せ、言葉を吐く。
 笑いの一つも零れていないのに、どこか穏やかな声色をしていた。

「おかげさまで、難儀している。
 ――で? お前、“アレ”は“お前”をどう好いたんだ」

 少年に倣って、呼び分ける。
 消えたはずのお前の話を、聞いてみようかと思った。それが短くとも、長くとも。

 
「成程。私の場合は、一時期は半共存のような形でしたが。
そちらはそもそも“別個体”として存在は出来るんですね。

それ、アレが知ると喜ぶから教えてあげるとどうですか?
最も私が見ていない際に、そう言う会話は出ていたかもしれませんが。あくまで私は“本元”ですし、近いのはアレの方でしょうから」

別段、今の『南波靖史』をしている異能は、自分が人ない事を隠してはいない。話に流れがあれば、容易に話していた。

それでもまさか“自分と同じ異能そのもの”が居たとは想像だにしていなかっただろうから、知ると喜ぶのはそうだろう。

 ▼

 
「そうですか」

貴方の気にする先を、視線の先を薄ら確認する。
この状況で、全てを正直に話す気がない──そもそも不可能な事も勘付いている。

本当に貴方の言う相手が『父親』なのか、違う存在なのか。気にはなったが確かめられる状況ではないけれど、どちらにしてもその声色だけで少しだけ慰められた気分になった。

……自身の異能に対しての罪悪感は、0ではないから。


「中身や記憶が同一なのかは、気になるし本当はお話したかったのですが。……もうあまり時間もないでしょうし、それは“全部終わった”後に。気が向いたらアレに話してあげて下さい」

この演劇が終演を迎えた時、ここまで監視も盗聴も厳重じゃない──個人の会話同士くらい、誰にも聞かれない時間が生まれる。それは、この役職についてる自分だからこそ、知っていた。

 ▼

  

「──この現代社会における、」

「“ただしい好き”と言う感情を、持って生まれませんでした」



それを指す対象は、これを語る『本人』か『自我のある異能』か。或いは──『両方』なのか。そのどれかは、語らない。

「どう好いたんだ」の問いに、ただ。
「うまれつき他者の事を正しく愛せなかった」
と、付け加えた。

曖昧な言葉のそれは、少なくとも『ただしさ』を重視する社会では、許される方向性の愛ではなかった事は理解できるだろう。
 

>>【食堂】



口を一文字に結ぶ。
具材が沈殿していく味噌汁の色が、薄くなっていく。

貴方はいつだって変わらず、理解してくれない。
けれどそれで構わない、理解し合うだけが『友人』ではない。

だから。

生きるのに許可なんて、いらない。

 誰の許可が必要で、
 誰にダメだと言われて死ぬんだ。
 もっと好きに生きて、良いんだよ……」

好き勝手に、言葉をかける。

「リョウは、
 誰かに許されないから死ぬのか?」

貴方からそんな言葉が出た事が悲しいと、
そんな想いだけは、知って欲しいから。

「だったら俺は、
 お前が死ぬのを許したくない。」

             
正論なんて、くそくらえ。

闇谷の話の途中で箸を滑らせて落とした。

箸を拾い上げて席を立つ。少しだけ、胸が苦しくなった。

箸ごと手を冷水に浸しながら考え続ける。

思考の海に浸り続ける。人は、いつから人に許可を求めるようになってしまったのだろう?